報告書 - 京都市小売商総連合会

中 小 小 売 商 業 活 性 化 対 策
報
告
書
平成26年12月
京都市小売商総連合会
商業活性化検討委員会
【はじめに】
京都の小売商業は,近年のネット販売等の店頭以外の販売形態の増加,郊外型大規模小売業店舗
の増加、中小小売業経営者の高齢化及び後継者難などにより厳しい情勢に直面しており、小売商業
の店舗数がここ10年間で38㌫も減少しています。
このような中で、魅力ある小売商店舗を作り、かってのような活気を取り戻すための対応策を検
討するため、京都市小売商総連合会では、昨年10月「商業活性化検討委員会」を設置しました。
委員会は、京都市小売商総連合会顧問伊藤義浩を座長とし、行政からオブザーバーとして京都市
及び京都府さらに委員として支援団体、外部有識者の方々をお招きし、これまで10回の委員会を
開催してきました。
委員会では、まず、小売商業界が現在置かれている状況を把握するため、京都市小売商総連合会
加盟の組合代表者の方々及び他業種の小売業界21社の方々から聞き取り調査を行いました。
その結果、中小小売業界の現状は極めて深刻な状況であることが改めて明らかになりました。
売上減少による相次ぐ廃業、組合員の激減、経営者の高齢化、次世代を担うべき若者の離脱など、
これらが負の連鎖を起こし、中小小売商業界衰退の底が見えない状況が浮き彫りになりました。
その原因は、
急激な商業形態の変化に中小小売業界が対応し切れていないということに尽きます。
ただ、このような中でも、様々な工夫とアイデアで懸命に経営改善のため努力されている個店が
あることも事実です。
本委員会では、現在の商業形態に対して現状の中小小売業界がどのように変わって行けばよいの
か、そのためにはどのような方法が最も効果があるのかを中心に論議を重ねてきました。
ここに一定のまとめができましたので、報告書としてその結果を報告するものです。
【目
次】
1 商業活性化検討委員会委員
P-1
2 委員会開催経過
P-2
3 小売商総連合会加盟組合員の推移
P-4
4 組合等団体のヒアリング調査
P-6
5 ヒアリング結果から見た中小小売業界の現状と課題
P-7
(1)中小小売業の現状
(2)中小小売業の課題
6 中小小売業の活性化対策
P-9
(1)大型量販店、コンビニとの区別化
(2)ネット販売などに対する対策
(3)個店そのものの活性化
(4)組合の活性化
7 中小小売商業活性化のための小売商総連合会の対応
P-12
8 行政及び支援団体の支援
P-12
1
商業活性化検討委員会
委員
座
長
伊藤
義浩
京都市小売商総連合会
顧問
委
員
宮﨑
真里子
京都市小売商総連合会
副会長
梅垣
純
京都商工会議所中小企業経営支援センター
企画・計画担当 副主査
八木
一樹
一般財団法人
専務理事
片岡
靖
京都府中小企業団体中央会連携支援課
芦田
君彦
公益財団法人 京都中小企業振興センター
企画事業課 課長
川口
英之
京都信用保証協会総務部
岸田
道彦
一般社団法人
相談役
オブザーバー
小山
幸司郎
京都市産業観光局商工部商業振興課
オブザーバー
森川
浩行
京都府商工労働観光部商業・経営支援課
商業担当
事務局
東
和次
京都府中小企業センター
課長
次長
京都府中小企業診断協会
副課長
京都市小売商総連合会
事務局長
課長
2
委員会開催経過
【平成25年度】
第1回委員会
日 時
平成25年10月16日 午後2時~午後4時
場 所
京都産業会館2階 KPC第2会議室
議 題
(1)委員紹介
(2)委員会設立目的の説明
-伊藤座長-
(3)今後のスケジュール
-伊藤座長-
(4)委員会設立についての各委員の意見
第2回委員会
日 時
平成25年11月28日 午後2時~午後5時
場 所
京都産業会館7階 第2研修室
議 題
(1)小売商総連合会加盟9組合からのヒアリング
(2)次回委員会の内容について
