11.排水管清掃の評価と高圧洗浄配慮の設計要件

11.排 水 管 清 掃 の 評 価 と 高 圧 洗 浄 配 慮 の 設 計 要 件
○今井昭彦、齊藤将一、佐藤昭仁、村上克裕(一般社団法人
全国管洗浄協会)
1.は じ め に
建築物の排水システムの排水横管には勾配が設けられる。しかし、排水中の油脂類・厨
芥物等が排水管内に付着・停滞するので、定期的な排水管清掃が不可欠となっている。一
方、高密度化した諸設備を有する高層建築物の急激な増加により、事故予防と衛生的環境
確保のため排水設備保全の社会的責任が増している。
本報告では、集合住宅における定期的排水管清掃(高圧洗浄法)の評価に関する実態調
査 の 結 果 を 報 告 す る と と も に 、高 圧 洗 浄 作 業 に 配 慮 し た 設 計 要 件( 掃 除 口・作 業 ス ペ ー ス )
を提案する。
2.高 圧 洗 浄 の 評 価 に 関 す る 実 態 調 査
2.1 調 査概 要
排 水管 共 用 部 の清 掃 方 法 には 高 圧 ホ ース 挿 入 箇 所に よ
り 、㋑ 屋 上 伸 頂通 気 口 、 ㋺排 水 立 て 管の 掃 除 口 、㋩ 排 水
横 主管 ( 及 び 各横 引 管 ) の掃 除 口 、 ㋥排 水 桝 、 ㋭器 具 排
水 口か ら 排 水 立て 管 を 下 階ま で 、 あ るい は 排 水 横主 管 接
続部ま での 5タイ プが ある( 図 1)。本調 査で 用いた 方法
㋭をオ ーバ ーラッ プ清 掃と称 する 。
本調査 は、 東京、 神奈 川、埼 玉、 札幌に おい て、オ ー
バ-ラップ清掃により定期的排水管清掃されている集
合 住 宅 10 棟 を CCD カ メ ラ で 管 内 撮 影 し 、排 水 管 清 掃
前後の清掃効果を比較した。
比較項目は、竣工年、管材・内径・勾配、清掃周期、高圧洗浄仕
図 1.高 圧 ホ ー ス 挿 入 口
様 ( 圧 力 、 水 量 、 ノ ズ ル 噴 射 方 向 ・ 回 転 有 無 、 ホ ー ス 径 ・ 種 類 )、
台所単独系統と洗濯・浴室合流系統とした。
2.2 調査 結 果と考 察
写真1は、清掃前の排水立て管内の映像である。油脂類が付着
し て お り 、付 着 物 の 厚 み は 概 ね 2~ 5mm 以 下 で あ る 。管 径 100mm
に 対 し て 4~ 10%以 下 の 閉 塞 率 で あ り 、 定 期 清 掃 に よ る 保 守 管 理
は 十 分 と い え る 。オ ー バ ー ラ ッ プ 清 掃 に よ る 共 用 管 清 掃 に よ り 、
油脂はほぼ剥離し、管壁が見える程度の清掃効果が確認された
写真1 硬質ポリ塩化ビニル管
( 管 径 100mm 清 掃 前 )
( 写 真 2 )。と く に 管 材 が 硬 質 塩 化 ビ ニ ル 管 お よ び ラ イ ニ ン グ 鋼 管
( DVLP) に お い て は 、 オ ー バ ー ラ ッ プ 清 掃 が 十 分 に 効 果 的 で あ
る こ と 、 厨 芥物や 油脂 類が多 くな い場合 には 年1回 の定 期清掃 によ
り、閉 塞率 は概ね 0~ 5%以内 に なるこ とが 確認さ れた 。ま た 、台 所
単独系統に比べて汚水・雑排水の合流系統の方が付着物は少なか
った。これは、台所排水以外の排水(とくに汚水)により、付
着 物 が 希 釈 ・ 洗 浄 さ れ た も の と 推 察 さ れ る ( 表 1 )。
写真2 硬質ポリ塩化ビニル管
( 管 径 100mm
清掃後)
表1
定期排水管清掃におけるオーバーラップ清掃の評価
3.高 圧 洗 浄 に 配 慮 し た 設 計 要 件
3.1 掃 除口 の適正 設置
本調 査を 行った 集合 住宅 10 棟 は、高 圧洗 浄ノズ ルを 器具排 水口 から挿 入し 、階下 の排 水立
て管ま で、または 排水 横主管 接続 部まで を清 掃する オー バーラ ップ 清掃に より 行われ た。し か
し使用 環境 や管材 質に より付 着・堆積の 多い 部位( 鋳鉄 管、デ ィス ポーザ 排水 管、台 所単 独 管 、
オフセ ット 排水立 て管 、厨芥 物・油分量 が多 い厨房 排水 等)で は共 用管専 用の 高圧洗 浄が 必 要
となる 。以 下に、 高圧 ホース を挿 入する 部位 ごとの 掃除 口の設 置条 件を記 載し た(表 2)。
表2
掃除口の設置条件
3.2 適 切 作 業 ス ペ ー ス の 確 保
清掃作業においては、建物の利用者や居住者および作業者の安全を確保でき、周辺また
は 建 物 全 体 へ の 汚 損 や 破 損 を 防 止 す る た め の 措 置 が 行え る 作 業 ス ペ - ス が 必 要 と な る 。 特
に共用管清掃においては清掃治具も大きく重くなるため、狭小スペ-スや高所では作業効
率も低下し、安全も確保できない。天井内や地下ピット内において作業性・安全性を確保
できない場合においては上階の床上に掃除口を設置することが望まれる。
4.ま と め
本実態 調査 により 定期 的に排 水管 清掃が 行わ れてい る集 合住宅 にお いて 、オ ー バーラ ップ 清
掃によ る清 掃効果 を確 認でき た。一般的 に行 われる 器具 排水口 から 下階ま での 排水立 て管 を 順
次清掃 する 効果は 十分 にある とい える 。しか し付着 物・堆積物 の多 い施設 や排 水管部 位に お い
ては、適 切 な位置 に設 置され た掃 除口か ら共 用管の サイ ズや汚 れ具 合に見 合う 清掃治 具を 使 用
し、専 用の 清掃を 行う 必要が 生じ る。建 築物 の設計 時点 におい て、適切な 位置 への掃 除口 設 置
と、作業の 安全と 作業 性を考 慮し た作業 スペ ースが 考慮 される こと により 、竣 工時点 で排 水 設
備の保 守品 質を確 保し た建築 物が 普及し てい くこと が望 まれる 。