日本市場の動向と見通し(四半期) - プルデンシャル・インベストメント

日本市場の動向と見通し
2015 年 10 月
日本市場の動向と見通し

10-12 月期の実質 GDP はプラス成長を確保すると見込まれるものの、7-9 月期までに公表された経済指標や足
元での世界経済の動向と金融市場の情勢等を踏まえると、先行きの日本経済には引き続き下振れリスクが加わり

やすく、2015 年度を通じた経済成長率には従前の見通しに比べて更に下方バイアスが加わるものと考えていま
す。消費者物価については、前年比ベースでの原油価格下落の効果が 10-12 月期に剥落してくると考えられるた
め、ゼロ%台前半と水準そのものは低いものの、プラス幅を拡大していく展開が予想されます。
国内景気の減速への懸念を背景に、国内債券市場では日銀による追加緩和観測が高まりやすい状況が想定され
ます。10-12 月期の長期金利は、レンジ圏での取引を基本としつつも、追加緩和への見方が強まる場面では低下
バイアスが加わる展開を見ています。イールドカーブは、30 年国債と 40 年国債の発行総額に対して 25 年超の年
限での日銀の国債買入額が相対的に少ないという需給構造の下、20 年超にかけてスティープ化圧力が続くとの見

方を維持していますが、日銀の追加緩和観測が高まる局面では、イールドカーブ全体にブル・フラット化バイアスが
加わる展開が予想されます。
国内株式市場は、当面は海外株式市場や為替相場など外部要因に振らされ易い展開となるとと思われます。中国
経済の動向や、年内と見る向きが多い米国の利上げの影響といった不透明要因が投資家を動きにくくすることが
予想されます。ただ、企業業績が増益基調を継続していることを背景にファンダメンタルズ面は依然良好であること
から、当面の不透明要因が後退すれば回復基調に転じるとの見方を維持しています。
◆日本経済見通し
10-12 月期の実質 GDP はプラス成長を確保すると見込まれるものの、7-9 月期までに公表された経済指標や足元
での世界経済の動向と金融市場の情勢等を踏まえると、先行きの日本経済には引き続き下振れリスクが加わりやすく、
2015 年度を通じた経済成長率には従前の見通しに比べて更に下方バイアスが加わるものと考えています。米国や欧
州では緩やかながらも景気回復の動きが続いているものの、中国をはじめとする新興国や資源国での景気減速の影響
を受け、外需は引き続き経済成長率に対してマイナス方向への寄与となりやすいでしょう。また、中国を含むアジア地域
での経済成長の減速を受け、ショベル系掘削機械といった建設機器関連の業種等で見られる在庫の積み上がりの動き
は容易に解消し難いと考えられ、企業の生産活動も回復力に乏しい動きが続く可能性が高いと考えられます。原油価
格下落等の影響を受けて交易条件の改善が進んだこと等を背景に、企業収益は過去最高水準に達しており、設備投資
については、更新投資が主と見られるものの、底固い推移が続いていますが、労働分配率はむしろ低下基調を強めて
おり、想定ほどには賃上げの動きが進んでいないと見られます。こうした中、世界的な金融市場の混乱等を受け将来へ
の不確実性の高さが意識されやすいことや食料品・日用品の価格上昇が進んでいること等を背景に、生活防衛的な姿
勢の強まりが家計の貯蓄性向を高めていると見受けられ、個人消費についても低迷した状態が続くリスクが高いと考え
られます。なお、消費者物価については、前年比ベースでの原油価格下落の効果が 10-12 月期に剥落してくると見込
まれるため、ゼロ%台前半と水準そのものは低いものの、プラス幅を拡大していく展開が予想されます。
2016 年を展望した中期的な見通しとしては、緩やかな回復基調が続くという展開がメイン・シナリオと見ていますが、
リスクは引き続き、下振れの方向にあると考えます。上述の通り、新興国や資源国を中心に世界経済の成長率に下方
バイアスが加わりやすい中、外需が日本経済の成長を牽引する展開は想定し難く、先行きの不透明感を背景に、企業
の生産活動や家計の消費行動は慎重にならざるを得ないと考えられます。すなわち、過去最高水準にある企業収益が、
賃金上昇や雇用拡大へと回り、そして消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結び付くという『経済
の好循環』が機能する展開は、来年も見込み難いでしょう。もっとも、こうした状況が想定される中においては、2016 年
7 月に予定される参議院選挙や 2017 年 4 月からの 10%への消費増税を控え、安倍政権として様々な政策対応が採
られる可能性が高いと見ています。具体的には、所得の再分配を目的とした 2015 年度の補正予算編成や来年度の法
人実効税率の再引き下げ、そして来春のベアに向け政労使会議を通じて労働分配率の引き上げを促すこと、等の政策
がその候補として挙げられるでしょう。ダウンサイド・リスクへの懸念は燻ぶるものの、政策対応による下支えが採られる
日本市場の動向と見通し
Page 2
ことになれば、景気の腰折れは回避され、ゼロ%台半ばと推計される潜在成長率を上回るペースでの成長を維持する
ことになると見込まれます。消費者物価については、労働需給がタイト化する中で労働分配率が高まることになれば、イ
ンフレ率の上昇に寄与する可能性が指摘されますが、夏場以降の原油価格の一段の下落による影響や円安基調の鎮
静化等の要因が綱引きとなり、1%台前半程度の上昇に留まるものと見込まれます。引き続き、2016 年度前半に 2%
の物価安定目標を達成するのは困難だと考えています。
◆ 国内債券市場見通し
国内景気の減速への懸念を背景に、国内債券市場では日銀による追加緩和観測が高まりやすい状況が想定されま
す。10-12 月期の長期金利は、レンジ圏での取引を基本としつつも、追加緩和への見方が強まる場面では低下バイア
スが加わる展開を予想しています。中国をはじめとする新興国や資源国での景気減速の影響や最近の国際金融市場
