平成 27 年度 総合技術監理部門 記述式 解答の流れ

株式会社 5Doors'
平成 27 年度
総合技術監理部門
記述式
解答の流れ
Ⅰ-2
次の問題について解答せよ。(指示された答案用紙の枚数にまとめること。)
問 題 文
問われていること
2020 年には東京でオリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるが,こ 条件 1:有効な活用が期待できる
のような国際会議,国際文化・スポーツイベント,国際展示会・見本市などの 条件 2:成果が容易資産として後
国際的なイベントは,我が国の課題である活力ある経済社会の構築,安全・安
世に引き継がれる
心社会の実現,地域の活性化や観光振興等を推進していく上でまたとない機会
であり,これら国際的なイベントに直接的にあるは間接的に関係するプロジェ
クトでは,この機会の有効な活用が期待される。またこれらのプロジェクトの 例)
成果は,それが有形であっても無形であっても,一過性のものに留まらず,例 イベント:
えばオリンピック・レガシー【注 1】で謳われているように,良い遺産(positive サミット、オリンピック、ワール
ドカップなど
legacy)として後世に引き継がれていくことが望ましい。
その一方で,プロジェクトやプロジェクトの成果を取り巻く環境には多くの不
確かさが存在し,それらはプロジェクトを推進していく上で,あるいはプロジェ
クトの成果を引き継ぎ管理・運営していく組織にとって,さまざまなリスクの
源となる。これらのリスクをあらかじめ認識し,適切なリスク対応を取りなが
らプロジェクトを計画し,実行することは,総合技術監理部門の技術士に要求
される重要な業務の1つである。
そこで,あなたがよく理解しているプロジェクトを取り上げ,さらに,近い将来
我が国で開催される国際的なイベントを想定して,その国際的なイベントをそ
のプロジェクトに関連付けた上で,プロジェクトを推進していく際のリスクマ
ネジメントについて,総合技術監理の視点から(1)~(3)の問いに答えよ。
ここでいう総合技術監理の視点とは,
「経済性管理」,「安全管理」,
「人的資源
管理」,「情報管理」,「社会環境管理」の5つの視点をいう。
なお,あなたが対象とするプロジェクトと想定する国際的なイベントについて
は,以下の(ア)~(エ)のとおりとする。
(ア)「国際的なイベントをプロジェクトに関連付ける」とは,その国際的な
イベントの開催を契機にして(あるいは利用して),そのプロジェクトの成果
が,我が国や地域社会のさまざまな課題の解決のために,貢献できるよう工夫
することをいう。
(イ)あなたが対象とするプロジェクトは,国際的なイベントの開催期間末ま
でには終了する。
(ウ)そのプロジェクトの成果は,プロジェクト終了後に適切な組織に引き継
がれ,将来にわたって管理・運営されていく。
(エ)プロジェクト終了後にその成果が引き継がれ管理・運営されている期間
に発生する可能性のあるリスクについても,プロジェクト期間中に可能な範囲
で対応策をとる。
プロジェクト:
競技場建設、ホテル建設、道路建
設、造成など
条件 3:プロジェクトの成果が我
が国や地域社会のさまざまな課
題解決に貢献する
条件 4:国際的なイベントの開催
期間末までには終了する
条件 5:プロジェクト終了後に適
切な組織に引き継がれ,将来に
わたって管理・運営されていく
条件 6:引き継がれたあとに発生
する可能性のあるリスクについ
ても,プロジェクト期間中に可
能な範囲で対応策をとる
リスクマネジメントについては,その用語や考え方を整理した国際規格 ISO
31000 :2009 及びその翻訳版である JIS Q 31000 : 2010 が制定されている。
問いに対ずる解答論文(あなたの答案)を作成するに当たっては,この新しい
ISO/ JIS 31000 の枠組みに基づいて作成してもよいし,従来一般に用いられ
てきたリスクマネジメントの枠組み(例えば,JIS Q 2001:2001 や『技術士制
度における総合技術監理部門の技術体系(第 2 版),日本技術士会』で紹介さ
れている枠組み)に基づいて作成してもよい。
ここまでの前段で、上記、条件を満たすような国際イベントと関連プロジェクトをイメージしておき、問い(3)か
ら構成を作る。
株式会社 5Doors'
(1)本論文においてあなたが対象とするプロジェクトと国際的な
イベントの内容を,次の①~⑤に沿って記せ。この際,以後の問い
(2), (3)の解答に必要な内容を含めて記すこと。なお,あなたの立場
は,当該プロジェクトの総括責任者あるいはそれと一体となってプ
ロジェクトを推進する総合技術監理部門の技術士であり,プロジェ
クトの責任を他に転嫁できないものとする。
