美を追求する人々 身近な美容に関する場所といえば「美容院」であり、そしてその施術をしてくれる人は「美容師」である。 昔から中国と日本は長髪の女性が多く黒髪で長い髪の毛が美しさの象徴である。そして「女性にとって髪 の毛は命」と普段からも言われるように昔から重要視されているパーツの 1 つだ。 ① 中国には 56 の少数民族が存在している。“ヤオ族”は広西チワン族自治区などに住んでいる民族であ る。民族の大きな特徴は成人(18 歳)になったときに 1 度髪を切るのみで、切った髪の毛は大切に保管す る。その後は一生伸ばし続けるが、未婚と既婚の女性ではヘアスタイルも違い、子供を産んだ女性は保 管していた髪の毛と一緒に結い上げて生活をする。 ② ③ また人類水生進化説を唱えた学者エレン・モーガン(Elaine Morgan)の著書である「女の由来:もう 一つの人類進化論」の第 4 章には“女の長髪は、子供を保護するときに、その髪に(子供を)捉ませて移 動した”と書かれている。このように「髪の毛」は昔、生きるための重要なパーツであり、現代では個性を表 すことができる。 2008 年の北京オリンピック後、中国は急速な経済発展を遂げ且つ外資系(コカコーラ、J&J など)も参 入してきた。もちろん、日本(TOYOTA など)も同じである。日本にある女性向け雑誌「non-no」「ViVi] などの雑誌は中国人女性の間では人気であり、日本の雑誌と同様に美容のページがある。髪型のスタイ リング方法や中国にある日本人が経営する美容室紹介もある。そのため読者たちは日本人の美容師か らの施術に憧れを持っている。 そして中国人は日本人に対しては繊細且つおしゃれなイメージがあるため、日本人が経営している美 容院は、かなりの需要があることがわかる。しかし今回は中国北京で働く日本人美容師の目線を話題に したいと思う。 今回は北京に美容師として活躍をしている宮本崇史氏へインタビューし、中国の美容状況と日本を比 較してみようと思う。宮本崇史氏は専門学校卒業後、都内にて 10 年間美容師、店長、マネージャー職 をしていた。そして 2 年前に北京へ来て1日本人美容師として活躍をしている。 どうして中国で美容師をしようと思ったのですか? 「日本の美容室はコンビニの約 5 倍あると言われており完全なる飽和状態になっています。将来のことを 考えると日本だけでいいのか?と悩んでいるときに隣の国、中国が経済成長をしているオファーをもらったの で、それなら中国で美容師をやってみよう!そして、こんなチャンスは二度とないからですね。」 日本の施術と中国の施術で変わったところはありますか? 「小さい違いでは、専門用語や日本語、中国語とのやり取りの違いは、もちろんあり、接客方法も違う点 はいくつかありますが、大きく違いを実感させられることと言えば、1つ目は日本での美容院の場合は自分 からなりたい髪型の要望が多いが、中国ではお客様自身に合うスタイルやお客様の要望を私からお客様 へはっきりと伝えないとダメ。日本のように“今日はどうしますか?”と聞いてしまうと “我也不知道!你给我 建议!”(私に聞いてもわかんないわ!あなたはプロなのだからアドバイスしなさい!) という風に言われたことも ありました。それはやはりお客様1人1人の困っている部分や悩んでいる部分などを正確に言い当てない といけないですね。もし仕上がりが気に入らなかったら“嫌い”とハッキリ言いますし、このお客様は何を求め ていて、何をしたら綺麗になるという観察力と提案力は日本にいた時よりも格段に上がったと思います。仕 上がりを一度見せて気に入ってくれれば、信用してくれます。2つ目は日本の場合は個人で行くことが多 いですが、日本と比較すると中国人は家族連れ、カップル、友達同士などで来店してくれる割合が高いで す。」 最近の中国人美容師の感想は? 「中国人美容師は全体的なレベルで言えば上がってきています。それは技術的で努力をしているということ ですね。例えばカットやパーマなどの施術です。日本よりも積極的に中国人、韓国人、日本人のプロのとこ ろへ自発的に出向いて学習、練習をする中国人美容師が多いですし、そして年々このような現象が増え て行っている傾向にあります。接客面ではまだ努力が必要な段階ではありますが、細かい気づきや接客は 日本と比べるとまだまだ乏しいですね。時代に伴う考え方の違いと関係していると思っていて、日本の場合 はカリスマ美容師ブームが到来したことによって美容師が増え技術が向上し全国に広がりました。そして技 術はあって当然ですが、接客や人徳などの時代です。