1 数列の定義とか

高 1(74 期)数学 1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.1
このレジュメは
♣ 永尾汎,岡部恒治 編.”第 4 章 数列”.三訂版 体系数学4.数研出版,2011,
p.92-122
♣ 矢野健太郎 監修,春日正文 編.”第 12 章 数列”.モノグラフ 公式集 五訂
版.科学振興新社,1996,p.170-184
♣ 長岡亮介.”第 7 章 数列”.本質の研究 数学 II+B.旺文社,2005,p.430-500
を参考に作成している.
教科書に載っていない定理などには,*印を付してある.
1 数列の定義とか
定義 1.1 (数列)
ある規則に従って次々に並んでいる数を数列(sequence of numbers)という.数列は一
般に
a1 , a2 , a3 , a4 , …, an , …
あるいは,
{an }
のように表す.
数列のそれぞれの数を項(term)という.a1 を初項,a2 を第 2 項,…an を第 n 項という.
例 1.2 (数列の例)
1. 自然数列:1, 2, 3, 4, 5, 6, …
2. 0 以上の奇数の列:1, 3, 5, 7, 9, …
3. 素数列:2, 3, 5, 7, 11, 13, …
4. 48 の約数の列:1, 2, 3, 4, 6, 8, 12, 16, 24, 48
定義 1.3 (有限数列・無限数列)
上の例 1.2 の 1, 2, 3 のように,項の個数が無限である数列を無限数列という.また,例
1.2 の 4 のように,項の個数が有限のものを有限数列という.有限数列における最後の項
のことを末項という.
定義 1.4 (一般項)
上の例 1.2 の 2 の数列の第 n 項は
an = 2n − 1
1
数列の定義とか
担当:岡崎正悟
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No.2
と n を使って表すことができる.このように,数列の第 n 項 an が n の式によって表され
るとき,これを一般項という.数列によっては一般項が n によって簡単に表されないこと
もある.
♣ さしあたり,”「一般項」とは「第 n 項」のこと”と考えて先に進むのが良い.
2 等差数列
定義 2.1 (等差数列の定義と一般項)
ある数から始まって次々と一定の数を加えて得られる数列を等差数列(Arithmetical
Progression)といい,加える一定の数を公差という.初項を a,公差を d とすると,等差
数列の一般項は
an = a + (n − 1)d
と表される.
*定理 2.2 (等差数列となる条件)
数列 an は次の条件が成り立つとき,等差数列となる.
(1)
an+1 − an = d・・・当たり前?
(2)
an+1 =
(3)
an = pn + q (p ̸= 0)・・・第 n 項が n の 1 次式
(4)
Sn = pn2 + qn (p ̸= 0)・・・(Sn は第 n 項までの和)Sn が n の定数項を欠く 2
an +an+2
・・・定理
2
2.3 参照
次式
証明 (1),(2) は明らか.
(3):an = pn ならば,an+1 − an = {p(n + 1) + q} − (pn + q) = p:公差 →(1)
(4):Sn = pn2 + qn + r ならば,a1 = S1 = p + q .n ≥ 2 のとき,
an = Sn − Sn+1 = (pn2 + qn) − {p(n − 1)2 + q(n + 1)} = 2pn − p + q
これは n = 1 のときも成立.よって,an = Sn − Sn+1 = 2pn − p + q → (3)
定理 2.3 (等差数列の中項)
a, b, c がこの順で等差数列となっているとき,
b=
2
等差数列
a+c
2
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が成り立つ.
定義 2.4 (調和数列)
各項の逆数が等差数列をなす数列を調和数列(Harmonic Progression)という.
*定理 2.5 (調和数列の中項)
a, b, c がこの順で調和数列となっているとき,
b=
2ac
a+c
が成り立つ.
公式 2.6 (等差数列の和)
初項 a,公差 d,末項 l( = an ),項数 n の等差数列の和 Sn は
1
n(a + l)
2
1
Sn = n{2a + (n − 1)d}
2
Sn =
(1)
(2)
となる.
公式 2.7 (自然数の数列の和)
次の公式は覚えておくと便利である:
1
n(n + 1)
2
1 + 3 + 5 + … + (2n − 1) = n2
1+2+3+…+n=
3 等比数列
定義 3.1 (等比数列の定義と一般項)
ある数から始まって,次々と一定の数をかけて作られる数列を等比数列(Geometrical
Progression)という.掛ける一定の数を公比という.初項を a,公比を r とすると,等比
数列の一般項は
an = a × rn−1
と表される.
*定理 3.2 (等比数列となる条件)
数列 an は次の条件が成り立つとき,等比数列となる.
3
等比数列
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(1)
an+1 = ran ・・・定義通り.
(2)
an+1 2 = an an+2 ・・・定理 3.4 参照
(3)
Sn = p(rn − 1) (r ̸= 1)
No.4
定理 3.3 (等比数列の中項)
a, b, c がこの順で等比数列となっているとき,
b2 = ac
が成り立つ.
♣ これを満たす b は 2 つあるということに注意しよう.
定理 3.4 (等比数列の和)
初項 a,公比 r,項数 n の等比数列の和 Sn は
a(1 − rn )
a(rn − 1)
=
1−r
r−1
r = 1 のとき, Sn = na
r ̸= 1 のとき, Sn =
となる.
♣ r ̸= 1 のときの等比数列の和は,末項 l を用いれば,
Sn =
rl − a
r−1
と書くこともできる.
