Diaper with cushion buttock 人工臀筋式便袋付

© 2014 Japan Geriatrics Society
Geriatrics Gerontology International 2014;14:233-235
Diaper with cushion buttock
人工臀筋式便袋付紙おむつ
Atsuko Satoh, Masahiko Fujii, Yoshiko Toukairin,
Mutsuko Kajiwara, Sachiko Satoh and Hidetada Sasaki
Sendai Tomizawa Hospital, Sendai, Japan
仙台富沢病院
佐藤厚子 藤井昌彦 東海林よしこ 梶原むつこ 佐藤さちこ 佐々木英忠
はいせつ
要介護高齢者において、排泄処理のためにおむつは広く利用されているが、取り分け便失
禁の処置は、患者と介護者にとって悩みの種になっている。おむつは、排便後できるだけ早く
交換する必要があるが、要介護高齢患者においては、介護者に排便したことを知らせることが
困難な場合がある1。また、介護者不足も便失禁の適切な処置に対する制約になっている。便
え いんぶ
や尿が長時間にわたって会陰部に触れることは、患者に不快感を与えるだけでなく、びらん、
じょく そ う
でんきん
せんこつ
褥 瘡、尿路感染など悪影響をもたらす 2。さらに、患者における臀筋の減少は、会陰部、仙骨
部周辺の褥瘡発生を助長する。今回の研究では、会陰部周辺に大きな袋(便袋)をつけた新
じんこうでんきん
型おむつを開発した。この新型おむつは、減少した臀筋を補う人工臀筋クッションによって支
えられ、排泄物の直接的な汚染から切り離すことができ、さらに人工臀筋クッションは、会陰部、
仙骨部周辺の褥瘡発生を抑えることができる。
図 1a に人工臀筋クッションを示す。円形で厚さ 6cm、外寸縦 32cm×横 34cm で中心部に長
さ縦 26cm×幅 13cm の穴が空いている。長時間快適に患者の臀部に装着できるように 3 種類
の異なるスポンジを組み合わせてできている。クッションの前部と後部は、仙骨部周辺の除圧
のために薄くした(厚さ 3cm)。体重 50kg の人が乗って圧縮されても、約 2cm の厚さが残るよう
に考慮した。人工臀筋クッションは、薄い防水性のカバーで覆われており、洗濯のためにファ
スナーで取り出せるようになっている(図 1b)。クッションカバーには前立てと左右に開くベルト
が付いている。図 1c に便袋付紙おむつを示す。おむつの中心に 28cm の長さの切れ込みを
縦方向に入れ、内部に吸水性があり、外部は防水性のある容量約 500ml の便袋を付けた。便
袋付紙おむつを人工臀筋クッションに装着する(図 1d)。人工臀筋クッションに装着された紙
おむつの穴は、最終的に縦 24cm×横 11cm×深さ 5cm になり、便袋が肛門からズレないよう
ぎょうが い
にカバーで固定する(図 1e)。人工臀筋クッションに装着された紙おむつを、仰臥位(あお向け)
で寝ている患者の臀部の下に挿入し、患者を横向きにし、反対側からおむつを引き上げること
により会陰部の位置に調整する。肛門と便袋の位置にズレがなければ、問題なく便袋の中に
排便できる。尿に対しては会陰部前面に 12cm×30cm の尿取りパッドを併用する。おむつを所
い
す
定の位置に装着した後に、ズボンをはかせて椅子またはベッドに移動する。
おむつ内の便の分布を新型おむつ(人工臀筋式便袋付紙おむつ)と従来のおむつで比較
した。酸化マグネシウム、ビフィズス菌、センノシド、またはこれらの薬の組み合わせを利用して
ゆだ
排便させた3。これらの便秘薬の処方については、組織的ではなく医師の選択に委ねられた。
かんちょう
2〜5 日間の便秘に対し、ラキソベロン、テルミンソフトまたは浣腸を用いた治療後、新型おむ
つ、従来のおむつで座位、仰臥位での排便の様子を観察した。仙台富沢病院に入院している
25 名の重度の認知症患者(女性 16 名 男性 9 名、年齢 82±7 歳、MMSE 7±5)で検討した
4
。すべての患者に対し、精神障害の診断と統計の手引き第四版【Diagnostic and Statistical
Manual of Mental Disorders, Fourth Edition (DSM-Ⅳ)】に基づいて、認知症の診断を行った
5
。すべての患者は、寝たきりまたは車いす生活で、単独でまたは介護者の支援で食事を取る
ことができた。チアプリド塩酸塩(25mg)、ドーパミン D1 拮抗薬を必要に応じて処方した。患者