-伊藤座長-
第3回委員会
日 時
平成26年2月24日 午後2時~午後4時
場 所
京都産業会館2階 KPC第2会議室
議 題
(1)9組合からのヒアリング結果に対する意見 -各委員-
(2)次回スケジュールの説明
-伊藤座長-
(3)平成26年度の委員会活動予定
-伊藤座長-
第4回委員会
日 時
平成26年3月26日 午後2時~午後4時
場 所
京都産業会館7階 第2研修室
議 題
「小売業実態調査中間報告書」の内容について
【平成26年度】
第1回委員会
日 時
平成26年5月16日
午後2時~午後4時
場 所
京都産業会館2階 KPC第3会議室
議 題
(1)平成26年度のスケジュール
(2)第2次ヒアリングについて
第2回委員会
日 時
平成26年6月25日(水)
午後1時30分~午後5時
場 所
京都産業会館7階 第1研修室
議 題
(1)京都市小売商総連合会賛助会員ヒアリング
(2)ヒアリング結果について
第3回委員会
日 時
平成26年7月7日(月)
午後1時30分~午後5時
場 所
京都産業会館7階 第1研修室
議 題
(1)他業種組合等ヒアリング
(2)ヒアリング結果について
第4回委員会
日 時
平成26年9月12日(金) 午後2時
場 所
京都産業会館2階 KPC第1会議室
~ 午後4時
議 題
(1)これまでのヒアリング内容について
(2)今後の委員会活動について
第5回委員会
日 時
平成26年11月4日(金) 午後2時
場 所
京都産業会館2階 KPC第1会議室
議 題
最終報告書の内容について
~ 午後4時
第6回委員会
日 時
平成26年12月3日(水) 午後2時
場 所
京都産業会館2階 KPC第2会議室
議 題
最終報告書の原案について
~ 午後4時
3
小売商総連合会加盟組合員数の推移
小売商総連合会に加盟している組合員数の平成16年度から平成25年度までの10年間の
推移を <表-1>及び<グラフ-1>、<グラフ-2>に示す。
平成16年度では1,
293店舗あったものが平成25年度には805店舗になり、
実に38%
もの減少であり、過去10年間一定した右肩下がりの傾向が続き、下げ止まりが見えない感があ
る。
この原因は、次項の「ヒアリング結果から見る中小小売業の現状と課題」に記しているが、商
業環境の激変による中小小売業者の
①後継者難
②廃業者の続出
であるが、特に減少率が40%を超えている京都洋品協同組合、京都化粧品商業協同組合、京都
織物小売協同組合、京都府家具組合連合会、京都府書店商業組合については、前記とは別に次の
ことが組合員急減の一端になっている。
・京都洋品協同組合
後期高齢者医療制度の創設により、組合員であるメリットがなくなった。
・京都化粧品商業協同組合
ドラッグストアーが進出し、安売り競争に対抗できない。
・京都織物小売協同組合
急速な和装離れにより、廃業が相次いでいる。
・京都府家具組合連合会
郊外型安売り店の進出と住宅会社による家具メーカーとの提携により、業界の規模が縮小し
た。
・京都府書店商業組合
パソコン、スマホの普及により情報誌が売れないなど、活字離れが進行している。
このような中で、京都府漬物協同組合の減少率-6.0%は特筆すべきもので、いわゆる京都ブラン
ドの安定した力を感じる。
<表-1> 組合員数の推移(平成16年と平成25年)
加盟団体
H16
H25
京都市食肉協同組合
189
119
-70
-37.0%
京都洋品協同組合
168
92
-76
-45.2%
京都府漬物協同組合
100
94
-6
-6.0%
京都府化粧品商業協同組合
173
93
-80
-46.2%
京都織物小売協同組合
80
46
-34
-42.5%
京都府家具組合連合会
50
29
-21
-42.0%
京都府書店商業組合
266
155
-111
-41.7%
ウエル北野協同組合
27
17
-10
-37.0%
240
160
-80
