長期金利の低下で注目を集めるREIT市場

☆ トピックス
長期金利の低下で注目を集めるREIT市場
石松 由布子
◇ 世界の長期金利が低下する中、投資資金が REIT 市場に流入
%
4
図 2 先進国REIT指数の推移
(2014年1月1日~2015年1月30日)
図 1 各国の長期金利の推移
(2014年10月1日~2015年2月9日)
1000
*QUICK AstraManagerより投資情報部作成
3.5
豪州
3
900
2.5
S&P先進国REIT指数
800
2
(配当込、除く日本)円建
米国
1.5
ドイツ
日本
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
600
2014年11月
2014年10月
0
2014年2月
0.5
700
2014年1月
1
*10 年物国債利回りを採用 出所:AstraManager より投資情報部作成
世界の主要国で長期金利が低下しています(図 1)
。背景には、日銀による量的緩和に続いて欧州中央銀行
(ECB)も量的金融緩和を決定したこと、原油安によるデフレ懸念が広がっていることなどから、当面の安全
な投資先として国債の人気がさらに高まっている状況があります。
一方、金利の低下で国債では十分な投資成果が望みにくい中、運用難に悩む投資資金が安定した利回りの見
込める REIT に流入している模様。REIT は不動産の賃料収入を原資とした利回り益を狙う金融商品であり、平
均分配金利回りが長期金利より高いことから相対的に魅力が高まっているようです。
先進国の REIT 相場を示す S&P 先進国 REIT 指数は上昇を続けており(図 2)、注目が高まっていることが伺
えます。
◇米国 REIT 市場は景気回復を受けて上昇基調
*2014年1月2日=100として指数化
出所:各種資料より投資情報部作成
120
米国REIT指数(※)
ものの、その後も長期金利が低下基調をたどって
110
いることから再び上昇しています。
100
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
す。
2014年8月
となどから、上昇傾向は継続すると見られていま
2014年7月
REIT の分配金原資である賃料増加が期待されるこ
※Dow Jones Equity All REIT Index
80
2014年6月
米国景気は回復傾向であり、不動産市況の改善や
ダウ平均株価
90
2014年5月
今後は利上げによる影響が懸念されるものの、
2014年4月
から 2014 年 9 月に REIT 市場も調整局面を迎えた
130
2014年3月
米国では QE3 終了を受け、国債利回りの上昇懸念
140
2014年2月
比べて堅調に推移しています(図 3)
。
2014年1月
REIT 最大の市場である米国 REIT は株式市場に
図 3 ダウ平均株価と米国REIT指数の推移
(2014年1月2日~2015年1月30日)
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し
ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。
☆ トピックス
◇J−REIT 市場はオフィス市況改善と日銀の買い入れ増額が支援材料
図4
140
日経平均株価と東証REIT指数の推移
(2014年1月6日~2015年1月30日)
%
10
*2014年1月6日=100として指数化
出所:Astra Managerより投資情報部作成
130
東京都心5区のオフィス賃料と
空室率の推移
(2008年1月~2014年12月)
図5
円
出所:三鬼商事より投資情報部作成
9
8
120
23,000
東証REIT指数
21,000
7
110
オフィス空室率
(既存ビル・左軸)
6
100
19,000
5
90
4
日経平均株価
3
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
80
17,000
オフィス賃料(既存ビル・右軸)
2
15,000
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
J−REIT 市場は足元で調整していますが、1 月中旬まで大きく上昇していました(図 4)
。
東京都心 5 区のオフィスビルの平均空室率
(2014 年 12 月時点)が 5.31%と約 6 年ぶりの水準に低下した他、
オフィスビル賃料も 14 年 1 月を底に上昇へ転じており、不動産市況の改善が続いています(図 5)
。また、長
期金利の低下や REIT の投資口価格の上昇により、REIT 各社にとっては新規物件の取得に必要な資金調達がし
やすい環境であることも追い風となっています。さらに、日銀が 14 年 10 月 31 日の金融政策決定会合で、2015
年度の J-REIT の買入額を年間約 300 億円から約 900 億円に増額することを決定。受給面で市場の下支え要因
となっています。
足元の東証 REIT 指数は、1 月 16 日に 1990.45 と約 7 年ぶりの高値水準をつけて以降、利益確定売りに押さ
れており割高感も指摘されていますが、上記に挙げた要因や利回り重視の国内金融機関の需要を受けて今後も
緩やかな上昇が続くと見られています。
◇ 国内外の REIT に投資できる ETF
REIT に投資できる金融商品は、上場している J-REIT 銘柄に投資する他、世界や日本の REIT 銘柄を投資対
象とした投資信託や ETF(上場投資信託)があります。今回は東証に上場している、国内外の REIT 指数との
連動を目標とした ETF をご紹介します。
銘柄名称
コード
NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型
1343
上場インデックスファンド Jリート 隔月分配型
1345
NZAM 上場投信 東証REIT指数
1595
MAXIS Jリート
1597
上場インデックスファンド豪州リート
1555
ⅰシェアーズ米国リート・不動産株
1590
対象指数
売買単位 市場価格 純資産総額
(口)
(円)
(億円)
信託報酬
(%、年
率)
分配金支払
基準日
一口あた
分配金利
り分配金
回り(%)
(円)
10
2,022
1,170
0.32
2、5、8、11月
の10日
50.1
2.48
100
1,905
831
0.3
1、3、5、7、9、
11月の8日
49.93
2.62
10
1,904
332
0.248
1、4、7、10月
の15日
22
1.16
10
1,919
317
0.25
3、6、9、12月
の8日
33.1
1.72
豪州証券取引所
上場REIT銘柄
10
1,575
38
0.45
1、3、5、7、9、
11月の10日
46.3
2.94
ダウ・ジョーンズ
米国不動産指数
1
9,760
―
0.46
原則として3、
6、9、12月
207
2.12
東証上場の
全REIT銘柄
*数値は 2015 年 1 月 30 日時点、一口当たり分配金は直近 12 か月の実績分配金、分配金利回りは掲載している一口分配金と市場価格から算出
*東京証券取引所ホームページより投資情報部作成
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し
ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。