新しい印刷メディア系専門職業大学の創設へ はじめに 2014年 月 日、日本印刷学会秋季 (1) (第1報) 堯博 国際印刷大学校 木下 間報告、④㈱世真(大阪市)の倉永常務が 同社で実践しているグローバル人材の育 成、特にベトナムでのDTP工場設立事例 を中心として、講演を行った。 2015年3月 日、文部科学省は「実 践的な職業教育を行う高等教育機関の制度 名が印刷教育に関する情報収集と資料解析 などに従事し、インターンシップに必要な カリキュラム、教材、指導員の教育、対外 ディア系専門職業大学(仮称)創設の重要 性をまとめた。 化に関する有識者会議」(全 回)の審議 内容を公開した。 これまでの研究・教育 から本論では日本の印刷界として印刷メ 印刷、製本・加工(協力会社での見学)を 中心にインターンシップを実施した。 page2015では「印刷産業に於け る人財育成」と題し、 名の講師①著者が 過去5年間のpageで報告した印刷教育 について7keysから keysへ、② ㈱サンエムカラー(京都市)の教育推進室 の谷脇氏からインターンシップの詳細を報 告、③東京グラフィックサービス工業会の 斎藤専務理事が同会で実施している「女性 と高齢者の就業及び新たな採用手法」の中 と研究は長い歴史の中で、実績を積み上げ、 各国の印刷産業及び印刷文化 に貢献して いる。日本はこれらに準拠した新しい印刷 メディア系専門職業大学の創設が必要であ る。 ある。 2015年大卒の就職内定率は厚生労働 省、 文 部 科 学 省 の 調 査( 2 0 1 4 年 月 ) を採用も考慮する必要もあろう。日本から 近くの大学では韓国・釜慶大学校、中国・ 北京印刷学院、台湾・中国文化大学などが 20 で ・ 4 %( 前 年 同 期 比 4・1 % 増 ) で あ る が、 首 都 圏 は 地 方 よ り も % 多 か っ た。 地方の中小企業でも独自の技術や商品開発 を推進していて、海外ビジネスにも挑戦す る意欲的企業もある。印刷企業も自社の魅 力を積極的に発信し、インターンシップに よる就業体験を増やして、学生との積極的 10 12 積極的人財育成 組織的に人材育成を実施している企業で は新事業展開が企業に良い影響を与えてい るとの報告がある。技術・技能系社員の確 保と育成にはインターンシップを通じて高 校や大学との連携強化が重要であり、当面 り、新しい印刷技術にチャレンジしている。 この助成申請には従業員の教育や訓練に企 業として多額の経費を投入することが条件 になり、従業員の教育とキャリアパス構築 などが重視される。 交流が必要であろう。2014年、中小企 業庁によるものづくり助成が行われたが、 多くの印刷企業が採択され、設備投資によ 位 置 付 け、 研 究 よ り も 教 育 に 重 点 が あ り、 産業界の最新動向の把握や分析の研究など も行われる。教育方法は実習・実技・演習・ 高等教育機関の目的は、その職業に必要な 実践的知識や技術、能力などの育成、更に、 質 の 高 い 専 門 職 業 人 育 成 の た め の 教 育 と、 までの有識者会議での「職業教育を行う新 たな高等教育機関の制度化資料」が公開さ れ、各分野で議論されている。この新たな 18 (3) 新しい大学創設の方向性 2014年 月から2015年3月 日 的な折衝(京都市内の大学、行政機関など) を 積 上 げ、 2 0 1 4 年 8 月 下 旬 の 日 間、 オフセット印刷のデザイン、DTP、製版、 研究発表会が京都工芸繊維大学で行われ、 「印刷企業に於けるインターンシップ導入」 を㈱サンエムカラーと共同で発表した。同 社では教育の重要性を社是として、専任2 21 印刷メディアの教育と研究 日本の印刷教育界では、印刷メディアに 関する教育や研究を行う高等教育機関が消 滅 し て し ま っ た。 