-33.3%
1,293
805
-488
-37.7%
京都水産物商業協同組合
合
計
増減
今後の中小小売業者は、組合を含めた組合員全員が最近の商業環境の激変について意識改革を行
い、変化にいかにうまく対応して行けるかが鍵になる。
また、加盟組合に対し組合員急減の要因について別途聞き取り調査を行ったところ、減少した店舗
数488店舗中の427店舗(87.5 ㌫)が廃業(倒産含む)であり、営業を続けながら自主的に組
合を脱退した店舗は61店舗(12.5 ㌫)であった。
相次ぐ廃業が組合員数激減の大きな要因になっている。
組合員急減要因の聞き取り調査の結果を<表-2>に示す。
<表-2> 組合員数激減の理由
組合
H16
H25
増減
廃業等
自主脱退
京都市食肉協同組合
189
119
-70
70
0
京都洋品協同組合
168
92
-76
61
15
京都府漬物協同組合
100
94
-6
6
0
京都府化粧品商業協同組合
173
93
-80
56
24
京都府織物小売協同組合
80
46
-34
34
0
京都府家具組合連合会
50
29
-21
11
10
京都府書店商業組合
266
155
-111
100
11
ウエル北野協同組合
27
17
-10
10
0
京都水産物商業協同組合
240
160
-80
79
1
1,293
805
-488
427
61
合計
営業を続けながらも組合を自主脱退している理由として、組合員が組合費に見合うだけのメリッ
トが感じられないということをその理由として上げている。
一方、組合側の声として、組合員が組合の存在理由とその活動について十分理解していないので
はないかという声も聞かれる。
このようなことから、廃業等の理由によるものは別として、自主脱退を防止するため組合の活動
内容や組合員に対する啓蒙活動などを再考する必要がある。
4
組合等団体へのヒアリング調査
委員会では小売商総連合会の加盟組合及び他業種組合に対して、小売業の実態を把握するため、
平成25年11月28日、平成26年6月25日、平成26年7月7日の3日間にわたり京都産
業会館において小売商総連合会加盟組合などの21団体に対するヒアリングによる調査を行った。
ヒアリング対象団体は次の21団体である。
【平成 26 年 6 月 25 日】
【平成 26 年 7 月 7 日】
京都市食肉協同組合
株式会社 和田
たかや印房
京都洋品協同組合
京都府漬物協同組合
京都府化粧品商業協同組合
京都織物小売協同組合
京都府家具組合連合会
京都府書店商業組合
ウエル北野協同組合
(製氷業・スーパー経営)
(京都府印章業協同組合)
株式会社 ひまわり
京都府豆腐油揚商工組合
(バラエティー雑貨販売)
上新電機株式会社
株式会社 萬為
(家電量販店)
(生菓子製造販売)
京都ステーションセンター株式会社
イズミヤ株式会社
(京都ポルタ各店管理・運営)
(総合スーパーマーケット)
京都生活協同組合
NTT都市開発株式会社
京都醍醐センター株式会社
(商業複合施設運営)
(パセオダイゴロー管理運営)
【平成 25 年 11 月 28 日】
京都水産物商業協同組合
ヒアリング項目は次の通りである。 株式会社 フジイデンキ
(家電販売店)
(1)各組合で現在どのような課題があるか。
(京都府電機商業組合)
(2)現在の課題に対して何か対策を行っているか。
(3)組合の組合員数など最近の動向はどうか。
(4)今後の小売商業に何か意見があるか。
(5)消費税増税に対する課題と対策について。
(6)その他意見。
組合等各団体に対するヒアリング結果を<表―2>、<表-3>に示す。
5
ヒアリング結果から見た中小小売業界の現状と課題
(1)中小小売業界の現状
小売商総連合会加盟組合9団体、他業種組合等団体12団体及び個店合計21団体及び個店からの
ヒアリングの結果から、各団体が抱える問題点を集約すると表-4の通りである。
