商業用ローン・スペシャル・サービサー - Standard & Poor`s

スタンダード&プアーズ
------------------------------------------------------------------------------------2015 年 7 月 30 日
サービサー評価:
新生債権回収&コンサルティング株式会社
商業用ローン・スペシャル・サービサー
総合評価: 能力が極めて高い
組織と経営: 能力が極めて高い
債権管理回収能力(スペシャル・サービシング): 能力が極めて高い
財務信用能力: 懸念なし
アウトルック: 安定的
アナリスト:
橋本祐志、東京 電話 03-4550-8275
主な評価要因
• 不動産担保付商業用ローンのスペシャル・サービシング業務において、有意な債権取り扱
い実績を有し、今後も維持が見込まれる。
• 高水準の内部統制体制を構築しており、今後もその維持が見込まれる。
• 経営陣および回収担当者が豊富な業務経験を有している。
スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」
)は 2015 年 7 月 9 日付で、
新生債権回収&コンサルティング(以下「新生サービサー&コンサルティング」
)の不動産担保付商
業用ローン・スペシャル・サービサーとしての総合評価を「能力が極めて高い」に据え置いた。ア
ウトルックは「安定的」である。新生サービサー&コンサルティングは、新生銀行の完全連結会社
である。
新生サービサー&コンサルティングのサービサー評価は、主に以下の要因に基づいている。
• 不動産担保付商業用ローンのスペシャル・サービサーとして、有意な債権取り扱い実績を有して
いる。
*サービサー評価は当社が
• 経営陣、担当者ともに、豊富な業務経験を有している。
「関連業務」として提供する
• サービシングおよび関連業務に携わる主要社員の離職率が低い。
ものであり、
「信用格付」ま
たは規制の対象となる「信用
格付業」にはあたりません。
• 業務推進手順が明確かつ綿密に規定され、改訂や追加が適切になされている。
• 内部監査を堅実に実施している。
• 高水準の内部統制体制の維持と発展に継続的に注力している。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
• 社員向けの研修・教育内容が充実している。
• 業務運営を効率的にサポートできるように、コンピューター・システムが整備されている。
• データのバックアップ体制が整っている。
• 適切な災害時復旧計画が設定されており、システムの復旧テストも定期的に実施されている。
• 回収戦略(ビジネス・プラン)の策定過程が適切である。
• さまざまなリスクをカバーすべく、各種保険契約を締結している。
• 資金の管理方法が適切である。
• 委託者と投資家に対して、適切なリポーティングを実施している。
アウトルック: 安定的
新生サービサー&コンサルティングは、サービシング業務の効率性と生産性の最大化をめざし、サー
ビシング業務で使用する制定書式の整備促進や、社員研修・教育の拡充を進めている。また、高度なコ
ンプライアンス体制の維持と発展に継続的に注力している。経営陣および回収担当者は豊富な業務経験
を有している。
同社は、不動産担保付商業用ローンのスペシャル・サービサーとして、長年にわたり豊富な債権取り
扱い実績を有している。サービサーを取り巻くビジネス環境は厳しいものの、S&P は、同社が今後も一
定水準量の債権取り扱いを継続し、質の高い債権管理と回収を継続していくとみている。
プロフィール
新生サービサー&コンサルティングは新生銀行グループのサービサーであり、2001 年 10 月にビ
ーエムファイナンス <その後、新生銀ファイナンス(SGF)に商号変更> の 100%子会社である
ビーエム債権回収として設立された(2003 年 2 月、新生債権回収に商号変更)
。かつては新生銀行
の持ち株会社が SGF を 100%保有していたが、2004 年 1 月に、SGF は新生銀行の 100%子会社とな
った。2013 年 7 月 1 日付で、SGF は「新生インベストメント&ファイナンス」に、新生債権回収は
「新生債権回収&コンサルティング」にそれぞれ商号変更し、ともに新生プリンシパルインベスト
メンツ(以下「SPI」
)の 100%子会社となった。SPI は、2013 年 4 月に会社分割により SGF の融資
事業以外の事業を承継した、新生銀行の 100%連結子会社である。
新生サービサー&コンサルティングは、サービサー法(1999 年 2 月施行)に基づいて業務を行う
ことを目的に、2002 年 1 月、法務大臣から国内で 63 番目のサービサーとしての認可を取得した。
