ナミブ砂漠にライオンを追う 南アフリカのランドクルーザー・クラブを取材していて、このクラブが 募金活動をしてライオンの保護活動をする NGO にランドクルーザーを寄 付したという話を聞いた。特別装備が施されたスペシャル・ワークホー スを取材すべくヨハネスブルグからナミビアへと飛んだ。 ▲ ステアリングのパッドははずされ、ライターや筆記具のホルダーに。この 写真を見たトヨタの開発担当者は「ここまでやりますか…」とひとこと。 座 席はドライバー席のみ。それ以外のスペースには金属製の棚が組まれ、ペリカ ン・コンテナに入れられた装備が所狭しと積まれている。 ▼ 屋根には擬似音でライオンをおびき寄せる巨大なスピーカーが。最新の装 置だ。ボディには「調査用車両 - 追随禁止」とある。博士の車両は一般車が入れ ない地域へも入っていくことができる特別な許可が与えられている。 海岸砂丘でライオン保護に活躍する ランドクルーザー・ピックアップ 「デザート・ライオン・コンサベーション」と名付けられた スタンダー博士の活動は、ナミビアのナミブ砂漠北部のクネ ネ地方に生息するライオンを保護することを目的としてい る。この地域には世界でも珍しく、砂漠気候に適合したライオ ンが多数生息する。最近は家畜の放牧を行う農家との摩擦や、 ハンティングの影響で殺されるライオンの数が増えてきた。 ナミビアのライオンは観光資源としても重要なため、人間と の共存共栄が必要と 1998 年から保護活動に必要なライオン の生態調査を始めた。主要な個体には電波を発信する首輪な どがつけられ、毎日モニタリングしている。ライオンは夜行性 のため博士の日常も夜はリサーチ、昼は車の脇で寝るという スタイルだという。 博士は当初、ハイラックスを使っていたが老朽化したので 代替車を探していた。2007 年 12 月、博士と偶然に近い出会 いをした南アフリカのランドクルーザー・クラブ・サザン・ アフリカ (LCCSA) のメンバーがこの話をクラブに持ち帰り、 募金活動を行うことが決まった。 2008 年 2 月に募金活動が実際に始まり 3 月末までに 140,000 ランド ( 約 170 万円 ) が集まった。WWF-Life から の資金や南アフリカトヨタからの寄付金を含めた資金で同年 4 月末に 2004 年モデルの FZJ79RP が購入された。 すでにダブルキャブに改造されていたピックアップにはク ラブメンバーの手でさらに装備が追加された。6 月下旬に引 き渡し式が行われ、7 月 1 日より調査活動に使用され始めた という。 ▲ デザート・ライオン・コンサベーション・プロジェクトのフィールド車両、 2004 年モデルの FZJ79RP。博士は燃費は悪いが、ガソリンエンジンにこだわ る。ライオンに近づいて調査するためにはエンジン音が少しでも小さくなく てはいけないからだ。周囲の砂丘の色に溶け込ませるため、3 年間一度も洗 車していない。深い砂が多いのでタイヤ空気圧は 100kPa ほどだ。シュノー ケルは標準装備、オーストラリア・ARB 製のブルバーには電動ウインチ、シャ ベルが取り付けられる。メンテナンスを考え、メカニカルな部分には純正部 品以外は使用していない。 ▲ 屋根の上のソーラーパネルでバッテリーを充電、活動中の電源を確保する。 ▼ スイングアウトするキャリアには 2 本のスペアタイヤ。支援企業からのもの だ。荷台には 300 リットルの燃料と小分けにした飲料水などを積む。 ▲ 麻酔銃を使って調査対象のライオンを眠らせ、GPS や電波発信機の付いた首輪をはめたり、機器の点検、交換を行う。 ▲ 砂丘の上からはるか先に見下ろせるオアシスに調査しているライオンが生息する。 ▼ 行く手にそびえる大砂丘。スタンダー博士のピックアップは 1FZ パワーで一気に駆け上がる。 ▲「砂の上のわだちは 30 年以上残るから」と U ターンなどでできたわだちをデッキブラシで 消すスタンダー博士。
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