講義資料

平成 27 年度 S1S2 ターム
放射線と環境(東大学内向け講義資料)
3
第 3-4 回
天然放射性核種
3.1 分類
(1) 一次放射性核種
元素生成が行われた 5~10×109 年前から存在し、壊変で消滅しきれずに現在まで残存し
ている放射性核種。T!
Ø
> 10! [y]でなければ、現在は検出が困難である。
壊変系列を作る親核種
!"#
Ø
!
U 4.47×10! [y] , !"#U 7.03×10! [y] , !"!Th 1.41×10!" [y]
壊変系列を作らない核種
!"
K 1.27×10! [y] , !"Rb 4.8×10!" [y]
(2) 二次放射性核種
一次放射性核種の子孫。
自発性核分裂(SF)の結果生じる核種も含まれる。
(3) 誘導放射性核種
天然における核反応により作られて、常時供給されているため、半減期が短くても天然
に存在する。
(4) 消滅放射性核種
T! ! が 107~108[y]程度の核種で、地球・隕石などの生成におけるある段階までかつて存
在していた。今でもかつて存在していた痕跡が認められる。
3.2 壊変系列を作る天然放射性核種
(p.14 参照)
!"#
U →
!"#
!"!
Th →
!"#
!"#
U →
!"#
Pb
ウラン系列(4n+2)
Pb
トリウム系列(4n)
Pb
アクチニウム系列(4n+3)
が天然に存在。
!"#
Np →
!"#
Tl
ネプツニウム系列(4n+1)
※誘導放射性核種
!"#
Np (2.14×10! y )
表 1 天 然 物 中 の ウ ラ ン 含 有 量 [1]
28
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U
92
234U
238U
4.468×109y
234mPa
)
%
1.17m
6
.1
α
4.202
β 2.273
(99.84%)
(0
Pa
91
第 3-4 回
2.455×105y
β
0.472
(γ)
234Pa
α
4.775
(γ)
6.70h
Th
90
234Th
24.10d
β
0.195
(γ)
230Th
7.538×104y
α
4.687
(γ)
Ac
89
Ra
88
226Ra
1.600×103y
α 4.784
γ 0.186
Fr
87
Rn
86
At
85
222Rn
3.8235d
218At
α
5.490
(γ)
1.5s
(0.02%)
Po
84
β
α
6.686
218Po
210Po
214Po
(RaF)
138.376d
1.643×10-4
3.10m
(99.98%)
Bi
83
β
(99.979%) 1.508
214Bi
1.542
3.272
19.9m
α
6.002
(0.021%)
Pb
82
214Pb
26.8m
β
0.671
0.728
α
5.455
γ
α
7.687
(γ)
210Pb
(RaD)
22.20y
(1.9×10-6%)
β
4.215
(99+%)
214Bi(RaE)
5.012d
(1.3×10-4%)
Tl
206Tl
4.200m
8.15m
ウラン系列
29
α
206Hg
Hg
206Pb
γ
0.0465
1.30m
80
α
5.304
(γ)
β
0.0166
210Tl
81
β
1.162
β
1.307
(γ)
β
1.534
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放射線と環境(東大学内向け講義資料)
1.405×1010y
Ac
α
4.012
(γ)
89
228Th
232Th
Th
90
第 3-4 回
1.9116y
228Ac
6.15h
β 1.158
1.731
2.069
β 0.0392
Ra
88
α
5.423
γ
0.0844
224Ra
228Ra
3.66d
5.75y
α
5.685
(γ)
Fr
87
Rn
220Rn
86
55.6s
α
6.288
(γ)
At
85
212Po
216Po
Po
84
2.99×10-7s
0.145s
α
6.778
Bi
83
(64.06%)
212Bi
60.55m
β 2.248
γ
0.727
α
8.785
(35.94%)
Pb
212Pb
82
10.64h
β
0.335
0.574
α
6.051
208Tl
Tl
81
3.053m
トリウム系列 30
208Pb
β 1.286
1.519
1.796
平成 27 年度 S1S2 ターム