<表-4>
中小小売業の問題点
項目
後継者難
組合員数の減少
廃業者の続出
団体数
割合
10
47.6%
6
4
28.6%
19.0%
注)割合の数値は、ヒアリング総数21社に対しる数値である。
上表の数値はヒアリング時に得た回答数であるが、相互に関連したものであると考えられる。
即ち、後継者難による廃業が続出し、その結果組合員が減少するという悪循環が生じているもの
と考えられる。
このような悪循環が売り上げの不振から生じていることは明らかであるが、このことがどのよう
な原因で生じているかを上記と同様にヒアリングの結果からまとめたのが<表-5>である。回答
は業種により様々ではあるがほぼ共通する項目について記したものである。
<表-5>
項目
団体
団体数
大型量販店の進出
洋品、家具、水産物、家電、豆腐
5
郊外型安売り店の進出
化粧品、生菓子、家具
3
ネット販売などの急増
化粧品、印刷
2
コンビニ・スーパーの進出
雑貨、生菓子
2
パソコン、スマホの普及
書店、印刷
2
後期高齢者医療制度の創設
洋品
1
和装離れの進行
織物
1
その他、消費税増税の影響や最近の円安傾向に伴う輸入原材料や石油製品、電気代の高騰による
影響などがあげられるが、小売業だけに限らず、すべての商業界に共通する事項なので表記を避け
た。
<表-5>に掲げた項目は最近の商業環境の変化を表しており、中小小売業者はこの時代の流れの
あおりを受け、有効な対抗策を打ち出せていない現状がうかがえる。
(2)中小小売業界の課題
ヒアリングの結果、現在の中小小売業は近年の商業形態の急激な変化に追いつけず、下記の
状況が顕著になっている。
①個々の店舗の魅力が薄れている。
②集客力に著しい低下を来している。
その結果、次のような悪循環が生じている。
経営者自身の経営意欲が減退している。
店の経営革新が進まない。
経営を託すべき次世代の若者に敬遠されている。
組合員数が激減し、組合の機能が停滞している。
大型量販店、ネット通販などの価格及び品揃えなどに対し、現状の中小小売業者は残念ながら対
抗することはできない。
今後、魅力ある小売店を作り、小売業界を再生するには、以下に掲げたようなプロセスが必要で
あり、それには先ず経営者自身の意識改革が必要である。
①この時代における消費者の欲求や消費動向に目を配る。
↓
②個々の経営者が置かれている現状を正しく見極める。
↓
③従前からの経営を見直すために発想の転換を図る。
↓
④思い切った経営の革新を図る。
また、各組合においては、
①各店舗の経営革新をバックアップできるような体制をつくりあげる
②強力なリーダーシップが発揮できるようなリーダーが育つ環境の整備を行う。
以上の課題に対し、委員会では下記についてその方策を検討した。
○大型量販店、ネット通販に対する対抗策はどのようなものがあるか。
○経営の方向転換を行うにはどのようにしたらよいか。
○世代の経営者をどのように育成したらよいか。
○組合の体制を強化する方法はどのようなものがあるか。
(3)中小小売業者の要望等
様々な問題点や課題を抱えている中小小売業者であるが、<表-6>に示すように、ヒアリン
グ時に行政等へ各種の要望が出されている。
<表-6〉
行政等への要望
項目
小売商総連合会のサポート
大型店舗対策
商店街の活性化
価格に対する統制
後継者対策
軽減税率の採用
イベントへの補助
セミナー等の開催
看板条例の緩和
団体
食肉
洋品
洋品
化粧品
織物、ポルタ、㈱和田
書店
ウエル北野
織物
漬物、化粧品、㈱和田
団体数
1
1
1
1
3
1
1
1
3
6
中小小売業の活性化対策
ヒアリング結果による前項に掲げた課題をもとに、中小小売業の活性化対策として委員会では
以下の項目別に具体的な対策を提案した。
○大型量販店、コンビニとの区別化
○ネット販売に対する対策
○個店そのものの活性化
○組合の活性化
