「豊の国風景街道シンポジウム~中津街道で町おこしを~」に参加して

平成27年9月26日
「豊の国風景街道シンポジウム~中津街道で町おこしを~」に参加して
(公社)福岡県建築士会 豊前地域会
椛田 晋一
9月13日の日曜日、福岡県及び大分県の郷土史家らでつくる「豊前の街道をゆく会」が主催
する「豊の国風景街道シンポジウム~中津街道で町おこしを~」に参加しました。田中孝秀代表
がパネリストとしてステージにあがり、後援として会員6名がステージ準備や照明、映像を担当
しました。
中津街道は、江戸時代に整備された中津(大分県中津市)と小倉(北九州市)を結ぶ約52
kmの旧街道です。昨年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公である黒田官兵衛が、九州
平定のために中津に城を築いたことにより、以後、中津は城下町として整備され、その中津と九
州の玄関である小倉をつないだ道が中津街道です。全体の9割が生活道路として残っているのは
奇跡的であり、全国的にも珍しいことだと思います。シンポジウムは、古い町並みや史跡が残る
旧街道の存在を今一度認識し、その素晴らしさを再発見して、各自治体や地域活動団体等が一緒
に取り組んで、町おこしにつなげていこうという趣旨で開かれました。初のシンポジウムが豊前
市で開催されたことは、誠に喜ばしいことです。
さて、豊前地域会では、この中津街道を活かしたまちづくりができないかという取り組みを平
成25年度に開始し、勉強会や町歩き、建物の調査を行っているところです。シンポジウムでは、
その内容について紹介しました。パワーポイントを用いて、まずは街道沿いの建物の写真を見て
いただき、建物を地図上に分類したものを八屋地区の町並みを例に紹介しました。次のような分
類をしています。
緑 :現状で町並みの景観をよく保っている古い建物
黄 :近年建った建物だが、おおむね町並みの景観を保っている建物
赤 :改修すれば、町並みがより魅力的な景観となる古い建物
無色のものは、街道らしくない建物あるいは未調査の建物です。この調査は目視で行ったため、
建築年代については正確さに欠けていますが、町並み景観を構成する建物が現在どのようになっ
ているかを“見える化”するという点で、とても有効であると考えており、今後、本格的に進め
ていきたいと考えているところです。
次に、現在調査中の宇島地区にある建物について紹介しました。この建物は江戸末期に建てら
れたものであり、明治初期には一部を郵便局として使用していたようです。宇島は、江戸末期に
幕府から巨額の補助を受けて築かれた宇島港によって整備された町です。宇島港は豊前海随一の
港町となり、明治から昭和初期にかけて、筑豊の石炭の積み出しや坑木の運搬をはじめとする海
運によって繁栄した港です。この建物の2階の土壁には、海運関係の紙があちこちに貼られてお
り、宇島港の歴史がわかる建物だと言えます。また、小屋組は、二重虹梁の上に斜め梁をかける
というあまり見かけることがない架構形式です。このように、建物を調査すると町の歴史などい
ろいろなことが分かることを説明しました。
空き家化が進んでおり、解体されるケースが増えてきている実態にも触れたうえで、最後に、
「建築物は、1つ1つを単体で考えるのではなく、町並みの景観という視点で考えることが大切
です。これまで、日本各地で、壊しては建てるスクラップビルドによって、どこに行っても似た
ような画一的な町を造ってしまいました。その結果、近代の建築物が急激になくなり、町並みが
壊れかけています。今後、私たちが住んでいる町がどのような町なのか、どのような歴史がある
のか、肌で感じることができ、
誇りを持つことができる町づくりに転換していくべきです。幸い、
中津街道沿いには、まだまだ古い建物が残っています。先祖が残した歴史ある町並みを活かした
町づくりをしていき、故郷(ふるさと)を大切にしていきましょう。
」とまとめ、建築士会の取
り組みと思いを会場の皆さまにお伝えしました。
パネルディスカッションでは、会場の方から、建物調査の内容をデータベース化できるかどう
かという質疑を受けました。田中代表は、まずは豊前地域会のエリアである豊前市及び築上郡の
調査を進めた上で、他の地域会や大分県の建築士会と協力していくことで可能になるかもしれな
いと応じました。
建物調査は、豊前地域会会員で、ヘリテージマネージャー第1期生の野依芳隆さんのアドバイ
スを受けながら進めています。古い建物の調査は、経験や知識が必要であり、休日を使ったボラ
ンティア的活動であるため、時間がかかります。今後、ヘリテージマネージャーを増やしていく
必要があります。豊前地域会では、現在6名が第3期研修を受講しているところです。また、同
時に、古い建築物を残していく意義を明確に示す活動が必要です。地域の方に自分たちの住んで
いる町並みの素晴らしさを知っていただくことが大切です。そういった点で、郷土史家や地域活
動グループとの連携が不可欠です。今回のシンポジウムはその第一歩であり、たいへん有意義で
した。この体験が、各地域でまちづくり活動をしている建築士会の皆さまに、何らかの参考にな
ればと思い、報告しました。