医師・薬剤師の先生方へ 中外製薬株式会社 安全管理責任者 ゼルボラフ®錠 240mg 第5回 市販直後調査における 副作用収集状況のご報告 −BRAF 遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫− 市販直後調査実施期間 2015年2月26日 ∼ 2015年8月25日 本報告の対象期間 2015年2月26日 ∼ 2015年7月25日 謹啓 先生方におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご厚誼 にあずかり、厚く御礼申し上げます。 さて、弊社は、2014年12月26日に「BRAF 遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」を適 応として「ゼルボラフ®錠240mg」(一般名:ベムラフェニブ、以下本剤)の承認を取得し、2月26日 の販売開始日より、医薬品リスク管理計画に基づき市販直後調査(以下本調査)を実施しております。 本調査は、本剤使用前の製品概要および安全性を中心とした適正使用情報の提供と市販直後の重篤 な副作用等を迅速かつ網羅的に把握し、発売後早期に必要な安全対策を講じることにより副作用等に よる健康被害を最小限にすることを目的に実施しております。 このたび、発売から五ヵ月後の副作用収集状況につきまして、ご報告いたしますので、ご一読いた だき、日常診療にお役立てくださいますようお願い申し上げます。 なお、本剤との関連が疑われる副作用等がみられた場合には、速やかに弊社医薬情報担当者(MR) までご連絡いただきますよう、お願い申し上げます。 謹白 ●副作用の収集状況 全副作用 38例91件 主な副作用 関節痛11例11件、発熱6例9件 重篤な副作用 11例22件 主な副作用 発熱3例5件、発疹1例2件、皮膚障害2例2件、関節痛2例2件 投与患者数 ■自発報告/製造販売後調査 74例 当該調査期間中に本剤の投与を予定している症例数 ■製造販売後臨床試験(治験からの移行症例) 3例(2014年12月26日承認時点) ※副作用とは、医師または企業により本剤との因果関係が否定できないと判断された事象を示しています。 ※重篤度は医師評価に基づき記載しておりますが、弊社の判断により「重篤」とする場合があります。 本資料の概要については、弊社ウェブサイトにてもご覧いただけます。 ※一ヵ月ごとに更新予定 http://chugai-pharm.jp/ 【アクセス方法】 「医療従事者向け」「あなたは医療従事者ですか?」(「はい」をクリック)→「製品・安全性」 →「製品情報」→「(製品名から探す)ゼルボラフ錠240mg」→「再審査・市販後調査等の結果」 1 適正使用のお願い 有棘細胞癌: 有棘細胞癌があらわれることがありますので、定期的に皮膚の状態を確認してください。 皮膚の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者さんを指導してください。 有棘細胞癌が発現した場合には、外科的切除等の適切な処置を行ってください。 QT間隔延長: QT間隔延長があらわれることがありますので、本剤の投与開始前には心電図検査及び電解質測定を行 ってください。また、以下の場合には本剤の投与を避けていただくようお願いいたします。 QTc*のベースライン値が500msを超える場合 補正できない電解質異常が認められる場合 QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者さんについては、投与の可否を必要に応じて循環器専 門医にご相談ください。 本剤投与期間中は定期的に心電図検査及び電解質測定を行い、異常が認められた場合には、減量、休薬 又は投与を中止し、適切な処置を行ってください。 必要に応じて、循環器専門医への相談を検討してください。 * QTc:心拍数で補正した心電図QT間隔 ブドウ膜炎: ブドウ膜炎等の重篤な眼障害があらわれることがありますので、定期的に眼の異常の有無を確認してく ださい。 眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者さんを指導してください。 異常が認められた場合には、減量、休薬又は投与を中止し、適切な処置を行ってください。 必要に応じて、眼科医への相談を検討してください。 皮膚障害: 皮膚障害があらわれることがあります。