天然植物原料由来の洗浄剤の イヌパルボウイルスに対す不活化効果試験

井直商事株式会社 御中 天然植物原料由来の洗浄剤の イヌパルボウイルスに対す不活化効果試験 (報告書) 2013 年 8 月 12 日 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 獣医学専攻獣医感染症学教室 向本 雅郁 1
活性化大豆不飽和脂肪酸のイヌパルボウイルス(CPV)への直接的不活化効果を検討した。
ウイルスと活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液および天然植物原料由来洗浄剤を反応後、
ウイルス感受性細胞に添加し、細胞増殖の有無により効果判定を行った。 方法: 被検ウイルス;犬パルボウイルス(CPV)29-F/LT 株(市販ワクチン株) 力価;2 X 106 TCID50/0.1ml 供試細胞;FL-74(ネコ白血病由来リンパ系株化細胞) 細胞用培地;Dulbecco's MEM(DMEM)/0.3% Tryptose Phosphate Broth(TPB)/10%FCS 被検材料;天然植物原料由来洗浄剤(①活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液②天然植物原
料由来洗浄剤) 1)反応 CPV (2 X 106 TCID50/0.1ml ) 0.75 ml と希釈した天然植物原料由来洗浄剤(①および
②)0.75 ml を混合し、25℃で 0.5、5、30 分間反応させた。陰性対照として天然植物
原料由来洗浄剤の代わりに滅菌生理食塩水を用い、0.5、5,30 分間反応させた。 2)希釈 予備試験において被検材料が直接細胞に影響しない濃度が▫
イルスとの混合液を細胞用培地で①は▫
倍希釈であったため、ウ
倍に希釈した。②の天然植物原料由来洗浄剤
はウイルス混合液を希釈せず商品そのものとした。 3)ウイルス力価の測定 1.96 ウエルマイクロプレートで細胞用培地を用いてウイルスとの混合液を▫
倍階段
希釈した。各希釈で 5 ウエルを使用し、各ウエル 0.1ml とした。 2.細胞を各ウエルに 0.1ml(5 X 103 cell)ずつ加えた。 3.5%CO2 存在下で 37℃、6 日間培養した。 尚、予備実験の結果から活性化大豆不飽和脂肪酸▫
が見られたことから、ウイルス力価の測定は▫
洗浄剤は▫
倍希釈液は▫
倍希釈で細胞毒性
倍希釈から始めた。天然植物原料由来
倍希釈から始めた。 4)判定 顕微鏡観察で細胞増殖の有無によりウイルスの増殖を判定した。 増殖あり;+ 増殖なし;− 5)ウイルス力価測定 Reed and Münch 法によりウイルス力価を測定し、TCID50/0.1 ml で示した。 2
結果: 実験 1 活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液 1)陰性対照(滅菌生理食塩水) ① 0.5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +++++ 0 20 100 0 15 100 10 +++++ 0 10 100 103 +++-- 2 5 71 10 ++--- 5 2 29 105 ----- 10 0 101 +++++ 2
4
-3-(71-50/71-29) = -3.5 – 1.5 (▫
0 5.0
倍希釈) ウイルス力価:10 TCID50/0.1 ml ② 5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +++++ 0 20 100 101 +++++ 0 15 100 10 +++++ 0 10 100 103 +++-- 2 5 71 10 ++--- 5 2 29 105 ----- 10 0 2
4
-3-(71-50/71-29) = -3.5 – 1.5 (▫
0 5.0
倍希釈) ウイルス力価:10 TCID50/0.1 ml ③ 30 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +++++ 0 20 100 0 14 100 10 +++++ 0 9 100 103 +++-- 2 4 67 10 +---- 6 1 14 105 ----- 11 0 101 +++++ 2
4
-3-(67-50/67-14) = -3.3 – 1.5 (▫
0 4.8
倍希釈) ウイルス力価:10 TCID50/0.1 ml 3
2)被検群(活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液) ④ 0.5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +---- 4 1 25 101 ----- 9 0 0 10 ----- 14 0 0 103 ----- 19 0 0 10 ----- 24 0 0 105 ----- 29 0 0 2
4
