絶縁層にテフロンを用いたGEM の性能評価

絶縁層にテフロンを用いたGEM
の性能評価
大阪市立大学 理学研究科 数物系専攻
もくじ
・イントロ
・基本特性
・中性子実験
吉田武史
阪市大、KEKA、農工大B
中野英一、宇野彰二A、大橋賢太B、池口直人
KEK測定器開発研究室 MPGDグループ
Introduction
• GEMには放電により壊れやすいと
いう欠点がある
銅の溶解
原因
• 絶縁層の炭化によるものと仮定
解決策
• 耐アーク性に優れたテフロンを絶
縁層に使用した
ポリイミド
(PI)
耐アーク性
(sec)
135
液晶ポリマー テフロン
(LCP)
(PTFE)
185
>300
参照:小宮一毅(東京都立産業技術研究センター)
2012年MPGD研究会発表
炭化
テフロンについて
• PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
• 通称テフロン
• 耐アーク性に優れている
• 但し、摩擦係数が小さいので電極の接着が
難しい
– >電極との密着性がよい基板が見つかった
今回使用したGEMの紹介
以下の2種類を使用した
・N-PTFE-GEM ・R-PTFE-GEM
N,Rは基板の購入先の頭文字からとった
N-PTFE-GEM
孔径70μm
ピッチ140μm
約240μm
断面図
ガラスクロスの透過写真
テフロンGEMの表面
R-PTFE-GEM
• 絶縁層 〜100μm
• 電極 〜7μm
• テフロンの強度補強のため
フィラーと呼ばれる小さな粒
が絶縁層に入っている
• 孔径 70μm
• ピッチ 140μm
N-PTFE-GEMの孔の様子
• 先ほどの基板に今までのGEMと同様にCO2レーザー
で孔をあける
• 孔開けはサイエナジー社に委託
ガラスクロスの削り残りが見られた
140μm
100μm
70μm
GEMの断面図
測定方法
Gain、電場依存性、時間依存性の測定
のセットアップの一例
55Fe
2MΩ
Cathode
(mesh)
9MΩ
6mm
HV in
(3300V)
6MΩ
PTFEGEM1
4MΩ
2mm
6MΩ
PTFEGEM2
2mm
8MΩ
Read Out
2200pF (トリガー)
Fe-55でとったADCスペクトル
ガス Ar:CO2=(70:30)
Belle CDC Pre-AMP
信号
NIM & CAMAC
Gain
• R-PTFEはN-PTFEよりも絶縁層が厚いため、よ
り高い電圧を印加しなければ同程度のGain
は得られない
gain
10000
1000
N-PTFE
R-PTFE
100
530
580
630
680
ΔVgem
730
780
放電について
• N-PTFEには時間により放電数が減っていったのでその様子
を調べた
• 放電に耐えうる電圧(耐電圧)の測定、またその電圧での
Gainの比較
時間による放電数減少の様子
35
放電数(/100sec)
30
25
20
486V
15
564V
10
622V
5
0
0
100
200
300
400
耐電圧での
Gain
N-PTFE
R-PTFE
〜200
〜100
時間(min)
中性子検出で使用した電圧では
約1時間で放電が収まった
N-PTFE-GEMの方がより高いGain
で放電に耐えることがわかった
R-PTFE-GEMの電場依存性
Drift領域
Induction領域
1.1
1.2
1
0.9
relative gain
relative gain
1
0.8
0.7
0.6
0.5
0.8
0.6
0.4
0.2
0.4
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
Ed (kV/cm)
• 通常GEMと同様の結果に
なった
• Drift領域でGainが下がっ
ていくのはGEM表面に電
子が吸着される数が増え
たことによると思われる
4
0
0
2
4
6
8
10
Ei (kV/cm)
Drift領域の電場が弱い場合
ED=500V/c
m
ΔVGEM=320V
EI=1000V/cm
Drift領域の電場が強い場合
ED=3000V/c
m
ΔVGEM=320V
EI=1000V/cm
N-PTFE-GEMの電場依存性
Induction領域
1.3
1.4
1.2
1.2
1.1
1
relative gain
relative Gain
Drift領域
1
0.9
0.8
0.7
0.8
0.6
0.4
0.2
0.6
0
1
2
3
4
5
Ed (kV/ cm)
• Drift領域、induction領域によ
るGainの電場依存性を調べた
• Drift領域の電場依存性では開
口率が高いGEMと似た結果が
得られた
0
0
2
4
6
8
Ei (kV/cm)
100umGEMのdrift電場依存性
青:孔径90um
赤:孔径70um
10
Gainの時間依存性
• N-PTFE-GEMの方は約二時間で80%にGain
が落ちて安定
−> ガラスの削り残りが影響しているのか!?