は、乱数表を使用して新型おむつ群(n=12、年齢 83±8 歳)と従来のおむつ群(n=13、年齢
81±7 歳)に無作為に割り当てた。今回の研究の詳細を説明した後、書面での告知に基づく
同意を、参加者または家族から得た。
患者の約 40%において、1 日 1 回の排便があり、5日以内ではすべての患者において排便
が観察された。新型おむつでは、おむつの便袋の入口周辺、肛門周辺に少量の便汚染が見
られたが、すべての患者で便袋内に排便された。これに対し従来のおむつでは、おむつ内の
広範囲に渡って排泄された便が広がり、会陰部(女性の尿道口を含む)や仙骨部周辺まで便
す い よ うべ ん
汚染が観察された。従来のおむつ使用者の中で、下痢(水様便)だった一人の患者ともう一人
の患者で、大量の便が排泄され、おむつの外に漏れ出てしまったが、新型おむつでは、一人
の下痢の患者で、漏れ出すことなく便袋内に排便された。尿については、尿取りパッドまたは
袋のいずれかで吸収された。新型おむつの連続使用時の人工臀筋クッションに違和感、不快
感を訴えた患者はいなかった。2人の患者において、新型おむつを連続使用後、それぞれ
1 ヵ月後(男性 82 歳)、6 ヵ月後(女性 89 歳)、仙骨部周辺の褥瘡が治った。
我々は、寝たきりや車いす生活の要介護患者のために有用な新型おむつを開発した。非常
に多くのおむつが使用されており、ほとんどのおむつは尿を吸収するように工夫されている。こ
れまで、会陰部から大便排泄物を分離するおむつは開発されていない。従来のおむつと比べ
ると、人工臀筋クッションと新型おむつを患者に装着する際に、患者を横向きにするなど手間
がかかるが、利点は便の排泄後の会陰部周辺の処理労力の軽減、褥瘡の緩和をすることであ
る。人工臀筋クッションは、患者の衰えた臀筋を補い、ベッド上で腰を比較的平らに保ち、患
てんたい
者を仰臥位から 20〜30°転体させるときにも支障はほとんどない。今回は、限られた時間、限
られた患者での大便が便袋にどのように排泄されるか観察するための予備的研究である。今
後の課題は、さまざまな患者に対し長時間の人工臀筋クッションを使用し、制限事項を理解す
る必要がある。新型おむつは、通常のズボンの下に着用できるほど小さく、従来のおむつと同
様に使用することができ、先進的な利益を有するものである。
開示説明書
利益相反がないことを宣言します。
a
b
c
d
e
図1
a:人工臀筋クッションは、衰えた臀筋を補うために、3 つの異なる硬さのスポンジで構成されて
いる。
b:人工臀筋クッションのカバーは、左右両側と前立ての部分に粘着面がある。
c:新型おむつは従来のおむつの中央部に長手方向に切込みを入れて、吸水紙内臓の容量
500ml の袋をつけた。
d:便袋付おむつは、人工臀筋クッションに装着される。
e:人工臀筋クッションカバーの外面は丸くて滑りやすくなっている。
引用
1. Fujii M, Ohrui T, Sato T, Sato T, Sato N, Sasaki H.Greentea for decubitus ulcer in
bedridden patients. Geriatr Gerontol Int 2003; 3: 208–211.
2. Fujii M, Sato T, Ohrui T, Sato T, Sasaki H. Interanal stool bag for the bedridden ekderly
with pressure ulcer. Geriatr Gerontol Int 2004; 4: 120-122.
3. Takahashi M, Shirai S, Sawayama C, et al. Constipation and aspiration pneumonia.
Geriatr Gerontol Int 2012; 12: 570-571.
4. Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR. Mini-Mental State: a practical method for
grading the cognitive state of patients for the clinician. J Psychiatr Res 1975; 12: 189198.
5. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders.
Fourth Edition. Washington DC: American Psychiatric Association; 1994.
【日本語訳 株式会社ユニケア】