(1)大型量販店、コンビニとの区別化
現状の中小小売業者は、大型量販店と同様の手法による商いを行っても、あらゆる面で大型量
販店に太刀打ちできない。
中小小売業者は今後、大型量販店とは下記による経営の棲み分けを行う必要がある。
○大型量販店ではできない経営を行う。
○長年培ってきた地域との関係を軸にしたサービス面に商いの重点を移す。
上記の基本的な方針のもとに、下記の具体策を提案した。
①大型量販店にできないきめ細かなサービスの実施
高齢者対策としてのサービスの実施
・電話注文
・宅配などの配達システムの整備
・御用聞きの復活
・外売り活動
②地域に密着したサービス
・商品に対するアドバイス
・設置、取付の実施
・修理等のアフターケアの充実
③業務用卸しへの参入
・病院、学校等
(2)ネット販売などに対する対策
中小小売業者がネット販売に対し、価格と品揃えで対抗することはできない。
消費者にとって、ネット販売ではできない下記のようなサービス面を重点的に取り入れること
が必要である。
○来店者が直接商品を確認できる。
(見て、触れる)
○納得するまで質問ができる。
○アフターサービスの充実(設置、修理)
上記を実施するために、以下の具体策を提案した。
①接客方法も含めた店の雰囲気の改善
・顧客が何度も足を運んでくれるだけの店の雰囲気づくり
②商品知識の向上
・顧客の質問に答えられるだけの十分な商品知識と説明力
③取り付け、修理などの対応を行うための装備と人員の確保
・いつでも、どこへでも行ける体制
(3)個店そのものの活性化
下記の基本的な方向性により、個店独自の魅力を造り出すことが必要である。
○従前の経営方法から発想の転換を行う。
↓
○創意工夫を凝らし、新しいアイデアを出す。
↓
○消費者の目を引き付ける。
前記(1)
、
(2)とも共通する対策であるが、上記の方向性をもとに下記の具体策を提案した。
①特徴のある個店の創出
・オリジナル製品の開発・販売
・国産の高品質で安全性の高い商品の販売
・通販サイトへの参入による個性的な商品のPRと販路開拓
・旅行者などにより口コミやSNSなどによりPRしてもらえるような店づくり
②異業種間や学生とのコラボレーション
・飲食店やサービス業などと小売業の融合
③消費者のニーズに合った品揃え
・品揃えの幅が広い店づくり
・特定の顧客層をターゲットにした特化商品の販売
④個店独自のサービス
〇外国人観光客への様々なサービス
・英語のポップ作成
・付近の観光マップの作成,配布
⑤常連客に対する優遇措置
・優良常連客に対する特別セールなどの実施
⑥経営の効率化
・業務行程の見直し
・パソコンシステム導入などによる業務の効率化
⑦店内の改装
・照明、陳列方法の改善
・諸設備の更新
⑧従業員教育の徹底
・接客、身だしなみ、商品知識の向上等
(4)組合の活性化
上記(1)
、
(2)
、
(3)を実施するには各個店だけの力だけでは限界があり、組合が強力なリ
ーダーシップを発揮し、個店に対し方向性を示し指導して行かなければならない。
そのためには、次の基本的な方向性のもとに組合組織の活性化を行わなければならない。
○組合の組織形態を見直す。
↓
○組合の組織強化を図る。
↓
○組合員がメリットを感じることができる活動を行う。
上記の基本的な考え方により、下記の具体策を提案した。
①組合組織の強化
・イニシアティブの発揮
・理事長等のリーダーを支える下部組織の強化
・青年部の育成
・組合役員の後継者育成
②傘下の小売店へのきめ細かい指導
③共同仕入れの実施
④国庫補助,行政,団体が行う助成事業の積極的な活用
⑤集客の増加を図るための特徴的なイベントの開催
・各種フェアーなどの催し物の開催
⑥共通商品券、サービス券、ポイントカードなどの発行
⑦行政が行う空き店舗対策との連携
・チャレンジショップ,保育サービス施設,高齢者交流施設
⑧各種イベントなどの誘致
・学生が行うイベント等
⑨新規商業施設の創出