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U
92
Pa
91
Th
90
第 3-4 回
235U
7.04×108y
α
4.397
γ
0.144
0.186
231Th
25.52h
231Pa
3.276×104y
β
0.206
0.288
0.305
α
5.015
γ
0.300
227Th
18.68d
β
(98.62%) 0.0448
Ac
89
227Ac
21.772y
(1.38%)
Ra
88
α
4.953
223Ra
11.43d
β
1.099
γ
0.0501
(99+%)
Fr
87
223Fr
22.00m
(0.006%)
α
5.462
Rn
86
At
85
3.96s
α
6.819
γ
0.271
0.402
(3%)
56s
(97%)
Po
84
α
5.716
γ
0.154
0.270
219Rn
219At
α
6.208
α
6.038
γ
0.236
215At
1.0×10-4s
α
8.026
(2.3×10– 4%)
215Po
211Po
0.516s
1.781×10-3s
(99+%)
Bi
83
215
222Bi
Rn
β
1.889
7.6m
3.824d
(0.276%)
211Pb
Pb
82
36.1m
α
7.450
γ
0.570
211Bi
α
7.386
2.14m
(99.724%)
β
1.379
0.547
(γ)
α
6.623
γ
0.351
207Tl
Tl
81
207Pb
β 1.427
(γ)
4.77m
アクチニウム系列 31
平成 27 年度 S1S2 ターム
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Np
93
237Np
2.144×106y
α
4.789
U
Pa
Th
90
Ac
89
Ra
88
233U
1.592×105y
92
91
第 3-4 回
233Pa
26.976d
β
0.156
0.232
γ
0.312
α
4.825
(γ)
229Th
7.34×103y
α
4.846
225Ra
14.9d
225Ac
10.0d
β
0.314
0.354
(γ)
α
5.830
(γ)
221Fr
Fr
87
4.9m
α
6.341
(γ)
Rn
86
At
85
217At
3.23×10-2s
α
7.069
Po
84
213Po
4.2×10-6s
(97.91%)
Bi
213Bi
83
45.59m
(2.09%)
β 1.422
0.982
γ
0.441
α
8.377
209Bi
1.9×1019y
β
0.644
α
5.870
Pb
82
209Tl
Tl
81
2.161m
ネプツニウム系列 32
209Pb
3.253h
β 1.827
γ 0.465
1.567
α
3.077
205Tl
平成 27 年度 S1S2 ターム
放射線と環境(東大学内向け講義資料)
第 3-4 回
3.3 系列を作らない天然放射性核種
質量数 A 一定、陽子数 Z 変化
→ E! = aZ ! + bZ + c ± dA!! (p.18 参照)
放射性であることが予想される天然に存在する核種は次のようになる。
(1) 次の同重体の一方 (p20 の図 26 参照)
A=87
A=113
A=115
A=123
A=187
!"
!"Rb
!!"
!"Cd
!!"
!"In
!"#
!"Sb
!"#
!"Re
!"
!"Sn
!!"
!"In
!!"
!"Sn
!"#
!"Te
!"#
!"Cs
(2) 次の同重体の真ん中のもの (p20 の図 25 参照)
A=40
A=50
A=138
A=176
A=180
!"
!"Ar
!"
!!Ti
!"#
!"Ba
!"#
!"Yb
!"#
!"Hf
!"
!"K
!"
!"V
!"#
!"La
!"#
!"Lu
!"#
!"Ta
!"
!"Ca
!"
!"Cr
!"#
!"Ce
!"#
!"Hf
!"#
!"W
:放射性核種であることが確かめられたもの
表 2 系列 をつく らない 一次放 射性核 種 [1]
33
平成 27 年度 S1S2 ターム
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第 3-4 回
3.4 誘導放射性核種
Ø
宇宙線による核反応で生成
Ø
一次放射性核種から放出されたα線、γ線との核反応(例: !Be
!,!
!"
C, !Be
!,!
!
