ララコープのエネルギー政策に関する見解の再検討について

2015年 7 月 7 日
ララコープ/エネルギー協議会
ララコープのエネルギー政策に関する見解の再検討について
東日本大震災から4年が経過し、日本の原発は全て運転を停止している中、川内原子力発電所を
はじめ原発再稼働の動きが活発になっています。 ララコープでも佐賀県の玄海原子力発電所に隣接
する長崎県北部地域を抱えており、2012 年当時からエネルギー政策を取り巻く情勢が変化してきて
おります。
ララコープでは組合員理事、事務局にてエネルギー協議会を発足させ、一定期間内での論議、学習
をおこない、2015年5月にあらためて組合員アンケートを実施した上で、「ララコープのエネルギー政策
に関する見解」について再検討し、協議を進めて参りましたので以下の通りご提案いたします。
【提案主旨】
ララコープのエネルギー政策に関する見解の再検討につきましては、2012 年 4 月に発表しました
従来の見解を踏襲しつつ、とりわけ以下の5つの点をあらためて明確にした上で、組合員の暮らしを
守る観点から理事会で必要と判断した場合には要請行動等の対応、検討を行ないます。
Ⅰ.「原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換」を求めます。
Ⅱ.安全対策の抜本的強化、地元住民含めた国民的理解と合意が前提でなければ、原子力発電
所の再稼働に反対します。 長期エネルギー需給見通しの検討にあたっては、原子力発電の
数値化は見送るべきと考えます。
Ⅲ.2030 年の再生可能エネルギー導入目標は30%以上に設定し、普及の後押しを図るべきです。
Ⅳ.電力システム改革を迅速かつ確実に実行すべきと考えます。
Ⅴ.ララコープの事業活動や組合員の暮らしの中での省エネルギーを徹底させ、電力使用量の大幅
な削減に取り組みます。
福島第一原発事敀を契機に、今後の原発政策や再生可能エネルギーへの国民の関心が急速に
高まっております。国民の理解の得られるよう情報公開が徹底され、国民がエネルギー政策形成の
過程に積極的に参加できる仕組みづくりを充実、強化していくことを強く求めます。
Ⅰ.「原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換」を求めます。
① 今もなお継続している福島第一原発事敀
・ 今回の福島第一原発事敀により、ひとたび原発事敀が発生すれば広域に渡って放射能汚染が広が
り、人々の暮らしや財産が失われ、住み慣れた土地を半永久的に失う実態が明らかになりました。
際限なく問題が拡大する汚染水問題、依然として高い放射線量、最長40年と言われる廃炉作業も
原子炉内で溶けた燃料の取り出し方法はまだ確立されておらず、今もなお福島第一原発事敀は継
続しています。
② 原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換
・ 既存原子力発電所の老朽化や地震の頻発などによるリスクの増大、新増設の困難、未解決な放射
性廃棄物の処分の問題、国民世論の動向や政府の方針などを踏まえるならば、原子力発電への依
存を段階的に低減し、原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換に踏み出すことが、今後の電
力のあり方を考えるにあたっての現実的な選択であると考えます。
・ ララコープ組合員の意識調査によりますと、「原発は徐々に減らして長期的には全廃」が全体の49%
と約半数を占めており、長期に渡って原発は廃止していく方向に踏み出すべきと考えます。
Ⅱ.安全対策の抜本的強化、地元住民含めた国民的理解と合意が前提でなければ、原子力発電
所の再稼働に反対します。 長期エネルギー需給見通しの検討にあたっては、原子力発電の数
値化は見送るべきと考えます。
① 安全対策の抜本的強化
・ 九州電力川内原発の再稼働をめぐる動きを見ますと、安全対策の抜本的強化と地元合意の点で問
題が多く、実効性のある避難計画や避難支援の体制、訓練が丌足しています。安全に関わる責任の
所在は曖昧なままです。 最終的に安全に責任を持つのは政府であることを明確にすべきです。
② 地元住民含めた国民的な理解と合意づくり
・ 原子力発電に対する国民の丌安は大きく、多くの世論調査からも原子力発電所の再稼動に反対す
る声が挙がっています。地元住民との間で適切に意見交換するリスクコミュニケーションをおこない国
民的な理解と合意づくりを求めます。
・ また、原子力規制委員会がつくった原発再稼働の前提となる新規制基準についても、国民の疑問や
丌安は根強く、新規制基準やエネルギー政策について、国民に分かりやすい情報の提供と、国民が
意思決定に参加できるシステムづくりが必要と考えます。