3
等比数列
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No.5
4 和の記号 Σ
公式 4.1 (数列の和の公式:自然数の累乗の和と連続自然数の積の和)
n
∑
k=1
n
∑
1
k = 1 + 2 + 3 + · · · · · · + n = n(n + 1)
2
n
∑
特に,
1=n
k=1
1
n(n + 1)(2n + 1)
6
k=1
{
}2
n
∑
1 2
1
3
3
3
3
3
2
k = 1 + 2 + 3 + · · · · · · + n = n (n + 1) =
n(n + 1)
4
2
k=1
n
∑
k=1
n
∑
k=1
n
∑
k 2 = 12 + 22 + 32 + · · · · · · + n2 =
k 4 = 14 + 24 + 34 + · · · · · · + n4 =
1
n(n + 1)(2n + 1)(3n2 + 3n + 1)
30
k(k + 1) = 1 · 2 + 2 · 3 + 3 · 4 + · · · · · · + n(n + 1) =
1
n(n + 1)(n + 2)
3
k(k + 1)(k + 2) = 1 · 2 · 3 + 2 · 3 · 4 + · · · + n(n + 1)(n + 2) =
k=1
1
n(n + 1)(n + 2)(n + 3)
4
♣ Σ が出てきたら,とりあえず,どんな和を表しているのか書き下してみると良い.
定理 4.2 (Σ の性質:「線型性」)
Σ の性質として,以下の性質(「線型性」という)が成り立つ(p は k に無関係な定数):
n
∑
(ak + bk ) =
k=1
n
∑
k=1
n
∑
ak +
k=1
pak = p
n
∑
n
∑
bk
k=1
ak
k=1
♣ これらをまとめて,
n
∑
k=1
(pak + qbk ) = p
n
∑
k=1
ak + q
n
∑
bk
k=1
と表すこともある.
4
和の記号 Σ
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No.6
5 いろいろな数列
5.1 階差数列
ここでは,数列の項の差をとってできる数列を考えよう.
定義 5.1 (階差数列)
ある数列の項の差をとってできる数列のことを階差数列という.例えば,
{an } :
a1
{bn } :
a2
b1
{cn } :
a3
b2
c1
a4
b3
c2
···
b4
c3
···
a5
···
といった数列を考えるとき,
• {bn } は {an } の第一階差数列:bn = an+1 − an • {cn } は {an } の第二階差数列:cn = bn+1 − bn
などという.
練習 5.2 次の数列の階差数列はどのような数列か.
(1)
2 , 4 , 9 , 17 , 28 , 42 , …
(2)
1 , 2 , 5 , 14 , 41 , 122 , …
次に,階差数列の一般項を求めてみよう.数列 {an } の階差数列を {bn } とすると,
b1 = a2 − a1
b2 = a3 − a2
b3 = a4 − a3
……
bn−1 = an − an−1
5
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No.7
となる.これらの等式の辺々を足すと,
b1 + b2 + b3 + … + bn−1 = an − a1
∴ an = a1 + b1 + b2 + … + bn−1
= a1 +
n−1
∑
bk
k=1
となる.まとめると,以下のようになる;
定理 5.3 (階差数列の一般項)
数列 {an } の階差数列を {bn } とすると,n ≥ 2 のとき,
an = a1 +
n−1
∑
bk
k=1
∗ この関係を利用すると,数列 {an } の一般項が未知であっても,その階差数列 {bn } と初
項 {an } が分かれば,an を計算することができる.
♣ この式は覚えるのではなく,自力で計算して出せるように練習しよう.
♣ Σ の終点が n ではなく n − 1 であるという点に注意しよう.
例 5.4 次の数列 {an } の一般項を求めよ.
1, 4, 9, 16, 25, 36, …
♣ 規則性を見れば an = n2 とすぐに分かる.このような数列を平方数列とも呼ぶ.
練習 5.5 次の数列 {an } の一般項を求めよ.
(1)
-1 , 2 , 7 , 14 , 23 , 34 , 47 , …
(2)
3 , 5 , 9 , 17 , 33 , 65 , …
(3)* 2 , 10 , 30 , 68 , 130 , 222 , …
5
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No.8
5.2 数列の和と一般項
以下のことは,ごくごくあたりまえのことだが,数列の和が与えられている時に一般項
を求めるときに用いられる.
定理 5.6 (数列の和と一般項)
数列 {an } の初項 a1 から第 n 項までの和を Sn とすると,
{
a 1 = S1
an = Sn − Sn−1 (n ≧ 2)
例 5.7 初項から第 n 項までの和 Sn が Sn = n2 + 5n で表される数列 {an } の一般項を
求めよ.
練習 5.8 次の各問に答えよ.
(1)
初項から第 n 項までの和 Sn が次の式で表される数列 {an } の一般項を求めよ.
(a) Sn = 3n2 − n
(b) Sn = 2n − 3
(2)
数列 {an } が次の関係式を満たすとき,一般項 an を求めよ.
a1 + 2a2 + 3a3 + · · · + nan = n(n + 1)(n + 2) (n = 1, 2, · · · )
5
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No.1
5.3 和の求め方の工夫
数列の和を求める際に,工夫することによって求めることが出来る場合を 2 つ紹介
する.
一般項が n の分数式で表される場合
5.3.1
一般項が分数式になっている場合,分数式を部分分数分解をすることで数列の和が簡単
に求まるようになる場合がある.部分分数分解のやり方について復習しておこう;
例 5.9 次の分数式を部分分数分解せよ. (1)
(3)
1
k(k+1)
1
(2k−1)(2k+1)
=
1
2
(
1
2k−1
−
1
2k+1
(2)
)
1
k(k+1)(k+2)
公式 5.10 (分数形の数列の和)
n
∑
k=1
1
1
1
1
1
1
=
+
+
+ ··· +
=1−
k(k + 1)
1·2 2·3 3·4
n(n + 1)
n+1
n
∑
1
1
1
1
1
=
+
+
+ ··· +
k(k + 1)(k + 2)
1·2·3 2·3·4 3·4·5
n(n + 1)(n + 2)
k=1
{
}
1
1
1
n(n + 3)
=
−
=
2 1 · 2 (n + 1)(n + 2)
4(n + 1)(n + 2)
証明 上の式については,
1
1
1
= −
k(k + 1)
k k+1
より,
n
∑
k=1
1
=
k(k + 1)
(
) (
)
(
)
1
1 1
1
1
1
1−
+
−
+ ··· +
−
=1−
2
2 3
n n+1
n+1
練習 5.11
1
1
=
k(k + 1)(k + 2)
2
5
いろいろな数列
{
1
1
−
k(k + 1) (k + 1)(k + 2)
}
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No.2
を利用して,公式 5.9 の 2 つ目の式を導け.