同社は、2013 年 7 月 1 日に組成された新生プリンシパルインベストメンツグループ(以下「新生 PI
グループ」
)を構成する4 社のうちの1 社である。
新生サービサー&コンサルティングの 2015 年 4 月 1 日現在の組織図を、図 1 に示す。在籍者数は、
役員8 名、社員52 名で、構成チームは図1 のとおりである(各チームの所属者数のうち、1 名はプラン
ニングチームと総務チームの兼務)
。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
組織と経営: 能力が極めて高い
経営陣と担当者の業務経験
経営陣、および不動産担保付商業用ローン・スペシャル・サービシング業務に関連する各チームの担
当者の業務経験は、以下のとおり。担当役員、主要業務担当者とも、以下のとおり、サービシング関連
業務において豊富な経験を有している。
サービシングチーム
• 担当役員は、約 42 年の業界経験(うち、約 24 年は不良債権関連業務)を持つ。
• 管理職は平均で、約 37 年の業界経験(うち、約 20 年は不良債権関連業務)を持つ。
• 主要業務担当者は平均で、約 26 年の業界経験(うち、約 13 年は不良債権関連業務)を有
する。
プランニングチーム
• 担当役員は、約 25 年の業界経験(うち、約 20 年は不良債権関連業務)を持つ。
• 管理職は平均で、約 27 年の業界経験(うち、約 10 年は不良債権関連業務)を持つ。
• 主要業務担当者は平均で、約 15 年の業界経験(うち、約 3 年は不良債権関連業務)を持ち、
サービシングチームの業務をサポートしている。
組織改編に伴う人員の変動はあるものの、各チームとも、業務遂行に影響を及ぼすような社員の離職
は発生していない。新生サービサー&コンサルティングは経営方針において、
「人材の育成」を明確に位
置付けている。S&P は、同社がサービシング業務にかかる適切な人材を今後も確保できると考えている。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
業務運営計画
新生サービサー&コンサルティングの短期・中期的な業務運営計画には、以下が含まれる。
• 事業再生や廃業に関する支援など、コンサルティング機能の活用により顧客実需に沿った
金融サービスの提供。
• 新生 PI グループの新分野への投資や融資の展開に伴う、サービシング業務への適切かつ柔
軟な対応。
• コンプライアンス体制およびシステムインフラの強化などを通じ、会社として確立してき
た信頼性の維持・継続。
• 有能な人材の育成。
新生サービサー&コンサルティングは、サービシング業務に関連して債務者にコンサルティング機能
を提供することで、他のサービサーとの差別化を図っている。S&P は、同社のサービシング実績に鑑み
て、上記業務運営計画は適切であると評価している。また、新生サービサー&コンサルティングがコン
プライアンス体制の発展やシステムインフラの強化を業務運営計画の重要事項の1 つと位置付けている
点も、プラスに評価している。
業務関連マニュアル
新生サービサー&コンサルティングは、サービシング業務を全般的かつ包括的にまとめた業務推進
手順を準備している。業務関連の主なマニュアルは、
「債権管理回収マニュアル」
「情報処理事務マニ
ュアル」
「回収金管理マニュアル」「業務受託マニュアル」
「預かり文書等保管管理手続きマニュア
ル」である。
• 各業務推進手順はすべてイントラネットで閲覧可能で、ハードコピーも入手できる。全従
業員が最新マニュアルにアクセスできる。
• マニュアルが新規制定または改訂された場合には、その背景、意図、内容等について研修
が都度行われ、従業員に周知されている。
• 新生銀行監査部立ち入りの内部監査、および内部監査担当である外部弁護士による内部監
査のもと、マニュアルの遵守状況が確認されている。
各マニュアルには、業務手順が分かりやすく記載されており、全従業員が業務に関する会社の考
え方などを理解する上で有効な手段となっている。S&P は、マニュアル類とそれらの改訂をイント
ラネットで公開することは、自社の実務や全般的な方針の更新を従業員に知らせる上で適切な手段
であると評価している。
検査・内部監査体制
新生サービサー&コンサルティングは事業の統合性と整合性を確保すべく、効果的なチーム内自主検
査と内部監査を実施している。
1) チーム内自主検査
2003 年 11 月に作成した検査ガイドラインに基づき、各事業チームは四半期ごとに、「規程マニュ
アル類の理解度」「事務フローとしての適合性」「牽制態勢」の観点から、自らの業務に関連する
事務リスクや管理リスク、ならびに一般的なコンプライアンスリスクについて相互検査を実施して
