芳香族求電子置換反応 100-1

100-1
芳香族求電子置換反応
芳香族性の回復
置換生成物
芳香族性の喪失
付加生成物
E+(求電子剤)の違いにより,反応の名称が変わるが反応機構は同じ.
Br+
ブロモ化
R+
NO2+
ニトロ化
RCO+
アルキル化
アシル化
101-1
芳香族求電子置換反応
遷移状態1
遷移状態2
ΔE2
H
E
ΔE1
カルボカチオン中間体
反応熱
H
E
H
E
H
H
E
H
E
≡
または
E
101-2
ハロゲン化
F2
Br2
Cl2
発熱的で爆発的に進行
触媒は必要無い
Benzeneとは反応しない.
Lewis酸触媒が必要
I2
ヨードニウム(I+)を
発生させて反応させる.
Lewis酸触媒はCl-ClやBr-Br結合を分極させ,
ハロゲン原子の求電子性を増加させている.
Br
Br
FeBr3
Br
Br
FeBr3
Br
Br
FeBr3
とみることができるので
が求電子剤
問題
次のカルボカチオンは,非局在化により安定化している。
このことを共鳴構造式で表現せよ。
101-3
96%
Lewis酸触媒は不要
4%
Lewis酸触媒を使っても
反応は非常に遅い.
求電子的ヨウ素化は,吸熱反応なので通常は起こらない.
Br
H
結合解離
エネルギー
(kcal/mol) 112
2
81
65
46
36
88
71
臭素化 (112+46)−(81+88)= −11(発熱)
ヨウ素化 (112+36)−(65+71)= +12(吸熱)
ヨウ素をH2O2やCuCl2で酸化してヨードニウム(I+)を発生させて行う.
生体では,ヨードペルオキシダーゼという酵素が
ヨウ化物イオンをヨードニウムに変換している.
甲状腺ホルモン(チロキシン)の合成
Thyroxine
102-1
ニトロ化
nitronium ion
アミノ基への還元
Zn(Hg), HCl
Ni, H2
Fe, HCl など
メタ配向性
102-2
スルホン化
H O
S O
O
S
O
SO3
+
O
H
O
反応が可逆的であることを
利用すると,脱スルホン化が可能
H
100℃
触媒量
オルト2置換ベンゼン
の合成への応用
+
+
16%
SO3
HNO3
H2SO4
H2SO4
パラ位をブロック
SO3H
73%
11%
NO2
H2O
H2SO4
SO3H
ブロックをはずす
NO2
問題
生成物を2つ描け。
102-3
Friedel-Craftsアルキル化
δ+
と等価
触媒が
再生する
+
+
問題
生成物を描け。
103-1
Friedel-Craftsアルキル化の制約
骨格転位
+
+
H
H
カルボカチオンの転位
多アルキル化
+
+
アルキルベンゼンは,ベンゼンよりも
求電子攻撃を受けやすいので,一置換で停止せず更にアルキル化が進む.
これに対してハロゲン化やニトロ化は,停止する.
103-2
クメン法によるフェノールの合成
+
Cumene
ラジカル開始剤
H
O
Cumene Hydroperoxide
O
H
R
O2
Acetone
O
OH
Friedel-Craftsアシル化
O
O
Cl
AlCl3
104-1
AlCl3
Cl
O
AlCl3
Cl
酸塩化物
Acylium cation
酸無水物
104-2
アルキル化と異なる点
1.骨格転位が起きない.
2.アシル化されるとベンゼン環が不活性化されるため
多置換生成物は得られない.
3.Lewis酸触媒は,生成物のケトンと錯体を作るため
1等量以上が必要
O
AlCl3
R
問題
生成物を描け。
2.2等量
求電子置換反応に対する置換基の電子的効果
105-1
無置換のベンゼンを基準として
反応性が高くなる置換基
活性化基
カルボカチオン中間体を
安定化する電子供与性の置換基
反応性が低くなる置換基
不活性化基
カルボカチオン中間体を
不安定化する電子吸引性の置換基
供与性と吸引性を決める2つの効果(誘起効果と共鳴効果)
誘起効果(σ結合を介した効果)
アルキル基
(超共役による電子供与性)
ヘテロ原子が結合する基
正に分極した炭素をもつ基
106-1
共鳴効果(π結合を介した効果)
D
D
D
D
2
H
H
O
N
R
O
N
R
供与性が弱まる
NH2, NHR, NR2
OH, OR
強く活性化
NHCOR, OCOR
中程度に活性化
107-1
オルト・パラ配向性
R, Ar
弱く活性化
H
F, Cl, Br, I
CHO, COOR, COOH,
COCl
SO3H, CN
+
+
+
N H3, N HR2, N R3,
NO2
弱く不活性化
(主にパラ体)
中程度に不活性化
メタ配向性
強く不活性化
E
H
E
H
o-体
H
108-1
E
H
H
o-体とp-体には,
H
m-体
H
H
H
H
E
E
E
H
p-体
H
H
E
H
E
H
E
o-体
ハロゲンは,
誘起効果により不活性化
しているが,
孤立電子対があるため
OCH3と同じように
o-体とp-体を安定化する.
m-体
p-体
H
カルボカチオン中間体を
安定化させる
極限構造の寄与があるが,
m-体には,それが無い.
m-体
108-2
遷移状態
o-体
p-体
m-体
o-体
p-体
カルボカチオン中間体
OCH3
OCH3
E
H
カルボカチオン中間体のエネルギーが低いほど,
遷移状態のエネルギーも低い.(Hammondの仮説)
問題
生成物を描け。
109-1
CHO
CHO
o-体
H
CHO
E
H
E
H
E
H
H
CHO
CHO
H
m-体
CHO
H
H
H
H
E
E
CHO
E
H
CHO
CHO
p-体
H
カルボカチオン中心の炭素に
電子吸引基であるホルミル基が
結合しており,正の電荷が
増大するため,エネルギーが
高くなる.
H
E
H
E
H
E
H
o-体とp-体には,カルボカチオン中間体を不安定化させる
極限構造の寄与があるが,m-体には,それが無い.
遷移状態
o-体
p-体
m-体
o-体
p-体
m-体
カルボカチオン中間体
109-2
問題
生成物を描け。
芳香族求核置換反応
111-1
(Na2CO3, H2O)
イプソ置換
(NH3)
アニオン中間体
イプソ位(置換基の付いている場所,ipso ラテン語「それ自身の」)
Cl
は,アニオン中間体を安定化できないので,反応しない.
O2N
NO2
ベンザインを経由する芳香族求核置換反応
111-2
(NaOH, H2O, 340℃, 150 atm)
(KNH2 , liq. NH3)
Cl
Cl
H
Nu
Nu
Benzyne(ベンザイン)
Nu
H Nu
ジアゾ化
112-1
ジアゾ化と関連変換反応
Benzenediazonium
O
H
N
O
O
N
OH
亜硝酸
OH2
N
Nitrosonium ion
Phenyl cation
112-2
ジアゾ化と関連変換反応
SN1反応
N
N
X
CuX
Sandmeyer反応
X = Br, Cl, CN
I
KI
H
H3PO2
SN1反応のように見えるが,実際には,
電子移動により生じるフェニルラジカル
を経由している.
次亜リン酸
ジアゾカップリング
NMe2
NMe2
N
N
N
H
Cl
NaO3S
N
NaO3S
メチルオレンジ