FY27IPCC-OTR-06 地球観測連携拠点(温暖化分野)平成 27 年度ワークショップ 「衛星による地球観測の現状と今後の展望」 出席報告 IPCC WG1 国内支援事務局 (RESTEC ソリューション事業部 春山 幸男) ■会議名称:地球観測連携拠点(温暖化分野)平成 27 年度ワークショップ 「衛星による地球観測の現状と今後の展望」 ■開催日時:平成 27 年 11 月 19 日(木) 13:00~17:00 ■開催場所:千代田放送会館ホール (東京都千代田区) ■主催機関:地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁 ■後援機関:内閣府、文部科学省、宇宙航空研究開発機構、 国立環境研究所地球環境研究センター 1.はじめに 気候変動を予測し、人間社会や生態系への気候変動の影響を評価する上で、地球環境 の実態を把握することは非常に重要であり、そのためには地球観測データの充実が必要 不可欠である。特に衛星による観測は、全球規模での分布を短い時間間隔で長期間測定 することが可能であり、詳細な変動の状況を把握するのに極めて有効である。また、近 年の技術革新により温室効果ガス、植生などの様々な要素の観測が可能になってきてお り、従来の観測と組み合わせることにより、地球温暖化をはじめとする地球環境研究が 大きく進展することが期待されている。 今回のワークショップでは、気候変動・水循 環変動・生態系等の地球規模の監視・解析・予測に貢献する我が国の地球観測衛星の現 状と将来展望が紹介され、講演者による総合討論が行われた。 2.会議内容等 2.1 開会挨拶 気象庁 主催機関を代表して、気象庁地球環境・海洋部地球環境業務課 矢野敏彦課長から、 「地球温暖化観測推進拠点が設立されてから 10 年目の節目を迎えたこと、パリで COP-21 が開催されることで国際的に気候変動問題が焦点となっていること、気候変動 問題には衛星による地球観測の役割が重要となっていること、などから我が国の地球観 測衛星の現状と将来展望についてワークショップを開催することは時宜を得たもので ある」との開会挨拶がなされた。 2.2 基調講演 「衛星地球観測の現状と課題」 宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球観測研究センター(EORC)中島映至センター FY27IPCC-OTR-06 長から基調講演が行われた。主な内容は以下の通り。 ・気候・環境問題に対しては観測データと予測精度の向上が不可欠である。 ・JAXA の地球観測衛星とその利用及び科学的貢献についての紹介; GOSAT(二酸化炭素やメタンの分布等)、ALOS/ALOS-2(アマゾン森林破壊、 地震や地殻変動、鬼怒川の氾濫等の監視)、TRMM/GPM(GSMaP の活用)、 GCOM-W、EarthCARE など。 ・性能向上したひまわり 8 号/9号の紹介、及び気象業務以外の利用への期待。 ・国際的な地球観測協力の枠組(GEO, WMO, CEOS, GCOS,等)の重要性。 ・欧州(コペルニクス/ESA-EUMETSAT の連携)、米国(次期地球観測衛星計画 NAS-NOAA の連携) 、中国や韓国の衛星計画等の世界の状況。 ・我が国の新宇宙基本計画の地球観測の工程表では、2020 年期から空白時代がある。 ・ 「地球観測戦略コミュニティ」 、 「地球観測タスクフォース」、 「地球圏診断委員会」 等の場を活用して、研究者・利用者の意見を国レベルの政策に反映する必要がある。 2.3 一般講演 以下 3 件の講演が行われた。 (1)地球環境観測衛星としての「ひまわり 8 号」 (気象庁気象衛星課 大野智生衛星運用事業管理官) 操野年之気象衛星課長の代理で、大野管理官から以下の内容の講演が行われた。 ・ 「ひまわり 8 号」の観測機能(解像度、観測頻度、観測バンド)の向上の紹介。 ・積雲域の発達状況の抽出等の静止気象衛星として性能が高度化した事例の紹介。 ・静止地球環境観測衛星として「ひまわり 8 号」が貢献できることへの期待。 (黄砂、海氷、噴煙、火山灰、植生、エアロゾル等の観測事例) (2)温室効果ガス観測技術衛星 「いぶき」の観測の現状と今後(GOSAT 及び GOSAT-2) (国立環境研究所地球環境研究センター 横田達也衛星観測研究室長) GOSAT の観測成果と GOSAT-2 の計画について以下の内容の講演が行われた。 ・GOSAT プロジェクトにおける環境省、環境研究所と JAXA の役割と連携。 ・GOSAT の衛星、センサー性能、衛星運用、データ処理等の紹介。 ・GOSAT の観測成果の紹介。 (二酸化炭素とメタンのカラム平均濃度の世界分布、世界の地域別の二酸化炭素や メタンの吸収排出量の推定など) ・GOSAT の研究公募活動及び欧(ESA)米(NASA)の研究グループとの協力。 ・GOSAT-2(2017 年度打上げ)の主要諸元の紹介と今後の温室効果ガス観測衛星に 対する期待。 FY27IPCC-OTR-06 (3)GCOM-W 観測データによる大気・海洋変動のモニタリング-メカニズム解明と 社会貢献 (北海道大学低温科学研究所 江淵直人教授) GCOM-W に搭載されたマイクロ波放射計(AMSR2)の観測成果等について、以下の内 容の講演が行われた。 ・GCOM-W と AMSR2 の観測性能(世界最高性能)の紹介。 ・AMSR2 の観測事例の紹介。 (海上風、海面温度、積算水蒸気量、降水量、海氷密接度、等) ・気候変動監視への観測データ利用例の紹介。 (海面水温・水位の上昇、北極海海氷の減少、エルニーニョ(ENSO)等) ・観測データを利用した社会貢献の事例紹介。 (漁場、沖合・沿岸海況の把握、北極航路の開拓、海の天気予報、など) ・GCOM-W の後継機により AMSR の観測を継続することが国際的にも必要。 2.4 総合討論『地球観測における衛星観測の役割』 総合討論の始めに、以下の2つのコメント発表が行われた。 (1)GPM、GCOM-C 等による水循環・気候変動のモニタリングと社会課題への貢献 (宇宙航空研究開発機構 石田中宇宙利用総括) JAXA の地球観測計画等について以下の内容のコメント発表が行われた。 ・2015 年の主要国際枠組と JAXA(2015 年の CEOS 議長)の貢献。 (国際防災世界会議(仙台) 、国連持続可能開発目標(SDG) 、GEO 閣僚サミット、 UNFCCC-COP-21、衛星データ利用レポート作成等) ・全球降水観測計画(GPM)の概要と目指す成果。 (降水の長期変動、全球合成降水マップ(GSMaP)等) ・GCOM-C の概要と観測データ利用分野の紹介。 (土地被覆分類、海洋基礎生産力推定、エアロゾル、森林火災等の監視など) (2)高解像度衛星観測の展望 (東京大学 岩崎晃教授) 岩崎教授から、高分解能の光学センサーと合成開口レーダについて以下のコメントが 発表された。 ・日本の高分解能センサーの発展(ASTER, ALOS, ALOS-2 等) 。 ・欧州(Copernicus 計画) 、米国(Landsat シリーズの継続)等の紹介。 ・WorldView(超高分解能光学衛星)や Skybox(超小型衛星)等の紹介 ・データ利用例とデータポリシー(オープン&フリー戦略)の国際的状況 ・日本の立ち位置と今後の先進光学衛星と先進レーダ衛星に対する期待。 FY27IPCC-OTR-06 コメント発表に引き続いて、講演者とコメント発表者及び会場の参加者による討論が 行われた。討論は司会者からの提案で以下のトピックを中心に行われた。 ・宇宙基本法 ・宇宙政策委員会 ・工程表 ・地球観測タスクフォース 講演者及び会場からの意見の主なものは以下の通り。 ・気候変動のための長期観測が重要であり、GCOM-W の後継機等の実現が必要。 ・宇宙基本政策に反映するためには、各省庁からの要望を出すことが必要。 ・京都議定書と GOSAT 計画の様に、日本の立ち位置を明確にすることが必要。 ・GOSAT では二酸化炭素等の推定誤差が問題となった。長年の研究が必要。 ・衛星は研究を始めてから 10 年以上先に実現。10 年先を見越した利用研究が必要。 ・日本の計画立案にとっては、欧州の取り組みが参考となる。 3.所感等 気候変動の予測や地球環境問題に対する地球観測衛星データの利用や役割について オーバーオールな発表と議論があり、日本のこの分野での活動を概観することが出来た。 地球観測衛星が IPCC に関する国内外の活動に貢献することを期待している。 なお、講演資料は次のウェブサイトで公開されている。 http://occco.nies.go.jp/151119ws/index.html
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