今ここ、これから小学校社会科・ESD を鳥の眼で観るために

カリキュラムデザイン曼荼羅 (2015.9.30) 場所:T 立第一小学校
作成者: 成田喜一郎
研究主題 「児童の問題解決力を育むための教科における活用型学習の充実:問題意識を持って物事を見、情報を整理し、まとめることができる子(5年)」
小単元「これからの食料生産とわたしたち」
事前の学習指導案分析・授業参観・研究協議後コメント:成田喜一郎(東京学芸大学教職大学院)
●明日の実践へ●
結
③ 深い振り返り「ハイパー・メタ認知法」を体験する
② 魚の眼で流れをイメージする
起
○ ハイパー・メタ認知法(創作構成物を創り、その解題を書く)を体験する
○ 自己紹介:成田喜一郎(中学校→大学院の教員:つながりつりあいつつみこみつづく教育)
① お好きなおりがみを1枚選んでください。
○ カリキュラムデザイン曼荼羅とは何か:その構成と書き方について触れる
② 本日の学びの事実+あなたの想像力等→創作構成物を書く
○ E.Q,Goal,KWs を確認する
③ 創作構成物=空白、漢字1字、俳句・短歌、キャッチフレーズ、詩、イラスト等形式は自由
○ 本日の重要概念:ひろがりつながる問い、 深い振り返り、学習財(教材)研究の確かさ
④ なぜ、その作品を書(描)いたのか、理由や根拠を書く(論理と証拠を示す)
⑤ 3人〜2人でシェアする(回覧・コメントし合うといい)
食のトレーサビリティ
(アクティブ・ラーニングの危うさと再定義の必要性)
○ 本日の授業参観・研究協議について、深い振り返り体験(ハイパー・メタ認知)をする
◉今ここ、これから小学校社会科・ESD を鳥の眼で観るために
[本 質的 (で根 源 的)な問 い Es sential Q ues tions] ①or⑥ T 一小の子どもたちと先生方との出会いを通して、どんな問いや気づきがみつかるのか?
[ゴー ル(ね らい/ ねが い )Goal] ① 本日の授業と事後協議から、教科・領域を越境し横断・縦断するつながりに気づき、我が事として明日につなげる
[キーワ ード Keyw ords] ⑥ 「探 Q・愛 Q・レス Q、生 Q・創 Q」 「振り返りの多様性」 「本時・単元等の実践記録を書くということ」 「その他(今ここで)」
○ 反省の会 feed back から省察・観想の会 feed forward へ
・過去=現在の記憶・記録、未来=現在の期待・希望、現在は、過去と未来の結び目
○ 新しい授業分析の基本「8つの窓」(基本編)
*コルトハーヘン 2010
・①何をしたかったのか? ②何をしたのか? ③何を考えたのか? ④どう感じたのか?
主語は、子どもたち(その子)、わたくし(授業者) 4つ×2=8つの窓から授業を眺める
○ 教師(学習者/学修者)の学びと暮らしのヒストリー、「旅の途中」今ここから認識を持つ
・教科・領域、生活を越境する横断的(横軸・空間)、縦断的(縦軸・時間)なカリキュラム
○ 教え方・学び方、活動など方法知の流行、内容知の質=珠玉の「学習財」研究への注目
・子どもも教師も「問い」を探し、抱え愛し、応答し続け、新たな問いを創る契機=「学習財」
転
④ 達し至ったカリキュラムを読み解く:子どもと授業者のための評価・課題の発見分析
○ 思い願いのカリキュラム=学習指導案:教師の思い願いの言語化・可視化としての重要性!
○ 今ここをゆくカリキュラム=実際の授業展開:子どもたちと先生とのかかわりから読み解く
・問いに自分事として向かい合えたか:考える=「何(カ)、向かえる」ための要素は何か?
・問いと応答を引き出す珠玉の「学習財」はあったか?
・それを引き出す方法はどうだったのか:課題発見・解決のための主体的で協働的な学び?
・学びの深いふ振り返りはできたのか:決別と挑戦、深い振り返りへの可能性はあったか?
○ 子どもたちの知・心と身体を架橋・往還(連動)する学びをめざせたか?
・認知(大脳新皮質、左脳)・情動(大脳辺縁系、右脳)・感覚運動(脳幹)に働きかけること
○ 学習財・他者・自己との「対話」はあったのか:愛・謙虚さ・信頼・希望・批判的思考(C.T.)
