スライド追加資料

終末期医療と法
 2015年8月12日 国立長寿医療研究センター
 平成27年度 人生の最終段階における医療体
制整備事業相談員研修会
 東京大学 本郷キャンパス 法文1号館 214
室および215室
1
 東京大学大学院法学政治学研究科
 [email protected] 樋口範雄
医事法試験問題
2015年7月8日付け、ニュー・ヨークタイムズが報ずるところによると、
メディケア(アメリカにおける高齢者・障害者対象の医療保障制度・55
00万人を対象とする)は、延命治療をどこまで望むかについて医師が
患者と相談の時間をとった場合、来年1月からそれに対し診療報酬の
対象とするそうである。
このような策について、いかに考えるか。この策を含めて、終末期医
療における患者の自己決定へのインセンティブとして、どのようなもの
が考えられるか記しなさい(なお、患者の自己決定を重視すべきでな
いと考える場合には、その考えに則った議論を展開することもありう
る)。
今問われているのは
アメリカでは
1970年代 カレン事件 訴訟
自然死法 尊厳死
リビングウィル
事前指示 advance directive
持続的代理権法
自己決定と futility(医療の限界)の二本立て →
医療倫理の確立
しかし、自己決定はうまくいっていない
なぜうまくいかないか
自己決定したくない
自分の死について語りたくない人が多い
それはアメリカ人も同じ
リビングウィルにも欠陥
→1つの工夫 代理人選任も自己決定
本当の目標は、医療ケアチームとの話し合いの場を
もつこと それがカルテに記録されること 電子カルテで
アクセスが容易になること
POLST はそのための工夫 それをメディケアが支援
日本では
自己決定の弱さ
医療の限界論の弱さ
法律で決めてくれると、従う従順さ
真の自己決定支援は?
回答の中には
診療報酬への支援には賛成
むしろ患者に直接医療費減額でという声も
大事なのは、教育啓発
人生で数少ない遭遇の機会
自分については1回
苦労が共有されていない
自己決定支援・協議支援
家族が言う あらゆる手立てを
実は患者に負担 身体的負担 透析患者の例
データでの実証
家族のための終末期医療でよいのか
心臓マッサージの比較
家族も困る現実 →現実の例を知らせられないか
「いざという時に、誰に相談したらよいかを、医療側か
ら、持ち出す工夫}
すべての人に、という方法
日本的平等の形式性に多くの人が納得
しかし、その自己決定の質が問題となる
法の役割
自己決定支援 協議支援
そのためのルール・支援策の提示
入院時(アメリカでの工夫)
診療報酬加算 (70歳以上で失敗)
むしろ医療倫理としての義務に
終末期医療ガイドラインに1項目プラス
樋口案 人生の最終段階に
おける自己決定尊重法
第1条 終末期医療については、医療者は、独断ではなく、医療
ケアチームによる判断をするものとする。
第2条 終末期医療については、患者の意思を尊重しなけれ
ばならない。
2 患者の意思を尊重する手段としては、患者自身が判断でき
ない状況において、患者が信頼する代理人(家族など)に判断
を委ねることを含む。
第3条 医療ケアチームは、患者の意思を確認するため、繰り
返しそれが何かを確かめる努力をしなければならない。
2 医療ケアチームは、緩和ケアの充実に努めなければなら
ない。
第4条 この法律を実施するにあたり必要な事項は、厚生労
働省令で定める。