(問い(1)については,問い(2)と併せて答案用紙3枚以内に
まとめ,解答せよ。)
① 想定する国際的なイベントを設定せよ。
② 対象とするプロジェクトの名称,目的,事業期間及び予定され
る成果を記せ。
③ プロジェクトの置かれている背景状況ないし環境を記せ。
④ そのプロジェクトに国際的なイベントを関連付けよ(そのプロ
ジェクトの成果が国際的なイベントの開催を契機に、我が国や地域
社会のどのような課題に対して,どのような工夫をすることによっ
て,どのように貢献できるかを記せ。)。
⑤ 国際的なイベントの終了後(この時点ではプロジェクトも終了
している。)
にプロジェクト成果が置かれていると予想される状況を
記せ。
(2)対象とするプロジェクトの主要な作業ステップを①に従って
記せ。また、プロジェクトを推進していく上での主要なリスクを4
つ取り上げ,②に従って記せ。ただし,取り上げる4つのリスクの
うち少なくとも1つは,国際的なイベントの終了後に発生する可能
性のあるものとする。
(問い(2)については,上の問い(1)と併せて答案用紙3枚以
内にまとめよ。)
① プロジェクトの主要な作業ステップ及びその作業ステップにお
ける留意点を記せ。
② 取り上げる主要なリスク4つのそれぞれに対して,(a)リスク源
(ハザード,危険因子), (b)事象(ある一連の周辺状況の出現又は変
化), (c)その事象により生じうる結果,について説明せよ。また, (d)
そのリスクが①の作業ステップのどの段階で出現する可能性かある
かを示せ。なお,国際的なイベントの終了後に発生する可能性のあ
るものについては,その時期を記せ。
(3)問い(2)で取り上げた 4 つのリスクのうち,対象とするプ
ロジェクトに大きく影響を与えるリスクを2つ取り上げ,それぞれ
のリスクに対して,次の①~③に沿ってリスク分析とリスク対応に
ついて説明せよ。ただし,取り上げるリスクのうち少なくとも1つ
は,国際的なイベントの終了後に発生する可能性のあるリスクとす
る。
(問い(3)については,答案用紙を替えて 2 枚以内にまとめよ。)
① そのリスクに対して, (a)起こりやすさ(確率の程度)と, (b)プロ
ジェクトへの影響(あるいはプロジェクトの成果を管理・運営して
いく上での影響)の程度について想定し,記せ。また, (c)そのように
想定した理由を簡潔に述べよ。
② リスクに対する具体的な対応策(プロジェクト期間中にとる対
応策)を提案せよ。なお,対応策は,当該リスクへの対応のみなら
ず,より広い視点からのものであることが望ましい。
③ 上で提案した対応策の提案理由を述べよ。提案理由には予測さ
れる効果と対応策実施上の留意点を含めること。また、他の懸念に
対する配慮,総合技術監理の管理分野を踏まえた視点からの考察,
生じる可能性のあるトレードオフ,その対応策を採用することによ
る新たなリスクの発生等についての考察も含めることが望ましい。
最後にここを作る。
次にここを作る。
問い(3)で選んだ重要な 2 リスクを含む
4リスクを選定。
上記 4 リスクに対して、左記(a)~(d)を記
載。イベント後のリスクだけ、時期を記載。
ここから作る。
重大リスク2つを考える。
1つは、プロジェクト中、もう一つはイベ
ント終了後。
例)
A.工期遅延
B.利用者減または販売減
上記、A、B ごとに、左記(a)~(c)を記述
上記、A、B ごとに、リスク対策を記述。特
に B は、プロジェクト期間中に手を打って
おくことが重要。
上記、A、B ごとに、提案理由を記述。効果
と留意点を含める。
株式会社 5Doors'
答案作成の流れ
1.プロジェクトをイメージする
ここでは、問題文の前段(1 ページ目)を読んで、設定条件を頭に入れます。それをもとにプロジェクトのイメー
ジをします。国際イベントに合わせて構築するもので、イベント終了後も使うものですね。
ここでは、素直に国際イベントは東京オリンピック・パラリンピックがいいです。都心ですし、今後の人口集中を
受けて、いろいろなプロジェクトが考えられるからです。賢島のサミットでもいいですが、その後の活用が難しい
ですから。
したがって、プロジェクトは、競技場建設、ホテル建設、道路建設、造成などをイメージておきます。
2.問い(3)から解く
ここでのポイントは重要なリスクを 2 つ挙げることです。条件は、リスクのうち少なくとも 1 つはイベント終了
後に発生する可能性のあるものです。問題条件では、2 つともイベント終了後でもいいのですが、その前の問い(2)
のステップがあるので、1 つはプロジェクト中、もう一つはイベント後、がいいです。
よって、リスクは以下の 2 つがいいですね。
重要リスク1:プロジェクトの工期遅延
重要リスク2:イベント終了後の利用者減、マンションなどの売れ残り、改装費の高騰