いる。検査結果は検査当日に公表され、被検査チームは検査日から 1 週間以内に改善策を総務チー
ムの管理責任者に提出する。管理責任者は改善策の内容を確認し、当該チームの責任者と協議した
うえで、改善策が実行されているかどうか、問題が解決されるまで毎月、確認する。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
2) 内部監査担当による監査
内部監査担当として外部弁護士1 名が、債権管理回収業に関する法令遵守体制、ならびにサービサー
法と関連法令の遵守状況に関する監査を行い、年 2 回、同社社長に報告を行う。2014 年 4 月と 12 月に
実施された監査結果では、特段の指摘事項はなかった。
3) 常勤監査役による業務監査
新生サービサー&コンサルティングの常勤監査役は、監査計画に沿って業務監査を実施し、業務
全体のリスク要因を特定する。年 2 回、取締役会に改善点や変更に関する提案の詳細を報告する。
被監査チームは、
報告で取り上げられた問題を解決するため、
できるだけ早期の対策が求められる。
2014 年 4 月と 10 月に実施された監査において、特段の指摘事項はなかった。
4) 新生銀行の監査部門による監査
新生銀行の監査部門によって 2 年に 1 回程度、監査が実施される。本監査により、経営陣と管理
担当者がそれぞれ適切な役割を果たしているか否かの確認、内部統制とコンプライアンスの分析、
事業リスク監査――などが実施される。監査結果の詳細は、代表取締役、取締役、監査役に報告さ
れる。不適切な点が発見された場合、早急に改善計画を提出しなければならない。2013 年 10 月か
ら 12 月にかけて実施された監査では、重要な問題は指摘されなかった。
新生サービサー&コンサルティングは 2005 年 3 月に、新生銀行の監査部と監査業務委託契約を
締結し、「親会社による関連会社の監査」という同監査の従来の位置付けを「外部監査・外部コン
サルティング」に変更し、監査体制をより客観的なものとした。その結果、経営予算管理、業務計
画の進捗状況、経営戦略、情報テクノロジーの分野も、監査の対象となった。
新生サービサー&コンサルティングの内部検査と監査は包括的なものであり、高水準の内部統制
体制の維持に寄与していると S&P はみている。
なお、新生サービサー&コンサルティングは、上記の検査・監査以外にも、以下の外部検査や監査
を受けている。
• サービサー法に基づいて法務省が実施する検査
• 監査法人トーマツが実施する会計監査
内部統制の拡充
新生サービサー&コンサルティングはここ数年にわたって、コンプライアンス体制拡充のために、
関連する社内規程、ガイドライン、およびマニュアル類を整備するとともに、社内研修を通じて、
社員に対してコンプライアンス意識の徹底を図ってきた。2006 年 6 月には、コンプライアンス関連
事項の統括を担う目的でコンプライアンス部(現コンプライアンスチーム)を設置し、各チームの
管掌業務にかかるコンプライアンス体制の整備と強化を図るために、チームごとにコンプライアン
ス担当のコンプライアンス・マネジャーを選任し、一層の法令遵守の推進、ならびに事務、システ
ム、労務、災害、反社会的勢力などに関連したリスク要因の掌握に注力している。加えて、同社の
兼業業務がサービサー法上、適切に運営されているかどうか、取締役弁護士とコンプライアンスチ
ームの担当者が重点的に検査を行っている。また、個人情報や顧客情報の管理体制の強化も図って
いる。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
2011 年度(2012 年 3 月期)には、1)コンプライアンス専門担当者を配置する、2)2011 年 6 月
に全国サービサー協会(以下「サービサー協会」)で承認された「債権管理回収業の業務運営に関
する自主規制規則」と「債権管理回収業の業務運営に関する自主規制規則ガイドライン」へ対応す
べく、社員への周知を目的とし、内容に関する研修を実施するとともに、サービシング業務におけ
る法令対応の基準として、同規則とガイドラインの内容を盛り込んだ社内規程「債権管理回収ガイ
ドライン」を制定する、3)取締役弁護士とコンプライアンスチームの担当者が検査担当者となり、
チームごとに終了案件を対象とした法定帳簿の検査および兼業業務の検査を実施する(2013 年 10
月以降、内部監査担当による業務監査に移行)、4)特定金銭債権に関する審査体制の強化および社
員向け研修を実施する―― など、内部統制の一層の拡充に注力した。
コンプライアンスチームは月次ベースでコンプライアンス・マネジャーを含めたミーティングを
開催し、社内のコンプライアンスの推進、検証、関連規程見直しの必要性を確認するとともに、各
