14 3,000 万円控除 居住用財産(不動産)を譲渡して得た譲渡所得から 3,000 万円を控除する特例のことです。 居住用財産の保有期間を問わず適用できます。譲渡益が 3,000 万円に満たない場合は、その金額までの控除となり、 税額は 0 になります。譲渡益が 3,000 万円を超える場合 には、超える金額に対して、短期譲渡所得又は長期譲渡所 得などの税率を適用することになります。 なお、この特例は前年、前々年に 3,000 万円控除や居 住用の買換え特例、居住用財産の買換えの場合の譲渡損失 の損益通算・繰越控除の特例、特定居住用財産の譲渡損失 の損益通算・繰越控除の特例を受けていないことが適用の 前提条件になります。3,000 万円控除は 3 年に一度しか 適用できない仕組みです。 ただし、10 年超保有の居住用不動産に対する軽減税率 は、重複して適用が可能です。 〇 手続き この特例は、マイホームを譲渡した翌年 2 月 16 日から 3 月 15 日までの確定申告時期に、この特例を受ける旨の 申告をする必要があります。 特に 3,000 万円控除を適用して計算した結果、税額が 0になったとしても申告することが適用を認めてもらえる 前提条件になっています。うっかり忘れたりして申告をし ないと、この特例の適用は認めてくれませんので、十分注 意が必要です。申告に当たっては、売却した居住用不動産 を管轄する住民票の写し等が必要になります。 44 注意点 ①空き家にした後、 譲渡する場合 マイホームが実際に「居住用財産」かどうかは、実態で ③居住用財産の家屋を取り壊して 譲渡する場合 マイホームを取り壊した場合には、1 年以内に売買契約 判断されます。たとえば、これから入所する老人ホームが をすることを条件に、住まなくなってから 3 年目の年末 ームの方は空き家ですが、いつでも帰ることができるよう 用の特例が利用できます。 終身利用できる契約で生活の場となっている一方、マイホ にしてあったとしても、実態として生活していないのであ れば、税務署は「居住用財産」と認めてくれません。 ただし、病気の転地療法などで一時的に空き家になって おり、病気が治れば必ず戻ってくると認められるケースで までに引渡しをすれば、マイホームの敷地の売却でも居住 ただし、空家の場合と異なり、この敷地は人に貸すと居 住用の特例が適用できなくなります。十分注意してくださ い。 それから、買換え特例や軽減税率を適用する場合にはマ は、マイホームを空けたとしても「居住用財産」と認めら イホームを取り壊した年の 1 月 1 日時点で、保有期間が なお、居住しなくなってから、3 年目の年末を経過して 繰越控除や特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越 れます。 から、マイホームを売却することになると、もはや 3,000 万円控除などの税務上、居住用の特例を利用することはで きません。 したがって、マイホームを空き家にする場合には、先々 手放す場合を考えておくことが必要です。 ②人に貸していた居住用財産を 譲渡する場合 マイホームは、人に貸したとしても所有者が住まなくな ってから 3 年目の年末の経過後に譲渡すると、譲渡所得 税の特例である「3,000 万円特別控除」をはじめ、居住用 の不動産を売った場合の特例が利用できなくなります。逆 にそのときまでに売れば居住用の特例が適用できます。こ のため、契約上立退き問題が起こらないようにするととも 10 年超であること、買換えの場合の譲渡損失の損益通算・ 控除を適用する場合には、マイホームを取り壊した年の 1 月 1 日時点で保有期間が 5 年超であることが条件になり ます。この点もご注意ください。 ④相続で所有者になった マイホームの譲渡 たとえば夫がなくなったため、妻が夫婦で以前に住んで いた夫名義の住宅で、現在は空き屋になっている住宅を譲 渡する場合、「居住用財産」の特例は適用できません。「居 住用財産」かどうかは所有者として居住していることが前 提だからです。保有期間は相続により取得の日を引き継ぎ ますので、長期保有となる可能性があるので、税率は長期 の税率となる可能性があります。 