2級例題 「科学の営み」 本文要旨・正答(例)・解説 本文要旨 科学には仮説に基づいて実験を行う演繹法と、実験の結果から理論や仮説を立てる帰納法の 2 つの世 界が存在し、科学はこれら演繹と帰納を繰り返すことで進歩してきた。科学の強みは、個別の事象の観 察結果を言語化して理論や一般法則にすることで、言語世界(理論)だけで発展できる点と、他人の批 判を仰ぐことで精度が高められ、新たな理論や仮説を立てることができる点にある。 正答(例)と解説 【問1】A ②誤 B ①正 C ①正 【問2】 正答例 実験や観察に裏付けられた仮説や理論により、実際に実験や観察を行う事なく、言語世界だけで新た な知見を得るなどの発展が望めるところ。また、目の前の人間だけでなく離れた場所や異なる時代に 生きる他人からの批判を仰ぎ、その考えを新たな理論や仮説に取り入れることが可能であるところ。 解説 ここでは科学の帰納的な部分ではなく、言語世界における演繹的な部分に注目して科学の強みを説明 することが求められている。 「言語世界で演繹する」とは、理論や一般法則に基づく仮説を元に実験や観 察を行うことを指している。それが「発展する」とは、この演繹を繰り返して言語世界において発展す ることを指している。第六段落の「言語世界で演繹し発展でき」と「言語化して他の人の批判を仰ぎ、 考えを取り入れるのが科学の得意技だ」とある部分が手掛かりとなる。 【問3】 正答例 職人の世界は、親方の技術や仕事への姿勢を弟子が批判することなく継承することに一定の価値があ る。一方、科学の研究者は実験や観察から得たものを理論や一般法則に言語化することで、そこから 新たな知見を得たり、理論を批判しあったりすることで発展させていく。従って大学教授と後輩研究 者や大学院生は、師弟関係にはあっても同僚であり、職人のように弟子と呼ぶことは、外に対して開 かれた態度を取るべき科学者が正反対の態度を取っていることになるから。 解説 第六段落「職人技の範囲内(職人の頭の中だけ)」に示されているように、職人は同じ職能集団内で技術 を発展させていくのに対して、科学の研究者は他人の批判や考えを取り入れることで科学を発展させて きたということが本文から読み取れる。よって、まず職人の技術と科学の営みの発展方法の違いをまと め、次に筆者の反発の理由を説明する必要がある。 2級例題 「科学の営み」 本文要旨・正答(例)・解説 【問4】 正答例 1)大豆を食べるとアレルギーが治る を選択 大豆を食べることとアレルギーの相関関係があるとみられる症例を集め、その分析から帰納的に仮説 を立てる。その仮説に基づいて新たに被験者(被検体)に大豆に含まれる特定の成分を摂取させるな どの検証を行い、その結果から仮説を立て直すというサイクルを繰り返す。 2)高圧電流が人体に悪影響を及ぼす可能性 を選択 高圧電線がある所に住む人と無い所に住む人の病歴や身体各部の計測などを行い、その結果分析によ り仮説を立てる。その仮説に基づいてさらに検証実験を行ったり経過を観察したりしながら、仮説生 成と検証を繰り返して高圧電流が人体に及ぼす影響を確認していく 3)スーパーやデパートにおける、商品の配置と売り上げの関係 を選択 広告に掲載した目玉商品は、店舗の入口付近に置くと高い売り上げが見込めるという仮説を立てる。 それを検証するため、同じ商品を入口付近の他に、店の奥やレジ周辺など数か所に配置して一定時間 ごとに各場所の商品の減り具合を調べる。場所による差が認められれば、商品の配置と売り上げには 相関関係があると言える。この結果からさらに商品が売れる配置を考え、検証を続けながら売り場を 改善していく。 店内を出入口付近、レジ周辺、店の奥などに分類し、同じ商品について毎週置き場所を変えて売り上 げに変化があるかどうかを検証し、そのデータから商品の置き場所と売り上げに関する仮説を立てる。 スーパーやデパートの場合、商品の数が多くすべてについて検証を行うことはできないので、いくつ かの商品の検証から店舗全体に及ぶ仮説を構築し、その案に沿って改善していくなど、言語世界にお ける発展を図っていくことも考えられる。 解説 本文で述べられている「科学の営み」とは仮説に基づいた検証(実験)を行う演繹と、検証結果から 理論や仮説を立てる帰納を繰り返し、スパイラルに上昇していくことである。これをいずれかのテーマ に照らし合わせ、具体的に説明することが必要である。最終段落の「理論や一般法則は統計学によって 言語化される」も解答のヒントになる。つまり、選んだテーマの核となるものを数値化する具体的な方 法と、テーマに沿った仮説や検証方法を挙げ、 “仮説→帰納→仮説→帰納…”のプロセスにあてはめた説 明を書けばよい。 言語力検定例題の問題、正答(例)と解説を商用目的で利用、転載、転用することを禁じます ©2013 公益財団法人 文字・活字文化推進機構
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