また、重篤な皮膚障害として、皮膚粘膜眼症候群(StevensJohnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症候群(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、多形紅斑、 紅皮症(剥脱性皮膚炎)等があらわれることがあります。 本剤投与期間中は観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、適切な処置を行 ってください。 肝障害: 肝不全、肝機能障害、黄疸等の肝障害又はALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビンの上昇等があら われることがあります。 患者さんの状態に応じて定期的に肝機能検査を行ってください。 本剤投与期間中に異常が認められた場合には、減量、休薬又は投与を中止するなど、適切な処置を行っ てください。 2 ゼルボラフ®錠 副作用情報収集状況【集計期間2015/2/26 ∼ 2015/7/25】 現在詳細調査中の症例が含まれており、今後、入手する情報により副作用名、重篤性、関連性等が変更と なる場合があります。 重篤な副作用症例一覧 当該集計期間中に収集された重篤な副作用は、11例22件でした。 市販直後調査期間中に収集した重篤な副作用症例一覧注1) No. 性別 年齢 合併症 副作用名 1 女性 70歳代 皮膚障害 2 女性 20歳代 肝障害 高カリウム血症 3 本剤投与から 発現までの期間 注2) 転帰 発現から転帰 までの期間 4日 回復 17日 21日 軽快 22日 2日 軽快 47日 併用薬注3) フェキソフェナジン塩酸塩 ヒトインスリン(遺伝子組換 え)、ブドウ糖、プレドニゾ 男性 40歳代 ロン、ポリスチレンスルホン 発熱 3日 軽快 16日 発疹 14日 軽快 31日 酸カルシウム アムホテリシンB、グリチル リチン酸一アンモニウム・グ 関節痛 14日 軽快 31日 リシン・L−システイン配合 剤、クロルフェニラミンマレ 発熱 14日 軽快 31日 イン酸塩、スルファメトキサ ゾール・トリメトプリム、フ 皮膚障害 4 52日 軽快 7日 ェキソフェナジン塩酸塩、フ ルオロメトロン、プレドニゾ 女性 40歳代 粘膜障害 52日 軽快 7日 ロン、プレドニゾロンコハク 酸エステルナトリウム、ブロ 発熱 52日 軽快 7日 発疹 72日 軽快 13日 チゾラム、ラベプラゾールナ トリウム、レバミピド、レボ メプロマジンマレイン酸塩、 ロキソプロフェンナトリウム 5 発熱 72日 軽快 13日 第7脳神経麻痺 37日 未回復 − 筋力低下 31日 軽快 25日 8日 回復 6日 34日 回復 10日 男性 60歳代 6 男性 40歳代 発熱 7 女性 80歳代 高血圧 皮膚有棘細胞癌注4) 3 水和物、酸化マグネシウム No. 性別 年齢 合併症 副作用名 本剤投与から 発現までの期間 注2) 転帰 発現から転帰 までの期間 併用薬注3) センノシド、テプレノン、ト ラマドール塩酸塩・アセトア ミノフェン配合剤、ブロチゾ 8 女性 30歳代 薬疹 12日 不明 4日 ラム、レバミピド、ロキソプ ロフェンナトリウム水和物、 酸化マグネシウム、十全大補 湯、大建中湯 急性腎不全 9 女性 60歳代 16日 未回復 − 18日 軽快 不明 12日 回復 10日 関節痛 6日 回復 3日 筋肉痛 6日 回復 3日 スティーブンス・ ジョンソン症候群 10 男性 50歳代 多形紅斑 プレドニゾロン、ロキソプロ フェンナトリウム水和物 11 男性 80歳代 今後の調査により副作用名、重篤性、関連性等が変更となる場合があります。 注1)副作用名は報告された副作用名を MedDRA(国際医学用語集の一つ)ver.18.0の基本語(PT)に読み替えています。 注2)本剤投与開始日を1日目とし、副作用発現日までの日数を記載しています。 注3)併用薬には、本剤と併用されている薬剤、および前治療薬のうち被疑薬として報告された薬剤が含まれる場合があります。 注4)皮膚有棘細胞癌とケラトアカントーマの中間的な形態と報告されました。 4 症例概要(重篤な副作用) 対象調査期間中に規制当局(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)へ報告した重篤な副作用のうち、 特記すべき重篤な副作用について経過概要を以下に記載します。 