OW Bunker - 控訴院も船主らの主張を棄却

Gard Alert
OW Bunker - 控訴院も船主らの主張を棄却
こちらは、英文記事「OW Bunker - Court of Appeal also rejects vessel
owners’ arguments」(2015 年 10 月 23 日付)の和訳です。
使用された燃料油に対する第三者の所有権・先取特
権の不存在が確定していないことが、依然として船
主にとっての大きな懸念事項となっています。
こうした懸念は、バンカー契約が燃料油の所有権の移転を意
図したものであったのかという英国法の解釈から生じてい
るものです。控訴院は、所有権の移転を否定し、バンカー契
約は供給契約であって供給した燃料油の使用許可を船主に付与するものであると判断しました。控訴院
は、使用許可であることが、自動的に第三者からの請求の阻止につながるのかについては言及を避けま
したが、そうした条項の効力については疑問を呈しました。
背景
船主らは、OW Bunker Malta Ltd(OWBM)と ING(OWBM の担保譲受人)に対する仲裁において、OWBM
は燃料油の所有権を移転してはおらず、そのため船主は ING に対する支払い責任を負わないという確認を
求めていました。OWBM は、燃料油供給をデンマークの持株会社の OW Bunker & Trading AS(OWBAS)
に再委託し、同社はそれを Rosneft Marine (UK) Limited (RMUK)に再委託し、さらに、そこから実際に
給油作業を実施する RN-Bunker Ltd に再委託されていました。後に RN-Bunker Ltd に対しては RMUK から
支払いが行われたものの、OWBAS から RMUK、OWBM から OWBAS へは未払いのままとなっています。
ロンドンでの仲裁は、OW Bunkers と ING の望んだとおりの結果となりました。そこで船主らは高等法院
へ上訴したところ、高等法院も仲裁判断を支持する結果となりました。次に船主らは控訴院に持ち込み
ました(この控訴院において、RMUK は、今回のケースについて主張を行う機会が得られないままに重要
な判断が下されるべきではない理由を書面にして提出する許可を得ました)。
評決
ING は、燃料油は、船舶が即時に使用することを前提に掛売条件で供給されたものであると主張しました。
さらに、バンカー取引に関わるすべての当事者が今回のような状況が発生することを想定しており、し
たがって、船主の義務は与信期間の 60 日経過後に OWBM への支払いを行うという単純なことであると
主張し、仲裁廷はこれに同意しました。
高等法院は、所有権留保条項を含むバンカー供給契約と、供給した燃料油の使用許可とが一体化したも
のは、物品販売には該当しないという見方を示しました。高等法院は、OWBM が燃料油の給油を手配す
ることに同意していたとの判断を下し、控訴院もこれを支持しました。
裁定人に提出された同意・推定事実申し立てにおいて、「RMUK は、OWBM と OWBAS はトレーダーであ
ること、かつ、支払い前に燃料油を使用することを船主に許可するという標準 OW 条件に基づいて給油
を行っていることを承知していた」と記されていました。燃料油の使用に関して有効な許可や同意が実
際に RMUK から得られていることが OWBM のバンカー供給の合意条項であったのかという点については、
控訴院は判断しませんでした。
最高裁に上告するか否かについては、いまだ検討中のようです。
© Gard AS
Page 1 of 2
コメント
OW Bunker グループとの間で同様の条件で直接契約していた船主・定期用船者らは、ING に支払いを行う
か法廷闘争を継続するかの判断に直面しています。使用された燃料油に対する第三者の所有権・先取特
権の不存在が確定していないことが、依然として船主にとっての大きな懸念事項となっています。燃料
油の所有権を一度も獲得・移転していないのならば、OWBM の権利の担保譲受人である ING は支払いを受
けることができないという船主の主張は今回も認められませんでした。
さらに、OW Bunker の破綻に伴う損害賠償請求を行う一方で、分配を受け取れる見込みのない実際の供
給業者が船舶を拘束することができるのかという点には判決は答えていません。
英国の裁判所では、複数の競合権利者確定手続きの訴訟が係争中です。ING と実際の供給業者との間で所
有権を直接決定できるように法廷に資金を預託するという船主・用船者らの申請はシンガポールの裁判
所で棄却されました。その一方で、カナダの裁判所が、OW Bunker と ING には金融取引に係る利益を受け
る権利のみを認め、実際の供給業者が支払いを受けるべきであると結論付けたことは注目に値します。
(海事先取特権を有する)米国の実際の供給業者も、OW Bunker 各企業に掛売条件で販売しておきなが
ら、OW Bunker の破綻を受けて、損害賠償請求ではなく、船舶に対する強制執行を求めたことについて、
ニューヨークの裁判所から批判を受けました。
最後に、米国とカナダの裁判所が採用したアプローチは、OW Bunker の破綻に伴って生じる影響につい
てバランスの取れた対応を探るために、主要当事者(船主、用船者、実際の供給業者、OW Bunker、ING)
を一つの法廷にまとめるというものでした。これは、これまでに英国とシンガポールの裁判所が行って
ききた個別的対応に比べて、問題の解決策を模索する上ではるかに大きな柔軟性のある工夫されたアプ
ローチといえるでしょう。
本情報は一般的な情報提供のみを目的としています。発行時において提供する情報の正確性および品質の保証には細心の注意を払ってい
ますが、Gard は本情報に依拠することによって生じるいかなる種類の損失または損害に対して一切の責任を負いません。
本情報は日本のメンバー、クライアントおよびその他の利害関係者に対するサービスの一環として、ガードジャパン株式会社により英文
から和文に翻訳されております。翻訳の正確性については十分な注意をしておりますが、翻訳された和文は参考上のものであり、すべて
の点において原文である英文の完全な翻訳であることを証するものではありません。したがって、ガードジャパン株式会社は、原文との
内容の不一致については、一切責任を負いません。翻訳文についてご不明な点などありましたらガードジャパン株式会社までご連絡くだ
さい。
© Gard AS
Page 2 of 2