熊本県の歯科保健~健康長寿の実現に向けて~ 第 3 回〜 - 1 - 熊本県の歯科保健 ~健康長寿の実現に向けて~ 熊本県 健康福祉部健康局 健康づくり推進課 参事 井上秀代 前回は、子どものむし 歯予防について、紹介 させて いただきました が、今回は、歯周病 予防について紹介させていただきます。 第3回 歯周病予防 健やか生活習慣くまもと 県民運動キャラクター 「ASO坊健太くん」 熊本県の歯周病の現状は 進行した歯周病(4mm以上の歯周ポケット ※ 1 を有する状態)に40歳で47.0%、50歳で56.5%、 60歳で63.5%と多くの方がかかっています。 また、年齢が上がるごとに増えています。 ※ 1 歯 周 ポ ケ ッ ト:歯 周 病 が 原 因 で 歯 周 組 織 の 破 壊 が 起 こ る こ と に よ っ て 、歯 と 歯 肉( 歯 ぐ き ) の 間 に で き た 深 い 溝 の こ と で す 。健 康 な 歯 肉 は 、歯 と 歯 肉 の 間 が 約 1~ 2mmほ どの深さですが、歯周病が進行すると溝が深くなります。 歯周疾患健診結果 40歳 14.7 50歳 38.2 11.9 60歳 47.0 31.2 8.1 0% 20% 0.4 56.5 26.9 1.5 63.5 40% 60% 0.1 80% 100% 健康な歯肉 軽い歯肉の炎症 進行した歯周炎 調査対象歯なし 平 成 22年 度 熊 本 県 歯 科 保 健 実 態 調 査 歯周病とは 歯と歯肉の境目( 歯周ポケット)から侵入した細菌が、 歯肉に炎症 を引き起こし、さら には歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯がグラグラと動くようになります。歯周病は、 むし歯と異なり痛みが出ないことが多いため、気づかないうちに進行し、歯が自然に抜け 落ちるほど重症になることがあります。また、歯を失う 80%以上の原因は歯周病とむし歯 によるものです。 国保くまもと Vol.212(2015 年 9 月号) 熊本県の歯科保健~健康長寿の実現に向けて~ 第 3 回〜 - 2 - 歯周病の有無をチェック 自分の歯ぐ きを観察 し て、歯周病 の有無を チ ェックして みましょ う ! 歯周病のセルフチェック票 「 第 3 次熊本県歯科保健医療計画」より抜粋 1 2 3 4 5 6 7 項 目 朝起きたときに口の中がネバネバする 口臭があると言われたことがある 食事の後、歯と歯の間に物がはさまりやすい 歯磨きのとき歯ぐきから出血することがある 歯ぐきがはれることがある ぐらつく歯がある あまり歯磨きをしない 8 たばこをよく吸う 1 9 10 歯科医院には歯が痛いときしか行かない ストレスを感じることが多い 1 1 11 骨密度が低いと言われたことがある 1 合 合計は何点でしたか? 点数 1 1 2 3 4 5 1 計 下の表で結果を確認してみましょう! 0点 健康 今 は歯 周 病 の心 配 はありません。しかし、歯 周 病 のごく初 期 には自 覚 症状が少ないので、歯科医院などで定期的に検査を受けてみましょう。 1~4点 軽度 歯周病にかかっているか、かかりやすい要因を持っています。丁寧な歯 磨きと定期的な歯科健診を受けましょう。 5~9点 中等度 歯周病にかかっている可能性大。歯科医院を受診してみてください。専 門的な指導を受けて歯磨きもしっかり行いましょう。 10点以上 重度 歯周 病がかなり進行 している可 能性 があります。必 ず歯 科 医院を受診 し、進行しないよう毎食後、丁寧に歯を磨いてください。 出 典 :日 本 歯 科 医 師 会 発 行「 歯 周 病 と 糖 尿 病( パ ワ ー ポ イ ン ト に よ る 資 料 集 )」 歯周病の予防方法 1)食べたら歯を丁寧に磨きましょう。(特に、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目) 2)歯間部清掃用具(デンタルフロス、歯間ブラシ)を積極的に使用しましょう。 3)か かりつ け歯科 医 ※ 2 を もち、 定期 的 に歯科健 診や歯石 除去 、正しい 歯磨きの 指導 を受けましょう。 デンタルフロス、歯間ブラシとその使用例 ※2 かかりつけ歯科医:歯の治療、歯に関する相談、定期健診等、歯と口の 健康を日常的にトータルサポートする歯科医師 国保くまもと Vol.212(2015 年 9 月号) 熊本県の歯科保健~健康長寿の実現に向けて~ 第 3 回〜 - 3 - 歯周病と全身の健康の関係 歯周病は、単なる口の 中の病気にとどまりま せん。むし歯や歯周病 で歯を失うと、か む力の低下による胃腸障がい、かみ合わせの悪化による運動能力の低下等、 さまざまな 問題が引き起こされます。また、歯周病が進行すると歯周病 菌が血流に乗って全身に運 ばれ 、 糖尿 病 や 早産 、 循環 器 疾患 等 の 関連 性 、さ ら には 、 誤嚥 性 肺 炎等 の 関連 性 等 が指 摘さ れ てお り 、「 歯 ・ 口腔 の 健康 づ く り」 の 推進 に 向け た 新 たな 取 り組 み が求 め ら れて います。 誤嚥性肺炎 誤嚥(口の中の唾液、食 べ物が気管の中に入り 込むこと)して、口の中 の細菌が肺まで到達し て増殖することで肺炎 を引き起こします。 心内膜炎 心内膜に歯周病菌が 付着して増殖し、内膜 炎を引き起こします。 低体重児出産・早産 歯周病の炎症性物質(サ イトカイン)が羊膜を破 壊したり、プロスタグラ ンジンという物質によ って子宮が収縮したり するために、低体重児や 早産のリスクが高まり ます。そのリスクは、健 康な人の 7 倍にあたると いわれています。 糖尿病 歯周病の炎症性物質 (サイトカイン)が糖 分を細胞内に取り込 む役目をするインス リンに作用して、血糖 値をコントロールす る働きを妨げて、糖尿 病が悪化します。 熊本県の歯周病対策 ・健康増進法に基づく歯周病検診 を実施している市町村数は、 28 市町村(62.2%)と少 ないことから、地域で歯周病検診及び歯科保健指導等を受けることができる体制を進め ています。 ・歯科健診や歯石除去、歯科保健指導等を 定期的に 受けるために、かかりつけ歯科医を 持つことを推進しています。 次回からは、歯と口腔の健康と全身の関係について、医科・歯科連携で取 り組んでいる 糖尿病対策やがん対策について紹介します。 国保くまもと Vol.212(2015 年 9 月号)
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