安全報告書 - スターフライヤー

安 全 報告 書
2014 年度
株式会社スターフライヤー
この報告書は、航空法第 111 条の 6 に基づき、当社の安全への取り
組みをまとめたものです。
2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
はじめに
2014年度の安全報告書の発刊にあたり一言ご挨拶申し上げます。
弊社スターフライヤーは2006年3月に北九州=羽田線の運航を開始して以来今年度で10
年を迎えます。この間一件の事故・重大インシデントもなく安全に十分留意しながら全社員一丸
となって日々の運航に取り組んでまいりました。
私がスターフライヤーに入社し1年が経過しましたが、この1年間に「どのようにして安全を徹底
させているか」、弊社も含め多くの航空会社等を調べてみました。安全がもっとも大事であるとい
うことは、どの会社も表現こそ違え、異口同音に訴えているところでございます。ではこの安全に
対する熱い思いを、実際に安全を担う社員にどのように伝え、どのように行動してもらうかを考え
ると「安全は一番大事なのだ!」という言葉だけでは片付けられることではなく、社員一人ひとり
の行動に繋がる、理解しやすく分かりやすい表現の必要性を痛感していました。
そこで「安全を確保(確認)した後に次の行動(作業)に移れ!」とすればかなり具体的な表現と
なり、安全の大切さを理解しやすいのではないかと思い、現在社内のあらゆる場でこの言葉を使
い続けているところでございます。
よく航空業界では「安全、定時、快適、利便、経済」ということを申しますが、弊社ではこのような
言い方はやめて、「安全は定時性や快適性等とは並列ではない」「安全性を他のサービスと比較
したり、天秤に掛けてはいけない」ことを徹底しているところです。即ち「安全を確保してから次の
行動に移れ!」
このようにスターフライヤーでは最大のCustomer Satisfaction(お客様満足)である安全を求め
て今まで以上に努力すると共に、その上で快適な空の旅をお客様に提供し続けることをお約束
してご挨拶に代えさせていただきます。
2015年7月
株式会社 スターフライヤー 代表取締役社長
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
目次
1. 安全運航のための会社全般の取り組み …………………………… 3
1-1.
安全運航の基本方針………………………………………………3
1-2.
安全管理体制………………………………………………………5
1-3.
安全上の支障を及ぼす事態の発生状況…………………………8
1-4.
安 全 活 動 …… … ……… … … … …… … ……… … … … …… … … 9
2. 安全運航への各部門の取り組み ………………………………… 12
2-1.
運航部門(運航乗務員)…………………………………………12
2-2.
運送(旅客・ランプ・貨物・航空保安)部門………………………18
2-3.
客室部門(客室乗務員)…………………………………………23
2-4.
運航管理・統制部門(地上運航従事者・オペレーション統制者)…28
2-5.
整備部門……………………………………………… …………31
3. 使用機材および輸送実績について ……………………………… 37
-2-
2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
1. 安全運航のための会社全般の取り組み
1-1.
安全運航の基本方針
安全憲章
安全運航に関わる会社の基本理念として安全憲章を次のとおり定めています。
安全憲章
安全運航は、私たち航空輸送に従事するもの
の至上の責務である。
また安全運航は、航空輸送を営む我が社の
使命であり事業の基盤である。
私たちは、持てる知識、経験、技量を活かし、
叡智を尽くして安全運航を維持し続ける。
安全運航のための行動指針
安全憲章に掲げる基本理念を実務に反映させるため、日々の業務を行うにあたり常に心がける
べき事項を定めています。
安全運航のための行動指針
- 規則を遵守し、基本に忠実に業務にあたります。
- 一つひとつの作業を的確、確実に行います。
- 推測によることなく、必ず確認します。
- 不安があれば必ず報告、相談し、解消します。
- 常に問題意識を持ち、不安全要素を未然に排除
します。
「安全憲章」と「安全運航のための行動指針」は、社員が業務を安全に遂行する上での考え方で
あり常に心に留めておくべきものであることから、これを記載したカードを全社員が携行し、業務
開始時・ブリーフィング時・各種会議体等の冒頭に唱和して、安全意識の向上を図っています。
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
安全宣言
社長は経営トップのコミットメントとして安全運航に対する自らの信念、考えを社員に示していま
す。
「安全宣言」
航空会社にとっての安全を考えた際、「会社の使命」「安全第一」という
言葉が浮かびますが、頭で理解するだけではなく、行動が伴うことで安全運航
が実現します。当社では「安全憲章」を定め、安全についての理解を深めると
ともに、社員が一丸となって安全を維持向上させるために行動できるよう、
以下の事項を実行します。
1. 安全第一の徹底
安全は定時性、快適性、利便性等とは次元が違うものであり、不具合発生時に
は何はさておき、安全の確保をまず優先させる
2. 安全の担い手
安全を担うのは人であり、その人が肉体的にも精神的にも十分に健全な状態で
業務につけるよう考慮する
3. 能力の向上
安全を担う社員の能力向上が、安全を更に高める事であることから社員の能
力向上に全力を尽くす
4. 新システムの導入
更なる安全が確保できるよう、仕組み、システムの導入を積極的に行う
5. リスクマネジメント
航空事故や重大インシデントに繋がる潜在要因に対してのリスクマネジメント
能力を更に向上させ不安全要素の除去、回避、低減に努める
6. PDCA(*1)の徹底
安全阻害事象が発生したならば、二度と同様の事例を発生させないため
徹底的に PDCA を廻し再発防止の対策とその効果の確認を行う
株式会社スターフライヤー
代表取締役社長 松石 禎己
(*1)PDCA;Plan-Do-Check-Action
のこと
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1-2.
安 全 報 告 書
安全管理体制
安全管理規程
航空法第103条の2に基づき、輸送の安全を確保するために本邦航空運送事業者が遵守すべ
き事項を安全管理規程に定めています。
安全管理体制図
※2015年3月31日現在
3名
4名
3名
1名
(1名)
会議体
安全に関する会議体等
◆FSR 委員会(フライトセーフティーレビュー委員会)
FSR 委員会(委員長:社長)は事故・重大インシデントの他すべての不安全事象を対象とし、リスク
管理に基づく安全施策及び安全投資を決定します。
また、全社的な課題を策定し、その達成度を評価するとともに、安全管理システムの実効性を監
視し必要な改善を行います。
◆運航安全部会
運航安全部会(部会長:安全統括管理者)は、事故・重大インシデントを除く安全上の支障を及
ぼす事態を対象とし、問題点、リスク評価及び必要な改善策を討議します。
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安 全 報 告 書
FSR 委員会、運航安全部会の討議事項等は原則として会議の2週間後に摘録を発行し、社内イ
ントラネットに公開するとともに管理職を通じて全社員へその内容を周知する方策をとり、社員が
安全上必要な情報を共有し、共通の認識のもと、会社として一体感を持った安全業務を展開す
ることができるようにしています。不安全事象の分析にあたっては、その事象に関係する要因を
調査し、事業にリスクを与えるハザードを特定します。ハザードのリスク評価は、ICAO のマニュア
ル(Doc9859 Safety Management Manual)に示されたリスク評価マトリックスを準拠し、リスクに対
する具体的な施策の決定・実行を図ることでリスクマネジメント・サイクルの実効性を高めていま
す。
また、安全に関する全社的管理業務を担当する安全推進部は、経営会議及び各本部の品質会
議にオブザーバー参加し、安全運航が事業の基盤であるとしている安全憲章の理念が実際の
業務運営にどのように反映されているかを確認するとともに、必要に応じ適切な安全施策の構築
に意見を述べる等して、会社全体の安全意識の高揚に資することとしています。
このほか、安全運航にかかわる基本理念の項で述べた安全憲章及び安全運航のための行動指
針の唱和に加え、各種会議体の冒頭に短時間の安全スピーチを実施することとしており、安全
に関する能動的な意識の醸成を図っています。
◆事故調査部会
事故調査部会は、事故・重大インシデントを対象とし、会社独自の調査を行うものです。
安全監査
◆内部監査(安全にかかわる業務監査)
安全推進部安全監査室が安全管理規程に基づき社内各部門に対して年1回内部監査を実施
し、結果を社長に報告しています。整備部門に対する監査は整備監査部が実施し、その結果を
安全推進部に通知しています。安全推進部と整備監査部は年に1回相互監査を実施していま
す。
◆全日空が実施するコードシェア監査
当社は一部の便を除き全日空とコードシェアをしていることから、2年に1回、全日空安全品質監
査部による監査の国際基準である IOSA に準拠した監査を受けています。
2014年度は、5月に全日空コードシェア監査を受検し、安全運航に著しく影響を及ぼしコードシ
ェアを継続するうえで早急な処置が必要な指摘事項はありませんでした。それ以外の指摘は 26
件と前回(30件)に比較して減少し、すべての指摘事項は是正措置を完了しました。
◆航空局監査
航空局の計画に基づき、年4回の定期監査を受けました。不適切または改善の必要があると指
摘された以下主な事項については、要因の分析と対策の検討を行い、是正処置を講じておりま
す。
① 教育訓練の改善
② 委託管理の徹底
③ 記録類の管理改善
④ 規程類の齟齬改善
◆運輸安全マネジメント評価
国土交通省大臣官房運輸安全監理官による運輸安全マネジメント評価を毎年1回受けています。
評価は社長、安全統括管理者及び安全推進部長に対しインタビュー形式で実施され、安全管
理体制の構築・改善の状況、特に経営トップの取組みについて評価がされています。
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安 全 報 告 書
2014年度は11月に受けましたが、経営トップの主体的かつ積極的な関与、数値化した安全目
標の策定、業務委託先との安全取組情報の共有、有効性を高める安全監査の取り組みなどが
評価されました。
今後も安全文化の醸成と定着を図り、安全性をより向上させるため、更なる取り組みを積極的に
推進して参ります。
安全推進員制度
安全推進員は、運航本部、整備本部、運送客室本部の各現業部門より選出され、職務に対する
誇りと旺盛な問題意識の下、現場レベルにおける具体的な安全活動を展開する中核となるもの
です。活動内容は部門長を補佐し、ヒヤリハット報告の推進、社内安全行事の推進、社内安全
誌の発行等です。活動状況については、FSR 委員会及び運航安全部会へ報告され、現業部門
の実情を経営陣等に伝える役割を果たしています。
◆安全推進員ミーティング
・開催頻度:3ヶ月ごとの定例開催及び随時開催
・議事内容:会社で実施される安全推進活動について、具体的な実施方法の策定、経過・結果
報告、及び日常業務での問題点や改善策について討議を行っています。
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1-3.