ウイルス力価:<1 TCID50/0.1 ml ⑤ 5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 ----- 5 0 0 10 0 0 10 ----- 15 0 0 103 ----- 20 0 0 10 ----- 25 0 0 105 ----- 30 0 0 101 ----- 2
4
ウイルス力価:検出せず ⑥ 30 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 ----- 5 0 0 10 0 0 10 ----- 15 0 0 103 ----- 20 0 0 10 ----- 25 0 0 105 ----- 30 0 0 101 ----- 2
4
ウイルス力価:検出せず まとめ: ウイルス力価(TCID50/0.1ml) 反応時間(分) 0.5 5 30 活性化大豆不飽和脂肪酸(1:7) <101.5 <101.5 <101.5 滅菌生理食塩水 105.0 105.0 104.8 4
実験 2 活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液 1)陰性対照(滅菌生理食塩水) ⑦ 0.5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +++++ 0 1
18 100 10 +++++ 0 13 100 102 +++++ 0 8 100 10 ++--- 3 3 50 104 +---- 7 1 13 12 0 0 3
5
10 ----- -3-(50-50/50-13) = -3.0 – 1.5 (▫
倍希釈) ウイルス力価:104.5TCID50/0.1 ml ⑧ 5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +++++ 0 1
18 100 10 +++++ 0 13 100 102 +++++ 0 8 100 10 ++--- 3 3 50 104 +---- 7 1 13 12 0 0 3
5
10 ----- -3-(50-50/50-13) = -3.0 – 1.5 (▫
倍希釈) ウイルス力価:104.5TCID50/0.1 ml ⑨ 30 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 +++++ 0 20 100 0 15 100 0 10 100 10 +++-- 2 5 71 104 ++--- 5 2 29 10 0 0 1
10 +++++ 102 +++++ 3
5
10 ----- -3-(71-50/71-29) = -3.5 – 1.5 (▫
倍希釈) ウイルス力価:105.0TCID50/0.1 ml 5
2)被検群(活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液) ⑩ 0.5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 ----- 5 0 0 10 0 0 10 ----- 15 0 0 103 ----- 20 0 0 10 ----- 25 0 0 105 ----- 30 0 0 101 ----- 2
4
ウイルス力価:検出せず ⑪ 5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 ----- 5 0 0 10 0 0 10 ----- 15 0 0 103 ----- 20 0 0 10 ----- 25 0 0 105 ----- 30 0 0 101 ----- 2
4
ウイルス力価:検出せず ⑫ 30 分 ウイルス希釈 結果 累 積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 100 ----- 5 0 0 10 ----- 10 0 0 102 ----- 15 0 0 10 ----- 20 0 0 104 ----- 25 0 0 30 0 0 1
3
5
10 ----- ウイルス力価:検出せず まとめ: ウイルス力価(TCID50/0.1ml) 反応時間(分) 0.5 5 30 活性化大豆不飽和脂肪酸(1:7) <101.5 <101.5 <101.5 滅菌生理食塩水 104.5 104.5 105.0 6
実験 3 天然植物原料由来洗浄剤 1)陰性対照(滅菌生理食塩水) ① 0.5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 101 +++++ 0 24 100 10 +++++ 0 19 100 103 +++++ 0 14 100 10 +++++ 0 9 100 105 +++-- 2 4 67 10 +---- 6 1 14 107 ----- 11 0 0 2
4
6
5.3
