オーストラリア産ニーム石鹸の試用モニター集計結果 大平 悦子 1)、Jason Chandler 2) 、上馬場 和夫 3) 1) Ayurveda college, Ayurveda House, Australia 日本事務局 2)Ayurveda college CEO, Australia 3)富山県国際伝統医学センター 【背景と目的】 アーユルヴェーダ大学がいくつか創立され ニームの学名は Azadirachta Indica A. て、オーストラリア国内での診療が可能と Juss であるが、インドでは「村の薬局」、 なるライセンスも与えられている。そのよ ミラクル･ニームと呼ばれ、万病に効く薬と うなオーストラリアで栽培されたニームを して有名である。アーユルヴェーダでは約 使い、ニーム石鹸を製造した。この石鹸は、 5000 年前から、痛み、熱を和らげ、感染症 オーストラリア政府公認のアーユルヴェー を治すのにニームが使用されてきた。木全 ダ･カッレジの代表であり、NPO オーストラ 体に苦味成分のアザデラクチン、マルゴシ リア･ニーム協会の代表でもある Dr. Jason ン等を含み、樹皮から採れる琥珀色の樹脂 Chandler が、伝統的なアーユルヴェーダの は殺虫、防虫、回虫駆除薬、駆虫薬、皮膚 手法を用いて製造したものである。 病、膿傷、肝機能障害、体力回復などに広 く利用される。種子から採れる油（ニームオ イル）は黄色で苦味のある香りがし、リウマ チ、アトピー、ニキビ、水虫等の皮膚病に 内外用薬として利用されている。 さてニームは最近、インド以外でも栽培 されるようになってきた。熱帯から亜熱帯 地方にしか生育しないことから、東南アジ アやオーストラリアさらには沖縄で栽培さ オーストラリア政府公認の アーユルヴェーダ教育機関 －アーユルヴェーダ･ アーユルヴェーダ･ハウス－ ハウス－ ■代表： Dr. Jason Chandler インドでアーユルヴェーダ医学、 チベットでチベット医学、オースト ラリア、日本、アメリカで自然療 法を習得。 オーストラリアの資格、 Cert IVアーユルヴェディッ ーク・ IVアーユルヴェディッー ライフスタイル･ ライフスタイル･コンサルテーション 上級アーユルヴェーダを取得。 さらに、コミュニケーション学士 さらに、コミュニケーション学士 ■公式に認可されたアーユルヴェーダ医で 教育者。 公式に認可されたアーユルヴェーダ医で教育者。 オーストラリアでは約25 年間、アーユルヴェーダを指導。インド、日本、香港、シンガ オーストラリアでは約25年間、アーユルヴェーダを指導。インド、日本、香港、シンガ ポール、アメリカでも指導。 ■ジェイソンは幼年期、チベット僧院で修行を積み、その後、インドで集中的にアーユル ヴェーダを習得。伝統的アーユルヴェーダに関する豊富な知識と経験を持つ彼は、 世界中で大変尊敬されている。 ■1970代、 Dr. Shiv Sharmaに同行し 1970代、Dr. Sharmaに同行し 初めて日本を訪問。 れるようになってきた。特にオーストラリ アでは政府が栽培を振興しており、全土に このニーム石鹸は、有機栽培で育てられた わたり植林されている。インドの薬草が農 ニームのオイル、及び伝統的アーユルヴェ 薬や重金属による汚染の問題などの不安が ディック･ハーブを使用している。動物性成 残るなか、欧米や日本など環境問題を考慮 分、人工的着色料、香料、防腐剤は未使用 した栽培による薬草は、健康食品の GMP ガ である。 含有されているオイルは、パーム イドラインの作成が進められている日本で カーネルオイル、ココナッツオイル、ニー は、製剤化において有利になると推定され ムオイル、黒ゴマオイル、オリーブオイル、 る。 ホホバオイルである。また、含有されてい オーストラリアでは、また、政府公認の るアーユルヴェーダのハーブは、ニーム、 アムラ、シカカイ、ブラミ、アランド、ビ 感じを聴取した。 ャクダン、キンセンカ、ヒレハリソウ、ヘ 何も変化なし わからない 以前と変わった ンプオイル、スウィートオレンジ、食用粘 土である。オーストラリアで試作し、モニ ターを対象として使用体験談のアンケート 調査を試行した。 4例 5例 21 例 13% 17% 70% 以前と変わったと回答した例に、どのよ うに変わったかを聞くと、以下の結果であ った。 オーストラリア産 ニーム石鹸の外観 ニーム石鹸の外観 しっとりした 乾燥しなくなった 痒みが少なくなった 湿疹が改善してきた 皮膚が乾燥してきた 湿疹ができた 16 例 11 例 5例 2例 0 0 76% 52% 24% 10% 0 0 【考察と結論】 ニームの主成分: 5 cm 【方法】 対象者：健康のツボ講座シリーズなど、健 康関連のセミナーに参加した人で、ニーム 石鹸を試用することを希望した５０名。ア トピー性皮膚炎などをもつ例も含めたが、 石鹸による皮膚所見が悪化する可能性につ いても、同意の上で試用してもらった。 試用：１ヶ月間、ニーム石鹸を使用さ せ た。 アンケート調査：使用体験を聞く問診票に 自身でチェックさせ、郵送してもらった。 回答がない例には電話で結果を聴取した。 【結果】 ５０名のうち、解答者は３０名（回答率６ ０％）であった。回答者３０名のうちわけ は、 ニーム石鹸を使用する前と比較した時の ①テルペンやリモネイド： リ モ ノ イ ド : azadirachtin, 3-deacetyl-3-cinnamoylazadirachtin, margocillin, テ ル ペ ノ イ ド ： isoazadirolide, nimbocinolide, nimbonone, nibonolone, margosinone, margosinolone, nimosone ②多糖：arabinogalatane, G-Ⅱa, G-Ⅲa, G-Ⅲb, GⅢDO2,’Ⅱa, GⅢDO2’Ⅱb, CSP-Ⅱ, CSP-Ⅲ,CSSP-Ⅰ, CSSP-Ⅱ, CSSP-Ⅲなどが、 樹皮に多く存在する。 ニームの効能: 抗真菌、抗細菌、抗ウイ ルス活性、抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用、 抗マラリア作用、鎮痛作用、解熱作用、不 安減弱作用、循環系への作用、中枢神経抑 制作用、肝庇護作用、抗炎症作用、抗腫瘍 作用、不妊作用、駆虫作用、忌虫作用、害 虫の成長調節作用、抗潰瘍作用、免疫調節 作用。 さてオーストラリア産ニーム石鹸により 皮膚の状態が改善した例は 70%であったが、 回答を送って来なかった 20 例が全員仮に無 効例だとすると 42%となる。特に使用後に皮 膚がしっとりしたという例は、改善例の 76% に上った。また、皮膚にかゆみや湿疹があ る例では、かゆみが少なくなったり、湿疹 が改善する例があった。しかし、回答を返 した例の中には、皮膚が乾燥した例や湿疹 が出現した例はなかった。 オーストラリア産ニーム石鹸は、少なく とも約半数で皮膚の保湿性を高めることが 推定された。また、皮膚の痒みや湿疹のあ る例では、改善をみる例があることが示唆 された。しかし、皮膚所見が悪化する例の 報告はなかった。今後、さらなる研究や改 良する価値があると思われた。
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