VDIの2大障壁、コスト&パフォーマンス課題を解決 コストが10分の1に、低コストで 高性能なデスクトップ仮想化構築の方法 コストとパフォーマンスがネックとなり仮想デスクトップインフラ(VDI)導入をとどまる企業は多い。 だが、利用形態や用途を特定することで低コストかつ高パフォーマンスな VDI 導入が可能になる。 ここ数年の間で、急速に普及したエンタープライズ IT の 1 つがデスク 図 1 RHEV で実現する VDI 環境の主要コンポーネント トップ仮想化インフラ(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)だ。旧 来のシンクライアント技術は「セキュリティ要件を満たすために、割高を承 知で導入するもの」というイメージが強かったが、サーバやストレージ製品 の価格性能比が急速に向上したことで、クライアントPC のリプレース手段 として一般企業にとっても身近なものになってきた。 とはいえ、クライアントPC の高性能化と低価格化も同時並行で進んで いるため、VDI のコストやパフォーマンスがネックとなって導入に踏み出せ ずにいる企業は多い。TechTarget ジャパンが 2014 年 1 月に実施した アンケート調査「サーバ仮想化/デスクトップ仮想化の導入に関する読 者調査」によると、「デスクトップ仮想化製品を選択する際に重視する点 は?」という質問に対して最も多かった回答が「性能/パフォーマンス」、 そ して次点が「ROI /費用対効果」だった。「もう少しパフォーマンスが出 て、かつコストが安ければ、うちでも導入できるのに……」、そう考えている プライズ用 Linux のデファクトスタンダードとして確固たる地位を築いてい 企業が多いことがうかがえる。 るが、そのカーネルに含まれるKVM をベースに実装されたハイパーバイ 実は、このコストとパフォーマンスに関する懸念を、かなりの割合で払拭 ザーモジュール「Red Hat Enterprise Virtualization Hypervisor」 できる方法がある。これまで、エンタープライズ用途で使えるVDI 製品と いうとわずかなものしか知られていなかったが、特定の業務システムやグラ フィックス処理を行うパワーユーザーにとっては、低コストかつ高パフォーマ ンスを発揮するVDI 製品が存在する。以降で詳しく紹介しよう。 (RHEV-H)と、エンタープライズクラスの大規模仮想環境を一元管理 できる管理エンジン「Red Hat Enterprise Virtualization Manager」 (RHEV-M)によって RHEV は構成されている。 あまり知られていない事実だが、この RHEV を活用することで Linux を はじめとしたオープンソースのノウハウに乏しい企業であっても、KVM ベー 「KVMベースのデスクトップ仮想化」という選択肢 スの仮想環境を導入、運用することが十分に可能だ。しかもRHEV は 仮想化技術にある程度詳しい方なら、 「KVM」の名前はどこかで聞いた サーバ仮想化はもちろんのこと、 デスクトップ仮想化インフラ(VDI:Virtual ことがあるだろう。Linux のカーネルに組み込まれたオープンソースのハイ Desktop Infrastructure)の機能も含んでいるのだ。それが「Red Hat パーバイザー機能のことで、無償でありながら本格的な仮想化基盤としての Enterprise Virtualization for Desktop」(RHEV for Desktop)だ。 機能を持つことから、Linux に関する高い技術力を持つ新興 IT 企業やク コネクションブローカーをはじめ、デスクトップ仮想化を実現するためのモ ラウドベンダー、データセンター事業者などが自社の仮想環境の基盤技術 ジュールをデフォルトで含んでいるため、RHEV さえ導入すればサーバ仮 として、あるいはクラウドサービスの仮想化基盤として採用している。 想化もデスクトップ仮想化も実現できる、 いわば「1 粒で 2 度おいしい」仮 一方、 一般企業において KVM は、 「VMware ESXi」や「Microsoft 想化ソリューションなのだ。 Hyper-V」などの商用製品と比べると、まだ導入例が少ないかもしれない。 その理由の 1 つとして、KVM 自身はハイパーバイザー機能のみを実装し 他製品と比べ圧倒的に低いライセンスコスト ており、周辺の管理ツールは提供していない点が挙げられる。そのため、 RHEV for Desktop は、コストや投資対効果の面から VDI の導入を Linux をはじめとしたオープンソース製品のノウハウを有していない一般 ためらっている企業にとって、 極めて魅力的な選択肢だ。実は RHEV for 企業ではどうしても、周辺ツールが充実しており開発元ベンダーの手厚い Desktop は数年前まで、RHEVとは別個の製品として提供されていたの サポートが付属する他の商用製品を選びがちだ。 だ。他社の仮想化製品でも、サーバ仮想化製品とデスクトップ仮想化製 しかし実は KVM においても、 VMware ESXi や Microsoft Hyper-V 品は別々に存在し、 それぞれ個別に購入するのが当たり前であることを考え と同様に、充実した運用管理ツールとベンダーサポートが付属した仮想 ると、こうした提供形態はごくごく一般的だ。 化ソリューションが存在する。それが、米 Red Hat が提供する「Red しかし先に述べたように、現在の RHEV for Desktop は RHEV の一 Hat Enterprise Virtualization」(RHEV)だ。Red Hat はエンター 部として、サーバ仮想化の機能と一緒に提供されている。つまり、サーバ 仮想化の用途で既に RHEV を導入している企業は、別途新たな製品を 面のデータを転送するために開発されたものであり、そういった用途におい 購入する必要はなく、必要最小限のライセンス追加購入でそのままVDI を ては良好なパフォーマンスを発揮する。