六次産業化を進める農業生産法人の展開条件に関する研究

六 次 産 業 化 を進 め る農 業 生 産 法 人 の展 開条 件 に 関す る研 究
張
淑 娼(農
業 経 営 学)
【研 究 目 的 】
1990年
代 に 提 唱 さ れ 、 推 奨 さ れ て き た 農 業 の 六 次 産 業 化 が 近 年 の 日本 農 業 の 一 つ の 展 開
の 道 と し て 全 国 各 地 で 実 践 的 に 行 わ れ て い る 。 日本 がTPP協
定 の 交 渉 に 参 加 し、 そ の 妥 結
可 能 性 も 予 想 さ れ る こ と か ら 、 目本 農 業 は さ ら に 激 し い 競 争 に さ ら さ れ る こ と が 想 定 さ れ 、
既 存 の 農 業 を 守 りな が ら発 展 させ て い く こ とは さ らに 厳 しい 状 況 に な る と思 わ れ る。
しか し、 こ う い っ た 中 で も 、 生 き 残 る 方 法 と し て 、 地 域 の 牽 引 役 を 担 っ て い る 農 業 生 産
法 人 な ど が 農 業 の 収 益 性 の 向 上 や 、 地 域 活 性 化 の 進 展 の た め に 六 次 産 業 化 に 取 り組 む も の
が 生 ま れ て き て い る。 六 次 産 業 化 と は 、 今 村 氏 に よ れ ば
2、 第 三 次 産 業 の3の
「第 一 次 産 業 の1と
第二次産業の
掛 け 算 で あ る 」 とい わ れ て い る 。 こ の 農 業 の 六 次 産 業 化 の 実 践 例 は 農
業 生 産 法 人 が 多 い 。 し か し、 資 金 問 題 、 技 術 問 題 、 雇 用 問 題 等 々 の 要 因 に よ り、 六 次 産 業
化 法 人 の 成 功 事 例 が 少 な い 状 況 に あ る 。 本 稿 で は 、 地 域 資 源 を利 用 し地 域 の 労 働 力 を 活 か
した 六 次 産 業 化 を 進 め る優 良 な 事 例 を 三 つ に 分 け て 検 討 す る 。 六 次 産 業 化 法 人 の 展 開 条 件
を 、 地 域 女 性 の 能 力 を 活 か して い る 側 面 な ど か ら検 討 し、 六 次 産 業 化 法 人 の 発 展 の 可 能 性
を 探 る こ と を 目的 に して い る 。
【分 析 方 法1
農 業 の 六 次 産 業 化 の 統 計 的 な も の は な い が 、 農 水 省 に よ る 優 良 事 例 の123事
こ れ を 部 門 の 重 点 ・売 上 な ど を も と に 類 型 化 す る と 、 一 次 産 業 部 門 中 心 の1形
畑 作 ・畜 産 の 一 次 産 業 中 心 で の 直 売 所 等 の 経 営 が 全 体 の34%で
2形
例 が あ る。
態 一稲 作 ・
あ る。 二 次 産 業 部 門 中 心 の
態 一 酪 農 ・畑 作 生 産 か ら 加 工 販 売 を 中 心 に レ ス ト ラ ン ・観 光 体 験 農 業 ・直 売 所 経 営 を
進 め る も の が 全 体 の50%で
あ る 。 第 三 次 部 門 を 中 心 に3つ
を 総 合 的 に 事 業 化 し て い る3形
態 一 生 産 加 工 販 売 、 レ ス ト ラ ン ・観 光 レ ジ ャ ー ・体 験 農 業 、 直 売 所 ・宿 泊 等 、 総 合 的 な 事
業 の 展 開 が 全 体 の 約10%程
度 と 分 類 で き る 。 こ の 優 良 事 例 と し て は 、1形
の 稲 作 を 中 心 と し た 夢 民 村 、2形
態 ・加 工 を 中 心 と し た 箱 根 牧 場 、3形
態 の ・一 次 部 門
態 ・第 三 次 部 門 の 展
開 も進 め る 総 合 的 な も の と し て モ ク モ ク 手 作 り フ ァ ー ム が あ る。 こ れ ら を 取 り上 げ 、 女 性
労 働 力 の 経 営 に 果 た し て い る役 割 な ど か ら 、 そ の 展 開 の 条 件 を 分 析 す る。
【考 察 結 果 】
上 記 の 特 徴 と し て は 、1形
態 の 夢 民 村 で は 稲 作 の 充 実 と ハ ウ ス で の 野 菜 か ら花 卉 、 そ し
て 加 工 ・直 売 、 レ ス トラ ン へ と 展 開 し て い る 。2形
態 の 箱 根 牧 場 は 、 酪 農 、 畑 作 ・野 菜 の
生 産 部 門 を 大 切 に し な が ら 加 工 ・直 売 を 軸 に 、 観 光 体 験 か ら レ ス ト ラ ン 経 営 も 含 め 展 開 を
進 め て い る 。3形
態 の モ ク モ ク 手 作 り フ ァ ー ム は 、 三 次 部 門 を 中 心 に 伊 賀 豚 加 工 ・販 売 、
レ ス ト ラ ン ・観 光 体 験 農 業 と 展 開 し て い る 。 こ の な か で 女 性 雇 用 も 全 体 の57%(臨
75%)を
も ち 、 会 員 を4,500世
帯 もi擁 し 売 上 高 も51億
時雇で
