別添資料 - 日本銀行金融研究所

2-6. TC68年次総会の概要
(SC2、SC7、ISO 20022RMGを含む)
 今次会合での主な話題は、以下のとおり。
① 中央銀行への報告手段や24時間・365日稼動(24/7)即時振
込システムといった分野を含め、ISO 20022の利用がさらなる
広がりを見せつつある。
② World Wide Web Consortium(W3C)がWebを用いた資金
決済に関する検討を開始。
③ ①、②を踏まえ、TC68にとって重要な利害関係者となりうる主
体との意見交換の機会を探ることとなった。
④ SC7の下にデジタル通貨に関するスタディ・グループが設置さ
れることとなった。
2015年6月17日 ISO/TC68 国内委員会
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2-6. TC68年次総会の概要
(SC2、SC7、ISO 20022RMGを含む)
 本日は、以下の題目についてご説明。
(1) ISO 20022(金融業務分野の通信メッセージ規格)関連
-
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
中銀への報告手段としてのISO 20022の活用
即時リテール決済に関するWGの設置
BAHに関する議論
RMGメンバー資格の拡大等
World Wide Web Consortium(W3C)とのリエゾン構築
TC68の今後の戦略に関する検討
デジタル通貨に関するスタディ・グループ(SG)の設立
通貨・ファンドコード(ISO 4217)
企業識別コード:BIC(ISO 9362)
法人形態(Entity Legal Forms <ELF>)の規格化
TC68関連ポスト
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(1) ISO 20022関連
■ 中銀への報告手段としてのISO 20022の活用①
 会合に先立ち、以下のBJ※案がRMGに提出されていた。
※ Business Justification(BJ):ISO 20022メッセージを新規開発する際の手続き(書式)。
① ECB、仏・西・独の各中央銀行による共同提案
― 金融市場統計報告規制に基づき、欧州中央銀行制度は、2016年4
月1日より、金融機関から短期金融市場取引データを収集予定。同
収集を行うためのISO 20022メッセージの開発を提案。
② ロシアのCorporate Market Practice Groupによる提案
― ロシアでは、規制により、居住者⇔非居住者間のクロスボーダー取
引(全通貨が対象)のロシア中央銀行への報告が義務付けられてい
る。同報告を行うためのISO 20022メッセージの開発を提案。
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(1) ISO 20022関連
■ 中銀への報告手段としてのISO 20022の活用 ②
 これらのBJ提案を踏まえ、RMG会合では、メッセージ開発のた
めに評価を行う場となる標準評価グループ(SEG※1)として、
regulatory reportingに関するSEG設立の是非を議論。
※1 Standards Evaluation Group
 その結果、既存の枠組み※2で対応可能であることから、新SEG
設立は行わないこととなった(RMG決議 15/321)。
※2 Payments、Securities、Trade Services、Foreign Exchange、Cards & Related Retail
Financial Servicesの5つのSEG。
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(1) ISO 20022関連
■ 即時リテール決済に関するWGの設置 ①
(英国の動向)
 英国の24/7即時振込システム“Faster Payments Service”では、
ISO 8583ベースの電文フォーマット※1を利用。
※1 カード決済のオーソリゼーション等に利用されている。
 英国は、これに代わるISO 20022メッセージを開発するため、
2010年にRMGに対してBJ提案を行っていた。
 しかし、ここにきて24/7即時振込システムを構築する動きが他
国でも広がってきたこと※2を踏まえ、英国内では「グローバルに
活用できるメッセージを、英国以外の主体と共同で開発すべき」
との声が高まっていた。
※2 スウェーデン、シンガポール等では既に24/7即時振込システムが稼動しているほか、米
国、豪州、ユーロ圏、カナダ等でも同様のシステム構築に向けた検討を行っている。
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(1) ISO 20022関連
■ 即時リテール決済に関するWGの設置 ②
(会合での議論)
 こうした中、英国から、即時リテール決済で利用するISO
20022メッセージに関する検討を行うWG(ad-hoc real-time
payments working group)の設置が提案され、承認された
(RMG決議 15/324)。
―― 同WGでは、各国の24/7即時振込システムやカード決済など、endto-endでデータをやり取りする即時リテール決済に用いるISO 20022
メッセージの共通化を図る予定。
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(1) ISO 20022関連
■ BAH※1に関する議論 ①
※1 Business Application Header: ISO 20022メッセージのHeader部を標準化したもの。
 RMG傘下の技術支援グループ(TSG※2)は、メッセージがISO
20022準拠(“ISO 20022 compliant”)であるための要件につい
て、SWIFT(RA※3)とともに検討を行っている。
※2 Technical Support Group:ISO 20022に関する技術面での課題・対応について検討する
グループ。
※3 Registration Authority: ISO 20022の登録機関。
 RMG会合では、TSGから、BAHの利用を要件に含めるかが論
点の一つとなっている旨の報告がなされた。
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(1) ISO 20022関連
■ BAHに関する議論 ②
(背景)
 BAHの利用を巡っては、2011年にBAH Subgroup(当時)で検
討した結果、①新メッセージ開発はBAHの利用を意識するこ
とを原則としたうえで、②SEG毎に決定した方針に沿って対
応すること、③BAHの利用有無はユーザー・コミュニティーの
裁量に委ねることとされていた(RMG決議 11/185)。