しかしその半面、近年のリッチなデ 実現できるのだ。 スクトップ情報をクライアント端末上で快適に表現するには、少し力不足な そのライセンスにしても、一般的な VDI 製品は仮想化基盤の上で稼働 面もある。 させるデスクトップの数や、接続デバイス数によってライセンス価格が決ま 一方、RHEV for Desktop はこうしたプロトコルとは一線を画す画面転 る。ところが、RHEV はデスクトップの数によらず「サーバ単位」で課金 送プロトコル技術「SPICE」を採用している。これは、単にサーバからク される。より正確にいえば、仮想デスクトップをホストするサーバの CPU ソ ライアントに一方的に画面データを流すだけでなく、デスクトップ情報の描 ケット2 基を 1 単位として、サーバライセンスがカウントされる。ということは、 画処理を、サーバとクライアントの負荷状況やデスクトップ情報の内容・ サーバを高性能なものに刷新し、より多くの仮想デスクトップをホストできる 特性に応じて、サーバ側とクライアント側で分担して行うという技術だ。 ようになったとしても、CPU ソケット数が変わらなければ RHEV のライセン 今までの VDI 技術では実現しなかった、新たな発想に基づく通信プロ ス費も一切変わらないということだ。 トコルを採用したことによって、RHEV for Desktop は高いパフォーマンス 近年、サーバの高性能化が進む中で、こうしたライセンス体系を持つ を発揮することができる。特に CAD のようなグラフィックス処理や動画のス RHEV の投資対効果は年々高まりつつある。例えばごく最近の例でいうと、 トリーミングなどを行うアプリケーションにおいては顕著な差が生まれる。これ 1 台のサーバ当たり100 の仮想デスクトップをホストし、合計 30 台のサー までパフォーマンスの懸念から VDI の採用に二の足を踏んでいた企業に バで 3000 デスクトップを稼働するシステムのために VDI ソフトウェアの見 とっては、この SPICE がもたらす高パフォーマンスをエンタープライズクラ 積もりを取ったところ、RHEV のライセンスコストは、他社の著名な VDI 製 スの管理性とともに利用できるようになったことは、まさに朗報だといえよう。 品と比べわずか 10 分の 1 で済むことが分かったという。 きるのもRHEV の大きな特徴の 1 つだ。RHEV は、 仮想デスクトップにア 日本国内で断トツの取り扱い実績を誇る サイオステクノロジー クセスするためのクライアント端末のOSとしてLinuxを正式サポートしてい 「日本で Red Hatといえばサイオス」といわれるほど、Red Hat さらには、サーバだけでなくクライアントデバイスに掛かるコストを圧縮で るため、クライアントデバイスのためにわざわざ有償の Windows を購入す Enterprise Linuxに関してはアジア地域で最大級のディストリビューター る必要がなくなり、より全体のコストを抑えることができる。例えば、オペレー という高い販売実績を持つ同社は、RHEV に関してもパートナー企業ととも ター用 PC や教育用端末、事務所や工場内に固定設置されているPC にビジネスを展開している。クライアントに Red Hat Enterprise Linux など、 用途が限られているPCでは必ずしもWindowsやMicrosoft Office for Desktops を用いて RHEV を組み合わせての、コストを抑えたデスク は必要でないため、Linux 環境にすることで Windows の導入に掛かるコ トップ仮想化という新しいアプローチが提案できるのも同社ならではだ。 ストを丸ごと節約できるというわけだ。もちろん仮想デスクトップイメージを また、Red Hat 製品以外にも多くのオープンソース製品を扱っていること Linux で作成することも可能だ。 から、社内に高い技術スキルを保有しているのも同社の特徴である。 本稿を読み RHEV で実現するデスクトップ仮想化に興味を持たれた 新世代の画面転送プロトコル「SPICE」が もたらす高パフォーマンス ら、 「VDI は高い、遅い」という先入観が、根底から覆されることになるか とはいえ、「KVM をベースにしたデスクトップ仮想化」は、サーバ仮 もしれない。 方は、ぜひ一度同社に問い合わせてみることをお勧めしたい。ひょっとした 想 化 以 上に日本においてはなじみが 薄 いのが 実 情 だ。「Citrix XenDesktop」や「VMware Horizon View」といった VDI 製品と比 図 2 SPICE の仕組み べれば知名度が低く、 どちらかというと後発というイメージが強い。だが、後 発であるが故に、歴史の長い製品と比べると新技術も盛り込まれており、ア ドバンテージを有している点もある。1 つ例を挙げるとすると、サーバとクラ イアント間の通信プロトコルだ。 よく知られているシンクライアントや VDI の通信プロトコルは、Windows のターミナルサービスに代表されるように、極めてシンプルなデスクトップ画 サイオステクノロジー株式会社 〒 106-0047 東京都港区南麻布 2-12-3 Tel:03-6401-5222 www.sios.com 営業所:関西・中部・九州 ※すべての商品名、 サービス名、 会社名およびロゴは、 各社の商標、 または登録商標です。 ※この冊子は、 TechTargetジャパン (http://techtarget.itmedia.co.jp/) に2015年2月に掲載されたコンテンツを再構成したものです。 http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1502/03/news02.html
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