チーム社員の指導と周知徹底方法などを検討する。コンプライアンス上発覚したリスク要因につい
ては、定例の取締役会において協議される。
新生サービサー&コンサルティングは、内部監査、個人情報保護、情報セキュリティー、コンプ
ライアンス等に関する包括的かつ具体的な規程を個別に制定している。また、「経営理念・経営方
針」「企業倫理憲章」「行動規範」を定め、従業員の行動規範に関する方針と規則を規定するとと
もに、全役職員に規範の遵守を求めている。
研修体制
新生サービサー&コンサルティングは、1)全体研修、2)社内研修、3)外部研修を 3 つの柱とし
て、一層の人材育成に注力している。
1)
全体研修: 新生 PI グループの社員を対象とした、総合的な人材育成および社会人 1 年目の新入
社員育成を目的とした研修。2014 年度(2015 年 3 月期)に実施した全体研修には、以下が含ま
れる。
•
新プロジェクト「Change300」に基づく研修(全社員を対象に外部コンサルタントによる面談
を行い、面談結果に応じて、営業スキルアップ、生産性向上などを目的とした研修を実施)
。
•
社会人 1 年目の新入社員を対象としたビジネス基礎研修、財務分析研修、および関連法規に関
する講義。
このほか、関連法令の改正に関する研修も適宜、実施されている。
2)
社内研修: 所属人員の業務知識の向上と情報の共有を目的とした社内研修を実施している。
2014 年度に実施した社内研修には、以下が含まれる。
•
コンプライアンスチームによる、LS アセットマネージャー検定(実践編)の対策として行
われたスクール形式での勉強会(各 1 時間×全 13 回)
3)
•
情報セキュリティー研修
•
法定帳簿研修
外部研修: 業務関連規制にかかる情報収集、専門知識の習得を目的として、社員に外部研修へ
の積極的な参加を奨励している。2014 年度に社員が参加した外部研修には、以下が含まれる。
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•
サービサー協会が主催する各種研修
•
監査法人や金融機関などの外部ビジネスパートナーとの共同勉強会
2014 年度の社員 1 人当たりの年間研修時間は、サービシングチームとプランニングチームでは約
23 時間であった。同社はオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)制度を導入しており、本研修とは
別に OJT での指導が行われる。研修内容の理解度の向上を図るために、研修後、参加者にディスカッ
ションの機会を提供したり、必要に応じて小テストを実施することもある。S&P は、1)新生サービ
サー&コンサルティングが業務を取り巻く環境の変化にあわせた研修を実施していること、2)各
種研修は、社員がサービシング業務に必要な知識や能力を高める上で有効に機能していること
――を評価している。
業務サポート・システム
サービシングチームは主要サービシング・システムとして、
「スペシャルサービサーシステム
(SSS)
」を活用している。新生サービサー&コンサルティングは創業以来、投資家や委託者をはじ
めとする関係者のニーズおよび市場環境の変化を意識し、セキュリティーの高度化などを含め、継
続的なシステムのアップグレードを図ってきた。
SSS は、主として以下の役割を有する「メーンシステム」と 3 つの「サブシステム」で構成され
ている。
1) 債権の管理回収を担うメーンシステム
債務者、ローン、担保、保証人等の受託対象債権に関する基本情報、投資家から引き継いだア
ンダーライティング情報等、債権管理に必要な情報データを維持するとともに、法定帳簿の作
成、日々の債権状況のモニタリング、回収戦略(ビジネス・プラン)の作成機能など、スペシ
ャル・サービシング業務を遂行するための基本機能を有し、
サブ・パフォーミング・ローン
(SPL)
債権やパフォーミング・ローン(PL)債権の管理にも使用されている。
2) すべての資金移動をトレースする入出金システム
メーンシステムで管理しているすべての債権関係の入出金、投資家から管理を委託された口座、
新生サービサー&コンサルティング自らの口座におけるあらゆる入出金を把握するシステム。上
記メーンシステムにも、必要に応じて情報を提供している。入金伝票の自動作成機能も有する。
3) 新生サービサー&コンサルティングのサービシングフィーの管理システム
サービシングフィー全体を管理するシステム。特別目的会社(SPC)ごとに、ポートフォリオ
単位で、マネジメントフィーやコレクションフィーなどフィーの種類別に、サービシングフィ
ーの算出ができる。各種フィーの明細が記された請求書を自動作成する機能を有する。新生サ
ービサー&コンサルティングの立替金の精算管理を行うとともに、未収伝票だけでなく、SPC