②の方針がSEG毎に異なっていたため、BAHの利用を前提
に開発・メンテナンスが行われてきた証券系メッセージには
定義書(MDR※)でBAHの利用が必須とされているものがあ
る一方、他のメッセージにはBAHの利用が任意または禁止さ
れているものがあるなど、扱いが異なる状況が生じている。
※ Message Definition Report
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(1) ISO 20022関連
■ BAHに関する議論 ③
(TSGでの議論の状況)
 スイスは「定義書で必須とされているものについては、BAHの利
用をISO 20022準拠の要件に含めるべき」と主張。
 これに対して、日本は、以下の理由から「BAHの利用をISO
20022準拠の要件に含めるべきではない」と反対の立場を取っ
ている。
① 2011年に「BAHの利用は任意」とのRMG決議が行われている。
② 様々なメッセージを扱っているインフラにおいて一部のISO 20022メッセー
ジのためにヘッダーをBAHに固定することは現実的ではない場合もあり
得る。
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(1) ISO 20022関連
■ BAHに関する議論 ④
 RMG会合では、TSGに対して、①2011年のBAH Subgroup
での議論の詳細を調査したうえで、②ISO 20022準拠の要件
にBAH利用をどのような形で含めるか検討すべき旨、指示さ
れた(RMG決議15/325、326)。
―― RMGメンバー間でも、BAHの扱いに対する考えは区々。もっとも、
メッセージの効率化・国際標準化の観点から、大きな流れとして、今
後BAHの利用を拡大していくことが望ましいというのが共通の理解。
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(1) ISO 20022関連
■ RMGメンバー資格の拡大等
 前回のRMG会合(昨年11月)で、①RMGメンバーの資格拡大、②
“Livelink”※1利用取り止め、を検討する旨の決議がなされていた。
※1 メンバー間の情報共有に利用しているISOのシステム
 今回の会合では、その具体策を決定(RMG決議 15/317)。
① RMGのメンバー資格を、現行(TC68のPメンバーとカテゴリーAリエゾンに限
定)から、以下の基準を満たすあらゆる主体に拡大。
a) ISO 20022のユーザー・コミュニティー、または標準化に関して正当な関心・実績を持つ関係
者を代表する組織であること。
b) 代表権や意思決定に関するガバナンスが機能していること。
c) ISO 20022標準に対する業界の考え方に相応しいこと。
d) RMGやその下部組織の活動への積極的な参加をコミットすること。
e) 非営利団体または同様の非商業的組織であることが望ましい。
f) ISO 20022に関して地域的またはグローバルな視点を持っていること。
② “Livelink”に代えて、“Sharepoint”※2を利用。
※2 Microsoftが提供する、ウェブ・ブラウザをベースとした共同作業や文書管理を行うプラット
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フォーム。
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(2) W3Cとのリエゾン構築
 World Wide Web Consortium (W3C※1)は、 Web を用いた資金決
済に関する検討を行うグループを立ち上げ、TC68/SC7に対して、
カテゴリーDのリエゾン構築※2を提案(TC68/SC7での投票を経て
4月に承認)。
※1 World Wide Webで使用される各種技術の標準化を推進するために設立された非営利の
標準化団体であり、HTMLやXMLなど多数の標準化を行っている。
※2 モバイル金融サービスおよびカード標準が対象。
 今次会合では、W3Cのこうした動きがISO標準との競合に繋がら
ないか懸念する声がメンバーから聞かれた。これに対しTC68議
長は、「W3Cは、既存のISO標準を活用(leverage)することを考え
ており、それらと重複する別標準を新たに作ることを意図していな
い」と説明。
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(3)TC68の今後の戦略に関する検討
■ 新たな利害関係者に関する検討