-5-(67-50/67-14) = -5.3 ウイルス力価:10 TCID50/0.1 ml ② 5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 101 +++++ 0 25 100 102 +++++ 0 20 100 10 +++++ 0 15 100 104 +++++ 0 10 100 10 +++-- 2 5 71 106 ++--- 5 2 29 10 0 0 3
5
7
10 ----- -5-(71-50/71-29) = -5.3 ウイルス力価:105.5TCID50/0.1 ml ③ 30 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 101 +++++ 0 24 100 10 +++++ 0 17 100 103 +++++ 0 12 100 10 +++++ 0 7 100 105 ++--- 3 2 40 10 ----- 8 0 0 107 ----- 13 0 0 2
4
6
4.8
-4-(100-50/100-40) = -5.3 ウイルス力価:10 TCID50/0.1 ml 7
1) 被検群(天然植物原料由来洗浄剤) ④ 0.5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 101 +++++ 0 9 100 102 +++-- 2 4 67 10 +---- 6 1 14 104 ----- 11 0 0 10 ----- 16 0 0 106 ----- 21 0 0 26 0 0 3
5
7
10 ----- -2-(67-50/67-14) = -2.3 ウイルス力価:102.3TCID50/0.1 ml ⑤ 5 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 101 ++--- 3 2 40 10 ----- 8 0 0 103 ----- 13 0 0 10 ----- 18 0 0 105 ----- 23 0 0 10 ----- 28 0 0 107 ----- 33 0 0 2
4
6
0.8
0-(100-50/100-40) = -0.8 ウイルス力価:10 TCID50/0.1 ml ⑥ 30 分 ウイルス希釈 結果 累積陰性 累積陽性 累積陽性率(%) 101 ----- 5 0 0 10 0 0 10 ----- 15 0 0 104 ----- 20 0 0 10 ----- 25 0 0 106 ----- 30 0 0 35 0 0 102 ----- 3
5
7
10 ----- ウイルス力価:検出せず 8
まとめ: ウイルス力価(TCID50/0.1ml) 反応時間(分) 0.5 5 30 天然植物原料由来洗浄剤 102.3 100.8 <1 滅菌生理食塩水 105.3 105.5 104.8 以上の結果から、天然植物原料由来洗浄剤は原料の活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液で
は反応時間 30 秒以上でイヌパルボウイルスの 99.9%以上、5 分以上では 100%のウイルス
を不活化できることが確かめられた。 天然植物原料由来洗浄剤商品でも不活化の程度は活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液に
比べて低かったが、30 秒以上の反応で 99.9%以上ウイルスを不活化した。 (補足)活性化大豆不飽和脂肪酸の FL24 細胞の増殖への影響 活性化大豆不飽和脂肪酸の細胞毒性を示す濃度を調べるため、本剤を希釈し、細胞増殖
に影響をおよぼさない濃度を調べた。 方法: 供試細胞;FL-74 細胞用培地;Dulbecco's MEM(DMEM)/0.3% Tryptose Phosphate Broth(TPB)/10%FCS 被検材料;天然植物原料由来洗浄剤の原料活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液 1)本剤の希釈 96 ウエルマイクロプレートで本剤を細胞用培地を用いて▫
4 ウエルを使用し、各ウエル 0.1ml とした。(▫
~▫
倍階段希釈した。各希釈で
倍希釈) 2)培養 細胞を各ウエルに 0.1ml(5 X 103 cell)ずつ加えた。 活性化大豆不飽和脂肪酸の代わりに滅菌生理食塩水を対照として用いた。 5%CO2 存在下で 37℃、4 日間培養した。 7)判定 細胞増殖の程度を MTT 法により測定した。 増殖あり;+ 増殖なし;− 結果: 陰性対照 活性化大豆不飽和脂肪酸▫
倍希釈液 1:14 1:28 1:56 1:112 1:224 1:448 1:896 1:1792 吸光度 1.862 0.235 0.252 0.639 1.196 1.725 1.788 1.813 1.796 9
(4 ウエルの平均) 以上の結果より、活性化大豆不飽和脂肪酸は▫
め、本試験では細胞に接種する場合、▫
飽和脂肪酸▫
倍希釈液で▫
倍希釈まで FL-74 細胞の増殖を抑制したた
倍(天然植物原料由来洗浄剤の原料活性化大豆不
倍)に希釈したものを用いることとした。 10