からの要請に基づいて SPC サイドの未払い伝票なども作成できる。
4) 経理システムと連動する会計インターフェースシステム
各サブシステムにて作成された仕訳データを収集し、会計システムにデータをアップロードす
るシステム。入出金システムと本システムのデータを日締めで照合することで、処理漏れ防止
を図るとともに、連結会計の即日報告を可能にしている。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
2010 年 7 月より変更実施された「債権回収会社の審査・監督に関する事務ガイドライン」につい
ては、システム面でも対応している。
各システムの操作は容易で、直観的なオペレーションが可能で、かつ包括的で分かりやすいマニ
ュアルも用意されている。
新生サービサー&コンサルティングは毎週、SSS 会議の席で業務の効率化や正確性の向上などを
協議し、その結果を機能やユーザビリティーの向上につなげることを目的として、システムの継続
的な改善にも注力している。
なお、SSS は、日立システムズと共同開発されたシステムである。同システムの機能は、業界他
社向けのパッケージ商品として販売されている。
S&P は新生サービサー&コンサルティングのシステムが、回収担当者および意思決定者のサービ
シング業務を効率的にサポートしていると評価している。
システムのバックアップおよび災害復旧計画
サービシングチームにおけるサービシング業務には、前述のとおり、
「スペシャルサービサーシ
ステム(SSS)
」と呼ばれるコアシステムを使用している。
同システムのもと、深刻なシステム障害が発生した際には、専門の IT スタッフが即時に対応で
きる体制を敷いている。
すべてのデータは日次と月次で、
「LTO」
(Linear Tape-Open;磁気テープを利用した大容量記憶
装置の一種)によってバックアップされている。LTO に記録されている日次と月次のデータはデ
ータ保守の専門会社が管理しており、地盤が固く安全性が高いとされる場所に保管されている。
月次データは新生銀行の基準に従って保存される。さらに、追加のスタンバイ・サーバーも準備
している。コンピューター・システムの容量は、事業負荷が現在の数倍まで急増しても十分対応
可能な水準を維持している。
新生サービサー&コンサルティングは、災害に備えた包括的な災害復旧計画を制定し、災害発
生時に備えて責任者を任命するとともに、各従業員の取るべき行動をマニュアルで規定している。
緊急時の電話連絡網が整備され、
各従業員に配布されている。データセンターは大阪に設けられ、
災害が発生した場合には、保管データを用いることで業務を復旧できる。
2007 年 3 月には、業務システム全体を、グループ会社の新生インフォメーション・テクノロジーが
管理する「新生 LAN」に移設した。この移設に伴い、サーバーも、より安全性の高い、新生銀行グル
ープ全体のシステムを管理している別の場所に移された。データベースは「クラスタ化」され*、よ
り障害に強く、安定性のある環境をユーザーに提供している。システムの復旧テストは直近では 2015
年 2 月に実施し、想定どおりに復旧できることを確認している。
*常用のサーバーで障害が発生した場合、待機用サーバーが自動的に起動し、業務を継承する。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
新生サービサー&コンサルティングは災害発生時にも比較的短時間で主要業務を再開できると、
S&P はみている。災害復旧の確認テストは、これまでおよそ 1 年から 1 年半ごとに、適切に実施
されてきた。S&P は今後も、復旧テストの継続とバックアップ・サイトを活用したテストの実施
などを確認していく。
保険契約
新生サービサー&コンサルティングの業務は、新生銀行グループの団体保険でカバーされてい
る。現金や有価証券証書の窃盗、従業員による違法行為、コンピューター関連犯罪などが対象と
なる契約では、最高 50 億円まで補償される。顧客に対する過失、過誤、不作為などによる損害賠
償も 50 億円まで保険でカバーされている。
訴訟関連
現在、新生サービサー&コンサルティングの経営に重大な影響を与えるような訴訟はない。
債権管理回収能力(スペシャル・サービシング): 能力が極めて高い
不動産担保付商業用ローンのスペシャル・サービシング業務は、サービシングチームで遂行さ
れる。
債権取り扱い実績
サービシングチームにおけるスペシャル・サービシング業務の取り扱い実績を、表 1 に示す。取
扱債権の主体は、新生銀行グループが購入した不良債権であるが、新生サービサー&コンサルティ
ングは、受託債権を債務者からの入金の確度に応じて、1)ノン・パフォーミング・ローン(NPL)