 中銀への報告にISO 20022を活用する動きや、W3Cで資金決済
標準化に関する検討が始まる中、TC68にとって新たに重要な
利害関係者となりうる主体との関与について検討する組織(adhoc group on industry engagement opportunities)が設置される
こととなった(TC68決議15/385)。
■ Standards Advisory Group(SAG)の役割拡大
 ISO 17442(LEI※)の国際的な普及に向けて、課題評価を行っ
てきたStandards Advisory Group(SAG)の役割を拡大し、TC68
関連の国際規格全般について、金融当局・中銀とのコンタクト・
ポイントとすることとされた(TC68決議15/384)。
※ Legal Entity Identifier:金融取引主体(法人、ファンド等)を識別する英数字20桁コード。
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(3) TC68の今後の戦略に関する検討
■ 戦略的な検討を行うためのスタディ・グループの設置
 TC68の活動・組織について戦略的な検討を行うスタディ・グ
ループが設置されることとなった(TC68決議 15/395)。
―― 4月の投票でKarla McKenna TC68議長の任期延長(~2018年12月)
が決議された。しかし、McKennaは2007年1月から既に8年以上議長を
務めている※ことから、TC68では戦略の見直しや新議長候補の検討を
行うべきとの意識が高まっていた。
※なお、昨年のISO Directives改正により、「TCおよびSCの議長の任期は原則として
最大9年」とされている。ただし、特別な理由がある場合には、議長の任期が9年を超
えることが例外的に認められる。
―― TC68の戦略的検討は、ad-hoc group on industry engagement
opportunities (前述)とも連携を図りながら進められることとなる。
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(4)デジタル通貨に関するSGの設立
■ スタディ・グループの概要
 デジタル通貨(digital-currencies)※1に関するスタディ・グループ
(SG)設立が4月の投票で承認された旨、報告がなされた※2。
※1 このデジタル通貨については、その通貨が中銀・金融当局から承認されているか否かにか
かわらず、同グループでの検討対象とされる(Bitcoin等も対象に含まれる)。
※2 日本からは、国立情報学研究所・岡田仁志准教授がスタディ・グループに参加。
―― SGではレポート作成を行い、6か月後を目途にドラフトをSC7に提出す
る予定。レポートでは、①デジタル通貨のビジネスニーズ、その実現性や
影響を評価したうえで、② ISO 4217(通貨コード)のスコープにデジタル
通貨を含める規格改訂提案を行うことが想定されている。
―― SG設立提案書では、「ISOの立場は、デジタル通貨の利用を支持する
ことではなく、通貨識別や標準メッセージ(例.ISO 20022)の規格を利用
していくことの必要性を認識し、デジタル通貨を利用した金融取引のSTP
化を可能とすること」とされている。
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(4)デジタル通貨に関するSGの設立
■ 会合での議論
(ISO 4217規格改訂について)
 ビジネスニーズや影響の評価を行う前の段階で、デジタル通
貨を含める形でのISO 4217の改訂が想定されていることにつ
いて、日本から疑問を呈した。
 これに対し、TC68議長からは「検討の結果、ISO 4217の改訂
は不要との結論に至ることもあり得る。」との説明があった。
(SGの名称変更について)
 当初、SG名称は“Study Group on Crypto-Currencies”とされ
ていた。しかし、英国から、「 SGの名称を、SGの提案書のス
コープ用いられている“digital currency”との表現に合わせるべ
き」との提案がなされ、“Study Group on Digital Currencies”に
名称が変更された(SC7決議 15/150)。
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(5) 通貨・ファンドコード(ISO 4217)
■ これまでの経緯
 数字3桁コードの900番台(貴金属・ファンド用のコード)が将来
不足する可能性に対処するため、001~899番で未だ利用され
