画像拡大と画質について -2014US スクリーニング研修講演会ランチョンセミナーの追加説明- 国際医療福祉大学 佐々木博 平成 26 年 12 月 13 日に行われた US スクリーニング研修講演会ランチョンセミナ ーでの画像拡大と画質に関する説明が不十分でした。当日は、画像をフリーズしてか らのズームか、ライブでのズームか、を特定せずに、「画像を拡大しても受信信号の サンプリングが細かくならないので画質はよくならない」という説明をしましたが、 これはフリーズ後のズームに対するもので、ライブズームの場合は一般に信号のサン プリングが細かくなり画質の向上が期待できます。講演会での説明が不十分だったこ とをお詫びし、ここに、あらためてデータを添えて説明を追加させていただきます。 図 1 は腹部コンベックスプローブによるワイヤーファントム画像です。(a)は視野深 度 16cm、(b)は視野深度 5cm、(c)は視野深度 16cm の画像をフリーズ後 0~5cm にズ ーム、(d)は視野深度 16cm の画像で 0~5cm のライブズームの画像です。いずれの画 像も送信焦点は 2.5cm に固定しています。 図1 腹部コンベックスプローブによるワイヤーファントム画像 図 1 では画像が小さく細部がよく分からないので、深さ 3cm から 3.5cm に配置して あるワイヤー部分(図 1 の画像で黄色の枠で囲った部分)を同じ大きさになるように 拡大して表示したのが次の図 2 です。 図 2 図 1 の 3.5cm 付近のワイヤー部分を同じ大きさに拡大した画像 図 2 の(c) は視野深度 16cm にし、0~5cm でフリーズ後ズームを行った場合の画 像、(d) は同じく視野深度 16cm で 0~5cm をライブズームした場合の画像です。(d) のライブズームの画像を(c)のフリーズ後ズームと比べると、(d)のライブズームの方 がワイヤーの描出がクリアになり、スペックルも細かくクリアになっているのが分か ります。また、この画像を視野深度 5cm の画像(b)と比較すると、殆ど差がありませ ん。これは、このライブズームでは受信信号のサンプリングが視野深度 5cm の場合 と同様に細かくなっているためです。 一方、 (c)のフリーズ後ズーム画像では、ワイヤーの描出、スペックルの描出につ いてもズーム前の画像(a)と大きな差異は認められません。フリーズ後のズームでは表 示のピクセルサイズは細かくなりますが、受信信号のサンプリングは細かくならない ので微細な構造の表現はライブズームほどクリアにはなりません。 図3は飯田市立病院の岡庭信司先生にご提供いただいた視野深度 10cm の腹部画像 で、(a)はフリーズ後に、(b)はライブで各々6.5cm にズームした画像です。図 3 では 良く分かりませんが図 4 の一部を拡大した画像で見ると、フリーズ後ズームに比べて ライブズームの方がスペックルがクリアになっていることが分かります。 図3 腹部のフリーズ後ズーム画像とライブズーム画像の比較 (飯田市立病院 岡庭信司先生ご提供) (a) フリーズ後ズームの一部拡大像 (b) ライブズームの一部拡大像 図 4 図 3 の黄色の枠で囲った部分を拡大した画像 以上を纏めると、一般に、ライブズームでは表示の画素サイズが細かくなるだけで なく受信信号のサンプリングが細かくなる効果があるため微細構造がよりクリアに 描出できるようになりますが、フリーズ後ズームでは表示の画素サイズは細かくなる ものの受信信号のサンプリングは細かくならないので微細な構造の表現はライブズ ームほどクリアにはならない、ということになります。 なお、フリーズ後ズームとライブズームの画像の差は、メーカーや機種、あるいは 使用するプローブや使用条件によって異なることが考えられますので、ご承知おきい ただきたいと思います。 以上
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