練習 5.12 恒等式
1
(2k−1)(2k+1)
S=
=
1
2
(
1
2k−1
−
1
2k+1
)
を利用して,
1
1
1
1
+
+
··· +
1·3 3·5 5·7
(2n − 1)(2n + 1)
を求めよ.[ cf : 問題集:P.60 - 76 ]
練習 5.13 数列
√
の第 k 項は − k +
1
1
1
√
√ ,√
√ ,√
√ ,…
1+ 2
2+ 3
3+ 4
√
k + 1 で表されることを示し,この数列の初項から第 n 項までの和
を求めよ.[ cf : 問題集:P.60 - 77 ]
*練習 5.14 次の数列の初項から第 n 項までの和を求めよ.[ cf : 問題集:P.60 - 78 ]
(1)
5
7
3
,
,
,···
12 · 22 22 · 32 32 · 42
(2)
1 2 3
, , ,···
2! 3! 4!
【補足】数列の和と階差数列
数列 {an } の第 n 項までの和を Sn とおく.数列 {Sn } の階差数列をとると,
Sn+1 − Sn = (a1 + a2 + a3 + · · · + an + an+1 ) − (a1 + a2 + a3 + · · · + an )
= an+1
となる.この式が表すことは,第 n 項までの和の階差数列をとると,元の数列と本質的に
は同じもの(正確には,1 項だけずれている数列)になるということである.例を示そう.
【例 1】
{an } = {1, 4, 10, 19, 31, 46, · · · }
のとき,初項から第 n 項までの和 Sn を第 n 項にもつ数列を {Sn } とその階差数列 {bn }
は,
{Sn }= {1, 5, 15, 34, 65, 111, · · · }
{bn }= {4, 10, 19, 31, 46, · · · }
5
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No.3
となり,an = bn+1 がいえる.
【例 2】 数列 {an } を 1 から始まる自然数の列としたとき,上と同じようにして an = bn+1
がいえることを自力で確かめてみよう.
以上より,項が 1 つ分だけずれていることを無視すれば,「第 n 項までの和をとる」こ
とと「階差数列」をとることがちょうど逆の操作になっているということがいえる.こ
の原理を利用すると,与えられた数列 {an } の和を求めるのが簡単になる.先ほどの練習
5.12 でいうと,数列
1
an = √
√
n+1+ n
(n = 1, 2, 3, · · · )
について,有理化をすると,
√
√
n+1− n
an = √
√ √
√
( n + 1 − n)( n + 1 − n)
√
√
= n+1− n
という形になってくれることに気付けば,数列 {an } の和は
a1
a2
a3
···
+) an
a1 + a2 + a3 + · · · + an
より,
n
∑
ak =
√
=
=
=
√
√
2
−
√1
√
√3 − √2
4− 3
=
=
√
√
n + 1 − √n
√
n+1− 1
n+1−1
k=1
と求められる.
このように,数列 {an } の和を求めるためには,{an } を階差数列にもつ数列 {An },つ
まり,
an = An+1 − An
を見つけると,
n
∑
ak = An+1 − A1
k=1
と簡単になる.与えられた数列 {an } に対して,このような {An } は一般にいくらでもあ
るが,そのうち一つを見つければ良い.上の例で言えば,An =
5
いろいろな数列
√
n である.
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5.3.2
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.4
等比数列の和の公式の導出の利用(【等差】×【階差】の数列の和)
公比 r ̸= 1 の場合の等比数列の和の導出を再確認しておこう:
初項 a,公比 r,項数 n の等比数列の和 Sn は
r ̸= 1 のとき, Sn =
a(1 − rn )
a(rn − 1)
=
1−r
r−1
となる.
証明 Sn から rSn を引くと,
Sn
−) rSn
(1 − r)Sn
よって,
= a + ar + ar2 + · · · + arn−1
=
ar + ar2 + · · · + arn−1 + arn
= a(1 − rn )
a(1 − rn )
Sn =
1−r
この手法を利用して,次のような問題を問いてみよう.
例 5.15 次の和 S を求めよ.[ cf : 問題集:P.60 - 79(2) ]
S = 1 + 2x + 3x2 + · · · + nxn−1
♣ 和 S の各項は,等差数列 1, 2, 3, · · · , n と等比数列 1, x, x2 , · · · , xn−1 の各項どうし
の積となっている.
♣ 等差数列の和の公式と同様に,x = 1 の場合と x ̸= 1 の場合で場合分けが必要とい
う点に注意しよう.
練習 5.16 次の和 S を求めよ.[ cf : 問題集:P.60 - 79(1),(3) ]
S = 1 · 1 + 2 · 3 + 3 · 32 + · · · + n · 3n−1
練習 5.17 x ̸= 1 のとき,次の和 S を求めよ.[ cf : 問題集:P.60 - 79(2) ]
S = 1 + 3x + 5x2 + · · · + (2n − 1)xn−1
5
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No.5
5.4 群数列
中学入試の問題などでこのような問題を見たことはないだろうか.
1 より小さい分数が
1
2
から
19
20
まで次のように並んでいる数列の 52 番目の分数はい
くつか.
19
1 1 2 1 2 3 1 2 3 4 1 2 3 4 5 1 2
, , , , , , , , , , , , , , , , ,...,
2 3 3 4 4 4 5 5 5 5 6 6 6 6 6 7 7
20
(2013 筑波大附)
このような数列の場合,数列全体を見るだけでは規則性は見えないが,いくつかのまとま
り(=群)を作ることで規則性を見出すことができる.
