平成 27 年 12 月 14 日 生命保険に係るリビング・ニーズ特約に基づく生前給付金の税務上の取扱い No.521 リビング・ニーズ特約とは、医師から余命 6 か月の宣告を受けた時、契約している死亡保険金の一部を生前に受け取れるとい うものです。本来、死亡後に支払われる保険金を生前に受け取ることで、人生の最後に悔いのない時間を過ごすこと、経済的な 問題を解決して十分な治療を受けられることを目的として考えられたもので、近年注目を集めています。 今回は、このリビング・ニーズ特約に基づく生前給付金の税務上の取扱いをご紹介します。 (1)リビング・ニーズ特約に基づく生前給付を受け取った時の取扱い リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金を受け取った際の課税関係は、その生前給付金の受取人が契約者(保険料負担)とな っているか、契約者以外の者となっているかにより、税務上の考え方が異なります。 生前給付金の受取人が契約者(保険料負担者) 生前給付金の受取人が契約者以外の者 生前給付金の受取人が契約者となっている場合には、所得税 の課税対象になります。しかし、リビング・ニーズ特約に基づ く生前給付金は、所得税法上の非課税所得に該当し、所得税は 課税されません。 リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金は、死亡保険金の 前払的な性格を有していますが、 被保険者の余命が 6 か月以内 と判断されたことを支払事由としており、死亡を支払事由とす るものではなく、重度の疾病に基因して支払われる保険金に該 当するものと認められています。疾病により重度障害の状態に なったことなどに基因して支払われる保険金は、 「身体の傷害 に基因して支払われる」保険金に該当し、非課税所得となりま す。 生前給付金の受取人が契約者以外の者となっている場合に は、贈与税が課税されるように思われがちですが、リビング・ ニーズ特約に基づく生前給付金は、相続税法上のみなし贈与財 産に該当せず、贈与税は課税されません。 そうした場合には、所得税の課税対象になりますが、左記の とおり、リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金は、 「身体の 傷害に基因して支払われる」保険金に該当し、非課税所得とな り、所得税についても課税されません。 (2)リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金の相続発生時の取扱い リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金が被相続人の生前に消費されず、預金等として残った場合には、その生前給付金の受 取人が被相続人となっているか、被相続人以外の者になっているかにより、相続税法上の取扱いが異なります。 生前給付金の受取人が被相続人 生前給付金の受取人が被相続人以外の者 生前給付金の受取人が被相続人となっている場合で、相続発 生前給付金の受取人が被相続人以外の者となっている場合に 生時点において預金等として残った金額がある場合には、その は、相続発生時点において預金等として残った金額がある場合 残った金額は、被相続人の相続財産に該当し、相続税が課税さ においても、その残った金額は、給付金受取人の固有の財産と れることとなります。 なるため、相続財産に該当せず、相続税は課税されません。 この場合には、相続人が死亡保険金を受け取った場合の非課 税の規定の適用はありません。 なお、被相続人の配偶者等が指定代理人となっており、指定 代理人の口座に生前給付金が振り込まれている場合において も、相続発生時点において残った金額があるときは、その残っ た金額は被相続人の相続財産に該当し、相続税が課税されるこ ととなるので、注意が必要です。 (3)まとめ リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金は、その生前給付金の受取人が誰かによって、生前給付金を受け取った際の課税関係 は変わりませんが、相続発生時点において預金等として残った金額がある場合には、課税関係が異なるため、注意が必要です。 また、生前給付金ではなく、死亡保険金として受け取った場合には、相続税法の非課税の規定の適用がありますが、生前給付金 として受け取り、残った金額がある場合には、その残った金額については非課税の規定の適用はなく、相続財産となりますので、 生前給付金を受け取られる際には、その点も考慮して判断する必要があると思われます。 (担当:河野 哲也)
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