2015 年 7 月 16 日 一般社団法人 日本遺言執行士協会 【コラム】 遺言書があればもめないで済む ◆亡くなった母の遺産分割 <A子さんの事例> A子さんは、弟と2人姉弟であり、母は弟と同居している。 母が亡くなったあと、母の預金通帳を見たA子さんは、予想外に預金が減っていることに気づいた。弟が母 の生前に勝手に預金を引き出して使っていたのでは、とA子さんは疑っている。母は遺言を残しておらず、相続 人はA子さんと弟の2人である。 A子さんは、争いになるのを覚悟の上で、弟に、母の預金を引き出したいきさつや使いみちを問いただしてみ たが・・・。 【弟の主張その1】 「母からもらった」 引き出された預金を弟が母からもらったと言っている場合は、特別受益として法定相続分の先取りとみなし、 遺産分割時に弟の相続分から差し引いて計算します。 【弟の主張その2】 「母が自分で引き出して使った」 弟が使い込みを認めずこう主張してきた場合、A子さんは地方裁判所に、不当利得の返還を求めて弟を訴 えることができます(不当利得返還請求)。 弟に対する不当利得返還請求権も、遺産として相続人が法定相続分に応じて取得したことになりますので、 A子さんは、弟が使い込んだ金額の半分の額を請求できます。 裁判では、弟が勝手に預金を引き出して使い込んだということを、A子さん側が立証する必要があります。 ・預金がいつ、どのくらい引き出されたのか → 銀行で取引明細の確認をする ・母に、自分で預金を引き出したり、自分の財産を管理できる判断力があったのかどうか → 病院のカルテや看護記録などの医療記録を入手する ・弟側が、母からの預金引き出しの委任状を出してきた → A子さん側で、筆跡が母のものであるか等の確認をする。 ◆遺言書があれば・・・ 相続財産である預金の使い込みによる親族間の紛争は多いようです。遺産分割協議がまとまらず訴訟にな った場合、解決までには時間もお金もかかります。 遺言書を残しておけば遺産の分割方法を指定できるので、残された家族が遺産を巡って争う心配を減らすこ とができるのです。
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