Be)
により生成した中性子で起こる核反応生成。
!"#
!"#
Ø
Pu
:
1948 年
Seaborg
Np
:
1952 年
Peppard
ピッチブレンド中で
〃
自発性核分裂の中性子による核反応で生成
表 3 お も な 地 球 上 に お け る 天 然 誘 導 放 射 性 核 種 [1]
3.5 消滅放射性核種
Ø
半減期 107~108[y]の核種について、その可能性が調べられている。
例:
!"#
I β! , 1.6×10! [y] , !"#U α, 2.4×10! [y] , !""Pa α, 8×10! [y] !"#
Ø
Sm α, 5×10! [y] , !"#Cm α, 1.6×10! [y] , !"#Pb EC, 3×10! [y]
壊変生成物の元素(例: !"#Xe ←
!"#
I, !"#Nd ←
!"#
Sm)の同位体組成を調べ、消滅核種
が壊変して加えられた核種が多くなっているか否か,等
Ø
!"#
Iと !""Puについて、かつて存在していたことを示す痕跡が見出されている。
!"#
I :通則ならば !"#Iの存在率は 6%以下
→実測 26%、差 20%は、 !"#Iの壊変で二次的に増加。
34
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放射線と環境(東大学内向け講義資料)
4
第 3-4 回
放射線と物質との相互作用
放 射 線 の エ ネ ル ギ ー : 数 十 [eV]以 上
これは、
イオン化エネルギー
:
< 15 [eV]
化学結合のエネルギー
:
1 ~ 5 [eV]
と比較して大きい。
→イオン化(電離)や化学結合を切断。“電離放射線”と呼ばれることもある。
γ
X
α
β±
放射線の種類
35
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放射線と環境(東大学内向け講義資料)
第 3-4 回
4.1 相互作用の概要
放射線の吸収プロセス概要
(断面積(σ)は約1M eVの放射線でZ=20の物質に対するオーダー)
放射線
反応相手、場
反応の型
断面積σ(バーン) プロセス名
陽子、
重イオン
軌道電子
原子励起と電離によるエネルギー損失
弾性散乱
非弾性散乱
≧100000
≦10
≦1
イオン化、(原子)励起
原子核散乱
原子核(クーロン)励起
原子核変換 原子核
粒子捕獲、複合核生成
≦0.1
電子、
陽電子、
起動電子
原子励起と電離によるエネルギー損失
低エネルギー陽電子の消滅、2-3光子の生成
≧100
ベータ線
核の電場
粒子はエネルギー損失を伴い散乱、hνの連続放出
≧1
制動放射
軌道電子の場
自由(外側)電子
γ線がエネルギー損失なしに散乱
γ線がエネルギー損失して散乱、電離
≦0.01
コヒーレント散乱
コンプトン効果
結合(内側)電子
核力の場
γ線が完全に吸収、1電子はじき出し
γ線消滅、陽電子ー電子対生成(E(γ)>1.02M eV)
≦10
光電効果
対生成
フォトン
イオン化、(原子)励起
100% 陽電子消滅
γ線がエネルギー損失なしに散乱
原子核
γ線がエネルギー損失して散乱
メスバウアー効果
≦0.001
γ線が原子核に吸収、核変換(E(γ)>5M eV)
中性子
原子核
中性子がエネルギー損失して散乱
中性子捕獲、核変換
バーン:E(-24)cm 2
核励起
光核効果
≦10
≦10000
中性子減速
中性子捕獲
反応率(個/cm 3sec)=フラックス(個/cm 2sec)xσ(cm 2)x数密度(個/cm 3)
表 4 放射 線の吸 収プロ セス [2] 表 6-1 より 作成
Ø
荷電粒子との相互作用の確率は、核反応の確率よりかなり大きい。
中性子は電気的に中性→原子核との衝突が必要。
Ø
飛程(range)
o
電子、陽子、重イオンのような荷電粒子の場合、φ φ! はある距離でゼロになる。
→飛程が明確。
o
中性子やγ線では、最大飛程を特定できな
い。吸収されるまでに、1~数回、吸収体と
相互作用する。
4.2 γ線と物質との相互作用
Ø
γ線と X 線
o
γ線:電磁波。核のエネルギー準位の変化
に伴って放出。
o
X 線:電磁波。核外電子のエネルギー準位の
緩和に伴って放出。γ線よりもエネルギー
の小さいものが多い。
Ø
γ線の波長(λ)、振動数(ν)、エネルギー(E)、
36
図 1 吸 収体 の厚 さ𝒙の 関数 とし て 示し た 相対 透過
率 (φ /φ 0 ( また は R/ R 0 )) 曲線 。C 1 と C 3 は 平均
飛 程。 C 2 と C 4 は 最大 飛程 。 [2]
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第 3-4 回
運動量(p)の関係
E = h𝜈, E Mev = 0.0124/𝜆[Å]
p = h𝜈 c = h 𝜆
Ø
γ線は電荷も静止質量ももたないことより、吸収体の構成原子と長い距離にわたって
相互作用を起こす確率が小さい。ある一定の距離内に生成されたイオン対の数は、同
じエネルギーのβ粒子により生成されたイオン対の数の 1~10%程度。
(例)1[MeV]のγ線は、空気 1cm あたりおよそ 1 個のイオン対を生成するのみ。
→イオン化は事実上、最初に生成した高エネルギーの e-, e+の反応により起こる
二次的なものがほとんど。
Ø
減弱係数(吸収係数)
多数回の衝突によりエネルギーを失う重粒子や電子とは異なり、γ線は 1 回あるいは
数回の相互作用で完全に止まる。
吸収体が薄いとき、γ線の減衰は、次のように表される。
φ = φ! e!!!
