修 研究科・専攻 氏 名 論 文 題 目 要 大学院 士 論 文 の 和 文 電気通信学研究科 松尾 一慶 要 旨 情報工学専攻 博士前期課程 学籍番号 0831037 車々間通信と擬似的路車間通信を併用した ITS 情報通信方式の提案と評価 旨 近年,道路交通における安全性や利便性の向上のために,車々間通信や路車間通信を用いた ITS (高度交通システム)が注目され,研究が行われている. 本研究では,ITS 情報通信方式において,車々間通信では,各端末の位置は激しく変化するも のの,前後の相対的な位置関係はあまり変化しないことに着目し,測位システムによる位置情報 を利用してエリア分けを行い,これによりネットワークグループを構成し,通信を行う. さらに,交差点周辺には,路側に通信を中継するための端末を設置し,これを動かない車両と みなして車々間通信(擬似的路車間通信)を行う.これによって,接続安定性の向上を図る方式 を提案する.この際,通信方式の切り替えは行わず,全ての同一の方法で通信を行い,切り替え に伴うオーバヘッドや経路再探索を回避する. 本提案手法により,既存の ITS 情報通信方式やアドホックネットワーク向け通信プロトコルを 用いた場合と比較して,パケットの到達率の向上や,ITS 情報通信のためのインフラ整備のため のコスト低減などが期待できる. 通信方式には無線 LAN などに使用される CSMA 方式を採用しているので,既存の情報機器と の親和性も高い. 本提案手法について,実際の道路環境を模したシミュレーション実験を行い,既存手法と比較 評価する. 評価は接続安定性,データの到達率,通信速度の 3 つの観点から行う. シミュレーション実験は,小規模な環境と大規模な環境のそれぞれについて行った. また,道路外に建築物などの障害物が存在する場合の電波減衰を考慮したシミュレーションも 行った. これらの実験により,いずれの環境においても,接続安定性,データの到達率,通信速度の 3 点において提案手法は既存手法に対し,優れていることが示された. 大規模な環境においては,接続安定度は約 33%上昇し,送信データの到達性は約 12%上昇,通 信スループットは約 1.8 倍となることが示された. 通信可能半径を 250m とした場合,提案手法では通信スループットが 2.14Mbps となり,2Mbps を超える. また,パケットの到達率は 92.6%となることが示された.これにより,情報提供や警告系のア プリケーションに対し,提案手法によって十分な通信品質と性能が得られることが示された. さらに,各ノードの通信可能半径を変更した場合においても,提案手法は既存手法に対して有 効であることが示された.
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