安 全 報 告 書
安全上の支障を及ぼす事態の発生状況
航空事故・重大インシデント
発生しませんでした。
安全上のトラブル
2014年度に当社が航空法第111条の4に基づき国土交通大臣に報告した「安全上のトラブル」
は35件で、昨年の報告件数26件に比較し増加しております。
今後もすべての事象について詳細に原因を分析・特定して必要な対策をとり、再発防止に努め
ています。
◆報告したトラブルの内容
概要
運航中に航空機衝突防止装置が作動し、回避操作を行なった。
件数
3
着陸後「逆噴射装置未格納」の警告が表示され、逆噴射装置を開いた状態で駐機場所へ移動した。
1
着陸前の脚を出した時、非常口の「出口」サインが点灯しなかった。
2
降下中被雷し、左主翼に損傷を受けた。
1
降下中に自動航法装置作動後、旋回角度が30度を超えたため、自動航法装置を解除しマニュアルで
操縦を継続した。
1
運航中に航空機衝突防止装置が不作動であることを示す警告が表示された。
3
離陸前に航空機衝突防止装置が不作動であることを示す警告が表示された。
3
巡航中に対地接近警報装置が不作動であることを示す警告が表示された。
1
降下中活発な雲に遮られ着陸を断念した際に、最大着陸装置操作速度を2ノット5秒間超過した。
1
航行中に降下したところ高度230フィート付近で最大速度を約2ノット超過した為、降下率を減じる操作
を行った。
1
非常位置通信装置の整備点検において、送信出力が基準に満たない等不具合が確認された。
8
ウインドシア警報装置不作動の警告が表示された。
3
航行中におけるRNAV(広域航法)機器に不具合が生じた。
1
離陸直後、ギャレー(厨房)コンテナ1個が客室内に落下した。
1
操縦室装備の非常用懐中電灯の電池充電が切れたため、充電表示のLEDが点滅していなかった。
1
巡航中、ウインドシア警報装置不作動の警告 および 対地接近警報装置が不作動であることを示す警
告が表示された。
1
「条件付きでない者との同乗に限る」との制限付き副操縦士と、航空身体検査証明条件付適合者であ
る機長が同乗した 。
1
預かり手荷物の管理システムへの個数と搭載場所の登録が実搭載と不一致となった。
1
到着後、航空機の離陸重量及び重心位置が誤っていたことが判明した。
1
◆国土交通省から受けた行政処分及び行政指導
ありませんでした。
◆イレギュラー運航等
ありませんでした。
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1-4.
安 全 報 告 書
安全活動
2014年度振り返り
◆安全目標
2014年度は、安全憲章及び安全運航のための行動指針を補完する位置付けとして、全社員で
取り組む安全に関する年度目標を掲げ、目標達成を目指してきました。
1. 『主要な不安全事象の絶無』
全ての部門において、航空事故や重大インシデントを発生させることなく目標を達成できま
した。
2. 『その他の不安全事象発生件数の対前年比減少』
運航、運送、客室、整備等各部門別に個別目標に対する数値目標を掲げ、取り組み状況
を毎月確認しながら基準や基本となる規則を徹底する取り組みを行いました。不具合を低
減できた部門もありましたが、全体としては昨年度より不具合発生件数が増加し目標が達成
できない事項もありました。
◆ヒヤリハット報告
安全に関する社内の自発報告としてヒヤリハット報告制度を設けています。社員が業務実施中ヒ
ヤリ、ハットした体験の報告を受け、全ての案件について根本原因を分析検討するとともにリスク
評価を確実に行い、事故の未然防止に役立てることとしています。2014年度の報告件数は69
件となり、着実に増加傾向にあることから全社的に「報告の文化」が根付いてきていることが伺え
ます。軽微なトラブルを自発的に報告し再発防止を図ることが重大な不安全事象の発生を抑制
し会社全体の安全性を向上させることの理解が深まってきたものと考えています。
◆従業員表彰制度
特に優れた安全行為やヒヤリハット報告等に対し「セーフティ表彰」として表彰する制度を設けて
います。
2014年度のヒヤリハット報告に基づく表彰事例は以下のとおりです。
(1) 整備作業で使用する新品の部品(パッキング)が誤部品混入であったことに気付き、航空機
への誤部品装着を回避した事例 (安全推進部より表彰)
(2) 貨物室の温度管理機能が不作動のためペットの預かりが出来ない航空機に、ペットを貨物
室に搭載していることに気付き、不適切な輸送を回避した事例 (整備本部より表彰)
◆社内安全誌 「Safety★Flyer」 の発行
安全に対する社員の相互理解と更なる安全意識の高揚を目的に、各号ごとに主要テーマを設
定し、現業部門における日常的な安全への取組みや経験談を掲載しています。2010年から4
月・10月の年2回発行しており、2014年までに計11回発行いたしました。
◆運航安全ニュースの発行
毎月1回以上を目標に安全推進部が「運航安全ニュース」を発行し、世界の航空事故等を含め
最新の不安全事象について、タイムリーに事象の特性や原因、防止策などを全社員に紹介し、
社員に対し注意喚起を図りました。
◆航空事故総合模擬演習(2014年10月実施)
航空事故等が発生した場合の会社としての的確な初動対応要領を習熟するため、全社規模の
航空事故総合模擬演習を毎年10月に実施しています。
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
2014年度は、北九州空港緊急計画連絡協議会主催の航空機事故に関わる訓練への参加と、
会社主催の初動体制及び全社危機管理体制を主眼とした危機対応総合模擬演習の2部構成
で訓練を行いました。
危機管理体制の強化を目的として、危機対策本部、現地対策部要員に対するセミナー形式で
の教育を演習前に実施、演習後の反省事項の確認を実施しました。
◆年末年始安全総点検(2014年12月10日~2015年1月10日)
国が設定した重点項目に沿って、各部門が日常業務を改めて見直す機会との認識の下、社長
及び安全統括管理者による点検を実施し、問題がないことを確認しました。
◆他航空会社ならびに異業種の安全施設での研修
通年/全社員対象:ANAグループ安全教育センター及び日本航空安全啓発センター研修を
4,6,9,1,3月に実施し延べ合計94名が参加しました。またJR九州安全創造館等へ訪問し研修
見学や安全発表会の参観を通して異業種間の情報交換を行いました。
◆ヒューマンファクターズ研修
早稲田大学理工学術院小松原明哲教授をお招きし、2015年3月16,23日の2日間に亘りヒュ
ーマンファクターズおよびリスク評価に関する講習会を実施しました。
SMS(安全管理システム)推進のための基礎として、ヒューマンファクターズの知識の再整理、ヒ
ヤリハットなどの分析・活用手法、事故の未然防止手法の講義を受講し、さらにグループに分か
れて分析演習を行いました。
2015年度に向けて
◆安全目標
2014年度より航空安全プログラムに基づき、安全方針、責任分担、安全に係るリスクの管理の
方法等を組織的な仕組みで取り組むこととなりました。基本的な方針に沿った事業運営を遂行
するために安全に関する取り組み目標は、安全指標及び安全目標値を設定することとなったた
め、過去の実績と照合し現状よりも改善した目標値をもった目標に加えて、全社共通で取り組め
る目標として以下の 2 点を掲げることにしました。
1. 『ヒューマンエラーによる義務報告件数の削減』
2. 『安全意識の更なる向上』
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
◆安全推進活動強化期間
2014年度は10~11月を「安全推進活動強化期間」とし、「救急救命講習」「異業種安全活動意
見交換会」などの様々な安全推進活動や、各部門による安全目標達成のための具体的取組を
発表する「安全取組発表会」を行い、他部門業務についての理解促進を図りました。
2015年度も引き続き、危機管理体制についても重点的に取り組んで参ります。10月に実施さ
れる社内総合模擬演習に向けて、前年度の反省から運用見直しを行い、危機発生時に社員が
整斉と行動できるよう見直しを行います。
◆ヒヤリハット報告制度の拡充
より多くのヒヤリハット報告が集まるよう、現場に働きかけていくと同時に、積極的にセーフティ表
彰を行うなどの取り組みを行います。また、現在の報告制度を改善し制度の浸透拡大と、全体的
な発生要因分析力の底上げに取り組みながらヒヤリハット報告の本来目的である不具合の未然
防止に繋げていくよう取り組んで参ります。
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2.