、
2)サブ・パフォーミング・ローン(SPL)
、3)パフォーミング・ローン(PL)に分類している。
S&P は、提出された資料をもとに過去 5 年間の回収実績と回収目標額を比較し、新生サービサー
&コンサルティングが委託者の求める水準の回収をおおむね達成していることを確認している。
表 1 サービシングチームにおけるスペシャル・サービシング実績
(単位:百万円、件)
ノン・パフォーミング・ローン(NPL)
2012 年 3 月期
債権残高(期末)
回収件数
回収額
当年回収手段別内訳
金額
2013 年 3 月期
2014 年 3 月期
2015 年 3 月期
110,860
88,342
80,022
63,055
2,290
1,332
835
933
11,323
12,839
5,396
2,305
件数
金額
件数
金額
件数
金額
件数
債権譲渡
1,473
293
2,239
146
817
8
580
179
約定弁済
1,754
989
907
393
224
191
166
195
任意売却
4,890
51
5,012
39
3,043
16
194
9
886
15
744
14
779
30
290
21
580
競売
DPO
任意弁済
その他
46
1,109
23
268
34
3
10
1,544
596
2,716
585
211
456
1,035
477
195
300
113
132
53
100
37
42
(続く)
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
表 1 サービシングチームにおけるスペシャル・サービシング実績 (続き)
(単位:百万円、件)
サブ・パフォーミング・ローン(SPL)
2012 年 3 月期
債権残高(期末)
回収件数
回収額
当年回収手段別内訳
金額
2013 年 3 月期
2014 年 3 月期
2015 年 3 月期
80,317
105,757
92,621
8,183
7,484
6,872
3,992
14,492
15,895
15,653
20,804
件数
金額
件数
金額
件数
35,326
金額
件数
債権譲渡
2,536
35
6,454
42
24
10
10,779
269
約定弁済
3,863
7,061
3,925
6,696
2,558
5,452
1,772
2,744
任意売却
1,650
23
332
10
2,183
22
1,078
22
競売
0
0
0
0
0
1
33
5
DPO
3,146
48
1,664
26
1,049
31
1,005
30
任意弁済
3,284
992
3,505
684
9,826
1,331
6,124
906
13
24
14
26
13
13
16
その他
25
パフォーミング・ローン(PL)
2012 年 3 月期
債権残高(期末)
回収件数
回収額
2013 年 3 月期
金額
2015 年 3 月期
47,839
38,375
29,854
6,096
6,027
5,455
4,421
24,841
当年回収手段別内訳
2014 年 3 月期
38,412
件数
18,683
金額
件数
32,169
金額
件数
25,602
金額
件数
債権譲渡
4,683
26
1,709
16
1
2
4,384
87
約定弁済
4,071
5,670
5,831
5,679
11,174
5,258
2,092
4,161
任意売却
2,533
33
722
21
454
13
64
5
競売
490
10
131
2
0
0
0
0
DPO
1,463
36
147
15
163
11
0
0
11,597
281
9,624
236
19,874
136
18,538
119
4
40
518
58
504
35
524
49
任意弁済
その他
担当者の受け持ち債権
サービシングチームにおいて、受け持ち債権は、各回収担当者の業務に関する専門知識、業務負
荷などを考慮のうえ、管理職により割り当てられる。2015 年 3 月期末時点で、回収担当者は 1 人当
たり 120 件前後の債務者を受け持っているが、相応に負荷がかかる債務者数は約 70 件である。
回収担当者の役割には、サービシング契約と社内規程に準拠しつつ、任意弁済、担保権実行、任
意売却、債権譲渡、DPO(Discounted Pay Off)
、ローンの売却などを通じて、債務者と物件からの回
収の現在価値を極大化することが含まれる。
回収戦略(ビジネス・プラン)の策定
各回収担当者は担保物件と債務者のデータ(キャッシュフローなど)や情報(支払い履歴、特に
考慮すべき事項など)を分析した上で、債権の管理・回収について「アセット・ビジネス・プラン
(ABP)