µμ : (全)減弱係数(attenuation coefficient)
厚さ𝑥が 𝑚 のとき、µμ は 𝑚 !! (線減弱係数)
𝜇! =
!
!
: 質量減弱係数 cm! /g
µμ = µμコヒーレント散乱 + µμ光電効果 + µμコンプトン散乱 + µμ電子対生成
図2 γ線の相互作用 [2]
37
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放射線と環境(東大学内向け講義資料)
第 3-4 回
図3 鉛に対する光子の質量減弱係数
38
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Ø
第 3-4 回
コヒーレント散乱(レイリー散乱)
γ線は吸収され、ただちに原子からエネルギー一定のまま、別の角度に放出される。
コヒーレント散乱の確率は、吸収体の原子番号の平方とともに増加し、γ線のエネル
ギーとともに減少する。
Ø
光電効果
o
低いエネルギーのγ線は、多くの場合、原子の軌道電子にそのエネルギーを与え
て自らは消失する。この現象を光電効果という。
電子の運動エネルギー E! = h𝜈 − E!
(E! :軌道電子の結合エネルギー=電子の
電離エネルギー)
o
光電効果は一種の共鳴現象で、入射γ線の
エネルギーが電離エネルギーE! に近いとき
(ただし、h𝜈 > E! において)起こりやすい。
o
入射γ線と放出された電子だけの系では、
エネルギー保存と運動量保存を両立させる
ことができないため、原子核が運動量の一
部をもらう必要がある。原子核に強く結び
ついている電子(K 電子)がもっとも光電
図 4 鉛の 光電効 果によ る吸収 係数 [1]
効果によって放出されやすい。
o
入射γ線のエネルギーが K 殻電子の結合エ
ネルギーより小さい場合には、L、M 殻などの電子が放出される。
ミ ニ 問 題 光電効果のあとにどのような電子放出現象があるか 39
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Ø
第 3-4 回
コンプトン効果(散乱)
o
軌道電子の結合エネルギーよりはるかに大きいエネルギーのγ線が電子と衝突する
とγ線のエネルギーの一部を電子に与え、
γ線は残りのエネルギーに相当するエネ
ルギーで散乱される。
o
γ線を粒子と考えて、電子との弾性衝突を
力学的に取り扱うことから導き出される。
𝜆! − 𝜆 =
Ø
ℎ
1 − cos 𝜃 𝑚! 𝑐
𝑚! :電子の静止質量
図 5 コ ン プ ト ン 散 乱 に よ る 散 乱 方 向 と エ ネ ル ギ ー
𝜆! 1
cot φ = ∙
− cot θ
𝜆 sin θ
[1]
電子対生成
o
1.02[MeV](2×𝑚! 𝑐 ! = 2×0.511[eV])以上のγ線は、原子核の近くで陽電子と
(陰)電子を作って自分自身は完全に消滅。
o
高エネルギーのγ線の吸収の主体
o
入射γ線の運動量の一部を受け取り、また電子対の生成には核の近くの電場が重要
な役割をしている。
光子と物質の 3 つの相互作用のそれぞれが主となる領域
40
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放射線と環境(東大学内向け講義資料)
第 3-4 回
4.3 β線と物質との相互作用
静止質量
𝑚! = 9.1091×10!!" [g]
質量
𝑚 = 𝑚!
1− 𝑣 𝑐
!
電荷
𝑒 = 1.602×10!!" [C]
運動エネルギー
T = 𝑚𝑐 ! − 𝑚! 𝑐 !
加速された電子は、
①
核から放射されるβ線
②
γ線による光電効果
③
γ線によるコンプトン散乱
④
γ線による電子対生成
⑤
γ壊変に伴う内部転換電子
⑥
加速器による発生
図 7 β粒 子吸収 におけ る五つ の過程 [2]
などで作られる。
41
平成 27 年度 S1S2 ターム
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Ø
第 3-4 回
イオン化、励起
□加速電子が物質中を通過するとき、原子との電気的な相互作用によって軌道電子のエ
ネルギー準位をあげる(励起)、または、原子から飛び出させて電離(イオン化)
非弾性衝突
□β線がその進路に沿って何個のイオ
表 5 β 線が 気体 中で イ オン 対 1 個 をつ くる ため
ン対を作るかが重要。
消 費す るエ ネル ギ ーε [1]
→β線が単位長さ進行したとき、電
離作用で失うエネルギー(F)に比例。
1 個のイオン対を作るために消費す
るエネルギー ε により、単位長さあ
たり生成するイオン対の数は F ε。
F:制動能(stopping power)
∝ 物質中の電子密度 𝑛 𝑐𝑐 , 電子の速度
Ø
!!