全 国 レ ベ ル で は 過 去 年間で1994年に同学科の344名卒 業( 1 1 6 名 印 刷 及 び 関 連 企 業 に 就 職 )、 2007年では154名卒業(4名印刷関 連就職)、2009年以降は卒業生がゼロ となった。 これに対処して、海外の印刷 メディアを教育・研究する大学からの学生 (6) の業務に追われている企業では教育計画、 育成計画やそれらのカリキュラム構築及び 作業分析も十分ではなく、指導する人材の 不足もあろう。更に、従業員の定着率を高 め る た め 各 個 人 の 能 力 評 価、 企 業 の ポ リ シーの明示、業績を処遇に反映、能力開発 や教育訓練の実施、国内外留学制度の確立 など人財育成が生き残りの鍵ともなり、こ れらの結果が新事業展開を可能とする。過 去 年間、中小企業の調査では半数以上が 新たな産業分野への新事業取組み(エネル ギー、環境、健康・医療・福祉関連、次世 代自動車関連、ロジスティックス、ビッグ など)があるが、 データ、 Paper Electronics ─ 10 ─ (2) 11 ─文部科学省の職業教育を行う高等教育機関の制度化─ 実 験 等 を 重 視 し、 特 に 長 期 の イ ン タ ー ン シップなども、 計画されるとのことである。 現在、各大学で実施されている自己点検・ 評価制度や各職業分野の専門性に応じた分 野別評価、及びこの新設大学の質を維持し ていくとの審議内容である。日本では専門 学校、専修学校などがあり、併存すること になる。かつて、文部科学系の大学では工 学部の印刷工学科が画像系学科となり、印 刷技術に関する教育と研究が衰退していっ た。また、厚生労働省管轄の職業訓練大学 校が各地に設立、印刷系の学科が設けられ たが、 情報処理やデザイン分野に吸収され、 姿を消した。 一 方、 ド イ ツ で は ダ ル ム シ ュ タ ッ ト 工 科大学の印刷機械学科は印刷メディアに 関する研究と教育を行っている学術大学、 シュットガルト、ベルリン、ミュンヘンの 印刷大学は職業教育を中心とした大学で、 歴史と伝統があり、卒業生も世界各地で活 (7) 2 10 10 4 10 4 10 15 躍している。 韓国でも同様に印刷メディ アに関する研究と教育は釜山の釜慶大学 写真1 韓国印刷学会研究発表終了後の集合写真(国軍印刷幣 2013 年 5 月) 中央のネクタイが学会会長のOh教授(新丘大学) 、その右が木下先生 18 1 3 68 (4) 校、大学院大学ではソウルの東国大学校な どがあり、印刷技術の教育ではインチョン ポリテクカレッジがある。著者はこれらの 教育機関のスタッフと交流を深め、学会や 研究会での討論は印刷技術の発展に貢献し ている。 (写真1)世界各国の印刷メディ ア教育機関では印刷メディアに関する教育 (5) ─ 11 ─ 富士精版印刷(株)社内報 富士168号(2015年7月10日) 118、2015年 (仮称)の設立』を推進すべきであり、我々 は英知を集め、そのプランニングに着手し なければならない。 日発行) (初出:印刷教育研究会会報 5月 ※第2 報 は『 印 刷 界 』 2 0 1 5 年 6 月 号 に 掲 載、 第3報は同7月号に掲載予定です。第4報・第 5報は秋口に発表予定です。 巻第 号(2013年7月) ⑸木下 堯博: 韓国印刷学会2013年春季研究発 表 会 と 最 近 の 韓 国 印 刷 事 情、 日 本 印 刷 学 会 誌、 第 シンポジュウム、 ⑹国際 印刷大学校: IGAS記念・日韓印刷文化 日韓印刷文化シンポジュウム資料集全207頁 (2011年7月 日) ⑺木下 堯博: 世界の印刷教育の現状と日本での展 開、page2010(2010年2月3日) 号6〜7pp (2010年9月3日) ⑻木下 堯博: IPEX2010とデジタル印刷教 育印刷教育研究機関誌 第 ⑼木下堯博: 印刷産業活性化のための人財開発、 (『印刷情報』2011年5月号) 日) ⑴木下堯博、森下舒弘、谷脇栗太、川口 花: イ ン タ ー ン