微動観測から推定される加賀平野南部及び邑知潟 平野の地下速度構造

微動観測から推定される加賀平野南部及び邑知潟
平野の地下速度構造
#浅野公之・岩田知孝(京大防災研)・宮腰研(地盤研)・大堀道広(福
井大)
Underground Velocity Structure Model of the Kaga Plain
and Ochigata Plain from Microtremor Observation
#Kimiyuki Asano, Tomotaka Iwata (DPRI, Kyoto Univ.), Ken
Miyakoshi (GRI), Michihiro Ohori (Univ. Fukui)
石川県には,森本-富樫断層帯,邑知潟断層帯といった主要活断層帯が都
市近傍に存在しており,それらの長期評価や強震動評価も行われてきている.
しかしながら,加賀平野北部(金沢平野)では,微動アレイ探査等が行われ
ており,地震基盤までのS波速度構造情報が得られている(例えば,神野・
他, 2003)ものの,加賀平野南部や邑知潟平野においてはそのような既往情
報がなく,強震動を適切に評価するためには,これら地域の地下速度構造モ
デルの検証,改良が必要である.我々は,加賀平野南部及び邑知潟平野にお
いて,新たな微動アレイ観測ならびに単点微動観測を実施した.加賀平野南
部の小松,美川及び邑知潟平野の羽咋,七尾において,微動アレイ観測を行
い,詳細なS波速度構造を求め,単点微動観測から得られたH/Vスペクトル
比の空間分布情報をもとに平野内の三次元モデルへと拡張していく方針であ
る.観測にはいずれも速度計LE-3D/5s及び収録装置LS-8800を使用した。
微動アレイ観測では,SPAC法を用いた解析により,約0.2Hz~約1.5Hzの範囲
(具体的には地点によって異なる)で位相速度の分散曲線を求め,これを
Rayleigh波基 本モードの位 相速 度と仮 定し た.美 川では,金 沢平 野におけ る神
野・他(2003)の既存情報に比較的近い結果が得られたものの,小松では美川に
比べ,対象周波数範囲での位相速度が全体的に速く,S波速度構造の推定結果
からも基盤深度が相対的に浅いことが明らかとなった.邑知潟平野においても,羽
咋が七尾に比べ,相対的に位相速度が遅く,基盤深度が深いという結果が得られ
た.
三成分単点微動観測からH/Vスペクトル比の卓越周期を求め,その空間分布を
検討した(図1).これらは概ね微動アレイ観測と整合的な結果が得られている.
邑知潟平野(図1右)に関しては,七尾から羽咋に向かって,徐々に卓越周期が
長くなる傾向がみられ,堆積層がなだらかに厚くなっていることが示唆される.邑
知潟平野は南北を新第三系の丘陵で挟まれた地溝になっており,卓越周期の変
化はこの地溝の走向に沿った深さ変化を見ている.
加賀平野南部(図1左)においては,手取川付近を境に南北でのH/Vスペクトル
比の卓越周期の急変が見られた.手取川以北の地域では約4~5秒であるのに対
し,以南の小松市付近では約1秒前後と短い卓越周期をもつ.絈野・他(1992)な
どの地質学的な研究によれば,手取川以北では森本-富樫断層帯の活動に伴う
平野部の沈降によって,第四系の堆積岩が厚く堆積しているのに対し,手取川以
南では加賀山地を構成する新第三系の火山岩の上面が平野下でも比較的浅いこ
とが指摘されている.H/Vの卓越周期の空間変化はこのような地下構造の違いを
反映しているものと考えられる.
これらの調査結果を基に,既存のJ-SHIS速度構造モデルとの比較も進めており
(浅野・他, 2014, 14JEES投稿中),今後,これらの成果を三次元地下構造モデル
の更新につなげていく予定である.
【謝辞】文部科学省委託研究「日本海地震・津波調査プロジェクト」(代表機関:東
京大学地震研究所)の一部として実施しました.現地での微動観測は,一般財団
法人地域地盤環境研究所,有限会社ジオアナリシス研究所,金沢大学理工学域
環境デザイン学類建設防災工学研究室の皆様のご協力の下に行われました.
図1 加賀平野南部(左)及び邑知潟平野(右)におけるH/V卓越周期分布