重篤な皮膚障害について 対象調査期間中において薬疹1例1件、多形紅斑1例1件、発疹1例2件、皮膚障害2例2件、スティーブンス・ ジョンソン症候群1例1件が報告されました。 このうち詳細情報が得られている2例について、症例概要を記載いたします。 症例 No.4(発疹、皮膚障害等) 前治療でニボルマブを投与し、最終投与日から26日後に本剤を1920mg/日で投与開始。本剤投与開始14日 目に Grade4の皮疹が発現し、本剤を休薬。軽快し、本剤投与開始52日目に960mg/日で投与再開したとこ ろ、2時間後に全身に皮疹および眼の粘膜に症状が発現、本剤を休薬しプレドニゾロンを1mg/kg 投与して 軽快した。 症例 No.8(薬疹) 前治療でニボルマブを投与し、最終投与日から21日後に本剤を1920mg/日で投与開始。数日後に手足末梢 に紅斑が発現、本剤投与開始10日目に38℃を超える発熱があったため本剤を960mg/日へ減量。本剤投与 開始12日目に皮疹が全身に広がり緊急入院。採血の結果、肝機能異常(Grade2-3)の発現も認められた。 プレドニゾロンを投与し軽快後に本剤投与再開し、朝240mg を内服したところ、2時間後に39℃の発熱、 顔面紅斑、顔面浮腫が発現、眼球結膜も充血しており、本剤投与を中止しプレドニゾロンを投与したところ 翌日軽快した。 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者様は【禁忌】です。本剤は投与しないでください 以下の副作用は、再投与再発時に症状の重篤化のおそれがありますので、投与を中止してください。 ・アナフィラキシー ・スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症などの重篤な皮膚障害 皮膚有棘細胞癌について 対象調査期間中において有棘細胞癌が1例1件報告されました。 症例 No.7(皮膚有棘細胞癌) 本剤を1920mg/日で投与開始。本剤投与開始34日目に左前腕に角化性丘疹の発現を認め、翌日本剤を休薬 した。発現後翌日に直径3mm の角化性丘疹の生検を施行。皮膚生検結果にて有棘細胞癌またはケラトアカ ントーマの中間的な形態を示していると報告された。病変は皮膚生検の際に完全切除されており、発現後9 日目に本剤の投与を再開した。 重篤な肝障害について 対象調査期間中において肝障害が1例1件報告されました。 症例 No.2(肝障害) 本剤を1920mg/日で投与開始。本剤投与開始21日後に Grade3の肝障害が発現し、本剤を960mg/日に減 量。本剤投与開始28日後に Grade4(AST:1347IU/L、ALT:1092IU/L)に増悪したため、本剤を休薬、 肝庇護薬等の投与により軽快(AST:191IU/L、ALT:194IU/L)した。 5 副作用件数表 市販直後調査期間中に収集した副作用件数表 自発報告 注) 副作用 重篤 良性、悪性および詳細不明の新生物 (嚢胞およびポリープを含む) メラノサイト性母斑 * 皮膚の新生物 皮膚有棘細胞癌 代謝および栄養障害 * 脱水 重篤 計 非重篤 1 1 1 1 1 1 1 1 1 食欲減退 2 2 頭痛 1 1 第7脳神経麻痺 眼障害 臨床試験 1 * 高カリウム血症 神経系障害 非重篤 製造販売後 1 1 ぶどう膜炎 1 1 心臓障害 * 右脚ブロック 2 2 胃腸障害 * 白色便 1 1 悪心 1 1 肝機能異常 2 2 肝胆道系障害 肝障害 皮膚および皮下組織障害 1 1 ざ瘡 1 1 脱毛症 2 2 3 4 1 1 薬疹 1 紅斑 多形紅斑 1 1 結節性紅斑 1 1 過角化 1 1 * 間擦疹 1 1 稗粒腫 1 1 手掌・足底発赤知覚不全症候群 3 3 光線過敏性反応 3 3 そう痒症 1 1 発疹 2 5 皮膚障害 2 2 スティーブンス・ジョンソン症候群 1 6 1 8 4 1 自発報告 副作用注) 筋骨格系および結合組織障害 重篤 非重篤 関節痛 2 9 筋力低下 1 筋肉痛 1 筋骨格硬直 腎および尿路障害 * 腎障害 腎機能障害 急性腎不全 生殖系および乳房障害 一般・全身障害および投与部位の状態 臨床検査 製造販売後 臨床試験 重篤 非重篤 11 1 5 6 1 1 1 1 1 1 1 1 * 子宮内膜萎縮 1 倦怠感 2 * 粘膜障害 1 発熱 5 計 1 2 1 4 9 血中ビリルビン増加 1 1 血中クレアチニン増加 1 1 心電図QT延長 1 1 好中球数減少 1 1 血小板数減少 1 1 1 1 * 血中ビリルビン異常 総計 22 64 0 * 添付文書の「使用上の注意」から予測できない副作用 注)副作用名は報告された副作用名を MedDRA(国際医学用語集の一つ)ver.18.0の基本語(PT)に読み替えています。 