• 一方、R-PTFE-GEMは少し振れるがほぼ一定
のGainを保つ
時間依存性(N-PTFE)
時間依存性(R-PTFE)
1.2
1
1
0.8
0.8
relative gain
1.2
0.6
0.4
0.6
0.4
0.2
0.2
0
0
0
500
1000
time(min)
1500
2000
0
500
1000
時間(min)
1500
中性子照射実験@北大LINAC
セットアップ
中性子
ビーム
2MΩ
Cathode
(10B-GEM)
HV in
1.5MΩ
1mm
テフロン
GEM
or
100μm
GEM
5.2MΩ
2mm
8.2MΩ
高抵抗素材
Read Out
0.8mmピッチのX−Yストリップ
ガス Ar:CO2=(70:30)
信号
①〜③のセットアップ
①N-PTFE-GEM × 1
②R-PTFE-GEM × 1
③100μmGEM × 1
④50μmGEM × 2
それぞれで直径0.5mmのPinhole
を使い、位置分解能を比較した
印加電圧特性
放電が起き始めたためプラトー領域に
届く前に止めた
70
60
50
40
30
20
10
0
N-PTFE
76
78
80
82
84
86
HV(%) 100% = 1780V
Counting rate (kHz)
Counting rate (kHz)
通常100um
40
30
20
10
0
78
80
82
84
86
88
HV(%) 100% = 1680
Counting rate (kHz)
通常50um2枚
R-PTFE-GEMでは必
要なGainに到達す
る前に放電が起き
てしまい、測定不可
能だった。
80
60
40
20
0
76
78
80
82
84
86
88
90
HV(%) 100% = 2400V
R-PTFE-GEMの取得画像。Gain不足でムラがある
N-PTFE
通常100um
通常50um2枚
σ = 0.93 mm
FWHM = 2.18 mm
σ = 0.70 mm
FWHM = 1.64 mm
σ = 0.66 mm
FWHM = 1.56 mm
テール付近の様子
• 絶縁層による中性子散乱の影響を3種類のGEMにより検証した
• イベントが一番多かったstripを中心として、両脇のstripでのイベントを足
して 3strip 分をピークの位置を揃えて比較した
• テール付近のイベント数はN-PTFEが一番少ないが中性子散乱が減った
とはまだ言い難い
2000
25
1800
50um2枚
1400
N-PTFE
1200
100um
1000
800
600
20
event数
event数
1600
15
50um2枚
10
N-PTFE
100um
400
5
200
0
91
96
101
106
ch
111
116
0
91
96
101
106
ch
111
116
まとめ
• 放電により壊れることは今のところない
• R-PTFEよりもN-PTFEから作ったGEMの方が放電が少な
く、Gainをかせぐことが出来る
• 但し、まだまだ放電を減らすように改良を考えていかな
ければならない
• N-PTFE-GEMを積層すると放電が多く、使えなかった
• 絶縁層による中性子散乱の抑制となっているかどうか
はこれからも調査する必要がある
おわり
Back Up
放電
• GEM裏面からトリガー信号を取り出し、放電の
信号が正の方向へ伸び、その信号の戻り値
が負の方向へ伸びる。その時-250mVを超え
た数をカウントしている
イメージ図
Padからの信号
-250mV
ライン
Padからの信号(反転)