安 全 報 告 書
安全運航への各部門の取り組み
2-1. 運航部門(運航乗務員)
運航部門は、「運航乗務員(パイロット)」が所属する部門です。そのほか、運航乗務員の訓練や
審査を行う部署、運航乗務員をサポートする部署、運航方式や飛行技術に関する規程を管理す
る部署などがあり、運航部門は安全運航に欠かすことのできない大切な役割を担っています。
組織体制
運航に関する業務は運航本部が管轄しています。
運航本部
総員:131 名(機長:43 名、副操縦士:41 名、訓練生 7 名、地上スタッフ 40 名)
※2015年3月31日現在
飛行安全課
地上職
日常運航で発生した不具合事象やイレギュラーに対する
調査、FOQA(※後述)に関する業務を行います。
企画管理部
地上職
本部内の総合調整、人員計画・予算策定、契約、安全衛
生に関する業務、中長期事業計画・次年度事業計画に基
づいた本部事業の計画・推進・管理業務を行います。
地上職
運航規程、Operations Manual、Qualifications Manual、
Route Manual 等の維持・管理など運航基準に関する業務
や、飛行機運用規程の維持・管理や運航上の技術的問
題の処理など、運航技術に関する業務を行います。
機 長
飛行機の操縦に加え機内の最高責任者として、客室乗務
員も含めた全乗務員の指揮監督、安全管理を行います。
副操縦士
機長の補佐として、飛行機の操縦、地上の管制施設との
無線交信を行います。
運航サポート部
運航乗員部
訓練生
操縦士になるために訓練を受けています。
地上職
日常技倆や健康管理、運航乗務員の乗務・訓練・審査の
スケジュール作成と運用、規程類の維持・管理など運航
乗務員のサポート業務全般を行います。
査察
操縦士
運航乗務員の資格を取得または維持のために必要な審
査および関連する業務を行います。
教 官
運航乗務員の資格を取得または維持のために必要な訓
練および関連する業務を行います。
地上職
運航乗務員の訓練・審査に関するサポート業務を行います。
運航訓練審査部
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安 全 報 告 書
規程
運航乗務員、その他運航関係者が使用する規程類は、航空法に基づき運航サポート部および
運航訓練審査部が作成し、維持管理を行っています。対象となる規程類は、以下の通りです。
当社では、全運航乗務員への“iPad 配付”による上記規程類の電子化運用を実施しております。
規程の差し替え業務の効率化および差し替えミスの防止が可能であり、より容易に「いつでも、ど
こでも」最新版を参照できます。
注)関係法令等が整備されるまでの間、運航中の機内では、携帯電話の取扱い同様に電子規
程(iPad)は使用いたしません。
施設
2012年10月に開設した自社訓練施設「SFJ トレーニングセンター」において、運航乗務員、整
備士ならびに客室乗務員の訓練や審査等を行っています。トレーニングセンターは延べ床面積
約2,000平方メートルの三階建てで、運航乗務員の訓練/審査用のA320フルフライトシミュレ
ーター、タッチ スクリーン トレーナー、学習装置/教室、客室乗務員訓練用のキャビンモックアッ
プ(客室の実物大模型)や緊急脱出訓練用のスライドなどが設置されています。当社のフルフラ
イトシミュレーターは国土交通大臣が認定する最高位の性能である“レベル D”の認定を取得し
ており、実機に代わって訓練/審査に使用することができます。
[フルフライトシミュレーター]
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安 全 報 告 書
安全活動(安全に関する目標と具体的な取り組み)
◆2014年度の安全に関する目標と具体的な取り組みに対する達成度と総括的評価 (抜粋)
部門
目標(具体的な実施方法)
達成度と総括的評価
①QAR Data(※1)の確実な解析
目標の解析率を達成した。来
飛行安全課
年度も継続して実施する。
企画管理部
運航サポート部
運航乗員部
①本部内「安全性管理指標」のデータ管理
の徹底
②航空法第 111 条の 4 に定める報告の実
施
①最良・最適な会社規程の状態を維持す
るための準備アンケートの実施
①②ともに毎月実施し、目標を
達成した。来年度も継続して実
施する。
アンケートを実施し、来年度改
善を行うための準備も整った。
①乗務前における資格・健康管理要件の 違反事例はゼロで、目標を達
適切な確認の遵守
成した。引き続き遵守する。
②管制通信に関する遵守
③運航乗務員の乗務割に関する制限事項
の完全遵守
①訓練審査体制の充実(運航乗務員の技 適正に対応し、目標を達成し
運航訓練審査部 倆の底上げ)
た。来年度も継続して実施す
②資格管理の適切な実施
る。
※1 QAR(クイックアクセスレコーダー)、飛行機に搭載している飛行データ記録装置
◆2015 年度の安全に関する目標と具体的な取り組み (抜粋)
部門
目標(具体的な実施方法)
①QAR Data の確実な解析
飛行安全課
企画管理部
①本部内「安全性管理指標」のデータ管理の徹底
②航空法第111条の4に定める報告の実施
運航サポート部
①ユーザー意見を取り入れた規定の作成
②コミュニケーション、管理能力醸成
運航乗員部
①運航乗務員の乗務割に関する制限事項の完全遵守
②安全研修及び緊急脱出体験セミナーの受講率の向上
①訓練審査体制の充実(運航乗務員の技倆の底上げ)
運航訓練審査部 ②資格管理の適切な実施
③安全研修の受講率の向上
◆総合技倆管理制度
運航乗務員が自己の技倆について自ら管理し、維持・向上させると共に、毎年会社は定期的に
個人の技倆を見極め、必要に応じて的確にフォローを講じており、運航乗務員の自己技倆管理
を支援しています。
この制度を適切に運用し、会社は組織として運航乗務員の技倆の信頼性を保証し、高品質な運
航を提供しています。
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安 全 報 告 書
◆FOQA(Flight Operation Quality Assurance)の運用
国土交通省航空局の指針に従い、安全運航の維持促進と運航品質の向上を図ることを目的と
するプログラムであり、すべての運航便の飛行記録データを分析・評価し、その結果を運航乗務
員にフィードバックするとともに、リスク評価および潜在的なハザードの特定を行い、組織的な改
善措置を講じています。
◆QM、QMS(Qualifications Manual、Qualifications Manual Supplement)の改訂
運航乗務員の訓練および審査に係る規程の見直しを図り、訓練・審査の品質向上を目指してい
ます。
◆SFJ トレーニングセンターにおける技倆管理体制の機能向上
訓練機材(フルフライトシミュレーター等)の機能向上、指導層(教官・査察操縦士)のための各
種マニュアルの充実、ならびに訓練・審査の結果から各種傾向を把握して関係部門にその改善
策を提言する等、運航乗務員の品質向上につながる各種施策を講じています。
運航部門における会議体等
運航部門では、安全に係る以下のような会議を定期的に実施しており、日々現業担当者からの
意見や要望等を検討し、会社規程の改訂・維持管理、平準化された厳正な訓練審査の環境維
持、そして運航品質向上へと役立てております。
◆運航本部会
運航に係る全部門の代表者が出席し、運航状況や課題・問題点を話し合い、安全運航を維持・
向上し続けるための施策を検討する会議です。
◆運航品質会議
日常運航にて発生したトラブル等について、リスク評価の手法を用いて再発防止策の策定およ
び有効性の確認・評価を行う会議です。
◆飛行標準委員会
主に運航乗務員の操作、訓練・技術管理に関する基準を検討し策定する会議です。
◆査察会議
運航乗務員の審査の実施と結果に関する情報の共有化と審査技法の平準化、ならびに各種課
題を解決するための会議です。
◆教官会議
運航乗務員の訓練実施に関する情報の共有化と、教育技法の向上ならびに平準化を図る会議
です。
訓練・審査による安全対策
運航乗務員は資格等を取得するため、また一人前の運航乗務員となった後も技倆維持のため、
定期的に訓練や審査を受けています。
◆定期訓練
定期訓練は、機長・副操縦士それぞれの資格に関わる業務遂行に必要な知識および能力を維
持向上させるために、毎年定期的に行います。内容は学科訓練、非常救難対策訓練、CRM訓
練、LOFT訓練、FFS(フルフライトシミュレーター)訓練で構成されています。
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2 0 1 4 年 度
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(1)学科訓練
運航乗務員が必要とする知識を維持・向上させるために行う座学訓練です。
(2)非常救難対策訓練
非常事態発生時における緊急脱出および人命救助等の非常救難措置について、知識およ
び能力の維持・向上を図るために行う訓練です。
