グローバルな危機管理力を強化する ―「企業の危機管理力に関する調査」から 株式会社電通パブリックリレーションズ 池上 翔 シニア・コンサルタント 「コーポレートガバナンス元年」と称された 業 2995 社の「危機管理担当者」を対象に調査を 2015 年、企業統治のあり方に注目が集まり、 行った(有効回答数:392) 。同時にメディア関 危機管理への取り組みも議論された1年だっ 係者 1638 人にも質問票を送付し、報道する側 た。しかしながら事件・事故・不祥事は後を絶 から見た企業の危機とは何かを把握しようと試 たず、日々報道やソーシャルメディアで話題と みた(有効回答数:177)。危機発生時のコミュ なった。世界各地ではテロが発生し、中東での ニケーションで何を留意すべきかを可視化する 情勢不安が国内経済にも影響を及ぼした。アジ ためである。分析にあたり危機管理活動を数値 ア圏では日本企業進出に伴い生じる様々な危機 化し、危機管理の“力”として評価することが が聞かれた。グローバルでの危機管理が問われ できる独自指標「危機管理ペンタゴンモデル」 ていることがひしひしと伝わってきた。 を開発、次の5つの評価基準を設けた。 企業の危機管理活動を可視化 企業の広報活動を研究する社内組織「企業広 報戦略研究所」が、企業の危機管理に着目した ①「リーダーシップ力」-組織的な危機管理力 向上に対するトップなど経営陣のコミュニ ケーション・実行力。 ②「予見力」-将来、自社に影響を与える可能 のも 15 年のことである。私たちは 14 年に「企 性がある危機を予見し、組織的に共有する力。 業の広報力調査」を実施し、企業の“広報活動 ③「回避力」-危機の発生を未然に防止・回避、 を遂行する力”を調査した。 次に行ったのが今回の「企業の危機管理力に または危機の発生を事前に想定し影響を軽減 する組織的能力。 関する調査」である。これは、次の2つの疑問 ④「被害軽減力」 -危機が発生した場合に迅速・ への回答を見出そうというところから始まっ 的確に対応し、ステークホルダーや自社が受 た。すなわち「なぜ危機は防ぐことができない ける被害を軽減する組織的能力。 のか?」 「なぜ企業は危機発生時のコミュニケー ションで失敗をしてしまうのか?」である。 今回の調査が行われたのは、15 年2月。東 京大学大学院情報学環総合防災情報研究セン ターの協力のもと、企業が取り組むべき危機 28 Sho Ikegami ⑤「再発防止力」 -危機発生の経緯と向き合い、 より効果的な危機管理や社会的信頼の回復を 実現していく組織的能力。 見えてきた課題は「予見力」 管理活動を洗い出し、それらの実施有無を回 調査結果は同年6月に発表させていただい 答いただく調査を設計。国内の内資・外資企 た。そこで見えてきたのは「予見力」に対する 2016年3月号
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