制動放射(bremsstrahlung)
o
電子の速度が光速度に近くなると、原子核の近くの強い電場を通過するとき、制動
を受けて電磁波を放出してエネルギーを消費する。
制動放射によるβ線のエネルギー消費量は、吸収物質の原子番号 Z の 2 乗と、β線
o
のエネルギーE の積に比例する。
o
イオン化で消費するβ線のエネルギーを∆E!"# とすると、制動放射で失うエネルギー
∆E!"# は、次のように表される。
∆E!"# ≅ ∆E!"# o
ZE
E ∶ β線のエネルギー[MeV]
800
β線が外に出ないように遮蔽しても、制動放射による電磁波が外部に出ることがあ
る。
Ø
散乱
¨
β線が物質中を通過するとき、もっとも数多く行われる相互作用。原子核との弾
性衝突。
¨
この場合にはβ線のエネルギーに変化がなく、進行方向が変化する。
¨
1 回の弾性衝突で散乱される角度は一般に小さい。しかし、多数回の衝突では、短
距離でも大きな屈曲をうける。
42
平成 27 年度 S1S2 ターム
放射線と環境(東大学内向け講義資料)
Ø
第 3-4 回
吸収と飛程
¨
一様なエネルギー(線スペクトル)の電子
線の時(図 8)
R ! 実用飛程, g cm!
R!
= 0.526E − 0.094
E :入射電子の運動エネルギー[MeV]
R ! ∶ [g cm! ]
一様なエネルギーの電子線でも、物質中を
通過するとき、一定の深さまで入ると停止
するというわけではない。
エ ネル ギー の電 子 線の 吸収 [1]
→電子と原子核との衝突で失うエネルギ
ーが広い範囲にわたっていることと、散乱によっ
て実際に走った長さと、通過した吸収板の厚さが
異なるため。
o
実際に原子核から放出されたβ線は連続スペク
トルのため、β線の吸収の現象はさらに複雑で
ある。
o
近似的には I = I! e!!"! !!.!"
µμ[g cm! ] ≅ 17.0E!"#
β線の強度が半減する厚さd! [g cm! ]を用いると
!
µμ =
ln2
0.693
= !
d
d!
!
図 8 ア ルミ ニウ ムに よ る一 様な
!
43
平成 27 年度 S1S2 ターム
放射線と環境(東大学内向け講義資料)
o
第 3-4 回
図の吸収曲線で I=0 に外挿した吸収体の厚さ:最大飛程(~β線の最大エネルギー
に近いものが吸収体の中を直線に近い進路で進んだときの到達距離)
実験式
Ø
E!"# > 0.7[𝑀𝑒𝑉]
:
R g cm! = 0.543E!"# − 0.160
0.05 < E!"# < 0.15[𝑀𝑒𝑉]
:
!.!!
R g cm! = 0.667E!"#
陽電子と物質との相互作用
¨
陽電子:ポジトロンともいう。e!
¨
制動能(stopping power)、電離、吸収、飛程については陰電子の場合とほとんど
同じである。
¨
陽電子は陰電子と合体して、物質消滅(annihilation)を行い、2 個の等しいエネル
ギー(𝑚! c ! = 0.511[MeV])の光量子を正反対の方向に出す。消滅放射線、陽電子
消滅という。
¨
陽電子が消滅するまでの平均時間は、通常 10-10[秒]程度。β線が放出されてから電
子が熱平衡に至るまでの時間は 5×10-12[秒]以下であるから、陽電子の消滅は、e+
の運動が熱平衡になってから起こるものと考えられる。
γ
0.511[MeV
]
e
2本
e-
+
正反対の方向にγ線
γ
0.511[MeV
]
¨
PET(positron emission tomography:ポジトロン断層撮影)
陽電子を放出して崩壊する放射性核種(例えば、 !!Na
T!
!
