歩いて日本一周 - 神奈川県立藤沢総合高等学校

《校長だより》
神奈川県立藤沢総合高等学校
校 長 増渕 広美
平成 27 年3月2日
第 5 号
卒業おめでとう! ~自分の花を咲かせる~
3年次生の皆さん、卒業おめでとうございます。藤総での高校生活には、思い出がぎっしり詰まっていること
と思います。皆さんは、総合学科である本校でだからこそ培えるしなやかでたくましい実践力、そして、本校の
教育目標である「自立した個」「総合的な知」「共生する心」を身につけて、明日からはそれぞれ新たな道を歩
み始めます。高校卒業は、人生における大きな節目であり、「高校生」という子どもから大人に移行する時間に
区切りをつけ、自分の将来に思いを抱き、新たな自覚と決意をもって大人として大きく成長するための大切なス
タートでもあります。その門出にあたり、一編の詩を贈ります。
「生きることは/自分の花を咲かせること/風雪に耐え/寒暑に耐え/だれのものでもない/自分の花を咲
かせよう」
しんみん
これは、高校の国語の教師でもあった詩人の坂村真民さんの詩です。人それぞれが生まれ持つ素質とか才能、
それを「天分」と言います。「自分の花を咲かせる」とは、その天分を遺憾なく発揮して生きることだと思いま
す。しかし、はじめからその天分が何なのか、そして、どれほどのものなのかなど、わかるものではありません。
では、どうすれば自分の花を咲かせることができるのか。
まず大切なことは、自分が可能性に満ちたかけがえのない存在であることを自覚することです。そのためには、
「どうせ無理」ということばや人と比べることと決別してください。「どうせ無理」ということばは、何もしな
くてよくなる都合のよいことばです。人と比べることもそれと似ています。自分で限界を作ったりせず、本来の
自分に目覚め、自分の可能性を信じ、自分に誠実に生きる、これが、自分の花を咲かせるための大切な土壌です。
次に大切なことは、「自分の花」の種、「これだ!」と思えるものを見つけることです。そのためには、失敗
を恐れずいろいろなことにチャレンジしてください。そして「これだ!」というものを見つけたら、本気でとこ
とん頑張ってみることです。先ほどの詩にもあるように「風雪に耐え寒暑に耐え」てこそ、しっかりとした根を
下ろすことができます。決して諦めず、努力を重ねていればいつか必ず自分らしい花を咲かせることができます。
そして、何よりも大切なことは、心のありようです。素直な心があれば、あらゆることか
ら学ぶことができます。感謝の心を忘れずにいれば、人とのつながりが広がりもしますし、
深まりもします。同じ状況を豊かな実りにする人もいれば、不平不満の種にする人もいます。
「人生は心一つの置きどころ」ということばがありますが、人生は、心のありよう一つでいか
ようにも変わります。心のありよう、そしてそこから生まれる人とのつながりやチャンスなどが、
自分の花を咲かせるために必要な養分であり、水であり、陽の光なのだと思います。
歩いて日本一周
◆◆どんなことも一歩一歩の積み重ね
皆さんの先輩で、今、「歩いて日本一周」にチャ
レンジしている戸高寛さん(総合学科2期生)を紹
介します。先日、タウン誌に「歩くことは成長する
こと」という大きな見出しで取り上げられていたの
で知っている人もいるかもしれません。
戸高さんは、「歩いて日本一周」を目指し、一昨
年の4月に藤沢を出発しました。太平洋側を北に進
み、北海道を約1か月かけて歩き、さらに日本海側
を南下。秋田、新潟などを経て昨年 11 月末に群馬県
に到着し、東日本を歩き切りました。リュック一つ
の旅で、旅先で知り合った方のお宅に泊めてもらっ
たり、住み込みで働いたりすることもありますが、
寝袋での野宿が基本です。資金がなくなれば現地で
アルバイトをして自由に旅を続けています。
きっかけは、世界を旅したことです。藤総時代に
バンドを始め、世界平和を歌う曲を耳にするように
なり、そのために自分は何ができるのだろうという
思いを抱き、大学で国際情勢や国内の諸問題を学ぶ
中、オーストラリアやインド、タイ、ネパール、カ
ンボジアなどを旅しました。その旅を通して、自分
の価値観を覆されるようなできごとに出遭ったり、
実は自分が生まれた日本という国についてよく知ら
ないということに気づいたりしたことで、日本を肌
で感じたいという思いがどんどん強くなり、日本を
歩いて見て回ることを決意しました。当初は2年間
の計画でしたが、今は、その計画にとらわれず、旅
先での人との出会いやつながりを大切にしながら旅
を続けています。
●●
Q
戸高さんにインタビュー!