(3)CRM訓練
CRMは Crew Resource Management の略で、運航の安全を達成するために利用可能なす
べてのリソース(運航乗務員、客室乗務員、航空機機上システム、管制情報等) を有効に活
用できるようにメンバーの力を結集し、航空機運航上の事態を処理していくため、専門的スキ
ルを行使して実際に役立てることを言います。
CRM訓練では、特に運航乗務員のヒューマンファクターに係わる事故や不安全事象の事例
に焦点をあて、具体的な行動指針を学ぶことにより、そのような専門的スキルを維持・向上す
るために行う訓練です。
(4)LOFT訓練
LOFTは Line Oriented Flight Training の略で、フルフライトシミュレーターを使用し、通常状
態および日常の運航の中で発生する可能性のある異常状態ならびに緊急状態を模したフラ
イトを行い、個人および運航乗務員の一員としてフライト中に起こる出来事に的確に対応す
べく行う訓練です。訓練効果に沿った様々な出来事に、チームとしての能力を最大限に発揮
できるよう、CRM訓練で学んだ行動指針をフライトの中で実践しながら身に付けていく、総合
運航能力向上のための体験学習訓練です。特徴として、訓練の様子がビデオに録画されて
おり、訓練後に確認することが出来るようになっています。
(5)FFS 訓練
飛行機の飛行運動を模擬再現し、操縦訓練に使用する装置のことを「フルフライトシミュレー
ター(FFS)」といいます。フルフライトシミュレーターは実際の飛行状況を人工的に作り出し、
飛行中に操縦席で感じる揺れや音まで再現することができ、さらには実際の空港や周辺の地
形・建造物等をより忠実に模擬したビジュアル装置も備えています。
また、実際の飛行機を使用して実施することができない火災やシステムの故障などの緊急事
態を想定した訓練も、この装置では実施することができます。FFS 訓練は、この装置を利用し
て飛行機の運航に必要なあらゆる場面に対応できる操縦技術を身につけるとともに、それら
の技倆を維持・向上させることを目的とした訓練です。
[FFS 訓練の様子]
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2 0 1 4 年 度
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◆定期審査
毎年、運航乗務員に対して航空法に基づく定期審査(シミュレーターによる技能審査と実運航に
よる路線審査)が行われます。この審査は、機長・副操縦士それぞれの資格に係わる業務遂行に
必要な知識および能力について評価、判定が行われ、これに合格することで運航乗務員として
の資格を維持することができます。当社は平成24年3月30日付で国土交通大臣から指定本邦
航空運送事業者の指定を受けており、これらの審査を運航審査官(国土交通省)に代わって当
社の査察操縦士が実施しています。
◆航空身体検査
運航乗務員は、航空身体検査医による、航空法で義務付けられた厳正な身体検査を毎年定期
的に受診し、心身の健康を保持していることを確認したたうえで業務にあたっています。
日常運航における問題点の把握と改善
機長は、日常運航において問題が発生した場合、乗務後に発生事案に応じた報告書を提出し
ます。
報告書は、主管部署である飛行安全課へ送られた後、事実確認の調査が行われ、事後措置の
検討・調整および関係部門との調整を経て、機長が所属する運航乗員部へ回答されます。その
後、内容により関係部署または全社員へと報告されます。また、必要に応じて規程の改訂が行
われる場合もあり、安全運航に役立てられています。
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2-2. 運送(旅客・ランプ・貨物 ・航空保安)部門
組織体制
運送部門は運送客室本部に属しております。
総員:78名 ※2015年3月31日現在
運送客室本部
運送サポート部
運送サポート課
(航空保安含む)
関西空港所
中部空港所
山口宇部空港所
福岡空港所
北九州空港支店
羽田空港支店
オペレーション統制部
客室部
安全活動(安全に関する目標と具体的な取り組み)
全社安全目標の『主要な不安全事象の絶無』、『その他の不安全事象発生件数の対前年比減
少』のもと、運送客室本部として『不の解消:不確認/不理解/不強調/不一致』をテーマとし、以
下のとおり具体的実施方法を定め、実行しました。
・不安全事象の分析力・企画力習得のための勉強会実施
・勉強会を通じての主要不安全事象の検証、改善立案と実施の徹底
各基地・委託先への「ハザードマップ作成」促進
・確認会話の浸透を推進
・安全教育の各教育への取入れと実施
年度末評価を次のようにまとめました。
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・品質会議ならびに不安全事象が生じた際に事象の検証・分析ならびに支店、空港所、委託先
へハザードマップ作成ならびに改善のアドバイスを実施した。
・委託先定例会議へ積極的に参加し、コミュニケーションの強化、相乗的品質向上への取り組
みを行った。
・不安全事象を起こした委託先に対して個別に安全教育を実施した。
・特に大きな変更点として、2014年10月26日から羽田-山口宇部線の新規路線開設、およ
び羽田-福岡線について羽田空港第一から羽田空港第二へターミナルを変更した。
2015年3月29日から、羽田空港および福岡空港における委託先の変更を実施した。
来年度の課題として、委託先管理をより一層密に実施することとし、大きな変更については「変
更の管理」を実施していく。
運送部門における会議体等
運送部門には、安全に関わる3つの会議体があります。
◆運送品質会議
運送部門の会議として月に1回開催し、運送に関係する発生した不安全事象やヒヤリハット報告
書の内容を分析します。
◆運送客室本部会
運送客室本部の全体の会議として月に1回開催し、運送品質会議で分析の完了した不安全事
象やヒヤリハット報告書の内容を本部内の組織長に周知します。
◆委託先定例会議
運送部門として月に1回開催し、各支店長が委託先に対し不安全事象やヒヤリハット報告の内容
を周知し、安全作業を促します。
発生不具合事象の原因と改善策
運送部門では、各空港で発生する不具合事象報告やヒヤリハット報告を集約し、発生原因を多
角的に分析して改善及び再発防止対策として各空港にフィードバックしています。また、報告は、
運航安全部会及び運送品質会議等の会議体においても報告・分析され情報の共有化と再発防
止の水平展開を図っています。
過去の不安全事象の再発防止対策として2014年度では、新たに貨物システムを導入いたしま
した。このシステムは従来から運用していた重量重心位置を計算するロードコントロールシステム
(LCS)と連動しているため、貨物を搭載した場合の適切な重量重心位置の管理をリアルタイムで
行えるようになりました。また、この貨物システムは各コンテナの重量及び貨物を搭載した場合の
各コンテナの制限重量が登録されており、万一、制限重量を超過したコンテナが発生した場合
でも搭載を防ぐようになっています。
[新たな貨物システムへの登録業務]
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また、規定類は常に見直しを実施しており、不安全事象報告書やヒヤリハット報告書を分析し、
改善策を基に手順の改訂を実施しています。事例によっては、他部署所掌の規定の改訂を依
頼することもあります。
旅客業務では安全性の確保とともにお客様に対するサービス品質の維持向上に努めています。
一部の空港では旅客業務を委託しておりますが、この場合においても当社の品質要求事項を
満足し、かつ運航の安全性を低下させることがないように、適切な管理を常に行っております。
就航空港各地においてもカウンターやロビーなど、お客様との接点部分における安全は第一に
作業を進めております。しかしながら一部の空港では空港内施設に特性があり、特に中部空港
では航空機と搭乗橋(パッセンジャーボーディングブリッジ)との段差が大きく、お客様のお怪我
につながる事象も発生いたしました。これを受けて現地での実地検証を重ね、お手伝いを必要と
するお客様に配慮することはもちろん、ご搭乗時においては常時足元にスロープを設置すること
で改善を図りました。
[スロープの設置]
日常運航における問題点の把握と抑制
日常運航におけるランプハンドリングや貨物取り扱いで問題となる点については、業務調整部門
と現場間での月1回の定例会議の場などで、現場の声を一つでも多く集約し、より安全に作業を
実施出来るように努めています。具体的には、飛行機に関すること、空港特性によるものなど、
作業中に不安全だと思われるものについて問題提起や業務改善提案をしてもらい、それを様々
な角度から原因分析し、改善の内容を文書(通報や業務連絡)により)ランプハンドリング従事者
へ周知を行います。作業について実作業と整合性が取れないものは直ちに検証し、規程や作
業手順書などの変更も行います。また、安全かつスムーズな作業を実施できるよう、業務調整部