= 2.602 y , β! 90.6% , EC 9.4%
β! 0.545 MeV 90.4 , γ 1.27[MeV]
を用いて非浸襲的に生体機能の断層画像を得る方法。
2 本のγ線を同時計測し、CT(computer tomography:計算機断層像法)の原理
を応用して、陽電子の消滅する位置を示す。
44
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¨
第 3-4 回
ポジトロニウム
物質の種類によっては、陽電子と陰電子が結合して、水素原子と同様な原子“ポ
ジトロニウム”を作る可能性がある。このとき、陰陽電子のスピンが平行のもの
は、逆平行のものより消滅するまでの時間が 103 倍長い。
→ポジトロニウムが安定に存在しうるような媒質中では、できたポジトロニウム
のスピンが逆平行のものは、約 10-10[秒]で消滅し、平行のものは 10-7[秒]程度の寿
命を持つ。
→スピン平行のものを、オルトポジトロニウムという。周辺の分子などとの衝突
や化学反応により電子をやりとりしてパラポジトロニウムや、裸の陽電子になる
ため、周辺の化学環境により寿命が影響される。ポジトロニウムの寿命を測定す
れば、周辺の物質の電子状態や固相での相転移、格子欠陥などの状態を調べる手
がかりを得られる。
(例えば、!!Naでは、1.27[MeV]のγ線をスタート信号として、
消滅γ線をストップ信号とする。)
Ø
チェレンコフ放射
物質中での光の速度c ! は、その物質の屈折率 n! に依存
c ! = c n! 水中では n! = 1.33
0.4[MeV]以上のエネルギーを持つβ粒子は、水中では光よりも速く動く。
→粒子の速度𝑣! が光速度c ! よりも大きいとき、電磁放射線が粒子の運動方向を軸として
円錐状に放出。sin θ = c ! 𝑣!
図 12 β 線の エネ ルギ ー 𝐄𝛃 と 𝒗⁄𝐜の 関係 (𝒗⁄𝐜 = !𝟏 − !
45
𝟎.𝟓𝟏𝟏
𝐄𝛃 !𝟎.𝟓𝟏𝟏
𝟐
! の グラ フ) [1]
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4.4 α線と物質との相互作用
第 3-4 回
(プロトンや重イオンでも同様)
静止質量
𝑚! = 4.002604[amu]
質量
𝑚 = 𝑚!
運動エネルギー
T = 2.08×10!!" 𝑣 !
1− 𝑣 𝑐
!
1 − 𝑣 c ! [MeV]
α線は重いので相対論による補正項 1 − 𝑣 c ! は小さい。
4[MeV]のα線で、0.11%、10[MeV]のα線で 0.27%
Ø
電離
α線と原子との相互作用による電離は、β
線の場合と本質的に同じ。しかし、α線は
電子よりはるかに重いため、1 回の相互作用
で電子に与えるエネルギーは自分自身の持
つエネルギーに比較して非常に小さい。α
線の電離作用で直接加速された電子(δ線)
は、1.8[MeV]のα線で最高 1[keV]、平均
100[eV]程度。
Ø
α線は原子との相互作用で一般にはわずか
のエネルギーしか失わないから、進行方向
はほとんど変わらず物質中を直進する。
Ø
直進するα線の進路に沿って作られるイオ
ン対の数は、α線のエネルギー消費量(制
動能)をイオン化に費やされるエネルギー
(ε)で割ったもの。
(εはβ線の場合とほ
とんど変わらない)
Ø
進路 1[cm]あたり生成するイオン対の数
=比電離度
Ø
比電離度は、β線の場合に比べればかなり
大きい。(~103)
46
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Ø
第 3-4 回
α線が単位長さ移動する間に電離作用で失うエネルギー=制動能(stopping power)F
F=−
dE 2πZ ! e! 𝑚 NρZ
E
4𝑚!
=
ln
+ ln
dx
E 𝑚! A
Z
I! 𝑚
E:α線のエネルギー、𝑚:α線の質量、ρ, A, Z:吸収体の密度、原子量、原子番号
I:平均の電離エネルギー
Ø
α線の飛程
!
R=
!
dE
− dE dx
α線のエネルギー[MeV]
3.0
5.0
10.0
空気[cm]
1.66
3.49
10.6
Al [mg/cm2]
3.81
6.63
17.4
R = R !"# ×
A ρ!"#
∙
A!"# ρ
(近似的に)
4.5 中性子と物質との相互作用
Ø
中性子は電荷がないため物質との相互作用はα線やβ線とはまったく異なる。電荷を
持っている粒子は、電子及び原子核とかなり遠距離から電磁気的相互作用を強く及ぼ
しあうが、電荷のない中性子は原子核に極度に近づいて(衝突)相互作用する。
→原子核との弾性衝突による散乱と原子核反応
Ø
中性子の弾性衝突と中性子の減速
1 回の衝突で失う最大のエネルギーは、4AE!
A+1
!