」を策定し、必要に応じて他の可能な回収方法も考慮する。ABP は通常、債権のポートフ
ォリオの管理・回収を引き受けてから 90 日以内に策定される。
ABP は、社内の協議会に上程され、サービシングチーム、プライシングチーム、プランニングチ
ームの各責任者(シニアオフィサー)の承諾を得て決定される。ABP 遂行の際は、サービシングチ
ームの管掌役員の承認が必要である。適切な回収が継続されるように、ABP は種々の社内規則に基
づいて、必要に応じて見直される。
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
S&P は、新生サービサー&コンサルティングの回収戦略の作成およびモニタリングは適切に行わ
れていると評価している。
システムへのローンデータの登録とチェック体制
システムへのローンデータの登録は、プランニングチーム主導で、以下の過程を経て実施される。
1)
新規案件担当者が受託案件に関する「オペレーションシート(OS)
」を作成する。
2)
シニアオフィサーは内容を確認のうえ、
承認する。
OS はシステム登録担当者に回付される。
3)
システム登録担当者は、専用ツールを活用して、必要なデータを SSS に登録する。
4)
シニアオフィサーが適切な過程を経て登録が実施されたことを確認すると同時に、新規案
件担当者は再度、登録内容を検証する。
S&P は、システムへのローンデータの登録と検証が適切に行われていると判断している。
資金管理
新生サービサー&コンサルティングが受託している案件において、回収金は基本的に委託者名義
の口座に直接入金される。委託者口座の管理は、親会社である SPI が行っている。新生サービサー
&コンサルティングは、回収金を以下の要領で管理し、関連データを SPI に引き渡す。
1)
プランニングチームでエレクトリック・バンキング(EB)を通じて取得した入金データを入
出金管理システムに取り込み、SSS に登録されている入金データと自動マッチングさせる。
2)
サービシングチームは SSS を活用して、入金データをベースに、回収事由、元利金内訳な
どの項目から成る回収実績表を作成する。
3)
SSS で回収金の入金処理を完了した後、プランニングチームが会計データを出力し、SPI
に送付する。
4)
競売配当金など、新生サービサー&コンサルティングの口座に入金される回収金について
は、毎月 1-2 回、定期的に委託者への送金を実施している。
S&P は、新生サービサー&コンサルティングは効率的かつ適切に資金管理を実施していると評価
している。
投資家へのリポーティング
投資家向けリポートは、プランニングチームが SSS を活用して作成する。現在、主要な投資家で
ある新生銀行に対しては、以下の 2 種類のリポートが作成されている。
•
週次リポート: サービシングチームの各担当者が週次で入力する回収の進捗状況、担保処
分状況、債務者の業態悪化報告などを取りまとめたもの。
•
月次リポート: ポートフォリオごとに、債務者単位での回収実績、担保処分状況、債務者
ごとの特記事項などを取りまとめたもの。
S&P は SSS の汎用性の高さを評価しており、第三者からの受託が将来的に拡大しても、投資家
や委託者の求める水準に十分に応じたリポートを作成することは可能であると考えている。
スタンダード&プアーズ
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
不動産仲介業者の利用
新生サービサー&コンサルティングは各地域の不動産仲介業者の幅広いネットワークを持って
おり、担当者はそれを利用して、物件と土地の適正な市場価格の情報を入手できる。これまでに 100
社程度の不動産業者を活用してきた。
第三者への業務委託
新生サービサー&コンサルティングは、有価証券・債権証書類の保管と収納代行業務に関して外
部業者に業務委託をしている。業者選択の際は、特に、業務の継続性、コンプライアンス体制、事
故が発生した場合の保証能力などを重視している。
財務信用能力: 懸念なし
S&P は、新生サービサー&コンサルティングの財務信用能力について、特段の懸念はないと判断
している。
関連評価規準と関連リサーチ
関連評価規準
2009 年 4 月 22 日付「サービサー評価規準:セレクト・サービサーの規準を変更」
2004 年 9 月 21 日付「Servicer Evaluation Ranking Criteria: U.S.」(英語版のみ)
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新生債権回収&コンサルティング株式会社
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