門と現場は互いにコミュニケーションを密に取り合いながら日々の運航便作業に従事しています。
[航空機が到着する前に、作業工程や安全についてミーティングを行います]
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保安体制
航空機によるテロやハイジャック等の不法妨害行為を未然に防止するため、航空保安に関する
基本方針の設定、航空局や他航空会社等との折衝、航空保安関係規程類や保安検査の実施
基準の策定を行い、お客様に安全・安心かつ快適な空の旅を提供できるよう全社体制で航空保
安対策の強化に取組んでいます。
社長
運送客室本部長
総括保安責任者
全社員
(空港基地内社員を除く)
空港基地長
(空港基地保安責任者)
空港基地内社員
各空港に空港基地保安責任者を配置し、保安対策の実施、保安検査委託会社の指導監督お
よび社内外の担当者に対する教育の実施・管理などを行っています。
就航空港では、保安検査業務を警備会社へ委託しており、委託警備会社は「警備業法」および
「国家民間航空保安プログラム」に基づき、検査員に対して空港警備業務に係る基本教育、業
務別専門教育を徹底した上で、全てのお客様と荷物に対し厳格な検査を行っております。
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安全活動(安全に関する目標と具体的な取り組み)
「関係部門との連携強化による航空保安基準の構築・浸透」を目標とし、定期的な保安教育訓
練の実施に加え、保安に関する事象の発生や対応策についてタイムリーに情報提供することで
保安に対する意識を高めるとともに、航空保安体制の強化に取り組んでおります。
保安に関する会議体等
運送客室本部が主催する「運送品質会議」や「運送客室本部会」といった安全に係る会議体に
参加し、課題・問題点等を検討し対策を講じております。また、安全推進部が主催する「運航安
全部会」では、社内全体で情報を共有することで意思統一を図っています。
発生不具合事象の原因と改善策
旅客係員や客室乗務員に対して、お客様が「ハイジャックしてくる」、「爆弾が入っている」等と冗
談を言ったため、脅威を与えたとして、搭乗拒否とする事案が発生しております。
2014年度の爆弾等不穏発言事案は3件(2013年度は4件)発生しており、例え悪意はなく冗談
であったとしても、こうした発言を放置すれば、同種行為が反復・継続されかねず、更には重大
事象に至るケースも皆無とはいえません。
こうしたテロ、ハイジャック等を匂わすような発言をしたお客様に対し、厳正に対応し安全運航の
維持向上に努めており、今後とも航空保安対策の充実を図り、皆様に安全・安心をお届けして
参ります。
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2-3. 客室部門(客室乗務員)
客室乗務員の仕事は、お客様の安全性と快適性の確保です。お客様に安心してご利用いただ
けるよう、客室乗務員はお客様のご搭乗前に運航乗務員と運航についての情報を共有し、機内
の装備に不備が無いか、不審物が無いか等保安に関わる多数の項目をチェックし安全性に自信
を持ってお客様を機内にお迎えしております。また定期的に行われる各種訓練を通して、常に保
安要員としての自覚を高く持ち、安全運航を維持し続けております。それに加え、到着地までお
客様に心地よい時間を過ごしていただけるよう、客室乗務員はお客様の満足度向上にむけて
日々取り組んでおります。サービス技量の研鑽はもちろん、サービス提案・サービス提供品の選
定などにも客室乗務員が積極的に参加し、スターフライヤーの運航品質を安全・サービスの両面
から支えています。
組織体制
客室部門は運送客室本部の客室部が管轄しています。
運送客室本部
総員:155名(うち客室乗務員139名) ※2015年3月31日現在
客室部
客室業務課
客室業務
チーム
客室乗務員が機内で最高のパフォーマンスが出来るよう、客室
に係わる全ての環境を整え、バックアップします。
客室企画
チーム
人員、労務計画、規程の制定・改廃、関連官公庁との折衝およ
び客室サービス・機内エンターテイメントの企画・立案、機内清
掃の調整、機用品の契約・在庫管理等を担当します。
教育訓練
チーム
客室乗員課
お客様を安全に快適に目的地までご案内出来るよう、スターフ
ライヤーの客室乗務員を養成、育成します。
教育訓練計画の企画・立案、客室関連規定等の制定・改廃、各
種訓練教育訓練の実施・実績管理、訓練備品・教育訓練施設
の管理等を担当します。
運航乗務員とともに、機内の安全を確保すること、またお客様が快
適に過ごして頂けるようなサービスを提供します。
客室乗務員の健康管理、技量管理、乗務割作成などを担当しま
す。また組織を各チームに分け、安全推進員を中心とした安全意
識の向上、並びに接遇向上委員を中心としたホスピタリティ意識向
上の啓発活動を元に高いモチベーションを持って業務を進めてい
ます。
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安全活動(安全に関する目標と具体的な取り組み)
◆年間安全目標
2014年度は『主要な不安全事象の絶無』『不安全事象発生件数の対前年度比減少』を全社安
全目標とし、客室部内でも必ず安全目標を確認し乗務に臨む等、ひとりひとりの客室乗務員が意
識を高めることで、不安全事象の未然防止に努めました。また客室部目標は、2013年度に発生
した不安全事象を受け、お客様をお出迎えする前に機内に不審物が無い事を確認する
『Security Check 漏れによる不安全事象発生前年度比50%以下』を目標といたしました。
◆日常運航における問題点の把握と抑制
日常運航の中で要報告と定められた事象が発生した場合、到着後客室乗務員により報告書が
提出され、必要と思われる事例については速やかに事例紹介を行う等タイムリーに組織全体で
情報共有ができるようなフローを構築しています。また提出された報告書について毎月品質会議
において管理職全員で振り返りを行い、組織として対策を講じる必要があるものがないか改めて
精査し、要改善と思われる事例については問題点の分析ならびに改善策を検討し実行していま
す。また他部門に関連する事象が報告された場合は速やかに関連部署と情報共有し、協力して
対策を講じます。
提出された報告書の中で、保安に関わる重要な項目については事例紹介など周知をするだけで
はなく、訓練やチームミーティングの中で事例研究をし、再発防止についてひとりひとりの客室乗
務員が考え行動できる土壌を作るよう努めています。
◆「ヒヤリハット報告」推進
ヒヤリハット報告は、文字通り「ヒヤリとした」、「ハッとした」経験を組織で共有し、再発防止に役立
てようというものです。日常業務を行う中で経験した「不安全事象」や「ダイヤの運用にかかわる
(遅延・欠航)不具合事象」「安全衛生に関わる事象」「安全に関する業務改善提言」を報告対象
とし、客室部からは2014年度は13件の報告が挙がり、2013年度の報告3件から飛躍的に報告
件数が増加しました。報告件数の増加は客室乗務員全員の安全意識が更に向上したこと、また
報告文化が醸成されていることを示します。これからもヒヤリハット報告制度を推進し、運送客室
本部としての安全文化の醸成を目指します。
◆従業員表彰制度(セーフティ表彰)
社員が安全運航に関し事故もしくは災害発生の未然防止に寄与したと認められた場合、また職
場の安全衛生に関し、事故もしくは災害発生の未然防止又は職場環境の改善に寄与したと認め
られた場合、各部署長を通して社員賞に推薦されます。
客室部門における会議体等
全社横断的な会議としては、安全推進部主管の「運航安全部会」や、総務人事部主管の「安全
衛生委員会」があり、客室乗務員の中から選出された委員が各会議に参加し、他部署との情報
共有を毎月定期的に行っております。また運送客室本部内の取り組みとしては、サービス品質・
運航品質の向上の為、「接遇向上委員会」「ON TIME FLYER」を毎月開催し、地上・機内で一
貫した高品質なサービスが提供できるよう活発な意見交換を行っています。
客室部内では、毎月客室部会・客室品質会議を開催し、直近の事例の確認・検証を管理職含
め客室部スタッフで行い、安全・サービスの向上に繋げています。また客室乗務員間では、教官
ミーティング、チーム毎にチームミーティングを定期的に行い、社内情報の共有、統一化を図っ
ています。お客様が便を予約された時から到着するまでの全工程において、安全・安心・快適な
空の旅を提供できるよう全社員が一丸となって取り組んでおります。
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不安全事象とその原因と改善策
◆2013年度に発生した不安全事例を受けて、2014年度の対策
客室乗務員は毎便お客様を機内にお迎えする前に、機内に所持者が明確でない不審物が無
いか点検を実施しておりますが、2013年度は、前便のお客様の忘れ物に気付かずに次便を運