定義 5.18 (群数列)
与えられた数列(=原数列)に,規則性をもって項の間に仕切をいれていき,グルー
プ(=群)に分けてできる数列を群数列という.
a1 , a2 | a3 , a4 , a5 | a6 , a7 , · · · | · · · · · · | · · · an · · · | · · ·
| {z }
| {z } | {z } | {z }
第1群
第2群
第3群
第l群
♣ 群数列は,一般の数列に群構造があるぶん複雑である.スーパーマリオで例える
と,1-1,1-2,1-3,1-4 というステージでワールド 1 が構成されてて,2-1,2-2,2-3,2-4
というステージでワールド 2 が構成されてて…というふうになっているが,1-1 と
か 2-3 とかの各ステージが数列の項で,ワールド XX というのが群にあたる.
5
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No.6
群数列の基本の考え方
数列 {an } を a1 からいくつかずつまとめて群を作り,第 1 群には p1 個,第 2 群には
p2 個,· · · 第 n 群には pn 個含まれているようにするときを考える;
a1 , a2 , · · · , ap1 | ap1 +1 , ap1 +2 , · · · , ap1 +p2 | · · · · · ·
|
{z
} |
{z
}
第 1 群: p1 個
第 2 群: p2 個
· · · , ap1 +p2 +···+pn−1 | ap1 +p2 +···+pn−1 +1 , · · · , ap1 +p2 +···+pn | · · ·
|
{z
}
第 n 群: pn 個
(1)
第 n 群の初項は,原数列の (p1 + p2 + · · · + pn−1 ) + 1 番目の項で,末項は原
数列の p1 + p2 + · · · + pn−1 + pn 番目の項
(2)
第 n 群に含まれる数の和は,原数列の和 Sn について,
Sp1 +p2 +···+pn − Sp1 +p2 +···+pn−1
である.イメージ的に書くと,
(第 1 群) | (第 2 群) | · · · | (第 n − 1 群) |(第 n 群) |
{z
}
|
|
ここまでの和=Sp1 +p2 +···+pn−1
{z
}
ここまでの和=Sp1 +p2 +···+pn
である.
この 2 つの考え方 (特に,(1) が重要) と
• 原数列の n 番目の項:an (an は一般項のように n の式で表されるとは限らない)
• 原数列の項数:n
• 「第 l 群の m 番目」を示す l と m
のそれぞれの対応関係を考えることで,問題を解いていく.
以下,群数列の様々な問題を解きながら上記の考え方を説明していく.
5
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No.7
例 5.19( cf: 問題集:P.61 - 81,82 )
1 | 3, 5 | 7, 9, 11 | 13, 15, 17, 19 | 21, · · ·
(1)
第 15 群 7 番目の数は何か.
(2)
1001 は第何群の何番目か.
(3)
第 n 群の初項を求めよ.
(4)
第 n 群の数の総和を求めよ.
例 5.20 分母が 2 のべき乗である 1 より小さい既約分数を並べて数列を作る;
1 1 3 1 3 5 7 1 3
| , | , , , |
, ,···
2 4 4 8 8 8 8 16 16
(1)
51
2100
(2)
はじめから 1000 番目の分数は何か.
は初めから数えて何番目か.
♣ この数列と次の例の数列は an が n と分かりやすい対応をしているものではない.
その代わりに 第 l 群 m 番目 を表す l, m との対応関係が分かりやすくなっている.
例 5.21( cf: 問題集:P.61 - 83 )
0, 1, 0, 1, 1, 0, 1, 1, 1, 0, 1, 1, 1, 1, 0, 1, 1, 1, 1, 1, 0, 1 · · ·
(1)
5000 番目の項が含まれるのは第何群か.
(2)
はじめから 5000 番目の項までの和を求めよ.
練習 5.22
2 | 4, 6, 8 | 10, 12, 14, 16, 18 | 20, 21 · · ·
(1)
第 n 群の最初の偶数を求めよ.
(2)
第 10 群にあるすべての偶数の和を求めよ.
練習 5.23
1, 2, 2, 3, 3, 3, 4, 4, 4, 4 · · ·
(1)
初めて 100 が現れるのはこの数列の第何項目か.
(2)
この数列の第 100 項はどのような数か.
(3)
この数列の初項から第 100 項までの和を求めよ.
5
いろいろな数列
担当:岡崎正悟
高 1(74 期)数学 1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.8
6 数列の漸化式:数列の帰納的定義
数列 an を定義するために,これまでは「第 n 項を n の式で表す」という一般項の考え
方を用いてきたが,数列によっては一般項で表すとややこしかったり,一般項では表せな
いという場合がある.
例 6.1 第 1 項を 0,第 2 項を 1 として,前項と前々項を足して次の項を作っていくフィ
ボナッチ数列は中学受験などでもお馴染みではないだろうか?
0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, …
単純な規則で作られるこの数列の一般項は,
1
an = √
5
{(
√ )n (
√ )n }
1+ 5
1− 5
−
2
2
で表される.整数しか出てこないこの数列の一般項が
√
を含むややこしいものになるこ
とはパッと思いつくものではないと思う.とはいえ,この数列 {an } を決める規則は単純
な規則であり,
an+2 = an+1 + an
(n = 1, 2, 3, · · · )
(1)
で表される.
例 6.2 今度は逆に,単純な規則から数列を作ってみよう.
an+1 = (an )2 − an
(n = 1, 2, 3, · · · )
(2)
という規則(つまり,
「
(各項)=(直前の項)2 −(直前の項)」という規則)で数列 {an }
を作ってみると,a1 = 3 のとき,
a2 = 32 − 3 = 6, a3 = 62 − 6 = 30, a4 = 302 − 30 = 870, · · ·
と次々に決められていくが,an を単純な n の式で表すことはできない.
これらの例が示唆するように,数列を定めるには一般項で表す方法の他に,より自然で
強力な方法がある.
