No.35 発注点方式とかんばん方式を比べてみました

No.35
発注点方式とかんばん方式を比べてみました
かんばん方式では、かんばん枚数の振れが 3%以内でないとダメだ。だから平準化が絶対条
件だ、と巷の本に書いてあります。ほんとうに、そうですかぁ?ということで、変動要因
を加えたら、かんばん方式はどうなるか、調べてみたわけです。詳細は No.34 をご覧くだ
さい。分かった事は、変動があってもかんばん方式って、使えるんじゃないの、というこ
とでした。
かんばん方式が一般の在庫管理に利用できるとなれば、いろいろとメリットがありそうで
すね。ということで、それらと比べてみたいと思います。先ず初めに、発注点方式とかん
ばん方式との比較をしてみようと思います。
簡単な例を設定します。注文が来る時間間隔を 10 で一定、調達リードタイムを 100 で一定
とします。時間の単位は、分でも時間でも日でもかまいません。但し、同じ単位とします。
時間を一定にしたのは、初めに基本的なメカニズムを知りたいからです。
発注点は、調達リードタイム間の需要量ですので、10 個となります。変動はありませんの
で安全在庫はゼロです。在庫と注残の推移を図 1 に示します。縦軸は在庫数、横軸は単位
在庫の動きの順番ですが、この場合は、時間に換算できます。初めに 15 個の在庫がありま
す。横軸 5 のとき在庫が 10 個となり、同時に 10 個発注したことを示しています。横軸 15
のとき、入庫して在庫となります。と同時に 10 個発注します。以降、これを、繰返します。
25
注残
在庫
20
15
10
5
0
0
図1
5
10
15
20
25
30
発注点 10(赤線)、発注量 10
図 2 は発注量を 15 個にしたときの在庫と注残の推移です。在庫と注残の合計値のピークは
25個となります。
1/5
30
注残
在庫
25
20
15
10
5
0
0
0
5
10
15
20
25
30
図 2 発注点 10、発注量 15
次に、発注点を 15 個にして、発注量を 10 個にしてみました。結果を図 3 に示します。在
庫と注残の合計値のピークは 25 個と同じですが、最低の在庫量に違いがみられます。
注残
在庫
30
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
図 3 発注点 15、発注量 10
では、発注点が 8 個、発注量は 10 個ではどうなるでしょうか。結果を図 4 に示します。需
要量はそのままで、発注点を下げましたので、欠品が発生します。欠品数は発注回数が増
すごとに増えていきます。
注残
欠品
ストック
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
図 4 発注点 8、発注量 10
2/5
35
40
45
50
発注点を 10 個で発注量を 8 個にした場合は図 5 に示すような結果になります。ある時点よ
り在庫がなくなりますので、欠品状態が継続することになります。
注残
欠品
ストック
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
図 5 発注点 10、発注量 8
発注点方式の基本的なメカニズムを概観してみました。まとめますと、
„
調達リードタイム間の需要量(以下設定発注点と記す)よりも実発注点が低いときは、
発注ごとに欠品数が増える。
„
設定発注点よりも発注量が少ないときは、ある時点より欠品状態となる。
„
設定発注点より発注量が多いときは在庫+注残の合計値のピーク値が上り、発注回数
が減少する。
„
設定発注点より実発注点が高いときは、安全在庫が増える。
„
設定発注点=実発注点=発注量が、回転在庫が最小となる限界条件である。
では、同じ需要に対して、かんばん方式を適用して見ましょう。かんばん枚数は調達リー
ドタイム間の需要量をパレット収納数で割ったものですが、ここではパレット収納数は 1
個とします。一品一葉で、かんばん枚数=単位在庫数とします。発注点方式と比べるため、
かんばんの移動を 10 枚単位で行うことにします。そのときの補充時間は調達リードタイム
にかんばんが 10 枚溜まるまでの時間(100)を加えた時間ですので、200 となります。在庫
(20 個)すべてにかんばんがついている状態を初期状態とします。結果の 1 例を図 6 に示
します。
時間軸 10 でかんばんが 10 枚となりますので、一括して移動します。時間軸 20 で在庫とと
もにかんばんが戻ります。以降、繰返します。
3/5
巡回かんばん1グループ
はずれかんばん待ち
かんばん付在庫
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
図 6 かんばん方式;かんばん 10 枚一括移動
かんばん 15 枚を一括移動する場合はどうなるでしょうか。かんばんは 25 枚必要になりま
す。図 7 に示すようになります。
巡回かんばん1グループ
はずれかんばん待ち
かんばん付在庫
30
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
図 7 かんばん 10 枚一括運搬
かんばん移動を 5 枚一括にします。図 8 に示すように、かんばんは 15 枚で回ります。
4/5
巡回かんばん2グループ
巡回かんばん1グループ
はずれかんばん待ち
かんばん付在庫
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
図 8 かんばん方式;5 枚一括移動
かんばんがはずれたら直ちに移動すると、図 9 に示すように、かんばんは 10 枚で回ります。
25
かんばん10
かんばん9
かんばん8
かんばん7
かんばん6
かんばん5
かんばん4
かんばん3
かんばん2
かんばん1(在庫)
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
図 9 かんばん 1 枚ごとに移動
発注点方式とかんばん方式を比べてみました。欠品を起こさない在庫量で比べてみましょ
う。在庫量は、発注点方式は在庫+注残、かんばん方式はかんばん枚数としますと、発注
点方式では最低在庫量は 20 個、かんばん方式では 10 個とかんばん方式の方が少なくなり
ます。発注点方式は発注点以下の発注量にはできませんが、かんばん方式ではそのような
制限はありません。但し、発注量を少なくすると、発注回数は増えます。
このような比較では、かんばん方式の方が優位ですが、需要変動、調達リードタイムの変
動があった場合は、どうなるんでしょうね。次回検討してみます。
出展;DPM研究舎 http://tocken.com
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