航したケースが3件、コンパートメントの確認漏れが1件発生致しました。
これを受け、2014年度はチームミーティング等でなぜ点検漏れが発生したのか原因分析を行
い、より確実な点検方法の検討や、訓練へ反映を行う等、再発防止に向けた対策を講じました。
客室乗務員が全員で機内確認(Security Check)の意識向上を行った結果、2014年度は1件に
留めることが出来ました。
◆安全取組発表会
安全取組発表会では、各部署の代表が部内において日頃から行っている安全に対する取組を発
表し、全社を挙げて安全意識の向上に努めています。客室部では2013年度の搭乗前の機内確
認(Security Check)が不十分であった事例を受け、原因と具体的な改善策について客室部の安全
推進員が発表を行いました。
発表の中では、より効果的な確認方法として角度を変えて見る、姿勢を低く、また高くし、機内の
隅々まで確認することや、不審物が無いという前提で見るのではなく、あるかもしれないという意識
で確認するなどの取り組みをしていることを発表いたしました。スターフライヤーの特長である黒い
座席や床は黒い鞄や傘を見落とす可能性がある事を予測し確認作業を行う等、このような取り組
みにより確認漏れが減少した事を発表し、安全意識の啓蒙につなげています。
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その他
お客様へ安全・安心なフライトをお届けするために
◆急病の方への備え
機内では急に体調不良者が発生した場合に備え、機内には各種医療品を用意しております。
また全ての客室乗務員は MEDIC First Aid(※1)応急措置のプロバイダーとして認定を受けて
おり、医療関係者に引き継ぐまでの応急措置ができるよう訓練を受けております。また速やかに
人工呼吸が出来るようスターフライヤーの客室乗務員には常に制服のポケットに蘇生用マウスピ
ースを携帯することを義務付けております。
※1 MEDIC First Aid(メディック・ファーストエイド®)は一般市民レベルの応急救護の手当の訓練プログラムで、国
際蘇生連絡委員会、米国心臓協会のガイドラインと、救急蘇生法の指針に準拠しています。
客室乗務員の資格について
客室乗務員は入社後、養成訓練を受け OJT を経て一般客室乗務員資格発令後、客室乗務員
として乗務を開始します。その後、定期訓練やスキルアップフライト※2 等、様々な訓練や教育を
受けステップアップします。
一般客室乗務員として一定期間の乗務経験を経て、客室の責任者として先任客室乗務員(パー
サー)に登用されます。その後、経験を積み OJT や技量確認フライトにて指導を行うインフライト
インストラクター、各種訓練や緊急保安訓練等を担当する客室訓練教官、また資格発令のため
の審査を担う審査客室乗務員の資格を取得いたします。
※2 スキルアップフライト
客室乗務員は、半年から一年に一度、保安面・サービス面において、基本に忠実に業務を行っ
ているか、自己流に陥っていないか等を確認するスキルアップフライトを実施しています。スター
フライヤーが求める基準への軌道修正と更なる技量向上に努めています。
◆養成訓練(初期訓練)
入社後は訓練生となり客室乗務員になるための養成訓練を受けます。地上での座学訓練を約2
ヶ月間、実際に機内で業務を実施する OJT 訓練を約半月間実施します。座学訓練では緊急保
安対策として、緊急着陸時の脱出手順や火災、急減圧、安全阻害行為等の対応訓練や、急病
のお客様に対応出来るように除細動器の使用手順を含む心肺蘇生法等の訓練をしています。
スターフライヤーでは「考える CA」の育成を目指しています。基本となる手順を修得したのち、
様々な応用ができるよう、状況に応じた判断力やそれを行動化できる技量を養います。機転を利
かせて効率よく緊急時の対応ができるよう、この養成訓練でしっかり学習します。
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◆定期緊急保安訓練
乗務を開始した後も、客室乗務員は年に1回定期訓練を実施することが義務付けられています。
この訓練では、マニュアルの要点を再確認し、また緊急時に迅速な対応ができるよう実技訓練も
実施しています。訓練は2日間で、緊急脱出手順、火災、急減圧、非常用装備品、救急救命等
について学習します。人間誰しも記憶が少しずつ薄れていくものですが、大切な安全に関わる
手順を忘れることのないように、毎年この訓練で知識の維持向上に努めています。
◆運航乗務員との合同訓練
上記の全ての訓練ではその一部を運航乗務員と合同で行っています。緊急事態で必要となるの
は何と言っても乗務員間のコミュニケーションです。日ごろからそれぞれの手順の整合性を図り、
加えて情報共有・意見交換をすることで、よりよいコミュニケーション作りに努めています。
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2-4. 運航管理・統制部門(地上運航従事者・オペ レーション統制者)
◆運航管理部門
運航管理部門(地上運航従事者)は、お客様を安全に目的地へお届けするため、地上で飛行
計画を作成し運航監視を行う「運航管理者(ディスパッチャー)」とそれを支援する運航支援者に
より業務を実施しています。
◆統制部門
統制部門(オペレーション統制者)は、安全を第一とし定時性の確保に努め、さらに公共性を考
慮しダイヤの管理・調整を実施しております。又、航空機事故および緊急事態が発生した場合
の社内初動対応措置の司令塔としての業務も実施しております。尚、運航管理者はオペレーシ
ョン統制者の業務も実施できる教育を受けています。
組織体制
運航管理・統制に関する業務は運送客室本部が管轄しています。
総員:28名(内運航管理者13名) 2015年3月31日現在
運送客室本部
➢北九州空港
オペレーション統制部 業務課(3名)
部内の総合調整(支店運航課、委託先含む)、人員
計画、予算策定、契約、安全衛生に関する業務、の
計画・推進・管理業務を行います。
オペレーション統制部
業務課
運航管理課
運送サポート部
中部空港所
※1
関西空港所
※1
山口宇部空港所 ※1
福岡空港所
※1
羽田空港支店
羽田運航課
※1 の空港は ANA へ委託
オペレーション統制部 運航管理課(16名)
[運航管理者/ディスパッチ]
出発に先立ち、飛行機が安全かつ効率的に飛行で
きる飛行計画を作成し、飛行中はパイロットと密接に
連絡を取り、情報の提供や運航の監視を行います。
尚、運航管理者は北九州空港のみに配置しており
ます。
[運航支援者]
航空機との無線交信、重量重心位置の確認、搭載
燃料のオーダーなど、運航管理者の支援を行いま
す。
[オペレーション統制者]
航空法・同法令に基づき許可された又は、届出をし
た運航計画(ダイヤ)を、管理・調整します。また、航
空機事故および緊急事態発生時においては、初動
対応の措置を実施します。
➢羽田空港(9名)
羽田空港に於ける運航支援業務を行っております。
➢中部空港、関西空港、山口宇部空港、福岡空港
運航支援者を ANA に委託し、運航支援業務を行っ
ております。
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安全活動(安全に関する目標と具体的な取り組み)
◆2014年度の安全に関する目標
1. 『事例研究を通常運航に活かす』
発生した小さな不具合についても、将来大きな不安全事象の芽となる可能性があるため、都
度業務振り返り掲示板の活用も行いながら、全員が共通の認識を持ち、日々の運航の安全
へ活かす取り組みを行いました。
2. 『確実な重量重心位置データの入力』
ヒューマンエラーが発生しやすい DATA 入力時において、入力内容の再確認およびダブ
ルチェックの徹底を行い、運航品質向上の一助としました。
◆2015年度の安全に関する目標
『重量重心位置の適正な管理と、発生した事象の事例研究による再発防止』
◆DRM(Dispatch Resource Management)の導入
様々な環境下でエラーを未然に防止する方策の一つであるDRMを2006年度より導入していま
す。 DRM訓練とは、チームとしての意思決定や効果的なコミュニケーションの方法、また運航
管理業務におけるリーダーシップの取り方や業務の適切な配分などに着目した、地上運航従事
者のための訓練です。 今後も内容を充実させ、地上運航従事者の安全意識向上に努めます。
◆技倆管理
運航管理に必要な新しい知識の付与と日常運航のおさらいとして、気象・航法・管制・飛行機の
性能等を定期訓練に取り入れています。 また訓練終了後は、技倆が維持されているか、新しい
知識を認識したかの見極め審査を行っています。
オペレーション統制者
◆運航品質向上の取組み
運航便の遅延、欠航、出発地への引き返し、目的地以外の臨時着陸、機材故障、天候阻害に
対するダイヤ管理・調整を実施する際、安全を最優先させる取り組みとして、運航品質の向上
(定時性・就航率含む)を関連部門と一体感を持って実施する体制を構築しました。又、航空機
