伊方原発 3 号機の再稼働の動きに反対する声明 1 本 年 7 月 15 日 、 原 子 力 規 制 委 員 会 は 、 四 国 電 力 伊 方 原 子 力 発 電 所 3 号 機 の再稼働に向けた新規制基準の合格証となる「審査書」を正式に決定した。 九 州 電 力 川 内 原 発 1,2 号 機 、関 西 電 力 高 浜 原 発 3,4 号 機 に 続 き 3 例 目 であ る 。今 後 、地 元 自 治 体 な ど の 同 意 を 経 て 、早 け れ ば 今 冬 に も 再 稼 働 が 目 論 ま れている。 自 由 法 曹 団 は 、福 島 第 一 原 発 事 故 に よ る 凄 惨 な 被 害 を 直 視 し 、国 民 の 安 全 を 第 一 に 考 え 、原 発 依 存 政 策 か ら の 撤 退 を 求 め る 立 場 か ら 、原 発 再 稼 働 に 向 け た 原 子 力 規 制 委 員 会 の 態 度 に 抗 議 し 、政 府 の 原 発 推 進 政 策 に 強 く 反 対 す る 。 す で に 本 年 5 月 22 日 付 け で 伊 方 原 発 3 号 機 の 再 稼 働 に 反 対 す る 声 明 を 発 表 し て い る が 、今 回 の 暴 挙 は 原 発 の な い 社 会 を 望 む 多 く の 国 民 の 声 を 無 視 し た ものであり怒りを禁じえない。 2 自 由 法 曹 団 は 、こ れ ま で 新 規 制 基 準 は 決 し て 安 全 性 基 準 で は な い と い う こ と を 強 調 し 、新 規 制 基 準 に 合 格 し た 原 発 の 再 稼 働 を 進 め る と す る 政 府 の 原 発 推進政策に対し正面から反対し、警鐘を乱打してきた。 ま た 、本 年 4 月 14 日 に 下 さ れ た 高 浜 原 発 3,4 号 機 運 転 差 止 仮 処 分 決 定 に お い て も 、 福 井 地 方 裁 判 所 は 、「 新 規 制 基 準 は 緩 や か に す ぎ 、 こ れ に 適 合 し て も 本 件 原 発 の 安 全 性 は 確 保 さ れ て い な い 」、 「新規制基準は合理性を欠くも の で あ る 。」 と 明 確 に 断 じ て い る 。 原 子 力 規 制 委 員 会 は 、福 島 第 一 原 発 の 事 故 か ら 4 年 が 経 過 し た 今 な お 、事 故収束も原状回復もその目途すらたっていないという甚大な被害の現実を 直視し、同決定のメッセージを虚心坦懐に受け止めるべきである。 3 伊 方 原 発 の 北 側 瀬 戸 内 海 沖 合 い 約 8 キ ロ の 海 底 に は 、巨 大 活 断 層 で あ る 中 央 構 造 線 断 層 帯 が 存 在 し て い る 。太 平 洋 沖 の プ レ ー ト が 動 く こ と に よ る 南 海 ト ラ フ 大 地 震 も 予 想 さ れ て お り 、伊 方 原 発 周 辺 で 引 き 起 こ さ れ る 大 規 模 地 震 のリスクは極めて高い。 本 年 7 月 13 日 に は 大 分 南 部 を 震 源 と す る 地 震 が 発 生 し 、 震 度 5 強 を 観 測 し 、伊 方 原 発 が あ る 愛 媛 県 伊 方 町 で も 震 度 4 を 記 録 し た ば か り で あ り 、自 然 の驚異に対して謙虚になるべきである。 1 加 え て 、伊 方 原 発 は 東 西 に 細 長 く 険 し い 佐 田 岬 半 島 に 立 地 し て お り 、事 故 時の住民避難や収束要員の支援が適切にできるかという重大な問題も残し て い る 。原 発 に 続 く 道 は 尾 根 筋 の 国 道 と 海 岸 線 に 沿 っ た 曲 が り く ね っ た 県 道 の 2 本 し か な い 。い ず れ も 地 滑 り で 寸 断 さ れ る 危 険 が あ り 、国 道 か ら 原 発 に 行 く に は 高 低 差 約 180 メ ー ト ル も あ る 急 傾 斜 の 山 道 を 降 り る し か な い 。原 発 の 敷 地 も 平 地 は ほ と ん ど な く 、事 故 収 束 要 員 を 地 震 や 放 射 能 か ら 守 る 施 設 は 狭 く 、福 島 第 一 原 発 の よ う に 大 量 の 汚 染 水 が 発 生 し た 場 合 、タ ン ク の 設 置 場 所 は 見 当 た ら な い し 、瀬 戸 内 海 は 閉 鎖 性 水 域 で 、汚 染 水 の 逃 し 場 も な い 。半 島 西 側 に 暮 ら す 約 5000 人 の 住 民 ら の 避 難 ル ー ト は 海 路 か 空 路 し か な く 、 悪 天候と原発事故の複合災害となった場合の解決策はない。 4 2014 年 5 月 21 日 大 飯 原 発 3, 4 号 機 の 運 転 差 止 を 認 め た 福 井 地 方 裁 判 所 の 判 決 が 示 す と お り 、福 島 第 一 原 発 事 故 は 、我 が 国 始 ま っ て 以 来 最 大 の 公 害 、 環 境 汚 染 で あ る 。そ し て 、豊 か な 国 土 と そ こ に 国 民 が 根 を 下 ろ し て 生 活 し て い る こ と が 国 富 で あ り 、こ れ を 取 り 戻 す こ と が で き な く な る こ と こ そ が 国 富 の喪失である。 伊 方 原 発 の 再 稼 働 は 、福 島 第 一 原 発 事 故 再 来 の リ ス ク を 自 ら 招 く も の で あ る 。そ し て 、原 発 に 依 存 し な い 社 会 を 築 い て い こ う と す る 多 く の 住 民 の 意 見 を 無 視 し 、生 活 の 安 全 を な い が し ろ に す る も の で あ り 、原 発 の 安 全 性 に 絶 対 はないという福島第一原発事故の現実を顧みない全く無責任な判断である といわざるを得ない。 自 由 法 曹 団 は 、原 発 事 故 の 被 害 を 二 度 と 繰 り 返 さ せ ず 、将 来 世 代 に 禍 根 を 残 さ な い た め に 、原 発 政 策 か ら の 早 期 撤 退 こ そ が 、我 が 国 の 取 る べ き エ ネ ル ギ ー 政 策 の 姿 で あ る と 考 え る 。原 発 ゼ ロ の 社 会 を 実 現 す る た め に も 、そ れ に 逆 行 す る 伊 方 原 発 再 稼 働 へ の 動 き に対して、強く反対の意を表明する。 2015年7月16日 自由法曹団 団長 2 荒 井 新 二
© Copyright 2025 ExpyDoc