の混乱による影響を見極めるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの先送りを決定しました。そのため、新興
国や資源国経済の減速への懸念が高まり、グローバル金融市場でリスクオフの動きが強まる場面では、為替市場で円
高バイアスが加わりやすく、こうした局面では、日銀よる追加緩和を催促するように、長期金利は低下バイアスを強める
と考えています。もっとも、FRB の利上げが先送りされた中、追加緩和の手段に限りがあると見られる日銀が率先して
追加緩和に動くのは困難だと考えます。引き続き、10-12 月期に追加の金融緩和を実施する可能性は低いと考えてい
ます。一方、仮に、追加緩和に踏み切るならば、国債買入の継続性に配慮しつつ、2016 年度での 2%の物価目標の達
成を確実なものとするため、長期国債の買入平均年限の長期化や指数連動型上場投資信託(ETF)の買入額拡大がそ
の選択肢の一つに挙げられるでしょう。なお、今年度前半は、米欧を中心とする海外長期金利の乱高下が国内長期金
利の変動に影響を与える場面が多々見られましたが、上述の通り、FRB による利上げが先送りされたことで海外長期
金利の変動が落ち着く展開が予想されるため、当面は海外長期金利の上昇が国内長期金利の上昇を招くというパスへ
の懸念は後退すると見ています。イールドカーブについては、30 年国債と 40 年国債の発行総額に対して 25 年超の年
限での日銀の国債買入額が相対的に少ないという需給構造の下で、20 年超のセクターにかけてスティープ化圧力が続
くとの見方を維持しています。ただ一方で、日銀の追加緩和観測が高まる局面では、イールドカーブ全体にブル・フラット
化バイアスが加わる展開が予想されます。また、FRB が利上げを先送したことを受けて海外長期金利が低位で推移し、
生保を中心とする本邦機関投資家が外債投資から円債投資に回帰することになれば、超長期国債利回りが低下バイア
スを強める可能性が指摘できるでしょう。
2016 年を展望した中期的な見通しとしては、インフレ率が緩やかに上昇するに連れ、国内長期金利も幾分、取引レ
ンジを上方へと切り上げる展開を予想していますが、それでも日銀による大規模な国債買入の効果により、1%を下回
る低い水準が続き、大きく見ればレンジ圏内での推移を見込んでいます。2016 年の日銀による国債買入総額は、現行
の国債保有残高目標(年間 80 兆円の純増)が不変であっても、日銀が保有する国債のうち 2016 年中に償還を迎える
国債の残高が多いため、グロスの買入総額は今年のそれに比べて増加することが予想されます。一方で、2016 年度
の国債発行額については、借換債の発行額抑制等のため、市中発行額が減額される可能性も指摘されます。今年以
上に国債の需給が逼迫しやすく、需給面からは長期金利に低下バイアスを加えることになるでしょう。イールドカーブに
ついては、来年度についても財務省が国債の発行年限の長期化を目指すのであれば、今年度までと同様、需給構造上
のバランスから 20 年超の年限でスティープニング圧力が加わりやすい傾向が続く可能性が指摘されます。一方で、国
債発行年限の長期化に応じて、仮に日銀が追加緩和の一環として長期国債の買入年限の長期化に踏み切ることにな
れば、逆にイールドカーブにはフラットニング・バイアスが加わりやすくなると考えられます。
◆ 国内株式市場見通し
当面の株式市場は、海外株式市場や為替相場に振らされ易い状況が継続すると思われます。人民元切り下げをきっ
かけとする中国経済の先行きに対する不透明感は、中国の経済指標の信頼性の問題から確固たる手掛かりが得られ
にくいこともあり引き続き市場に影を落とすと想定されます。年内との見方が多い米国の金利引き上げの影響を見極め
たいというセンチメントも投資家を動きにくくする要因となることが考えられます。このような環境下、10 月下旬から国内
では中間決算が発表されます。堅調さが見込まれている個別企業業績が外部環境の不透明感を凌駕しうるかが注目さ
れます。
日本市場の動向と見通し
Page 3
中期的な見通しとしては、堅調なファンダメンタルズに支えられ国内株式市場は回復基調を辿るという予想を維持し
ています。グローバルな株式市場のなかで、不透明感が強まる中国をはじめとする海外株式市場と比較して今年度業
績予想の上方修正が見込まれる日本株は選好されやすい市場であると思われます。公的年金の株式保有比率引き上
げや日銀の ETF 買入れといった需給面での支援材料も継続しています。当面の不透明要因が後退すれば国内株式市
場は回復に転じると想定しています。
以上
本資料は、特定の金融商品の勧誘または販売を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証する
ものではありません。本資料に記載されている市場動向等に関する意見等は本資料作成日現在でのプルデンシャル・
インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社の見解であり、事前の通知なしに変更されることがあります。本資料は、
プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社が信頼できると判断した各種情報源から入手した情報
に基づき作成していますが、情報の正確性を保証するものではありません。
"Prudential ”および“ロックマーク(The Rock)”は、プルデンシャル・ファイナンシャル(本社:米国ニュージャージー州ニ
ューアーク)およびその関連会社のサービスマークです。英国プルーデンシャル社とはなんら関係はありません。
プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 392 号
PIMJ201510020546