事故および緊急事態が発生した場合の初動対応体制についても、さらに見直しを実施し、判断
および対応処理のスピード向上に努めました。
運航管理部門および統制部門における会議体等
運航管理部門では、安全に係る会議を定期的に実施しており、日々現業担当者からの意見や
要望等を検討し、会社規程の改訂・維持管理、平準化された厳正な訓練審査環境維持、そして
運航品質向上へと役立てております。
◆オペレーション統制部会
運航管理部門に関する現場間(支店含む)の課題・問題点を話し合い、安全運航を維持・向上
し続けるための施策を検討する会議体です。
訓練・審査による安全対策
地上運航従事者
地上運航従事者とは以下に記述する「運航管理者」と運航管理者の業務を補佐・支援する「運
航支援者」との総称です。機上に於ける機長と副操縦士との関係に似ています。
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運航管理者
国家資格である「運航管理者技能検定」に合格し、社内での運航管理者任用審査に合格した
者を運航管理者といいます。
運航管理者も運航乗務員同様、その技倆の維持のために定期訓練・審査を受けています。
◆定期訓練
定期訓練は、運航管理者に対して運航管理業務に係わる知識、技倆等の維持向上、および安
全意識の高揚を目的とし、運航に係わる知識等を定期的に付与するため、年1回行います。 訓
練の内容は運航関係知識のリフレッシュ、運航関係新知識、冬季運航、事例紹介等です。 定期
訓練の際に DRM(Dispatch Resource Management)と危険物訓練を併せて実施しています。 具体
的な訓練の内容については、オペレーション統制部の訓練に定めています。
◆定期審査
定期審査は、実務による審査と書面による審査をそれぞれ隔年ごとに実施しています。実務によ
る審査は「審査運航管理者」が審査対象者の運航管理実業務に立ち会うことにより行われます。
書面による審査は、運航管理業務を遂行するのに必要な関連法規、社内規程、その他職務を
遂行する上で必要な知識および定期訓練で付与した知識により、審査項目が定められます。
[運航管理者]→
(飛行計画作成)
←[運航支援者]
(飛行中の航空機と無線にて通信中)
運航支援者
運航支援者も運航管理者と同様に毎年「定期訓練」を受け「技倆確認」を受けています。
日常運航における問題点の把握と改善
地上運航従事者(統制者)
日常運航において、安全を阻害する様々な事象(被雷による機体損傷、鳥との衝突による機体
損傷やお客様の発病など)が発生した場合、その内容に応じて地上運航従事者は関連部署へ
情報発信を行います。
例えば、被雷による機体損傷の場合、運航中の飛行機から情報が発信され、これを受けた地上
運航従事者は、整備士に連絡し整備作業の検討を依頼します。
どのような場合でも、情報は関連部門にメーリングシステムにて通報されます。また重要度に応じ、
全社員に伝達される場合もあります。
問題発生後、報告書の提出によって報告と原因の究明が行われ、その後部内または全社内で
情報を共有化します。 場合によっては規程の改訂も行われ、以後の安全運航へと役立てていま
す。
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
2-5. 整備部門
整備業務は、安全で快適な運航のために航空機の品質を維持・向上させる業務です。
整備業務には、航空機の点検・修理・改修・給油等の実作業を行う「整備作業」と、その整備作業
を的確に実施するための整備計画立案、作業手順書の作成と管理、また、設備器材・部品管理
などを行う「整備管理業務」からなります。
組織体制
整備に関する業務は、整備本部が管轄しており、以下の組織で構成されております。
総員:141名 ※2015年3月31日現在
整備本部
整備監査部
企画管理部
補給部
技術部
品質保証部
整備部
企画管理課
補給企画課
品質保証課
整備統制課
生産管理課
補給管理課
教育訓練審査課
北九州整備課
機材計画課
福岡整備課
羽田整備課
関西整備課
中部整備基地
山口宇部整備
基地
◆整備従事者数 84名
◆確認主任者数 50名
◆主な業務内容
整備監査部 1名
整備本部内及び委託先に対する監査計画を立案、実施します。定期監査に加え、必要に応じ
て特別監査も行い、自社の業務だけでなく、委託先の業務が適切に行われているかをチェックし
ます。発見した問題点については、その都度当該部門に是正処置を指示します。
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
企画管理部 10名
中長期的な事業計画を視野に、整備計画を立案・実施します。 また、整備計画はリースを受け
た航空機の返却も含みます。
一方で、整備生産効率を向上させるため、整備作業の委託を行います。この場合も、委託先へ
当社と同等以上の整備品質を要求しています。 また、安全第一を念頭に置き、整備作業環境
の安全衛生管理や施設管理を行って整備作業の安全確保に努めています。
補給部 12名
整備作業に必要な部品・材料・整備器材の需要予測に基づく在庫管理、購入や修理の発注、
領収検査、保管管理、部品や整備器材の時間管理、および部品や器材の修理に関係する委託
先の管理を行っています。 部品・材料の管理や各種処理については独自のシステムを使用し
ています。
品質保証部 10名
品質に関する業務は、航空会社として必要な整備の方式等を規定する整備規程と、認定事業
場として航空局から認定された業務の実施方法を定めた業務規程の管理を行います。
また、航空機の品質状況を監視し、機材品質の更なる維持向上のための処置を担当部門に指
示します。
整備士確保のため、資格取得訓練はもちろんのこと、定期訓練を実施して技量維持を図ってい
ます。訓練においては、運航シミュレーターを使用し効率的で理解し易い訓練を行っています。
技術部 8名
整備技術に関する業務は、航空機の点検整備の基準を「整備要目」に定め、製造会社の発行
する技術資料を基に整備作業の手順となるマニュアルを作成します。また、航空機の安全性、
品質を更に維持向上させるために改修が必要な場合は、これを整備部あるいは委託先に指示
します。
整備部 98名
日常の業務は、航空機の出発点検/飛行間点検/最終 FLIGHT 後の点検があります。
夜間は航空機に定められた時間管理での定例作業と、点検時においての不具合修復作業があ
り日夜、航空機の品質維持に努めています。航空機の整備には、2014年1月から運用開始し
た新設の格納庫を使用し、整備の方法は、航空機メーカー等のマニュアルに基づいて確実に実
施しています。その他、定期的に長期期間に亘り実施する整備は、海外の整備事業者へ委託し
ていますが、整備士を派遣し委託整備の点検を行っております。また、新造機の製造工程にお
いても整備士を派遣し製造工程の点検も実施しています。
[社内整備系イントラネット]
[部品管理部門の職場]
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
安全活動(安全に関する目標と具体的な取り組み)
◆2014年度安全目標
1.『主要な不安全事象の絶無』
2.『その他の不安全事象発生件数の対前年比減少』
総括
2014年度は航空局安全監査指摘事項(11件)及び航空局自主報告(16件)がありました。
これらの要因分析、是正処置、対策立案・実施は整備本部とって大きな負担となり、またその影
響で山口宇部就航への障害や整備規定全面見直しが必要となりました。
安全目標の遂行は、このような状況下で行うこととなり、結果として目標を達成できなかった項目
もありましたが、対策として以下の取り組みを行いました。
① 整備品質会議内容の充実化(リスク評価の推進)
② 不具合是正対策に対するPDCA機能の確実な実施
③ 「機械⇒人⇒組織」というリスク主要因の変遷に合わせた内容としたQCIを発行することで、整
備本部全へ積極的な周知活動の実施
④ 重要周知文書については、本部全体へ記名回覧及び周知完了報告を義務付けることでコミュ
ニケーションツールの一助としました。
⑤ ヒューマンエラー解析手法の標準化
一方で、ヒヤリハットの報告は過去最高の31件発行されており、各部ともにヒューマンエラーや、リスク
マネジメントの考え方が根付き始めていると感じています。
今後もヒヤリハット報告の重要性を啓蒙し、重大な事象に至る前に危険の芽を摘む活動を継続します。
整備本部
目標
目 標
1.(1)TCD 違反および整備要目の超過件数
1.(2)整備要目の実施漏れ件数
2.(1)整備要目の設定漏れ件数
2.(2)整備処置・規定の解釈の誤り件数
2.(3)不注意による整備処置不具合活性件数
2.(4)不注意・失念・確認漏れによる手続きの不具合発生件数
2.(5)安全に対する個々人の草の根運動と本部行動指針の実践
3.コミュニケーションの活性化
◆2015年度安全目標
本部目標
具体的
実施項目
(各部目標計)
目 標
1.「ヒューマンエラーによる義務報告件数の削減」
2.「ヒヤリハット報告の促進」
1.(1)ヒューマンエラーによる義務報告件数の削減