に、居住用の不動産を売った場合の譲渡所得税の特例が利 用できるように借家契約を 2 年から 3 年の「定期借家契約」 で締結するなど工夫が必要でしょう。 45 〇 10年超保有の場合の軽減税率との併用 10 年超保有の場合の軽減税率は、売却した年の 1 月 1 日時点の保有期間が 10 年を超えるマイホームの譲渡益の うち 6,000 万円までについては所得税 10%、住民税 4% の合計 14%の税率が適用できるというものです。6,000 万円を超える譲渡益に対しては所得税・住民税合わせて 20%の税率が適用されます。(復興特別所得税もかかりま す。) 3,000 万円控除はこの軽減税率と重複して適用できる ため、売却時の収入金額から、取得費と譲渡費用を控除し て求めた譲渡所得から 3,000 万円を控除でき、課税対象 となる譲渡益自体を少なくすることができます。 C B } 9,000万円超 所得税15% 20% 住民税 5% 6,000万円 所得税10% 14% 住民税 4% (※20.315%) } 6,000万円まで A 3,000万円 非課税 A. 譲渡益3,000万円まで 非課税 所得税10% 14% 住民税 4% (※14.21%) 3,000万円 非課税 B.譲渡益9,000万円まで 3,000万円を超える部分に 計14%課税 (※14.21%) (※)平成25年から平成49年まで2.1%の復興特別所得税(国税)がかかります。 46 } (※14.21%) 3,000万円 非課税 C.譲渡益9,000万円超 Bに加え、さらに 9,00 0万 円を 超える部分に 計20%課税 (※20.315%) 3,000 万円控除 10年を超えて所有する自宅の売却の税額計算例 30年前に3, 00 0万円で買った自宅を1億8, 00 0万円で売却 したときの、譲渡所得税・住民税を計算してみましょう。 ●所有期間=30 年 所有期間30 年 ●取得費=3,000 万円(※1) ●売却代金=1億8,000 ●譲渡益=1億5,000 万円(※2) 万円 自宅 (※ 1):取得費には購入代金のほか、仲介手数料、改良費などを含みますが、ここでは 計算を簡略化するために省いて考えます。また、建物の減価償却も考えに入れ ないことにします。 (※ 2):譲渡に要した仲介手数 料なども譲渡費用として売却代金から差し引けますが、 取得費と同じくここでは考えに入れません。 1 まず、譲渡益から3, 00 0万円特別控除を差し引いて課税 譲渡所得を出します。 (譲渡益) (特別控除額) 課税譲渡所得=1億5 ,00 0万円−3, 00 0万円=1億2, 00 0万円 2 課税譲渡所得のうち、6, 00 0 万円以下の部分についての税額を計算します。 ●この部分に対する税率は、所得税10%(復興特別所得税込みで10.21%)、住民税4%です。 6, 00 0万円に対する所得税 =6, 00 0万円×10.21% =612.6万円…① 6, 00 0万円に対する住民税 =6, 00 0万円×4% = 240万円 ……② 3 課税譲渡所得のうち、6, 00 0万円を超え る部分についての税額を計算します。 ●課税譲渡所得のうち6, 00 0万円を超える部 分の額は… (課税譲渡所得) 1億 2, 00 0万円−6, 00 0万円=6, 00 0万円 ●この部分に対する税率は、所得税15%(復興特別所得税込みで1 5. 315%)、住民税5%です。 6, 00 0万円に対する所得税 =6, 00 0万円×1 5. 315%=918.9万円…③ 6, 00 0万円に対する住民税 =6, 00 0万円×5% = 300万円 ……④ 4 合計税額を出します。 ① ③ 所得税=6 12.6万 円+9 18.9万 円=1,531.5万円…⑤ ② 住民税= 2 40万円+ ④ 3 00万 円=54 0万円 ………⑥ ⑤ 譲渡に際しての税額合計=1 ,531.5万円+540 ⑥ 万円=2,071.5万円 47
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