第一章:発音の基礎知識

第一章:発音の基礎知識
全ての外国語には日本語にはない発音があり、その言語にはない発音が日本語に
あります。もちろん、ベトナム語も例外ではありません。
私たち日本人は、「ベトナム語の発音は難しい」と言っていますが、ベトナム人も含め
他の国の人から見ると、「そんな発音できません」という日本語音もたくさんあるので
す。
例えば。
中国語話者は、「大学」「退学」など、濁音と清音の区別がうまくできません。
お隣韓国の人は、「韓国」→「監獄」、「わたし」→「わだし」というように発音してしまう。
その他、「おじさん」と「おじいさん」が区別できない人、「うし」と「うち」の違いがわから
ない人は、世界にゴマンといます。
「日本人は語学音痴」という思い込みが私たちにはありますが、決してそんなことはあ
りません(笑)。
本当に難しい発音
さて、発音で本当にやっかいなのは、「日本語にない音」ではありません。日本語には
ない音の場合、「あ、これは全然違う音だ」と認識できるので、かえって練習しやすい
のです。
本当の問題は、「日本語にもあるけど、区別しない音」。普段から区別していないので、
何度聞いても違いがわからないのです。相手のベトナム人は、一生懸命発音の違い
を繰り返してくれているのに、こちらは何が違うのかすらわからない…。あなたもこん
な経験、ありませんか。
ちょっと例題をだしてみましょう。
クイズ:次の「ん」の発音の違いを説明してください。
1.「よくかんで食べましょう」
2.「かんがえればわかる」
3.「息子のことが心配でしんぱいで…」
この3つの「ん」は、音声学では違う音として区別されます。違い、わかりますか?
答えは…
「よくかんで食べましょう」の「ん」は“n”。唇は少し開いています。
「かんがえればわかる」の「ん」は“ng”。後ろの「が」の音につられて、鼻に息が通って
いますね。
「息子のことが心配でしんぱいで…」の「ん」は“m”。後ろの「ぱ」につなげるために、自
然に唇を閉じて発音しているはずです。
「新聞(しんぶん)」も発音記号で書くと【shimbun】であり、決して同じ音・【Shinbun】で
はないのです。同じように「ん」と表記しても、音声学的に厳密にみると、みんな違う音
なわけですね。
私たち日本人が「違う」と意識しない音も、ベトナム人にとってははっきりと「違う音」。
こういう例はたくさんあります。
この「南部ベトナム語発音講座」では、南部ベトナム語の発音を、「日本人のために、
できるだけわかりやすく」解説、練習していきます。