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Vol.19 No.2 2015
香川県立中央病院麻酔科 部長 大山倍達 強く生きる言葉
大山喜子クリスティーナ 著
成甲書房
2010年
本体1,300円 + 税
井上 一由
武術の道を追求すること、医学の道を追求すること、
これらの道は相通ずるものがあるのではないでしょう
か。この本に、「私は拳の道一筋に四十年近く邁進し
てきた。苦しい修業もあった。世界中のあらゆる格闘
技をはじめ、猛牛や熊とも戦ったこともあった。私の
ことを超人といい、私の手を神の手といって称賛する
人もいる。しかし、私はそう呼ばれることが本意では
ない。それどころかむしろいやなのだ。なぜなら私に
とって空手道の奥義は、まだまだ遠くて険しい道だか
この本は、故・国際空手道連盟総裁・極真会館館
らである。私は奥義を究めるために懸命に努力してい
長・極真空手十段・大山倍達の生前の言葉、訓話を、
る一人の求道者に過ぎないのである。」
(「修業 鍛錬」
総裁の三女、喜子クリスティーナ氏がエピソードを添
篇より)
という一文があります。これは、医学の道にも
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えて綴った作品です。
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置き換えることができるのではないのでしょうか。
大山倍達は、1923年に朝鮮全 羅 北 道 金 堤 市で生ま
神の手を持った人たちはもちろんですが、すべての医
れ、1964年に日本国籍を取得し日本に帰化していま
学を志す者たちが、このような志を持ってもらいたい
す。1947年に開催された戦後初の空手道選手権で優
と思います。
勝、その後世界各国のさまざまな格闘技を研究し、直
接打撃制の空手
(極真空手・フルコンタクト空手)
を作
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単なる一武道家の戯言と思わず、一度手にとって読
んでもらえたら幸いです。
り出しました。東京都目白の自宅の野天道場、池袋の
バレエスタジオ跡の大山道場を経て、1964年国際空手
道連盟極真会館を設立し初代館長に就任、日本全国や
海外までその支部を設立しました。もちろん、医療関
係者の中にも極真空手を経験した者は多く、その大山
倍達の名は没後20年が経過した今でもカリスマ的存
在です。
この本には、ケンカの極意はもちろん、親子や夫婦、
師弟といった人間関係、人の道、そして最後は世界平
和までもが視野に入れて書かれており、一空手家であ
る大山倍達の倫理観の高さ、守備範囲の広さに脱帽で
す。全世界でベストセラーになった「What is Karate ? 」
など大山倍達は多くの著書を遺していますが、この本
はなかでも集大成ともいえます。大山倍達が自分を磨
くために格闘し、空手に人生を賭け、一途に道を追求
して得られた言葉の数々に感銘を受けます。
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プロフィール
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井上 一由 Kazuyoshi Inoue
香川県立中央病院麻酔科 部長
1994年:香川大学医学部卒業
同 年:高知医科大学整形外科
2000年:岡山大学医学部附属病院集中治療部
2001年:香川労災病院麻酔科
2003年:梶木病院麻酔科
2007年:岡山大学大学院医歯学総合研究科卒業
同 年:福山光南病院麻酔科
2008年:New York Medical College
客員研究員
2010年:岡山大学医学部歯学部附属病院
集中治療部
同 年:香川県立中央病院麻酔科 部長
(現在に至る)
趣味:空手、合気道、剣道、ビールを飲むこと