→軽い元素ほど効果的にエネルギーを失う。
例)
プロトン(H)との衝突では、最高 100%、1 回平均約 70%のエネルギーが中性子から
失われる。このとき、物質中のプロトンは、中性子から大きなエネルギーを受け取る
ため、それ自身が高エネルギーの荷電粒子となって 2 次的な電離を引き起こす
(反跳粒子、recoiled proton)。
Ø
核反応
中性子はエネルギーに応じて、また、相手の原子核に応じて、様々な核反応を引き起
こす。
例)
𝑛, 𝛾 反応
中性子捕獲
𝑛, 𝑓 反応
核分裂反応
𝑛, 2𝑛 反応、他
Ø
𝑛, 𝛾 反応
熱中性子は原子核への捕獲が比較的大きい。
例)
!"
Co + 𝑛 →
!"
Co
(σ~19b)
!"
⬚Co・・・T!⁄!
-
= 5.26[y]
β 壊変、γ(1.33[MeV]、1.17[MeV])
47
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放射化反応、放射化分析:
微量物質の分析や中性子束の測定に用いられる。
Ø
𝑛, 𝑓 反応(核分裂)
!""
¨
U、 !"#U、 !"#Pu・・・熱中性子で核分裂
反応の程度を表す指標:断面積 σ b (b:バーン、10!!" [cm! ])
反応する原子核数[個 cm! ∙ sec]
= σN×φ
¨
σ
N
:[cm2]
φ
:中性子束[個 cm! ∙ sec]
!"#
:相手の原子核の密度[個 cm! ]
中性子
Pu ができる反応
!"#
U (𝑛, 𝛾) !"#U
!! !"#
Np
!! !"#
Pu
48
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4.6 放射線による化学反応
Ø
放射線エネルギーの物質による吸収
¨
放射線が物質にあたって、そのエネルギーが吸収されると、物質中に様々な化学
反応が引き起こされる。放射線の作用によって生ずる反応などの化学変化を調べ
る 学 問 を 放 射 線 化 学 ( radiation chemistry ) と い う 。 一 方 、 放 射 化 学
(radiochemistry)は、放射線を出す側である放射性核種(放射性物質)の性質、
挙動や放射能現象を研究対象とする。
図 15 電 磁放 射線 によ り 固体 中に 生成 し た飛 跡。飛 跡に 沿っ たイ オ ン対 間の 距離 は γ線
約 1000[nm]、高速 電 子で は 500~1000[nm]、低速 電 子お よび α粒 子 では 約 1[nm]で あ
る 。 [2]
¨
放射線化学では、放射線は光や熱と同様、化学反応を誘起するためのエネルギー
源である。光と比べると、エネルギーの大きさが 10~106[eV]と広範囲で多色的、
励起が増殖的、多重的(2 次電離)に起こることなど著しい違いがある。
¨
物質中では、放射線のエネルギーによって、イオンや励起分子(原子)が生ずる。
液相や固相での、それらの微視的な空間分布は、放射線の種類によってかなり異
なる。
¨
放射線の作用により飛び出した電子は、さらに 2 次的な電離を引き起こし、およ
そ 100[eV]以下になった 2 次電子は、最終的には半径 10[Å]程度の球状の領域(ス
プール)内でエネルギーを消費し、数個のイオンや励起分子を作りだす。
¨
β-線の場合には、物質中の入射電子と 2 次電子の飛跡に沿って、このようなスプ
ールが点々と存在する。
¨
α線のように思い荷電粒子では、スプールが飛跡沿いに密接に生ずるため、互い
に融合し、飛跡自体が大きな 1 つの円筒形スプールと考えられる。
¨
γ線のような電磁波では、たとえば、コンプトン散乱で生じた電子の飛跡にβ-線
と同様スプールが生成するが、次の散乱までは一般に大きく隔たっているため、
スプールの生成数は、β-線よりもはるかに少ない。
¨
このように物質中での放射線エネルギーの吸収の様子は、放射線の種類によって
49
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第 3-4 回
も異なる。さらに同種の放射線でもエネルギーによって異なる。→放射線がある
一定の物質を通過するとき、飛跡の単位長さ(1[µμm])あたりに与えるエネルギー
[keV]の大きさを、線エネルギー付与(LET、linear energy transfer)という。
LET:
イオン化の密度を表す目安。電荷の大きい、エネルギー(速度)の小さい粒子
の方が LET が大きい。
表 6 核種 放射線 の水中 におけ る L ET [3]
Ø
放射線によって起こる反応
¨
放射線エネルギーを吸収すると物質中で電離や励起
→さらに引き続いて様々な反応が進む。
¨
AB なる分子からなる物質に放射線があたったとき、まず起こる主な反応(素反応)
