移動理事会報告 理事会および 「大型低温重力波望遠鏡 KAGRA」施設見学 企画委員会 委員長 有賀 芳樹 (キヤノンアネルバ株式会社) ◆はじめに クは無く、 これによりマイナス7乗パスカルへノンベーキングで排気できるポ 北陸新幹線開通直後の2015年 3月18日 (水) 、 日本真空工業会の テンシャルを確認できたとの事でした。 さらに真空ポンプ (TMP、 イオンポ 移動理事会を富山エクセルホテル東急にて開催しました。翌日には、今 ンプ) は200mに1台の割合にしか設置されないとのことですが、予算の 回の理事会で理事を退任された齊藤先生 (東京大学宇宙線研究所、 都合上、全数のポンプの設置が出来ていないとのことでした。200mとい 特任教授) が建設のプロジェクトマネージャを勤める、組み立て完了直前 うおよそ100立方メートルもの容積を1台のポンプで排気して、所望の到 の「大型低温重力波望遠鏡 KAGRA」の施設見学も併せて実施しまし 達圧力を得ることは表面処理、 フランジ構造など、緻密な検討の基に成 た。 り立っていることが良く理解できました。 ◆第 194 回理事会 ◆おわりに 本年度の収支報告、来年度理事・幹事・委員長人事 (案) 、会員入 見学会メンバには最終調整を行う同業者に顔見知りが居たり、 コン 退会、 2016年度真空展、総会議案書草案、 アクションプラン2015評価な ポーネントの供給メーカを気にしたりと、 日本真空工業会メンバならではの どの承認。また各委員会活動、 日本真空学会からの報告など、多岐にわ 一面も垣間見ました。 たる内容の審議、報告があり終了しました。 とにかくその大きさ、新たな専用坑道など今回の見学は驚きの連続で した。貴重な体験が得られたことに心より感謝いたします。ありがとうござ ◆「大型低温重力波望遠鏡 KAGRA」施設見学 いました。また齊藤先生のご苦労も充分に思い知ることになりました。ま 齊藤先生引率の下、神岡鉱山にあるKAGRAを訪問しました。移動 た、齊藤先生はこの3月からは (一社) 日本真空学会の会長をお勤めに するバス中の事前レクチャでは齊藤先生が高エネルギー加速器研究機 なるとのことで、 さらなる多忙を心配して今回の見学を終了しました。最後 構 (高エネ研) からKAGRAを管轄する東京大学宇宙線研究所へ転籍 に今回の見学を引率された齊藤先生、 ならびに全体を企画、 引率された された経緯から始まり、重力波望遠鏡の原理、KAGRAの概要、加速器 日本真空工業会事務局の方々に、 厚く御礼を申し上げます。 との違い、 日本真空工業会のメンバならでは共感できる超高真空の工 夫、 プロジェクトマネージャとしての苦労話、 さらに「冬の雪かき」 「夏の出 水」 「秋の熊注意報」 など、一流のジョークを交えて楽しく伺いました。 まずは事務所に立ち寄り、 ヘルメットと懐中電灯を受け取り探検隊気 分でマイクロバスに乗り込み、途中カミオカンデの坑道入口を見ながら KAGRA 坑口へ到着。 500mほどの連絡坑道を歩いて中央の巨大な検出器が設置される中 央実験室へ到着。本年末に初期観察を行うべく、真空関連の設備も最 終組み立てを待つように配置され、工事最終段階の高揚感が伝わって きました。クライオスタットの実物により、 ミラーの制御・冷却などの説明を ◆「KAGRA」概要 重力波は、 アインシュタイン博士が1916年に提唱した一般相対性理論で予想さ れた時空の歪みが伝搬する波動現象です。 重力波望遠鏡では、 普通の望遠鏡と異なり、 レーザ干渉計を利用します。同じ光 を直行する2方向に向けて発射し、遠くに置いた鏡で反射させ、 また戻ってきた光 の到達時間の差を測ることで、長さの変化を測ります。光は、曲がった空間に沿っ て進む性質があるので、重力波により曲がった空間を通過した光は、 そうでない光 よりも、早く到着したり、遅く到着したりします。その結果干渉縞が明滅しますのでそ の明滅から重力波の到来を察知します。KAGRAは直径 80cm 長さ12mの真空ダ クトを250本接続し1辺 3kmのL 字形 (総延長 6km) の真空容器となっています。 受けました。この時期でも出水対策も平行して行われており、工事の苦 光のような電磁波を用いた方法では不可能な、宇宙誕生の瞬間に近い時までさか 労が実感できました。 のぼって、宇宙を観測することができるようになります。KAGRAは、神岡鉱山内と 続いてY-ARMの真空ダクトへ移動し、鍛造フランジ、 メタルシール、 電 解研磨、成型ベーローズなどのお話を伺いました。また、3kmは当然なが らはるか彼方でとても見渡せるものではなく、 またその直進精度は±1mm との事です。 リークチェックの最終段階であり、今回の組み立てではリー KAGRA 坑口 施設見学 90 真空ジャーナル 2015年5月 152号/URL http://www.jvia.gr.jp いう極めて地面振動が少なく、温度・湿度の安定な環境に設置されます。神岡鉱 山内の振動は地上の1/100まで小さくなっています。2010年より建設が開始され 本年 2015年末には初期観察、 2017年後半に本格観察開始の予定。 (KAGRAパンフレット、 ホームページhttp://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/より引用) 集合写真
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