大山 貴志

交通事故リスクの知覚バイアスに関する基礎的研究
愛媛大学
理工学研究科 交通工学・都市環境計画研究室
大山貴志 倉内慎也
思い込みの実態
背景・目的
どれくらいの人が思い込みを起こしているのか
道路種類別事故発生リスク(件/台キロ)及び重大事故率(警察庁HP,H25)
事故リスク(1kmあたりの事故を起こす確率の知覚値(N=320)
高速道路
高速道路
11
8.7
1
一般道路
一般道路
107
0
50
100
7.4
0
150
2
4
6
8
10
高速道路への利用経路の転換により,
ドライバー本人の事故の回避,一般道路の事故が減少が期待できる
各国の高速道路の利用割合(国交省,H26)
アメリカ(H26)
33%
フランス(H26)
30%
ドイツ(H26)
31%
日本(H26)
16%
日本(将来)
59%
25%
30%
0%
60%
20%
高速道路
40%
幹線道路
1
10億
10%
60%
80%
1
10
1
高
速 100
1
道
路 1000
に 1
お 1万
け 1
る 10 万
リ 1
ス 100万
ク 1
知
覚 1000万
値 1
1億
77%
高
速
道
路
に
お
け
る
リ
ス
ク
知
覚
値
80%
1
1
1
1
1
1
1
1億 1000万 100万 10万 1万 1000 100
一般道路におけるリスク知覚値
100%
生活道路
1
10
1
1
1
10
1
100
1
1000
1
1万
1
10 万
1
100万
1
1000万
1
1億
1
10億
22%
1
1
1
1
1
1
1
1億 1000万 100万 10万 1万 1000 100
1
10
一般道路におけるリスク知覚値
80%近くの人が各道路のリスクを高く知覚している
全体の22%が思い込みを起こしている
国土交通省も高速道路の利用割合を30%へ引き上げることを目標
モデル推定
しかし,高速道路は一般道路より危ないと思い込む人が本研究室のアンケートで散見された
事故リスクの知覚値の差に影響を与える要因を抽出する
思い込みとは
推定結果-事故発生リスク差説明変数
t値
推定値
定数項
-1.19
-3.36
一般/月1回未満D+運転こわい
0.41
2.41
高速/月1回未満D+運転こわい
0.86
1.88
運転頻度・印象
一般/月1回未満D+信号待ちが不快
-0.39
-2.28
高速/月1回未満D+信号待ちがなく快適
-0.70
-2.23
一般ありD+高速ありD
-0.72
-2.56
事故経験
一般ありD+高速なしD
-0.31
-1.66
一般なしD+高速ありD
-0.36
-0.59
ニュース興味
0.16
2.31
メディア
-0.10
-2.02
インターネット興味
サンプル数
316
補正 R²
0.08
正の場合,高速道路は一般道路より危険という知覚の方向へ影響を与える
推定値が
負の場合,一般道路は高速道路より危険という
〃
過去の経験や情報の影響により歪んだ認知が形成されること
高速道路の方が危ないという思い込みにより,
高速道路利用を妨げている可能性
目的
思い込みの解消法を検討する前段階として
思い込みの実態の把握及び思い込みを起こす要因の分析
データ概要
調査日時 2014年11月30日,12月7日
調査場所 ①豊浜SA,②石鎚SA,③入野PA,④風早の郷風和里,⑤天空の郷さんさん
調査形式 手渡し配布・郵送回収
調査項目:OD,事故の確率の知覚値,事故経験,メディアへの興味・関心など
④
①
②
③
高速道路利用者の当日の移動に注目(①~③)
出発地
IC
ETC専用
一般
目的地
IC
一般
ETC専用
一般
考察
◆運転頻度・印象
一部を除き,運転頻度が低く,各道路に悪印象を持つ人が,
その道路を危険と知覚している
◆事故経験
高速道路の事故経験者が非常に少ないため望ましい結果が得られなかった
一般
◆メディア
⑤
一般道路
区間
高速道路
区間
ニュース速報では高速道路のみを報道,
インターネットでは事件性を伴う一般道路を多く報道していることが影響
高速道路を利用しない人にも注目(④~⑤)
目的地
出発地
一般道路
区間
SA・PA
道の駅 各道路区間における事故確率の知覚値を観測
あなたがその区間を1回走行したとき,
事故を“起こす”確率はどれくらいだと思いますか
1. 10分の1以上
4. 1万分の1
2. 100分の1
5. 10万分の1
まとめ
3. 1000分の1
6. 100万分の1以下
思い込みの実態としては被験者の約20%が思い込みを起こしている
また,全体的に一般道路・高速道路のリスクの知覚値は全国的な統計値よりも
過大に評価されている
思い込を起こす要因については,道路利用に対する悪印象・メディアバイアスの
影響を受けていると推察される
今後の課題
しかし,一般道路と高速道路では走行区間長が異なり,比較できない
各走行区間の事故の確率の回答値を走行距離で除す
事故リスクとして基準化
“こわい”“危ない“という知覚バイアスはどこから生じているのか特定
共分散構造モデルを用いて分析
1