中国の場合はまだ技術面を伸ばせばお客様が来 てくれるという考えの違いそして時代の流れによってそれぞれの世代間認識の違いがもたらされているので はないかと思います。接客が重視されてくるのはこれからの時代なのかなと。」 現代の中国での流行の起源は日本からが多い? 「日本の流行がそのまま中国で流行するのは難しいですね。なので日本の流行を元にしてさらにアレンジを 加えていく必要があります。しかし、今の場合は韓国系の影響も大きいです。それは美容系や服装系も 合わせての話ですね。日系美容院へ行って施術をしている中国人のお客様の中では韓国人の雑誌を持 参して韓国風のヘアスタイルを要望する人もいます。その理由はやはり日本の技術や薬剤に対して安心 感が多いと思います。」 日本では美容室について課題(雇用や飽和状態への緩和など)が多く解決にはまだ長い時間がかかる が、宮本氏はこう述べてくれた。 「最初に言ったように日本での美容院は既に飽和状態なので、解消するには日本にいる美容師が海外 へ行きグローバルな人材を育成させていくこと、日本の技術の価値もアジアではトップ水準です。今後の過 熱していくグローバル化に適合していくためには海外へ行くことも1つの選択肢ではないかと思います。」 日本では、美容師は国家資格が必要な職業であり、世界で美容師が国家資格を持てる国はアジア 圏では日本だけである。日本の美容室のサービスや気配りは当たり前。しかし当たり前なようなことが、い ざ海外へ渡航すると不便な部分を感じることは多い。 私も昔中国の東北地区にて髪の毛を切ったことがあるが、かなり雑だった。シザーはちゃんと切れず髪の 毛が強制的に枝毛にされてしまった。シャンプー台へ移動されず席に座ったままシャンプーをされ服が濡れ てしまった出来事、同じスタイルを保ったままでカットを注文したが、バッサリとパッツンな髪型になってしまった こともあった。北京で実際に友達と一緒に言った美容院では髪の毛を技術的にすいてくれることができず、 ボブヘアのみしかできない美容院にも遭遇したこともあった。 私が日本出身であることを伝えると「実は僕この秋から日本で美容の勉強をするんだけど、是非簡単な 日本語を教えてほしい。」という中国人の美容師に遭遇したことがある。どうして日本なのか?その理由は 「日本の技術はものすごく繊細で安心感がある。きっと満足してくれると思うからだね」 美容師の美への追求は昔かけ離れていた中国だが、中国が日本に憧れを抱いているように思えた。日 本では高い水準の技術を持っているが、中国の技術が伸びている背景には日本の技術が支えているので はないだろうか?北京にある日系の美容院は毎週ヘアカットの講習が夜遅くまであり、日々努力をする中 国人、日本人の美容師を見ていると日中交流が既に力強く根付いているように感じる。そして彼らの“美” に対する気持ちはますます向上し人を満足させてくれるはずだ。 ≪補足≫ ① “ヤオ族“:ヤオ族大部分の人々は農業にたずさわり、林業、自給自足の自然経済を主とする。また 政府より大きな支援も受けており、ヤオ族地区の文化事業などが発展をしている。 ② 人類水生進化説: アクア説(アクアせつ、英: Aquatic Ape Hypothesis: AAH, Aquatic Ape Theory: AAT)とは、ヒトがチンパンジー等の類人猿と共通の祖先から進化する過程で、水生生 活に一時期適応することによって直立歩行、薄い体毛、厚い皮下脂肪、意識的に呼吸をコントロー ルする能力といった他の霊長類には見られない特徴を獲得したとする仮説である。(Wikipedia 参 照) ③ エレン・モーガン(Elaine Morgan): Aquatic ape theorist ≪参考資料≫ ① ヤオ族(ARACHINA) http://www.arachina.com/guilin/attraction/yaozu.htm ② ミエン族(ヤオ族)の基礎知識(SAKURA PROJECT) http://sakuraproject.org/mien.html ③ 水生類人猿説 https://ecolumn.net/aqua.htm ④ Elaine Morgan: I believe we evolved from aquatic apes(TED) https://www.ted.com/talks/elaine_morgan_says_we_evolved_from_aquatic_a pes (インターン生 清華大学 斉藤幸子)
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