・他組合、商店街組織との連携による学校跡地活用
7
中小小売商業活性化のための小売商総連合会の対応
小売商総連合会は、小売商業活性化のため、行政、支援団体との連携を図りながら、組合、個
店と手を携えて目標を共有し、協働して活性化対策を実施しなければならない。
小売商総連合会は、下記の活動を基本として、そのための取り組みを行う。
○最新の情報を収集し、組合、個店に提供する。
〇各種調査を行い、助言等を行う。
○経営改善に役立つ多方面の支援を行う。
〇中小小売商業活性化のための企画・立案及び実施支援を行う。
具体的な取り組み内容は以下の通りである。
(1)各種調査
①商業界の動向
②傘下組合、他業種の実情
③成功している個店の状況
④活発な活動を行っている組合、団体等の状況
(2)情報収集
①行政、支援団体からの最新情報の収集と組合への発信
(3)研修・セミナー開催
①経営に役立つ内容
(4)各種助成事業実施支援
①行政・支援団体との窓口業務
②申請書等の作成
(5)組合、個店の新規取り組み内容の検討及び実施支援
①消費喚起のための各種取り組みの検討及び支援
②その他、活性化のための取り組みの検討及び支援
8
行政及び支援団体の支援
中小小売商業の活性化対策は、それぞれの組合あるいは個店のみだけで実施するのは非常に難
しい。
中小小売業者や組合が積極的に活性化対策実施のきっかけを掴めるよう次の方策を基本とした
支援対策を実施していただければありがたい。
○活性化対策実施のための制度等の改正及び新設
○幅広い助成制度の新設及び柔軟な運用
具体策は、下記の通りである。
(1)研修・セミナーの開催
①新規開業者など
②後継者育成
(2)組合実施事業に対する支援
・助成対象事業の拡充
(3)空き店舗活用のための支援
・新規出店店舗に対する助成
(4)新規開業者に対する支援
・開業のための助成
(5)店舗改装のための支援
・設備更新などに対する助成
(6)あらゆる情報の提供
【おわりに】
大型量販店、ネット通販、さらにはコンビニの進出により、実に手軽にあらゆるものが手に入る
時代になりました。
そのために商店街からはめっきり賑やかさが消え、昔ながらの町の人たちのコミュニケーション
の場がなくなってしまいました。
ある商店街の店主が、生鮮三品と日用雑貨の店がなくなってから一気に人通りが少なくなったと
言っていました。日常生活に必要なものが近所で買えなくなったということが、中小小売業衰退の
始まりであったような気がします。
時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、このような時代に中小小売業者が現状に甘んじて
ただ手をこまねいて、今までどおりの商いを行っているだけではいずれ行き詰まります。
時代の要請はその時々、刻々変化します。この変化に乗り遅れず、時流に合わせた経営を行うこ
とが中小小売業衰退を止める唯一の方法であると考えます。
そのキーワードは、今必要なもの、欲しいものがすぐ手に入ること、そして何度でも足を運んで
みたいと思わせる魅力ある店づくりではないかと思います。
この方法を探るため、商業活性化検討委員会では、組合、経営者の方々からヒアリングを行い、
実情を把握したうえで各種の対策を提案しました。
対策の柱は、中小小売商業界に漂うあきらめムードを一掃し、経営者が今後の進むべき方向を見
極め、経営者と組合が一体となってお互いに知恵を出し、工夫し、大胆な経営革新を行うことです。
そのために、それぞれの経営者自身及び各組合が現在置かれている現状を正しく認識し、思い切
った発想転換を行うことと、次世代を担う若者をつなぎとめることが早急に求められます。
中小小売業の活性化とは、即ち経営者の意識が変わり、商品が変わり、経営方法が変わることだ
と考えます。
本委員会で論議し、一定の集約を行った本報告書が中小小売業を営む経営者の方々の一助になれ
ば幸いです。