村上 和宏

事故リスク情報が高速道路利用者の
出発時刻選択に及ぼす影響の分析
愛媛大学大学院 理工学研究科 生産環境工学専攻 交通工学・都市環境計画研究室
村上和宏 倉内慎也 吉井稔雄 白柳洋俊
1 背景・目的
平成26年,四国の高速道路での事故件数は2007件と過去2番目の多さ!!
事故リスク情報の提供
将来の事故防止対策として…
現在の事故防止対策は…
矢羽根板
予定出発時刻17時
高機能舗装
17時出発
(変更なし)
出
発
地
渋
滞
遅発時間
所要時間:2時間
道路料金:1500円
事故リスク:高い
アンケート調査によるSPデータの取得
 3種類の事故リスク情報
内
容
特
徴
安全な選択行動にインパクト
を持つ事故リスク情報を明ら
かにする!!
2時間を潰すまたは到着時間が
遅れるペナルティ
2 研究内容
事
故
リ
ス
ク
例
目
的
地
所要時間:1時間30分
道路料金:1000円
事故リスク:低い
19時出発
(変更あり)
利用する時間帯での事故リスク情報
を提供することで,ドライバーに安全
な出発時刻の選択を促し,事故を削
減することはできないだろうか…?
事故発生リスク
事故遭遇リスク
事故損失リスク
当事者
観測者
事故でお金を失う期待値
以下の選択肢のように,所要時間,料金,事故リスク情報が
与えられたとき,あなたは20時出発(変更なし)と,21時出発
(変更あり)のどちらを選択しますか?
到着
事故現場
事
故
到着
高
松
中
央
あなたが
事故を起こす確率は
“10万回中1回”
あなたが
事故に遭う確率は
“10%”
あなたが一回走行する
あたりに失うお金は
“250円”
対象経路を1回走行した場合に,
対象経路を1回走行した場合に,
事故現場に遭遇する
※事故渋滞に遭遇することも含む
対象経路を1回走行した場合に,
事故によって失う可能性のある
平均損失額
自分が事故を起こす確率
事故を起こすことは稀な事象な • 事故リスク情報としての数値が大き
ため事故リスクの値が小さく
い(0.05程度)
(0.00001程度)危険性を実感し • 事故渋滞を嫌うドライバーの安全経
づらい
路の選択へ影響
松山
出
発
松山
出
発
20時出発(変更なし)
所要時間:2時間
料金:2,500円
あなたが事故に遭う確率は
“3%”
• 高速道路料金と合わせて経路を
比較することが可能
• 事故の危険度合い(人身事故or
物損事故)を考慮できる
高
松
中
央
1. 20時出発(変更なし)
21時出発(変更あり)
所要時間:1時間50分
料金:1,500円
あなたが事故に遭う確率は
“1%”
2. 21時出発(変更あり)
ミックストロジットモデルを用いた分析
RP/SP融合推定法(森川ら,1992)の枠組みで,一個人あたり7個のSPデー
タ(「リスク情報なし」と各リスク情報提供下2パターン×3種類のリスク情報)の
同時出現確率を尤度としている
 2種類の提示方法
数値情報
強調情報
効用関数の誤差項において個人特有の誤差(系列相関)が卓越し,パラメー
タ推定値にバイアスが生じる可能性がある
⇒系列相関を考慮するために,以下の式の効用関数を仮定したミックストロジット
モデルを採用した
情報提示の例
 効用関数の式
U nt,変更しない  1 X nt ,所要時間   2 X nt ,高速道路料金   3 X nt ,事故リスク・数値情報   n ,変更しない  vnt ,変更しない
U nt,変更する  1 X nt ,時間   2 X nt ,高速道路料金   3 X nt ,事故リスク情報・数値情報   4 X nt ,事故リスク情報・強調情報  v
3 推定結果・考察
説明変数
定数項
年齢60歳以上ダミー
年収401万円以上ダミー
変更しない
世帯人数4人以上ダミー
利用頻度年1回ダミー
θ (系列相関項の標準偏差)
高速道路料金(千円)
遅発時間(時間)
早発時間(時間)
数値情報(0.00001~0.0005)
事故発生リスク情報
強調情報(2~10倍)
数値情報(1~10%)
事故遭遇リスク情報
強調情報(3~10倍)
数値情報(25~2000円)(千円)
事故損失リスク情報
強調情報(3~10倍)
サンプル数
自由度調整済み尤度比
遅発/早発時間短縮価値(円/時間)
事故損失額/高速道路料金
松山~高松
(一般)
パラメータ
-1.56 *
-1.28 *
1.21 *
-1.04
1.04 *
3.11 **
-1.42 **
-1.44 **
松山~高松
(業務)
パラメータ
-7.84 **
設問tにおける個人nの当該出発時刻に対する総効用
個人nに共通な誤差項(期待値0,分散θ2に従う正規分布を仮定)
vnt : 設問tにおける個人nの効用の誤差項
(独立で同一なガンベル分布を仮定)
nt ,変更する X : 個人n,設問tにおける説明変数ベクトル
 : 未知パラメータ
U nt :
n :
 いずれのモデルにおいても所要時間の推定値が有意な値をとらず,
しかし,遅発時間/早発時間の推定値は有意
出発時刻選択では所要時間の影響より出発時刻変更の
ペナルティの影響のほうが大きい傾向
5.26 **
-0.360
-1.91 *
-6679 ** -0.0763
0.194 **
0.212
-31.3 **
-36.0 *
0.244 **
0.324 *
-1.23 **
-0.230
0.190 **
0.326
150
90
0.352
0.746
1015
5297
0.87
0.64
*:5%有意,**:1%有意
 業務・一般ドライバーに関わらず,数値情報・強調情報どちらについても,
事故遭遇リスク情報のパラメータ推定値が有意である
一般・業務ドライバーに関わらず,事故遭遇リスク情報には,
安全な出発時刻選択を促す効果が期待される
 一般ドライバーのモデルにおいては,すべての事故リスク情報の
パラメータ推定値が有意である
種類・情報提示方法に関わらず,事故リスク情報を提供することで,
一般ドライバーに安全な出発時刻選択を促す効果が期待される
4 今後の課題
 利用者均衡分析による,事故リスク提供効果の評価
 松山~大阪間について,実際の所要時間と高速道路料金を考慮した利用者均衡分析を行う
 上記の二つに加え,事故リスク情報を考慮し,利用者均衡分析を行い,現状と比較,事故リスク情報の提供効果について評価する