円 に 達 して い る 。 こ の よ う な 展 開 で
共 通 して い る こ と は 、 二 次 部 門 か ら三 次 部 門 の 売 上 の 拡 大 と、 男 子 中 心 か ら女 性 雇 用 の 比
重 と役 割 の 拡 大 で あ る。 そ れ は 、 女 性 雇 用 が 消 費 者 と生 産 者 の 両 方 の 立 場 か ら 対 応 で き 、
地 域 資 源 活 用 の 新 商 品 開 発 や 付 加 価 値 生 産 に 有 効 な 提 案 して い る か ら で あ る。 こ の よ う に
女 性 雇 用 が 加 工 ・販 売 な ど の 経 営 に 参 画 す る こ と は 、 売 上 の 増 加 や 経 営 の 多 角 化 ・六 次 産
業 化 に 大 き な 効 果 を も た ら し 、六 次 産 業 化 法 人 の 展 開 の 一 つ に な っ て い る こ と を 解 明 し た 。
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2000年2005年2010年
民村 の従業員数
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(人)
根牧場の従業員数
第一形態
第二形態
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複数βよる協叢総欝法人
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串
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士地面積約150めa、
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複数戸による櫨業経欝法人
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鰯劉型経欝法人
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が設立されたoITfYIFTを
原点
酪農鑓養硬数225醗 品種 ホルスタ にした。年闘麗育脳数は1万顕である。
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鼠÷ほしまる、大地のほし)類
次
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※商品の差鋼化、
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を翼現 ※有機饅業から縦貫方農業へ
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女麟 鵬 の人数
女性の占める割合
・
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×顯客を招き利絹 店舖、ハハコト食璽)※ 会員4万5人→
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学習
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客の増掴へ ※館 ※契約販夷
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簡品f彩」での差Ril化.プ
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ラン経欝 栽培や品種希少な牛の飼養で原繕面 品のブランド化を爽現できている。会貴を
総 爽環している。、
ネット
飯亮と宅爾が号一ビス での差溺{ヒ
から高品の差溺化を塞現 親織化し、
遜販、レスト
ラン、ファーム3つ
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ている。
上の1/3をしめている。
路を拡大している。
形態別に見た法人 の事例の特徴
ク モ ク手 作 り フ ァ ー ム の 従 業 員 数
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②部門贋女性労働者人数
雌 体33)
生産部門
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粟、黎、緯〉、
ハウ
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野菜〉ジャージー約30頭
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農霧ハウスが35棟があり、ホーマック施毅機械 フリー
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⑤売上
表2
45G珊
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形態別の事例 からみた女性雇用について