一般の放射線化学反応は、これらの素反応が組み合わさった複雑なもの。
50
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¨
第 3-4 回
放射線によるラジカル(遊離基)の生成は重要な素反応によって最終的な生成物
が得られる。例えばエタン C6H6 の放射線分解では次のようになる。
C 2H 6
・CH3 + ・CH3
C 2H 6
・C2H5 + ・H
生じたラジカルは、
¨
・CH3 + ・CH3
C 2H 6
・C2H5 + ・C2H5
C4H10
・C2H5 + ・C2H5
C4H6 + C2H4 (不均化)
(再結合)
水溶液の放射線照射では、溶質に直接放射線があたって起こる化学変化(直接作
用)よりも、溶媒である水分子の放射線分解によって生じるラジカルなどの活性
化学種が溶質と 2 次的な反応(間接反応)を起こすほうがはるかに重要。
¨
水の放射線分解は、酸素がないときは、
H 2O +
H 2O
・H
・OH
e-aq
H2
H 2O *
H 2O 2
で生成した、・H、・OH、H2O2 などが溶質とさらに反応。
酸素があるときには、
・H+O2
HO2・
で、HO2・が生成される。
¨
固体物質に放射線があたったときにおこる変化は、イオン性結晶・絶縁体と金属・
半導体で異なる。
a.
イオン性結晶・絶縁体
放射線によって励起された原子・分子などが低いエネルギー状態に戻る際に、
可視部の光を出すことがある(シンチレーション(蛍光))。また、放射線に
よって原子からたたき出された電子は、結晶内部の欠陥(空孔や不純物)に
一時的にトラップされるが、結晶を加熱するとトラップから飛び出して低い
エネルギー状態に移行する過程で発行する(熱ルミネセンス)。
b.
金属・半導体
放射線のエネルギーによって電子は伝導帯に上がるが、これらの電子の運動
エネルギーは最終的には熱エネルギーに変わる。重粒子の放射線があたると、
原子が格子点から跳ね飛ばされて欠陥ができる。→照射欠陥
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4.7 放射線量の単位
Ø
Ø
照射線量と吸収線量
照射線量(exposure)
:空間のある場所を通過する放射線のエネルギー量
吸収線量(absorbed dose)
:そこで物質に与えられるエネルギー量
照射線量の単位
光子が空気と相互作用する場合 C(クーロン)/kg
Ø
吸収線量の単位:グレイ[Gy]
1[Gy]:物質 1[kg]あたり 1[J]のエネルギー吸収
Ø
同じ吸収線量であっても、放射線の種類、エネルギーによって、放射線の生物学的効
果は異なる。
実効線量、等価線量([Sv] シーベルト、[J/kg])
=放射線荷重係数(以前は物質係数)×吸収線量
実効線量:全身に、 等価線量:組織、臓器に
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4.8 放射線の生体に及ぼす効果
Ø
生体は多数の因子で有機的に支配された複雑な系であり、放射線照射の効果の現れ方
も多様である。
Ø
生体のおよそ 70%が水分であり、生体における放射線の効果は、水の放射線分解によ
る間接作用が大部分である。重要な生体物質の分子が、水の放射線分解生成物の活性
化学種と反応して化学変化を受け、これが細胞や組織・器官、個体へと影響する。
Ø
確定的影響と確率的影響
図 1 6 放射線の人体 への影響 [4 ]
Ø
高等動物の細胞の放射線に対する感受性は、その種類や状態に左右される。増殖過程
にあって細胞分裂・増殖がさかんに起こっている細胞や組織は感受性が大きく、影響
を受けやすい。
53
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図 1 8 日常生活と放 射線 [4 ]
図 19 急性 の放射 線影響 [5]
(注)一般の人の線量限度 1.0mSv/年、原子力発電所周辺の線量目標 0.05mSv/年
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引用文献
1. 木 越 邦 彦 . 放射化学概説. 東京都 : 培風館, 1968.
2. シ ョ パ ン , ほ か . 放射化学. 東京都 : 丸善, 2005.
3. 富 永 健 , 佐 野 博 敏 . 放射化学概論. 東京都 : 東京大学出版会, 1983.
4. 日 本 原 子 力 文 化 振 興 財 団 . 「原子力・エネルギー」図面集. 東京都 : 日本原子力文化
振興財団, 2011.
5. —. 「原子力・エネルギー」図面集(2009). 東京都 : 日本原子力文化振興財団, 2009.
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