定義 6.3 (漸化式)
上の例の (1),(2) のように,数列の各項をその前の項から順に定める規則を表す等
式を漸化式という.初項と数列を与えて数列を定義する方法を帰納的定義という.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
担当:岡崎正悟
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体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.9
♣ 例えば,(2) の関係式は,より正確には

a2 = (a1 )2 − a1



a = (a )2 − a
3
2
2
2

a4 = (a3 ) − a3



···
と無限に続く連立等式を「an+1 = (an )2 − an (n = 1, 2, 3, · · · )」と表している
(添え物のように書いてある「n = 1, 2, 3, · · · 」が実は重要).
♣ 「帰納的定義」の”帰納 (induction)”とは,「多くの経験をもとに,そこから一般法
則を導くこと」をいう.例えば,「ツバメが低く飛ぶと雨」といった観天望気や,
「父親がハゲだと息子もハゲになる可能性が高い」といったことなどは帰納である.
これらは,気象学だとか医学的なメカニズムにおいて必然性を解明したものではな
い(事実,例外もしばしば起こる).帰納は人間の認識を発展させる基本的な方法
ではあるが,得られた結論が論理的でないという欠点がある.これに対し,後に学
ぶ「数学的帰納法」は絶対的な帰納法で,ここでいう「帰納的」とは「数学的帰納
法」の”帰納”と同義であり,
”a1 が決まる,ak が決まれば ak+1 も決まる ⇒ an (n = 1, 2, 3, …) が決まる”
という意味である.
練習 6.4 次の漸化式によって求められる数列 {an } の第 5 項を求めよ.[ cf : 問題集:
P.62 - 84 ]
(1)
a1 = 1, an+1 = 2an + 3
(2)
a1 = 2, an+1 = 2an + n2
漸化式が与えられたとき,それを満足する数列を決定すること(普通は一般項を求める
こと)を漸化式を解くという.一般に,漸化式だけではこれらを満たす数列はひとつに定
まらないが,それらすべてを表す式を漸化式の一般解と呼ぶ.
例 6.5 漸化式 an+1 = 2an (n = 1, 2, 3, …) の一般解は C を任意定数 (n に依らない好
きな数) を用いて
an = C · 2n
である.
漸化式の他に初項の値などの条件をつければ,数列がただひとつに決まる.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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No.10
例 6.6
{
an+1 = 2an
a1 = 1
を満たす {an } の一般項は an = 2n−1 .
既に学んだことだけで解ける漸化式の例を挙げよう.
公式 6.7 (基本的な漸化式)
(i)
数列 an が公差 d の等差数列をなすとは,
an+1 = an + d (n = 1, 2, 3, …)
(3)
が成り立つことである.これを満たす数列 {an } の一般項は,
an = a1 + (n − 1)d
で表される.
(ii)
数列 an が公比 r の等比数列をなすとは,
an+1 = an × r (n = 1, 2, 3, …)
(4)
が成り立つことである.これを満たす数列 {an } の一般項は,
an = a1 rn−1
で表される.
(iii)
数列 an の階差数列が bn であるとは,
an+1 = an + bn (n = 1, 2, 3, …)
(5)
が成り立つことである.これを満たす数列 {an } の一般項は,
an = a1 +
n−1
∑
bk (n = 2, 3, 4, …)
k=1
で表される.
♣ 今後最もよく使うのは (ii) の関係である.また,(iii) は (i) の一般化である.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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No.11
♣ 与えられた漸化式が an+1 − an = (n の式) と変形できるときは,(iii) の階差数列
型で,階差数列を用いて,その数列の一般項が求められる.ただし,階差数列の一
般項の式は:::::::::::
n ≧ 2 のときという条件がついていたことに注意しよう.
例 6.8
次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求める;
a1 = 1, an+1 = an + 2n
条件より,an+1 − an = 2n .よって,数列 {an } の階差数列の第 n 項は 2n である.
n
≧ 2 のとき,
::::::::::::
an = a1 +
n−1
∑
2k
k=1
n−1
=1+
2(2
= 2n − 1
− 1)
2−1
初項は a1 = 1 より,an = 2n − 1 は n = 1 のときも成立.よって,an = 2n − 1
練習 6.9 次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求めよ.[ cf : 問題集:P.62
- 85, 86 ]
(1)
a1 = 5, an+1 = an − 4
(2)
a1 = 2, an+1 = 3an
(3)
a1 = 2, an+1 = an + 3n2 + n
さて,高校数学の範囲で「漸化式を解く」というのは,頑張って等比数列型の漸化式
(4)にする作業のことと言っても過言ではない.そこで,漸化式を「カタマリで捉える」
という見方が重要なので,解説する.例えば,ある漸化式を変形して,
an+1 + (n + 1) + 1 = 3(an + n + 1)
と変形したとき,
「数列 {an + (n + 1)} が公比 3 の等比数列である」という見方をすると
いうことが「カタマリで捉える」ということである.分かりにくければ,bn = an + n + 1
として捉えてみると良い.つまり,b1 = a1 + 1 + 1 を 3 倍すると,b2 = a2 + 2 + 1 にな
り,さらにそれを 3 倍すると,b3 = a3 + 3 + 1 になり…といった具合の関係式が成り立っ
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.12
ているということである.このことを繰り返し用いると,
an + n + 1 = 3{an−1 + (n − 1) + 1}
= 3 × 3{an−2 + (n − 2) + 1}
= 3 × 3 × 3{an−3 + (n − 3) + 1}
···
= 3n−1 {a1 + 1 + 1}
となり,あとは初項 a1 さえ分かれば一般項が求められることが分かる.次節以降解説す
る「漸化式の解き方」はカタマリ等比数列型漸化式をつくる戦法であるということを認識
しておくと良い.