などを挙げればよいですね。
それぞれリスク分析、対策、対策選定理由、対策時の効果と留意点、懸念事項、総監管理分野を踏まえた視点、ト
レードオフ、新たなリスクを書けばよいです。
以下に例を紹介します。
解答項目
重要リスク1:
プロジェクトの工期遅延
(a) 起 こ り や す さ 人材不足、資材高騰などから発生確率が高
(確率の程度)
い。
(b)プロジェクトへ 多大な影響がある。
の影響
(c)そのように想定 イベント関連施設なので、プロジェクトが
した理由
間に合わなければ価値がなくなる。
対応策
主要部材の二次製品化
対策選定理由
クリティカルパスから外れ工程短縮に有利
だから。
工程短縮のみならず、人材不足、品質確保
に効果がある。
運搬と揚重機。部材接合部の構造計算。
コストアップ
経済性管理の中でトレードオフが起こる。
対策時の効果
対策時の留意点
懸念事項
総監管理分野を踏
まえた視点
トレードオフ
新たなリスク
工期短縮・品質確保とコスト
大型部材の運搬、架設があるので労災事故
の可能性がある。
これで、結論はできましたので、順次、問題をさかのぼります。
重要リスク2:
イベント終了後の利用者減による施設の閉鎖
イベントが大きいので、その後の利用者減は避
けられない。
プロジェクト工期などに大きな影響を及ぼす。
プロジェクト中に対応しなければならないの
で、時間的な制約もあり、イベント終了後の価
値を確保しないと費用対効果が出ない。
イベント終了後、ホテルを分譲マンションに変
えられるように設計しておく。または、道路を
LRT に変えられるように設計しておく。
イベント終了後はニーズが変わるから。
イベント時のニーズとイベント終了後の両方
のニーズに対応できる。
如何に改変コストを下げられるか。
改変コスト。
経済性管理の中でトレードオフが起こる。
初期コストと管理・運営時の利益確保
イベント終了後のニーズ把握
株式会社 5Doors'
3.問い(2)を解く
プロジェクトの主要な作業ステップ及びその作業ステップにおける留意点を書きます。ここでは、まだ、プロジ
ェクトを特定していませんが、概ね、建設系なら以下のような流れになるでしょう。
ステップ1:計画・・・イベント時およびイベント終了後に価値のある内容
ステップ2:調査・・・イベント時およびイベント終了後のニーズの把握
ステップ3:設計・・・イベント時およびイベント終了後を踏まえる
ステップ4:施工・・・工程管理、品質管理、安全管理、原価管理、環境負荷低減、情報管理
ステップ5:引き継ぎ・・・イベント終了後も長期にわたり価値のあるように。
次に主要な 4 つのリスクを挙げます。すでに問い(3)で 2 つ挙げていますので残りはプロジェクト中の 2 つを
挙げます。上記のステップの中から選べばよいです。
リスク1:問い(3)で選定した工期遅延
リスク2:問い(3)で選定したイベント終了後の利用者減
リスク3:施工時の労災事故発生
リスク4:施工時の環境負荷
次にこの 4 リスクのリスクアセスを行います。
解答項目
リスク1
リスク2
(a)リスク源(ハザー 人員不足
ニーズの把握をして
ド,危険因子)
いない
例えば、ホテルの空
(b)事象(ある一連の 作業工程の遅れ
き室が多くなり経営
周辺状況の出現又は
が行き詰る
変化)
(c)その事象により生 工期遅延
施設の閉鎖
じうる結果
(d) そ の リ ス ク の 発 ステップ 4:施工時 イベント終了後 1 年
生段階または時期
以内
リスク3
突貫工事
リスク4
都心での解体工事
輻輳作業、昼夜連続
作業の発生
振動騒音粉塵の発生
労災事故
周辺住民の健康被害
ステップ 4:施工時
ステップ 4:施工時
4.最後に問い(1)を解く
問題文に沿って以下のように埋めれば OK です。すでに、問い(2)
(3)ができているので簡単なはずです。
解答項目
解答例
① 想定する国際的なイベント
東京でオリンピック・パラリンピック
② プロジェクト概要 名称
ホテル
目的
国際イベントの来客用の宿泊
事業期間
イベント開催前までの 4 年間
成果
宿泊客 1,000 人収容可能
③ プロジェクトの置かれている背景 数百万人の来訪者が予測される中で、ホテル需要は高い
状況ないし環境
④ プロジェクトと国際的なイベント 我が国は今後、人口減少進行とともに都心への人口集中が起こる。特に
の関連(我が国や地域社会のどのような 収入が少ない若者でも住居の需要は高い。イベント時にホテルとして
課題に対して,どのような工夫をするこ 活用し、イベント終了後に分譲マンションに改築すればこの問題を解
とによって,どのように貢献できるか) 決できる。
⑤ イベントの終了後にプロジェクト ホテル需要は減り、マンション需要が増える。
成果が置かれていると予想される状況