三田評論、そして三人閑談「『サザエさん』徹底分析」

三田評論、そして三人閑談「『サザエさん』徹底分析」
「サザエさん」は、半世紀以上にわたって、複数の世代をまたぎ引き継がれ、多くの人々
に愛されてきました。その秘密を探り、サザエさん一家のように、いつまでも若さと元気を
保持できるよう、三田評論 2014 年 4 月号三人閑談「『サザエさん』徹底分析」をご紹介しま
す。
今回ご紹介する三人閑談の出席者は、皆さん昭和生まれの方ですが、最年長の方と、最も
若い方では 40 歳のひらきがあります。三人の中で最も若い方は、SFC 出身で、2010 年から
テレビ局で、テレビアニメ版「サザエさん」の企画・制作に携わるプロデューサー、もうお
一人は、三人の中で、中間の年代に当たる方ですが、慶應医学部精神・神経科学教室に所属
し、信濃町で一般医療従事者向けに「『サザエさん』に見る戦後社会と精神医学」という公
開講座を開講されたこともある医師です。このお二人は新聞連載漫画の「サザエさん」では
なく、アニメ版の「サザエさん」で育った年代です。そして最年長の方は、三田で日本の言
語文化の教育・研究に携わっていた先生(現在、大学名誉教授)で、東京サザエさん学会の
創設者・代表で、1992 年に刊行した「磯野家の謎」はベストセラーになりました。今回の
三人閑談の実質的な司会役も兼ねられていました。
先ず、司会役の先生から、「今年はテレビアニメーション版『サザエさん』が始まって四
十五周年ということで、いろいろと話題になっていますが、「サザエさん」は元来、新聞の
連載漫画でした。1946 年に地方紙連載が始まり、全国紙に移って、休載を挟みながらも長
く続き、終わったのが 1974 年 2 月、ちょうど、四十年前です。
・・・テレビアニメ版はその
後もずっと続いていて、その意味で戦争直後から今日に至るまで、サザエさんは生き続けて
いるといえます。・・・」という紹介から始まりました。
風月会会員の皆さんや、私達ホームページ担当役員の年代にあてはめてみると、新聞連載
が私達の小学校入学前後から 30 歳頃まで続いたことになりますが、ご記憶いかがでしょう
か。その後も、テレビアニメ版の放映があり、多分、日本のあちこちで、4 世代にわたって
親しまれているご家族も多いのではないでしょうか。(現在のテレビアニメ版は毎週日曜よ
るフジテレビで 6 時 30 分~7 時まで放映。午後 6 時からの「ちびまる子ちゃん」に続いて
放映されています)。
大分、昔のことで、忘れかけている方も多いかと思いますが、念のため、サザエさん一家
(磯野・フグ田家)のプロフィールについて復習させて頂きます。主役は、“はやのみこみ
のあわてもの”愉快な「サザエさん」ですが、個性があり過ぎて、サザエさん中心のストー
リイを作ることは難しいそうです。絵(漫画)にはなるけど、主役になれない慎み深い?サ
ザエさんです。その分周囲(家族)が気を遣い(?)、いろいろな話題を提供してくれていま
す。サービス精神に富むお父さんで、54 歳の「磯野波平さん」、お母さんは磯野家を大きな
心で支えている舟のような「フネさん」。旧制高等女学校出身、控え目な方です。
それにまだまだ主役が多いですが、28 歳の会社員で、神経質な「フグ田マスオさん」で
す。それにいつも「主役に、引立役に」大忙しで、スタンバイしている「カツオ君」、
「タラち
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ゃん」です。
三人閑談のストーリイの方のご紹介は大幅に割愛させて頂きますが、サザエさん一家の
『病』の話については、波平さんや、サザエさんを中心に、精神医学的に、いろいろ興味深
い分析が試みられていました。また、アニメ版「サザエさん」では視聴者が求める『理想の
家庭』、
「日本の家庭像」が映し出されていると書かれており、今では殆ど見ることもない「永
遠の黒電話」や「ちゃぶ台」を使い続けている理由なども、興味深く記されていました。「サ
ザエさん」は、ある時期の日本の標準的家庭の生活習慣や年中行事、人生のプロセス・機微
など盛り込まれ、表現されており、留学生向け「日本語と日本文化」の講座の教材に大変役立
ったとも話されていました。
今では、「サザエさん」テーマソングにあるような「お魚くわえたドラ猫 追っかけて は
だしでかけてく 陽気なサザエさん」というようなシーンは、目に浮かべることも難しい時
代に変わってきていますが、「サザエさん」の人気は続いており、また「サザエさん」が受
け入れられないような日本であってほしくないというのが、「サザエさん」ファンでもある
「三人閑談」出席者共通の願いであったような気がします。皆さんはいかがでしょうか。
最後に、「三田評論」の記事からは少し脱線しますが、作者長谷川町子さん(以下、敬称
略)と、「サザエさん」の成り立ちについて少し補足させて頂きます(インターネットで、
検索し、“『サザエさん』が新聞で連載開始された日”を参照させて頂きました)。長谷川町
子は、1920 (大正 9) 年生まれ、疎開先の福岡で所属する新聞社から連載漫画を頼まれ、地
方紙(福岡の新聞「夕刊フクニチ」)である気楽さもあり、アルバイトのつもりであっさり
引き受けたそうです。1946 年(終戦の翌年です)4 月 22 日から連載が始まり、漫画の舞台
は九州・博多で、当初サザエさんは、九州博多の独身女性でした。その後、作者の上京等の
経緯があり、連載はひとまず打ち切り。作者の東京引っ越しの後、翌 1947 年 1 月 3 日から
「夕刊フクニチ」で連載を再開、東京に舞台が移り、サザエさんの伴侶・フグ田マスオさん
が磯野一家に同居し・登場。その後も、「サザエさん」人気は広がり、1949 年 12 月 1 日か
ら「夕刊朝日新聞(「朝日」本体とは別扱いの新興紙)」に連載、1951 年 4 月 16 日からは、
朝日新聞朝刊の登場するようになりました。
サザエさんは、他のマンガのように、体系的な形をとったストーリイ漫画ではないので、
いつからでもアニメ番組で楽しむことができます。ぜひ、お楽しみ下さい。
(石川 武)
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