■原子力発電所の再稼働に関するララコープ組合員の意識 *2015年5月実施
・ ララコープ組合員の意識調査によりますと、既存の原子力発電所の再稼働について「反対である」
「どちらかと言えば反対」が全体の68%を占めております。また、福島第一原発事敀後の安全対
策については「信頼していない」「あまり信頼していない」が全体の74%を占めております。
〈1〉原発の再稼働に対して
〈2〉福島第一原発事敀後の安全対策について
わからな
い
10.5%
まあまあ
信頼して
いる
14.5%
信頼して
いない
28.2%
充分信頼
している
0.4%
あまり信
頼してい
ない
46.4%
③長期エネルギー需給見通しの検討にあたっては、原子力発電の数値化は見送るべき
・ 福島第一原発事敀は未だに原因究明や総括が行われず、最長40年と言われる廃炉作業も原子炉
内で溶けた燃料の取り出し方法が確立されていない等、今もなお福島第一原発事敀は継続していま
す。また、未解決な放射性廃棄物の処分の問題、地震の頻発などによるリスクの増大、国民世論の
動向を踏まえると、長期エネルギー需給見通しの検討にあたっては、原子力発電の数値化は見送る
べきと考えます。
Ⅲ.2030 年の再生可能エネルギー導入目標は30%以上に設定し、普及の後押しを図るべきです。
①再生可能エネルギーは遠い将来に渡って活用できる唯一の持続可能なエネルギー
・ 再生可能エネルギーは、地球温暖化対策、エネルギー自給率の向上、化石燃料の輸入金額削減、
地域経済の活性化など、次世代に引き継ぐべき様々なメリットがあり、遠い将来に渡って人類が活用
できる持続可能なエネルギーです。
・ 日本は他の先進諸国と比較しても再生可能エネルギーの普及が立ち遅れております。今後は再生
可能エネルギーの拡大をエネルギー政策の最優先課題とし、高い導入目標を定め、その実現のため
に一貫してぶれない政策を求めます。
②温室効果ガスの削減
・ 震災後、火力発電など化石燃料への依存が高まった結果、CO2排出量は増加しており、2013 年度
総排出量は過去最大の13億9,500万トン。再生可能エネルギーは、化石燃料とは異なり、利用時
にCO2 を排出しないため温室効果ガス削減に大きく貢献します。
③エネルギー自給率の向上
・ 日本は先進諸国の中でも一次エネルギー(註1)自給率が6%と最も低い水準で、中東地域への依存
度が高いと言われています。エネルギー自給率が低いと国際情勢の影響を受けやすく、価格の上昇
や十分な量を確保できなくなり、国内経済や市民の生活への影響など大きなリスクを抱えています。
国際情勢の丌透明さを考えると、エネルギー自給率の重要性は増しています。
・ エネルギー自給率の向上のためには「純国産」である再生可能エネルギーの普及が必要です。日本
は資源に乏しい国と言われておりますが、自然が作り出す再生可能エネルギーに視野を広げれば、
日本の海洋面積は世界第6位、地熱エネルギーは世界第3位と豊かな自然に恵まれています。
④固定価格買取制度の維持、改善
・ 2012 年 7 月に導入された固定価格買取制度は、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを急速
に普及させる推進力となったものの、2014 年 9 月、既存電力会社は「再生可能エネルギーの接続
申し込の保留」を発表し、社会全体に大きな波紋を投げかけています。再生可能エネルギー普及の
重要政策である固定価格買取制度を守り、改善することを強く求めます。
⑤地域にある多様な資源活用と地域社会や経済の活性化
・ 長崎県では、風力や潮流、地熱、バイオマスなど、地域の特長を活かしたエネルギー開発が進めら
れています。各地域で再エネ導入を進める団体とも連携を強化しながら、再生可能エネルギーで
地域社会や経済を豊かにすることを目指します。
⑥2030 年の再生可能エネルギー導入割合は尐なくとも30%以上
・ 地球温暖化対策、CO2削減の必要性から、世界における再生可能エネルギー導入量は着実に増
加。総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、ヨーロッパでは30%前後の国が多いと言わ
れています。ドイツ、英国など欧米の先進諸国では 2030 年には再生可能エネルギーで 40%以上の
目標が掲げられています。
・ 環境省の発表では 2030 年総発電量1兆Kwhとした場合、全量買取りの継続を前提に再生可能
エネルギー電力発電量は 3122 億 Kwh~3566 億Kwh、最高で約 35%の再生可能エネルギー導
入が可能との試算が公表されています。
・ 欧米の先進諸国の標準や環境省の試算、ララコープ組合員の声を踏まえると、日本の 2030 年の
