「水銀に関する水俣条約」の国内担保状況について ~ 正しく理解して

H27 年 7 月 15日
「水銀に関する水俣条約」の国内担保状況について
~ 正しく理解していただくために ~
一般社団法人日本照明工業会
技術部
H25 年 10 月 10 日、水銀による汚染防止を目指した「水銀に関する水俣条約」
(以下、水俣条約と
いう。
)が、熊本県で開催された国連環境計画(UNEP)の外交会議で採択・署名され、国内ではその締結
のために国内担保法の整備が進められているところです。
今年の 6 月 12 日には、国会において「水銀による環境の汚染の防止に関する法律案」が可決・成立
し、この法律に基づく政省令等に関して「水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀対策に関する技術
的事項について(合同会合第二次報告書(案)
)
」
(以下報告書案という。
)が取り纏められ、6 月 22 日か
ら 7 月 17 日に亘って意見募集(パブリックコメント)が開始されたところです。注目すべきは、この政
省令の基となる報告書案は、いくつかの点で水俣条約を超えた規制となっていることです。
一方、照明分野においては、蛍光ランプなどの水銀使用製品は、依然として中心的存在であり、業界と
しても水俣条約の規制対象にならないよう水銀封入量を条約の基準以下にする努力をして、それを達成し
て参ったところですが、一部に「蛍光ランプは原則 2020 年までに製造禁止」などという、水銀封入量に
拘らず、あたかもすべての蛍光ランプが製造禁止になるような舌足らずな情報も出回って混乱をきたして
いるのも事実です。
ここに、
「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」及び現在パブリックコメント中の「報告書案」に
基づいて、ランプに関する情報をあらためて提供いたしますので、正しく理解していただくための一助に
していただければ幸甚に存じます。
なお、ここではランプに関する「製造、輸出又は輸入禁止」に関する規制内容ついてのみ記載します。
まず、現時点における「国内市販ランプへの影響について」の結論をお知らせします。
【現時点における国内市販ランプへの影響について】
Ⅰ 一般照明用(1)の高圧水銀ランプ(HPMV)を除き、現在市販されている蛍光ランプ
や HID ランプ(2)などの水銀使用ランプのほとんど(3)は、すでに水銀封入量の条
約基準をクリアするなど規制対象にはなりませんので、製造、輸出又は輸入の禁止
期限(2017 年)以降も継続して購入・使用いただけます。
Ⅱ 一般照明用の高圧水銀ランプ(HPMV)につきましては、水銀封入量に関係なく、
製造、輸出又は輸入の禁止期限は 2020 年になりますので、メタルハライドラン
プやLED照明などへの計画的な切り替えが必要です。
注(1) 「報告書案」の中で、
「一般照明用」とは「照度を確保するためのものであって、高演色用及び
低温用その他特殊の用途にのみ用いられるもの以外のものをいう。
」と定義されています。
注(2) HID ランプとは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプの総称です。
注(3) 「ほとんど」とは、日本照明工業会会員の製造販売するランプを指します。
以下、詳細について報告いたします。
1. ランプの主な種類と水銀使用ランプについて
ランプは、下記のように主に白熱電球、ハロゲン電球、蛍光ランプ、低圧放電ランプ、HID ランプ及
び LED ランプに分けられますが、水銀を微量ながら使用している「水銀使用ランプ」は、蛍光ランプ、
低圧放電ランプ及びHIDランプが該当します。
2. ランプに関する「製造、輸出又は輸入禁止」に関する規制について
上記水銀使用ランプのうち、
「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」及び「報告書案」で、製造、
輸出又は輸入の段階的な禁止措置を求められているものを「特定水銀使用製品」といいます。ランプに関
する特定水銀使用製品及び禁止期限は、表1の通りです。
「水俣条約」と「報告書案」の比較で示しまし
た。一部のものにおいて、
「報告書案」の禁止期限が「水俣条約」よりも前倒しになっています。
日本照明工業会会員の製造・販売するものに関しては、これまでの自主的な水銀量削減努力によって、
すでに水俣条約の基準をクリアしていることもあり、このような前倒しを可能にしています。
表1 ランプに関する特定水銀使用製品の段階的な禁止措置(
「水俣条約」と「報告書案」の比較)
製造、輸出又は輸入が許可されなく
特定水銀使用製品
なる期限(翌年から禁止です。
)
水俣条約
報告書案
30W 以下の一般照明用コンパクト蛍光ランプ(CFL)で、
水銀封入量が 5 mg を超えるもの
※コンパクト蛍光ランプには、コンパクト形蛍光ランプ
及び電球形蛍光ランプを含みます。
2020 年
2017 年
(3 年前倒し)
一般照明用直管蛍光ランプ(LFL)で、
(a) 60W 未満の 3 波長蛍光体を使用したもので、
水銀封入量が 5 mg を超えるもの
(b) 40W 以下のハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を使用した
もので、水銀封入量が 10 mg を超えるもの
2020 年
2017 年
(3 年前倒し)
一般照明用の高圧水銀ランプ(HPMV)
※メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどは
含みません。
2020 年
2020 年
(変更なし)
電子ディスプレイ用冷陰極蛍光ランプ(CCFL 及び EEFL)で、
(a) 長さが500 mm以下の小サイズのもので、
水銀封入量が3.5
mg を超えるもの
(b) 長さが 500 mm を超え 1,500 mm 以下の中サイズのもの
で、水銀封入量が 5 mg を超えるもの
(c)長さが 1,500 を超える大サイズのもので、水銀封入量が 13
mg を超えるもの
2020 年
2017 年
(3 年前倒し)
3.国内市販ランプへの影響について
(1)製造、輸出又は輸入が段階的に禁止されるのは、表 1 に挙げた特定水銀使用製品であり、それ以外
のランプは禁止の対象にはなりません。
(2)日本照明工業会会員の製造・販売するコンパクト蛍光ランプ、直管蛍光ランプ及び電子ディスプレ
イ用冷陰極蛍光ランプには、表 1 に該当する特定水銀使用製品はございません。即ち、これらのラ
ンプにつきましては、すでに水銀封入量の条約基準をクリアしていますので、禁止期限に関係なく
継続してご購入・ご使用いただけます。
(3)一般照明用高圧水銀ランプ(HPMV)につきましては、水銀封入量に関係なく 2020年までに製
造、輸出又は輸入が禁止となりますので、メタルハライドランプや LED 照明への計画的な切替え
をお願い致します。
以上