6.1 漸化式の変形:隣接二項間漸化式
高校数学 B の範囲でもっとも重要な漸化式は,公式 6.7 の (i) と (ii) を組み合わせた
形の
an+1 = pan + f (n) (n = 1, 2, 3, …)
(6)
のタイプである(隣接二項間漸化式と呼ばれる).p = 1 の場合は,(i) で考えた等差
数列,f (n) = 0 の場合は (ii) で考えた等比数列として既に解決済みなので,以後,
p ̸= 1, f (n) ̸= 0 として話を進める.
前節で述べたように,(6) のような漸化式を解くためには,an+1 = pan + f (n) をう
まく変形して, an+1 + g(n + 1) = p(an + g(n)) となる g(n) を見つけることが必要であ
る.g(n) は闇雲に探すのではなく,f (n) に似た形で見つけると良い.
表 6.1 漸化式 an+1 = pan + f (n) の f (n) の形に対して適切な g(n) の選び方.
α, β, γ はそれぞれ定数.
f (n)
g(n)
定数
α
n の 1 次式
αn + β
n の 2 次式
αn2 + βn + γ
n の指数函数 (⃝rn )
α · rn
以下,具体例で実際の解法の説明をしていく.すべて初項 a1 = 1 とする.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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6.1.1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.13
an+1 = pan + α(α は定数)の型
漸化式 an+1 = 3an + 4 を解くことを考えよう:
まず,漸化式を解くためには答案に書かないナイショの計算をする必要がある.今回の
::::::::::::::::::::::::::
場合,以下の様な計算である;
babababababababababababababababab
はじめに,α を定数として,
an+1 = 3an + 4 ⇔ an+1 + α = 3(an + α)
⇔ an+1 = 3an + 2α
(7)
と変形する.ここで,:::::::::::::::::
根拠のない係数比較をして,α = 2 を見つける.
このように定数を見つけたら,それを用いて漸化式を an+1 + g(n + 1) = p(an + g(n))
の形にする.すなわち,
an+1 = 3an + 4 ⇔ an+1 + 2 = 3(an + 2)
こうすると,数列 {an + 2} が公比 3 の等比数列であるとわかる.a1 = 1 より,数列
{an + 2} の初項は 3.よって,
an + 2 = 3 · 3n−1 = 3n
とわかるので,
an = 3 n − 2
である.
♣ 「ナイショの計算」ではの (7) のように an+1 + g(n + 1) = p(an + g(n)) の
g(n) をどうおくか,ということが重要である.どのようにおくかは表 6.1 を参
照すれば良い.以下,様々な型の漸化式の解き方を紹介するが,肝となるのは
g(n)
をどのようにおくか,という部分であることを留意しておいて欲しい.
:::::::::::::::::::::
♣ 「答案に書かない計算」や「根拠のない係数比較」など,どう考えても怪しい書き方を
している理由は,今までの知識だけでは数学的に正しい説明をすることができないから
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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高 1(74 期)数学 1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.14
である(逃げの説明のように思われるかもしれないが,数学 III で「数列の極限」を
習えば,説明できるようになる).今はとにかく「こうすれば漸化式は解けるんや」
ということで納得してもらい,解法のテクニックを身体に染み込ませて欲しい.
♣ 漸化式は大学で理工系に進むと習う「微分方程式(広く言えば,線形な函数方程
式)」と数学的な構造は同じなので,「微分方程式を解く」といった場合にも同じよ
うなテクニックが用いられる.
練習 6.10 n を自然数とする.次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求め
よ.[ cf : 問題集:P.62 - 87 ]
(1)
a1 = 2, an+1 = 2an − 3
(2)
a1 = 1, an+1 = 13 an + 6
(3)
a1 = 21 , an+1 = −3an + 1
(4)
a1 = 4, 3an+1 − 2an = 3
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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6.1.2
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.15
an+1 = pan + (n の一次式) の型
漸化式 an+1 = 2an + n を解くことを考えよう:
「ナイショの計算」は次のように行う;
babababababababababababababababab
α, β を定数として,
an+1 = 2an + n ⇔ an+1 + {α(n + 1) + β} = 2{an + (αn + β)}
⇔ an+1 = 2an + αn + (−α + β)
と変形する.ここで,:::::::::::::::::
根拠のない係数比較をして,α = 1, β = 1 を見つける.
このように定数を見つけたら,元の漸化式を以下のように変形する.
an+1 = 2an + n ⇔ an+1 + {(n + 1) + 1} = 2{an + (n + 1)}
こうすると,数列 {an + (n + 1)} が公比 2 の等比数列であるとわかる.a1 = 1 より,数
列 {an + (n + 1)} の初項は 3.よって,
an + (n + 1) = 3 · 2n−1
とわかるので,
an = 3 · 2n−1 − n − 1
である.
練習 6.11 n を自然数とする.次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求め
よ.[ cf : 問題集:P.62 - 88 ]
a1 = −2, an+1 = −3an − 4n + 3
6
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6.1.3
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.16
【発展】an+1 = pan + (n の二次式) の型
漸化式 an+1 = 2an + (4n2 + 6n + 8) を解くことを考えよう:
「ナイショの計算」は次のように行う;
babababababababababababababababab
α, β を定数として,
an+1 = 2an + 4n2 − 6n − 8 ⇔ an+1 + {α(n + 1)2 + β(n + 1) + γ}
= 2{an + (αn2 + βn + γ)}
⇔ an+1 = 2an + αn2 + (−2α + β)n − α − β + γ
と変形する.ここで,根拠のない係数比較をして,
α = 4, β = 2, γ = −2 を見
::::::::::::::::
つける.
このように定数を見つけたら,元の漸化式を以下のように変形する.
an+1 = 2an +(4n2 +6n+8) ⇔ an+1 +{4(n+1)2 +2(n+1)−2} = 2{an +(4n2 +2n−2)}
こうすると,数列 {an + (4n2 + 2n − 2)} が公比 2 の等比数列であるとわかる.a1 = 1
より,数列 {an + (4n2 + 2n − 2)} の初項は 5.よって,
an + (4n2 + 2n − 2) = 5 · 2n−1
とわかるので,
an = 5 · 2n−1 − 4n2 − 2n + 2
である.