ていない空番号の一定数を同コードとして利用できるよう、ISO
中央事務局から国連統計局に対して要請。
 これに対し、国連統計局は、以下の条件の下で要請を受け入
れるとの回答(2014年9月)。
① 国連統計局が定める国コードの最新版により空番号を確認する。
② 利用するコードはできる限り国コードに近いものとする。
③ ISO側で利用するコードを国連統計局に連絡することで同局が管理す
る国コードとの重複を回避する。
④ ISO側で利用するコードは通貨コードとして使用するのみであり国連が
管理する国コードには含めない。
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(5) 通貨・ファンドコード(ISO 4217)
■ 今後の対応方針
 今次会合では、国連統計局からの回答を踏まえた今後の対
応方針として以下が承認された(SC7決議 15/147)。
(1) 当規格の改訂を担当するWG12に対し、現行の取扱い(900~999番の
幅での割り振り)から001~999番の幅でコードが割り振れるよう、将来的
な規格改訂を検討するように求める。
(2) WG12に対し、001~899番の範囲でコードを割り振る場合、国連統計局
が管理する国コードとの重複を防ぐため同局との情報交換に努める条
項を含めるよう、メンテナンスガイドラインを修正することを求める。
(3) デジタル通貨に関するSGにおける検討の結果、デジタル通貨をISO
4217に含める必要がないと判断された場合、(1)、(2)の検討結果は次
回の規格定例見直し時※に反映する。
※ 2020年頃を予定。
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(6) 企業識別コード:BIC(ISO 9362)
■ 新しいウェブサイトの立ち上げ
 今次会合では、ISO 9362(2014年版)が2015年1月から実施※1
されていることに加え、新たなウェブサイトwww.iso9362.orgを立
ち上げ、コードと紐付く企業情報※2を管理するツールを提供する
予定である旨、報告がなされた。
※1 BIC1(SWIFT非接続先について、8桁目コードを“1”とするルール)は、2018年11月までの
経過措置。
※2 企業情報の更新は、BICを取得した企業が責任を持って行うことが求められている。
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■ 概要
(7)法人形態の規格化
 TC68の下に設置されたWG8では、法人形態(Entity Legal
Form:ELF)に関する国際規格の開発作業を進めている。
―― ISO 17442では、LEI(英数字20桁のコード)に、当該LEIを保有する
主体についての参照情報を紐付けて管理することとされている。
―― 本作業は、同参照情報での利用を主な目的として、各国の法人形態
を定義・コード化し、その管理手続を含めて規格化を行うもの。
■会合での報告内容
 WG8での作業進捗について、以下の報告が行われた。
① WG参加国のLEI付番機関が管理するLEIの保有主体の情報を分析中。
② 国コードと紐付け、各国の法人形態の名称(日本の場合:株式会社など)
をそのままコード・リストの項目として利用する方向で議論が進んでいる。
③ 今秋にCD投票にかけ、そこで寄せられたコメントを踏まえた修正を加え
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たうえで、早ければ2016年上半期にもDIS投票にかける。
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(8) TC68関連ポスト

TC68議長の任期延長(前述)のほか、SC・RMG関連の議長等に
ついて、今次会合では以下の決議がなされた。

SC2議長: Mark Sutton(英国)→Kim Wagner(米国)(TC68決議 15/391)。

SC7議長: Patrice Hertzog(仏国)の任期を3年間延長(TC68決議 15/393)。

Payments SEGの副主査: Bob Blair(米国)→Harri Rantanen(フィンランド)
(RMG決議 15/318)。

Securities SEGの主査: Kevin Wooldridge(英国)→Axelle Wurmser(仏国)
(RMG決議 15/319)。
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