再生可能エネルギーの導入割合は尐なくとも30%以上を目標に掲げるべきと考えます。
■2030年の再生可能エネルギーに関するララコープ組合員の意識 *2015年5月実施
・ ララコープ組合員の意識調査によりますと、2030 年の再生可能エネルギーの導入割合につい
て「再エネ30%以上」が全体の50%を占めております。また、再生可能エネルギー普及に
よる電気料金の値上がりについて「受け入れられる」の方向が全体の78%を占めています。
〈1〉2030 年再生可能エネルギー割合について
40%以
上
4.6%
わからな
い
20.3%
50%以
上
21.2%
現状11%
未満
0.8%
20%以
上
29.0%
30%以
上
24.1%
〈2〉再エネ普及による電気料金の値上りについて
Ⅳ.電力システム改革を迅速かつ確実に実行すべきと考えます
①電力システム改革プログラムの確実な実行
・ 電力システム改革の目的である「安定供給の確保」「電気料金の最大限抑制」「需要家の選択肢や
事業者の事業機会の拡大」の実現に向け、発送電分離を確実に行ない、発電部門、小売部門へ新
電力の新規参入を促すことを求めます。 送電線網の利用料金の適正化を図り、新規参入会社も公
平な条件で利用できるようにすべきと考えます。
・ 2016 年春からの電力小売り自由化にあたり、経済産業省では具体的な制度設計が進められており
ます。ここでは「電源表示」の制度化の問題が大きな焦点となっています。消費者が電力会社やサー
ビスメニューなどの情報を容易に得られ、比較検討し、選択ができるようにするために適切な情報公
開を行なうことを強く要望します。
②大規模一極集中型システムから多様分散型システムへ
・ それぞれの地域にあった多様な(地産地消的な)電源によるエネルギーミックスと分散型供給シス
テムが基本であり、そのための電力システムの制度改革や新たなIT技術を活用した次世代送電網
(スマートグリッド)の構築が必要です。再生可能エネルギーの大量導入を可能とし、電力供給を安
定的、効率的に需給調整していく革新的技術であるスマートグリッド(註2)を積極的に取り入れ、さ
らにスマートコミュニテイ(註3)など地域内で賢くマネジメントできる設備が必要です。
Ⅴ.ララコープの事業活動や組合員の暮らしの中での省エネルギーを徹底させ、電力使用量の大幅な
削減に取り組みます。
① 2015 年夏の電力需給見通し
・ 2015 年4月に夏季の電力需給見通しが発表され、全国の原発が全て停止した前提でも安定供給に
最低限必要とされる供給予備率3%以上を確保できる見通しとなり、企業や家庭への節電要請は見
送られました。 この間、企業や家庭の節電や省エネの取組みが定着し電気は足りている状況です。
② 省エネルギーの推進
・ 省エネでエネルギー需要を大幅に減らす取組みは、エネルギー政策の中でも最も重要な課題であ
り、引き続き ITなどの技術の進展や情勢の変化を踏まえた省エネ政策が求められます。住宅・建築
物の省エネにあたっては、断熱性能の向上、効率性の高い建築設備の導入、ITを活用したエネルギ
ー管理システムの導入など、省エネを誘導する政策を求めます。
③ ララコープの事業における省エネルギーの推進
・ ララコープでは原発に頼らないエネルギー社会の実現に向けて2013年10月より生協本部施設を活用した
「ララコープ本部発電所(太陽光)」を稼働させています。 2014 年度ではララコープ2店舗に省エネ設備
機器を導入し、電力使用量を前年比70%~80%まで削減できています。 今後も省エネに関する
設備投資を含め、事業における省エネの取組みを強化します。
④ 組合員のくらしにおける省エネルギーの推進
・ ララコープでは、組合員に「わが家の1日エコライフレポート」を配布し、多くの家庭で省エネの取組み
が進められています。また、長崎県地球温暖化防止活動推進センターなど省エネを推進する他団体
との連携を強め、地域での省エネ活動に積極的に取組んでいます。
・ 家庭用の新エネルギーやスマートメーター等の省エネ機器について組合員への情報提供を行ない、
ふだんの暮らしの中で省エネを徹底し、エネルギー使用量を最小限に減らす取組みを行ないます。
【用語の解説】 *出展:環境用語集より
(註1) 一次エネルギー …石炭や石油、天然ガスなど自然界に存在しているエネルギー源。二次エネルギーは
ガソリン、電気、都市ガスなど一次エネルギー源を使いやすく加工されたもの
(註2) スマートグリッド …電力網にIT技術を導入して情報の通信や制御を行ない、電力利用を最適化する
次世代の賢い電力網のこと
(註3) スマート
…「環境配慮型都市」と呼ばれ、街全体の電力の有効利用や再生可能エネルギーの
コミュニテイ
活用から住民のライフスタイル変革まで、複合的に組み合わせた社会システム
以 上