練習 6.12 n を自然数とする.次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求
めよ.
a1 = 1, an+1 = 2an − n2 + 2n
6
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6.1.4
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.17
an+1 = pan + (n の指数函数) の型
漸化式 an+1 = 2an + 3n を解くことを考えよう:
「ナイショの計算」は次のように行う;
babababababababababababababababab
α を定数として,
an+1 = 2an + 3n ⇔ an+1 + α · 3n+1 = 2(an + α · 3n )
⇔ an+1 = 2an − α · 3n
と変形する.ここで,:::::::::::::::::
根拠のない係数比較をして,α = −1 を見つける.
このように定数を見つけたら,元の漸化式を以下のように変形する.
an+1 = 2an + 3n ⇔ an+1 − 3n+1 = 2(an − 3n )
こうすると,数列 {an − 3n } が公比 2 の等比数列であるとわかる.a1 = 1 より,数列
{an − 3n } の初項は −2.よって,
an − 3n = −2 · 2n−1 = −2n
とわかるので,
an = 3 n − 2 n
である.
6
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6.1.5
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.18
an+1 = pan + (n の指数函数) の例外型
漸化式 an+1 = 2an + 2n を解くことを考えよう:
「ナイショの計算」を行うと,
babababababababababababababababab
α を定数として,
an+1 = 2an + 2n ⇔ an+1 + α · 2n+1 = 2(an + α · 2n )
⇔ an+1 = 2an
となり,係数比較するべき項が消えてしまうので,係数比較ができない.
このような場合はテクニックとして,元の漸化式の両辺を 2n+1 で割る;
an+1
an
1
= n +
n+1
2
2
2
an
a1
1
=
+ (n − 1)
2n
2
2
a1 = 1 より,
1
an
= n ⇔ an = 2n−1 × n
n
2
2
と求まる.
♣ 上のように,漸化式の an の項の係数と指数函数の底 (f (n) = an の a の部分) が同
じときは,係数比較ができないので,
「両辺を an+1 で割る」という特殊な操作をや
ることで解ける.他の型の漸化式は似たような手法で解けるが,この場合だけは例
外なので,覚えておこう.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.19
6.2 隣接三項間漸化式
斉次の隣接三項間漸化式 an+2 + pan+1 + qan = 0 を解くためには,上の隣接二項間漸
化式と同様に上手に調節して等比の型に持ち込む.つまり,α, β をある定数として,
an+2 + pan+1 + qan = 0 ⇔ an+2 − αan+1 = β(an+1 − αan )
⇔ an+2 − (α + β)an+1 + αβan = 0
と変形する.p = −(α + β), q = αβ なる α, β は x についての 2 次方程式
x2 − px + q = 0
の解で見つけられて,これらを用いて
an+2 − αan+1 = β(an+1 − αan )
⇔An+1 = βAn
⇔An = β n−1 A1
⇔an+1 − αan = β n−1 (a2 − αa1 )
となる.これは先ほどの 6.1.4 節や 6.1.5 節で扱った隣接二項間漸化式の型なので,以下,
先ほど紹介した手順に従えば漸化式を解くことができる.例を示そう.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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No.20
例 6.13 漸化式 an+2 − 5an+1 + 6an = 0 (n = 1, 2, 3, …) を a1 = 1, a2 = 5 の条件下で
解く.まず,ナイショの計算を以下のように実行する;
babababababababababababababababab
α, β を定数として,
an+2 − 5an+1 + 6an = 0 ⇔ an+2 − αan+1 = β(an+1 − αan )
⇔ an+2 − (α + β)an+1 + αβan = 0
より,根拠のない係数比較から,
::::::::::::::::
{
α+β =5
αβ = 6
⇔(α, β) = (3, 2), (2, 3)
と一応 2 つ見つかる.どちらの組を用いても答えは変わらないので,とりあえ
ず,前者を使うことにする.
これより,元の漸化式を変形していくと,
an+2 − 5an+1 + 6an = 0
⇔an+2 − 3an+1 = 2(an+1 − 3an )
⇔an+1 − 3an = 2n−1 (a2 − 3a1 )
⇔an+1 − 3an = 2n
となる.これは,6.1.4 節で扱った漸化式の型と同じである.もう一度,ナイショの計算
を実行する;
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.21
babababababababababababababababab
α を定数として,
an+1 = 3an + 2n ⇔ an+1 + α · 2n+1 = 3(an + α · 2n )
⇔ an+1 = 3an + α · 2n
と変形する.ここで,:::::::::::::::::
根拠のない係数比較をして,α = 1 を見つける.
元の漸化式を
an+1 = 3an + 2n ⇔ an+1 + 2n+1 = 3(an + 2n )
とすると,数列 {an − 2n } が公比 3 の等比数列であるとわかる.a1 = 1 より,数列
{an − 2n } の初項は 3.よって,
an + 2n = 3 · 3n−1 = 3n
とわかるので,
an = 3 n − 2 n
である.
練習 6.14 n を自然数とする.次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求め
よ.[ cf : 問題集:P.63 - 90, 91 ]
(1)
a1 = 1, a2 = 4, 2an+2 − 3an+1 + an = 0
(2)
a1 = 1, a2 = 6, an+2 − 4an+1 − 5an = 0
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
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体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.22
例 6.15 漸化式 an+2 − 4an+1 + 4an = 0 (n = 1, 2, 3, …) を a1 = 1, a2 = 4 の条件下で
解く.まず,ナイショの計算を以下のように実行する;
babababababababababababababababab
α, β を定数として,
an+2 − 4an+1 + 4an = 0 ⇔ an+2 − αan+1 = β(an+1 − αan )
⇔ an+2 − (α + β)an+1 + αβan = 0
より,根拠のない係数比較から,
::::::::::::::::
{
α+β =4
αβ = 4
⇔(α, β) = (2, 2)
と 1 組見つかる.