1.(2) ヒューマンエラー中整備作業品質に係る不具合件数減少
1.(3) 監査の不適切事項の減少
1.(4) TCD 管理に係る不具合の低減
2.(1) ヒヤリハット報告の年度発行件数増
2.(2)安全研修および緊急脱出体験セミナー受講の促進
2.(3) 業務災害の抑制
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
◆具体的取り組み(ヒューマンエラーに起因する不具合事象に対する検討・対策強化)
(1) ヒヤリハット報告制度
整備本部だけではなく全社的な取組みの一つですが、ヒューマンエラーが発生しそうな状況があ
った場合、所定の様式を用いた自発的報告制度があります。この報告を基に、「ヒヤリハット報告
評価シート」を用いて発生原因の探求とその要因の分析をし、そこからリスク評価をした結果を基
に、対策の立案を行います。2014年度は合計31件の報告がありました。
(2) ヒューマンエラーに起因する不具合報告制度
ヒヤリハット報告は、ヒューマンエラーの一歩手前の場合に行うものですが、実際にヒューマンエラ
ーが発生したときには「ヒューマンエラーに起因する不具合報告」を行います。どちらも当時の状
況を丁寧に調査し、その事象の発生原因の探求、要因の分析などのリスク評価を経て、対策の
立案を行うことに変わりありません。2014年度は合計8件の報告がありました。
(3) 整備業務改善検討制度
ヒヤリハット報告、ヒューマンエラー報告のいずれも、基本的にはその事象が発生した部署におい
て調査、要因分析および対策の検討を行いますが、その事象によっては本部全体での検証が必
要な場合もあります。そういった場合、「整備業務改善検討シート」を用いて、月例の整備品質会
議において、そのリスク評価や対策の妥当性などについて検証し、妥当と判断されたものについ
て実行に移すことによって組織的なヒューマンエラー対策に取組んでいます。2014年度に「整
備業務改善検討シート」を用いて改善検討を行った事例は1件でした。
ヒヤリハット
報告
改善検討
シート
対策の実行
対策の検証
ヒューマンエラー
報告
必要に応じて実施
整備品質会議で
の報告
(フィードバック)
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
整備部門に関する会議体等
◆整備品質会議
整備品質の維持向上のため、各種品質指標等
(出発信頼度、イレギュラー運航発生率、主要機
材不具合、信頼性管理の運用状況、およびヒュ
ーマンエラーによる不具合事例)について整備
本部各部から報告し、品質低下の兆候や要因
(ハザード)を見極めてその原因と対策を協議す
る場として、月例で開催する会議体です。
近年、当会議では前述のヒューマンエラーに起
因した事象の原因分析と対策検討に用いる「整
備業務改善検討シート」の解析結果についての
協議を重点的に実施し、整備本部の安全管理
活動の基幹となっています。
[整備品質会議の様子]
◆品質管理担当者会議
小規模なエアラインの整備部門では、品質管理
担当は間接部門にのみ設置されるのが常套で
すが、当社では現業部門の各整備課に整備士
兼務の品質管理担当者を配置し以下の業務を
行わせることにより、現業における品質管理に関
する知識と品質改善に向けた意欲を向上させ、
底辺からの品質の作り込みの強化を図っていま
す。
・各整備課内で生じている問題点(ハザード)抽
出
・作業品質向上のための改善提案のとりまとめ各
整備課の品質管理担当者が一堂に会し、上記
業務の成果について協議・共有する場として、
品質管理担当会議を開催しています。
[整備部 品質管理担当者会議の様子]
主な不具合事象とその具体的改善策
弊社機材に発生した不具合に対しては、当該機を故障探求の上で復旧措置を行うのはもちろん
ですが、再発防止のため、自社の不具合データや製造メーカー等からの情報を基に評価・検討
をした後に対策を講じています。検討の結果、当社他機でも同種不具合発生の可能性が場合
には、水平展開として他機への一斉点検等を実施します。しかしながら、機材不具合の中には
落雷や鳥衝突などの不可抗力による事例もありました。
弊社の整備方針は、定例整備の確実な遂行、メーカー技術通報の積極的な実施、運航状況の
監視による不具合兆候の早期対処による航空機材の信頼性の維持・向上および定時性の確保
を目標としています。これらの整備体制を強化して遅延・欠航を減少させるべく、部品・設備の配
備数の拡充等、整備作業の環境改善、および業務手順の改善等を行っています。2014年度に
発生しました1例の機材不具合と対応策について、以下にご紹介します。
(事例)3000FC 毎の定例整備(エンジン ファンブレード取付部のグリースアップ)再作業の再
作業を実施したため、16便が欠航しました。
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2 0 1 4 年 度
安 全 報 告 書
当該定例整備を実施した際に、エンジンの空気流入口に取り付けてあるスピンナー(回転軸カ
バー)の後部とファンブレードの接続を隙間ゲージを使って測定するところを目視確認できるの
で、ゲージを使わなかったことが判明し、16便を欠航させて再作業(6機11台のエンジン)を行
いました。メーカーに確認した結果、耐空性には影響はないだろう(エンジンへの流入空気取入
れ性能(燃費)のみの影響)とのことでありましたが、万全を期すために便を止めて再作業を行い
ました。
安全上の取り組み(仕組み)
発生した不具合についての個々の対策に加え、予防整備の一環として以下のような「信頼性管
理プログラム」の取組みを行なっています。
◆エンジンコンディション モニタリング
飛行中のエンジンの運転状態について、いくつかのパラメーター(排気温、潤滑油消費量・燃料
消費量など)を常時リアルタイムでモニターし、不具合が顕在化する前の兆候を探知して、必要
な整備処置を行い、不具合の発生を未然に防止するプログラムを構築しています。
◆エンジン インフライト シャットダウンレート モニタリング
飛行中のエンジン不具合によるエンジン停止率の管理指標を設定し、この指標を超える不具合
が発生した場合、原因解析とこれに基づく効果的なフリート全体に対する対策の策定を行うプロ
グラムを構築しています。
◆イベント モニタリング
飛行機のシステム毎に不具合発生率の管理指標を設定し、この指標を超える不具合が発生し
た場合、原因解析とこれに基づくフリート全体に対する対策(飛行機の改修、一斉点検、整備要
目の見直しなど)の策定を行うプログラムを構築しています。
◆コンポーネント リライアビリティ モニタリング
上記の飛行機の管理指標と同様に、飛行機に搭載されている装備品の取卸率の管理指標を設
定し、この指標を超える取卸が発生した場合、効果的な対策の策定を行うプログラムを構築して
います。
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2 0 1 4 年 度
3.
安 全 報 告 書
使用機材および輸送実績について
◆使用機材
当社が使用しているA320型機はエアバス社が開発し、
1988年に就航した単通路小型旅客機です。
フライバイワイヤなど最新技術を導入して開発された
ハイテク旅客機です。
機種
仕様
全長
全幅
全高
最大離陸重量
エンジン
座席数
保有機数
年間平均飛行時間/機
年間平均飛行回数/機
平均機齢
導入開始時期
2015年3月31日現在
AIRBUS A320-214
ウイングチップ仕様
シャークレット仕様
37.57メートル
37.57メートル
34.10メートル
35.80メートル
12.08メートル
12.08メートル
70/77トン
71.5/77トン
CFM56-5B4/3 2基装備
推力27,000ポンド(12.2トン)
150席
9機
2,759時間
2,184回
2年5ヶ月
2005年12月13日
◆路線別輸送実績
路線
計画
運航便数
実績
運航便数
就航率
定時
出発率
座席キロ *2
(ASK)
(便)
(便)
(%)
(%)
(×10,000)
羽田⇔北九州
8,695
8,579
98.7
91.7
122,831.3
羽田⇔関西
3,710
3,676
99.1
88.2
37,344.2
羽田⇔福岡
6,330
6,252
98.7
88.5
97,503.8
942
940
99.8
94.6
13,183.5
中部⇔福岡
2,190
2,157
98.5
96.3
24,038.6
国内線合計
21,867
21,604
98.8
90.9
294,901.5
羽田⇔山口宇部 *1
*1…羽田⇔山口宇部線は2014年10月26より運航。
*2…座席キロは、各飛行区間の座席提供数にその区間の距離を乗じた数値です。
尚、座席キロには ANA とのコードシェア運航に伴う同社の座席販売分を含みます。
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2014年度 安全報告書
2015年7月発行
株式会社 スターフライヤー