シ ッ プ 制 度 の 印 刷 企 業 へ の 導 入 事 例、 月 (『 印 刷 情 報 』 グロ ー バ ル 化 が 進 む 印 刷、 2011年7月号) 学、2014年 同上の概要、印刷情報2015年3月号( Pに掲載) 日) 機関の制度化に関する有識者会議(全 回)審 ⑶文部 科学省: 実践的な職業教育を行う高等教育 議内容、 (2015年3月 朝日新聞:手に職をつける大学創設へ(2015 年3月 日) ⑷木 下 堯 博: d r u p a 2 0 1 2 に み る 印 刷 メ デ ィ ア の 教 育 と 研 究、 『印刷情報』2012年 7月号 木下 、 堯博:グラフィックアーツ学研究(別巻2) 野間賞受賞記念講演会資料(2002年2月) 日本印刷学会秋季研究発表会(京都工芸繊維大 参考文献 3 印刷メディア関係では2014年の京都印 刷文化典での販促グランプリ展示などが参 考となった。このように新技術の獲得方法 は社内勉強会、産学連携・研究機関との交 流、取引先からの技術指導、親会社・関連 会社からの技術指導などがあり、積極的に セミナーや機材展参加及び夜間や通信教育 での学業参加もある。この新事業展開を担 う人材の確保は困難もあるが、女性・高齢 者 な ど、 更 に は 海 外 か ら の 人 材 を 採 用 し、 教育することの可能性があろう。また、社 外や地域における他機関との連携、 大学等、 公共教育機関や研究機関との連携が望まし い。 22 (10) 21 ⑵木下 堯 博、 谷 脇 栗 太、 斎 藤 成、 倉 永 龍 成: 印刷産業に於ける人財育成要旨集 1〜 P 11 ( 、2015年2月4日) page2015 Open Event 〜 49 38 まとめ 「印刷産業活性化のための人材開発」の テーマで2010年2月3日page 2010にて報告した内容を『印刷情報』 2 0 1 1 年 5 月 号 に 掲 載 し、 そ の 結 論 で印刷産業界への人材供給と育成に関し7 k e y s を ま と め た。 そ の 後 の p a g e 2015で合計 keysとした。この中 の三番目に 「印刷メディア系の大学の設立」 を提唱してきた。今までの諸活動とこの度 の文部科学省の「実践的な職業教育を行う 新たな高等教育機関の制度化に関する有識 12 ( 木 下 堯 博 先 生: 国 際 印 刷 大 学 校 学 長 / 九 州 産 業 大学名誉教授、工学博士) ─ 12 ─ ─ 13 ─ 11 50 25 № 18 (9) 者会議」の内容に準拠し、是非とも印刷界 発展のため『印刷メディア系専門職業大学 スマートフォン・タブレットでもご覧いただけます。 QR コードをご利用いただくと便利です。 国際印刷大学校ホームページ http://www.media-igu.com 10 ⑽ 所収論文 《巻頭言》MDC 印刷改善活動 … ……………………………………………… (木下 堯博) 印刷画像の定量解析(Ⅱ)—クベルカ・ムンク理論式の導出………………………(野中 通敬) 階調値…………………………………………………………………………… (三浦 澄雄) 印刷産業発展のための人財育成………………………………… (木下 堯博、谷脇 栗太) ネットワーク社会と中小印刷業……………………………………………… (若生 彦治) 日本に於ける出版ビジネスと印刷会社の役割の変革………………………… (田中 崇) スマートフォンへの印刷技術(PE)の応用… ……………………………… (手塚 博昭) 西夏文字誕生秘話 … ……………………………………………………………… (松根 格) 『筑紫新聞』印刷文字と「諏訪神社・木彫文字」の同一性… ……………… (大串 誠寿) 19 (8) 国際印刷大学校研究報告第 15 巻が 発行されました 42 5
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