7 5 91 ゼルボラフ®錠をご使用いただく際は、以下の事項をご確認の上、適正に投与してください。 なお、本剤の使用にあたっては、最新の添付文書及び適正使用ガイドを併せてご参照ください。 【警告】 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもと で、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又は その家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。 【禁忌(次の患者には投与しないこと)】 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 【効能・効果】【用法・用量】(抜粋) ● BRAF 遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫 用法・用量 通常、成人にはベムラフェニブとして1回 960mg を1日2回経口投与する。 <効能・効果に関連する使用上の注意>(抜粋) 1. 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、BRAF 遺伝子変異が確認された患者に 投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断薬を用いること。 2. 【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を 行うこと。 3. 本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。 【使用上の注意】(抜粋) 1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) (1) 重度の肝機能障害のある患者[安全性は確立していない。] (2) QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者[QT間隔延長が起こるおそれがある。](添付文書 「重要な基本的注意」「重大な副作用」の項参照)。 2. 重要な基本的注意 (1) 有棘細胞癌があらわれることがあるので、定期的に皮膚の状態を確認すること。また、皮膚の異常が 認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること(添付文書「重大な副作 用」の項参照)。 (2) 皮膚以外の部位に扁平上皮癌があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場 合には、適切な処置を行うこと(添付文書「重大な副作用」の項参照)。 (3) QT間隔延長があらわれることがあるので、本剤の投与開始前には心電図検査及び電解質測定を行う こと。投与開始前にQTcのベースライン値が500msを超える場合又は補正できない電解質異常が認 められる場合には投与を避けること。本剤投与期間中は定期的に心電図検査及び電解質測定を行い、 異常が認められた場合には、減量、休薬又は投与を中止し、適切な処置を行うこと(添付文書「用 法・用量に関連する使用上の注意」、「重大な副作用」の項参照)。 (4) 肝不全、肝機能障害、黄疸等の肝障害又はALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビンの上昇等があ らわれることがあるので、患者の状態に応じて定期的に肝機能検査を行うこと(添付文書「用法・用 量に関連する使用上の注意」、「重大な副作用」の項参照)。 (5) 光線過敏症があらわれることがあるので、外出時には帽子や衣類等による遮光や日焼け止め効果の高 いサンスクリーンの使用により、日光やUV光線の照射を避けるよう患者を指導すること。 (6) ブドウ膜炎等の重篤な眼障害が報告されているので、定期的に眼の異常の有無を確認すること。ま た、眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。 2015年2月改訂 (第3版) 2015年8月末日作成 8
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