これより,元の漸化式を変形していくと,
an+2 − 4an+1 + 4an = 0
⇔an+2 − 2an+1 = 2(an+1 − 2an )
⇔an+1 − 2an = 2n−1 (a2 − 2a1 )
⇔an+1 − 2an = 2n
となる.これは,6.1.5 節で扱った漸化式の型と同じである.よって,両辺を 2n+1 で割
ると,
an+1
an
1
= n +
n+1
2
2
2
an
a1
1
=
+ (n − 1)
2n
2
2
a1 = 1 より,
1
an
= n ⇔ an = 2n−1 × n
n
2
2
と求まる.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
担当:岡崎正悟
高 1(74 期)数学 1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.23
練習 6.16 n を自然数とする.次の条件によって定められる数列 {an } の一般項を求め
よ.[ cf : 問題集:P.63 - 90, 91 ]
a1 = 3, a2 = 9, an+2 − 6an+1 + 9an = 0
6.3 その他の漸化式
問題集に載っているその他の型の漸化式の解法を示そう.
6.3.1
分数形の漸化式
分数型の漸化式
pan + q
ran + s
an+1 =
(8)
ps = qr のときは約分ができるので,約分をしたあと,つまり,ps ̸= qr のときを考える.
この型は 3 つのパターンに分けられる.
1. 簡単な場合:(8) において,q = 0 の場合は,
an+1 =
pan
ran + s
の形となる.このとき,両辺の逆数をとって
1
an+1
1
an+1
として,bn =
1
an
ran + s
pan
s 1
r
= ·
+
p an
p
=
とおくことにより,
bn+1 =
s
r
bn +
p
p
となり,6.1.1 節の型になる.
2. 一般の場合:(8) の式から
x=
px + q
rx + s
(9)
の特性方程式をつくり,解 α, β を求める.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
担当:岡崎正悟
高 1(74 期)数学 1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.24
(a)α ̸= β の場合;
pan + q
−α
ran + s
pan + q
−β
an+1 − β =
ran + s
an+1 − α =
−β
の 2 式から, aann −α
をつくり,
bn+1 =
an − β
an − α
とおくと,{bn } が等比数列になることを利用する.
(b)α = β (重解)の場合;
an+1 − α =
pan + q
−α
ran + s
として,式変形をして逆数をとると等比数列型に帰着できる.
例 6.17 (1)
a1 = 4, an+1 =
3an + 2
an + 4
a1 = 1, an+1 =
4 − an
3 − an
(2)
【解答】
(1)
x=
3x + 2
x+4
を解くと,x2 + x − 2 = (x − 1)(x + 2) = 0 より,x = 1, −2.これを用いて,
2(an − 1)
3an + 2
−1=
an + 4
an + 4
3an + 2
5(an + 2)
an+1 + 2 =
+2=
an + 4
an + 4
an+1 − 1
2 an − 1
∴
=
an+1 + 2
5 an + 2
an+1 − 1 =
と変形できる.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
an − 1
= bn
an + 2
(10)
担当:岡崎正悟
高 1(74 期)数学 1
体系数学 4 第 4 章 [数列]
とおくと,
bn+1 =
で,{bn } は初項 12 , 公比
2
5
No.25
2
a1 − 1
1
b n , b1 =
=
5
a1 + 2
2
の等比数列.よって,
1
bn =
2
( )n−1
2
2n−2
= n−1
5
5
(11)
となる.ここで,(10) を an について解くと,
an =
1 + 2bn
1 − bn
で,(11) を代入すると,
an =
5n−1 + 2n−1
· · · · · · (答)
5n−1 − 2n−2
(2)
x=
4−x
3−x
を解くと,x2 − 4x + 4 = (x − 2)2 = 0 より,x = 2(重解).これを用いて,
an+1 − 2 =
4 − an
an − 2
−2=
3 − an
3 − an
両辺の逆数をとると,
1
1
= −1 +
an − 2
an − 2
ここで, an1−2 = bn とおくと,
bn+1 = bn − 1, b1 =
1
1
=
= −1
an − 2
1−2
これより,{bn } は初項 −1,公差 −1 の等差数列.よって一般項は,bn = −n
∴ an =
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
1
1
+2=2−
bn
n
担当:岡崎正悟
高 1(74 期)数学 1
6.3.2
体系数学 4 第 4 章 [数列]
No.26
1 次の連立漸化式
1 次の連立漸化式
{
a1 = a
b1 = b
{
an+1 = pan + qbn
bn+1 = ran + sbn
(p, q, r, s ̸= 0)
(12)
を解くことを考えよう.
1. ps = qr のとき
a/q = r/p = k とおいて,
{
an+1 = pan + qbn
bn+1 = pkan + qkbn
より,bn+1 = kan+1 であるので,上の式に代入して,
bn+1 = pbn + qkbn ⇔ bn+1 = (p + qk)bn
となり,等比数列の漸化式に帰着される.
2. ps ̸= qr のとき
数列 {an + kbn } が等比数列になるように k を定める;
an+1 + kbn+1 = pan + qbn + k(ran + sbn ) = (p + kr)an + (q + ks)bn
(
)
q + ks
= (p + kr) an +
bn
p + kr
q + ks
より,k は
= k ⇔ rk 2 + (p − s)k − q = 0 の解.これをα, β とする.
p + kr
(a)α ̸= β のとき,数列 {an + αbn },{an + βbn } はそれぞれ公比 p + αr ,p + βr
の等比数列より,
an + αbn = (p + αr)n−1 (a + αb)
(13)
an + βbn = (p + βr)n−1 (a + βb)
より,an , bn が求まる.
(b)α = β のとき,(13) と元の連立漸化式から an , bn の一方を消去して,1 つの数
列の問題に変えることで,an , bn を求めることができる.
6
数列の漸化式:数列の帰納的定義
担当:岡崎正悟