⑤ プランから足跡へ、カリキュラムを読み解く:計画分析から実施分析へ
中野民夫創案・三田地真実考案の「プログラムデザイン曼荼羅図」を筆者がデジタル仕様の「カリキュラムデザイン曼陀羅」とし、また、新しい教育学的知見をもとに「定義・描き方」を付けたワークシートである。
承
「カリキュラムデザイン曼陀羅」の定義と描き方(2015 改訂版)
(1)定義
この「カリキュラムデザイン曼陀羅」は、たった 1 枚で単元 or 本時の授業を鳥瞰・俯瞰でき、常にねらい/ねがいや本質的(で根源的)な問い Essential Question =E.Q に守られながら、授業を構成し展開できるところに特色と
可能性がある。デザインの語源は、「“計画を記号に表す”ことを意味するラテン語の designare で、これから敷衍(ふえん)すると、デザインとはある目的に向けて計画を立て、問題解決のために思考・概念の組み立てを行い、それを可視
的・触覚的媒体によって表現・表示すること」(福井 1978)である。まさに、デザイン Design とは、印(道)sign 無きところに印をつけていくという行為である。「カリキュラムデザイン曼荼羅とは、まさに、前人未踏の時空間・人間(じんかん)
に自らが「ねらい/ねがいの達成/実現に向けてプランを練り、様々なレベルの《問い(問題や課題)》の解決に迫るための思考と概念化のプロセスを構想し、それを図式化・可視化し表現したものである」と定義しておきたい。(成田)
なお、この「カリキュラムデザイン曼陀羅」は、プランニングシートとしての活用以外に、カリキュラムの実施・実践の記録のためのシートにも援用できる。
*福井晃一(1978)『デザイン小辞典』ダビッド社、p.186
(2)描き方 (描く順番に注意:ウィギンズ&マクタイの「授業の逆向き設計論 backward Design」を援用し、ゴールを見据えて終結から逆向きに書くこと。Outcome-based curriculum)
①はじめに、中央の枠内に「本質的(で根源的)な問い E.Q」、単元 or 本時の「ゴール(ねらい/ねがい)」を書く。特に「本質的で根源的な問い E.Q」は柔軟に設定し運用する。
□「本質的(で根源的)な問い E.Q」とは、答えは一つではなく多様で、本時を超えて永続的な理解や思考を促す問い、学習者と共に授業者も考え続けていきたい問いである。
□「本質的(で根源的)な問い E.Q」は、授業の展開過程を考えたり実践したりすることによって、授業中や授業後に創成・生成されてくることもある。その場合、当初は空欄になる。
②次に、「起」単元 or 本時の評価規準・身に付けたい力や価値観・単元を貫き超える概念を設定し、各時の主題・評価計画・(
)時間扱いを書く。
・本時の1時間は、単元(Unit)のねらい(規準)や展開のどこに位置付いているのか、虫の眼、鳥の眼、魚の眼(流れ・文脈への視点)で見ておくこと。(俯瞰の重要性)
・多様な評価方法を選択できる評価計画も考えておく。(初めて単元に入る第1時に、評価規準・基準票=ルーブリックを学習者に提示するとよい。まさに、ここが逆向き設計の醍醐味である。)
③そして、「結」の部分から逆向きに書く。(まず、ねらい/ねがいや E.Q を踏まえて、授業の「終結」=本単元 or 本時のゴールをイメージすること)
・学習者は何を学んだのか、何を行ったのか、振り返り方法の選択。(「振り返り」の方法の選択。A:キーワード&コメント法、B:「自己変容」・「他者との関係性」の2点法、C:「5つのつけもの」法、D:「ハイパー・メタ認知」法)
・A:略,B:「本時・本単元の学びで自己・他者について新たな気づきは何?」,C:本時・本単元の学びを位置づけ・関係づけ・意味づけ・価値づけ・方向づけ」,D:学んだ事実+想像力→多様な創作構成物、その解題(理由・根拠)を書く
④さらに、単元 or 本時の「転」部分を書く。(「結」につながる授業の「展開」をイメージすること)
・本時のねらい/ねがい(あるいは E.Q)にレスポンス(応答)する学習活動をイメージする。
・山場に至るに必要な知識・概念・スキルを確認する。(導入と山場の狭間の地道な道、すなわち知識や概念・スキルはいったい何なのか。それは、既知か今ここでの習得なのか)
・授業の山場をめざす。(問いや謎を解く、盛り上がる場面を具体的にイメージすること)
⑤最後に、単元や本時の「承」を書く。(ねらい/ねがい=ゴールや E.Q をめざし、転・結につながる、授業に引き込み巻き込むものやこと、ひとは何か、選択する) 以下、導入スタイルの多様性を示す。
・予想だにしない「もの」「こと」「ひと」の提示:「えっ?何?それ?」と気持ちや関心を集注(一点に集め注ぐ)させる方法等、適切な方法を選択する★★★(中2理科:雲って何だろう、雲とわたしとのつながり → 雲はなぜできるのか)
・本時のねらいや評価規準:到達点をイメージさせるか(逆向き設計上の正攻法)★★
・前時の振り返り:つながりを想起させる時間とするか(単純正攻法)★
・世間話や雑談:広義の時事問題や他愛無い話への興味・関心を引くか、授業規律への注意で引き締めるか(本時の内容との関連性の強・弱)★
⑥この「カリキュラムデザイン曼陀羅」のあとに、「教材(学習財)研究」の過程で収集した資料、授業使用したい「資料やプリント」や「板書計画」などを添付したい。(出典の明示。可能な限り原典に当たること)
●但し、授業は生きものである。逆向き設計のプラン(デザイン)であるにしても強引な展開は禁物。授業は、今ここで学習者とあなたとの関係性の中で創成・生成されるものである。
●なお、この「カリキュラムデザイン曼陀羅」は、授業(講義・講演)の記録シートとしても活用することができる。つねに、その授業のゴールや E.Q を予想・考察しながら、記録してゆくとよい。
●また、このシートがなくても、A4 判・無地の用紙の中央にゴールと E.Q を書く覧を書き、実線で 4 象限に区切り、デザインしたり、記録をとったりすることができる。 「カリキュラムデザイン曼陀羅」に関するお問い合わせ先:東京学芸大学大学院教育学研究科教育実践創成講座〔教職大学院〕成田喜一郎([email protected])までどうぞ。