●●
旅で出会ったものは何ですか?
数え切れないほどたくさんの人です。毎日、新
しい所へ移動するので、必ずと言っていいほど、
新しい出会いがあります。とにかくいろいろな人
たちと出会い、同じ日本に住みながらも、生き方
とはこんなにも様々なのかと感じます。全国的に
見れば、42 万人も住む都会のまち藤沢市。そこで
は知り得なかった生き方や生き様をたくさん知る
ことができました。自分の持つ価値観が新しい人
に会うたびに広がっていきます。
また、人の他にも、全く知らなかった名所や何
の変哲もない場所の持つ心動かす景色などとの出
会いもあります。道を歩いていると虫がやたらと
目に入り、山を歩いている時などは、人よりも虫
や鳥などとの方がよく会います。普段の生活では、
なかなか目を向けることのない景色や生き物の息
づかいを感じることが多い気がします。
戸高さんの好きな言葉は「チャレンジチェン
ジ」
。挑戦や行動なしには、変化や成長はないと
いう意味です。戸高さんは、「旅を通じて自ら成
長し、様々な日本の『今』を自分の目で見て感じ、
将来は、その経験を生かして、互いに尊重しなが
ら、みんなが笑顔で過ごせる社会を作り上げてい
く活動をしたい」と抱負を語っています。
すでに旅のかたわら、短期的に藤沢に戻り、市
民活動に参加したりもしています。
「歩いて日本
一周」の達成と今後の活躍にエールを送りたいと
思います。
●●
Q
旅で学んだものは何ですか?
どんなことも小さな一歩一歩の積み重ねだなと
日々実感しています。一歩は数十センチ、それを
積み重ねて一日 30km、そしてそれを繰り返してい
くと、いつか日本一周。一歩一歩に目を向けると
本当に些細な行為ですが、それを積み重ねること
で、最終的には歩いて日本一周という大きな夢の
実現につながります。
雨が降る日、倒れそうになるほど暑い日、蚊に
悩まされる夜、寒さに震える夜など、たいへんな
ことももちろんありますが、進んだその先には何
か新しい出会いや場所が必ずあります。それを
日々実感、体験できるので、辛いことが辛いこと
でなくなるというか、以前よりそういう時を自分
なりに楽しめるようになりました。
この何事にも楽しみを見いだすというのが、旅
を始める前は少し無理しながら楽しんでいるよう
な自分を演出していた気がしますが、旅を進める
につれて、自然と前向きに考え、楽しさを見いだ
せるようになった気がします。
それと合わせて、疲れている自分やうまくいか
ない時も、
「まあそんな時もあるさ」と無理によい
方向に持っていこうとせず、そのままを受け入れ
られるようにもなったと感じます。
それから、感謝することも以前に比べ自然にで
きるようになった気がします。多くの方に数えき
れないほどの優しさやご厚意をいただきました。
野宿の朝、日が昇って太陽の温もりに包まれる
瞬間。日の光を受けたところから少しずつ温もり
が広がっていく感覚。人にも自然にも助けられな
がら続けられている旅だなとつくづく思います。
語り尽くせないほど様々な学びや経験を、旅を
通じていただいていて、それは感覚的な部分も多
くうまく語ることも自分にはまだできませんが、
本当に始めてよかったと思うことばかりです。
生徒の活動から ~小学生との交流~
●絵本の読み聞かせ
1月 29 日(木)に長後地区交流の一環として、市立富士見台小学校
1年生(4クラス)の教室に絵本の読み聞かせに行きました。
今回は、ボランティアの生徒たちが参加し、本校図書館所蔵の絵本、
大型絵本、紙芝居を持参しました。読み聞かせの後の児童による歌の
プレゼントや後日届けられた各クラス一人ひとりからのメッセージフ
ァイルに、本校生徒もたいへん感動しています。
●ダブルダッチ講座
1月 31 日(土)に行われた地域の小学生対象の「ふれあいサタデー」
(長後共育フォーラム主催)の講座の一つとして、ダブルダッチ同好
会の生徒が講師を務めました。低学年・中学年・高学年の各グループ
とも用意したプログラムがすぐに跳べるようになり、和気藹々とした
楽しい時間を過ごすことができました。私も俳句の講座を担当し、小
学生の感性に新鮮な感動を覚えました。
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大型絵本の迫力に圧倒される子も