ETHグループの紹介と概要 2015 - ETH-Rat

E T H グループ
2015
ETH グループの紹介と
概要
Swiss Federal Institute for Forest,
Snow and Landscape Research
親愛なる読者の皆様へ
スイスは非常に革新力の強い国として世界に知られており
ます。優秀な教育および研究制度はその革新力を支える柱と
して、スイスのみならず世界中で、国民経済、社会、そして
自然な生活基盤を守るための重要な要素です。
二校の ETH(工科大学)、そして PSI、WSL、Empa およ
び Eawag の諸研究機関(以下 FA)はスイスの革新力に大
いに貢献しています。いずれも後進の育成と最先端の研究を
行い、学問とテクノロジーの伝播普及を推進しています。例え
目次
ETH グループ
3
ETH 理事会
5
ば FA は 700 以上のスイス産業界のパートナーと協力してい
研究機関
ます。また、両 ETH の研究者たちは 2000 年度以来 450 社
スイス連邦工科大学
以上もの会社を創立し、1,000 人以上の雇用を創出しました。
チューリヒ校
ETH グループはスイスの学術界の若手にとり、 魅力的
(ETH チューリヒ )
な存在です。そのため、学生と院生の数は年々増え続けて
スイス連邦工科大学
います。大学や学術論文発表のランキングにおいて安定し
ローザンヌ校
てトップ評価を得ておりますが、それは ETH チューリヒと
(EPFL)
EPFL が、世界でも最も優秀な高等教育機関にとして認めら
ポール・シェラー研究所
れ、諸研究機関が最高レベルの最先端研究を行っていると
(PSI)
いうことを裏付けるものです。これは誇りにすべきことです。
スイス連邦森林・雪氷・
これからも、そのために私たちはたゆぬ努力を続けてゆき
景観研究所 (WSL)
ます。
スイス連邦材料試験
研究所 (Empa)
2015 年 4 月、於チューリヒ / ベルン
7
9
11
13
15
スイス連邦水科学技術
研究所 (Eawag)
17
コンピタンスセンター
Dr. Fritz Schiesser
ETH 理事会理事長
2
ETH グループの紹介と概要
センター
18
主要指標
20
ETH グループ
ETH グループ
2014 年 12 月 31 日現在
理事 11 人
ETH 理事会
スイス連邦工科大学
学生および院生数 18,500 人以上
雇用者数 10,865 人
ETH チューリヒ
学生および院生数 9,900 人以上
雇用者数 5,619 人
EPFL
諸研究機関
雇用者数 1,935 人
PSI
雇用者数 530 人
WSL
世 界 最 高 水 準の学 問、 研 究および知 識・
技術の伝播普及を実現すること。
以上が連邦により ETH グループの 6 つの教
育研・究機関に託された使命です。これら
雇用者数 950 人
Empa
雇用者数 479 人
Eawag
— スイス連邦材料試験研究所 (Empa)
および
— スイス連邦水科学技術研究所 (Eawag)
です。
の諸機関とは
— スイス連邦工科大学チューリヒ校
(ETH チューリヒ )、
— スイス連邦工科大学ローザンヌ校
さらに ETH 理事会が戦略的管理・監督機関
として、ETH 上訴委員会が独立した上訴機
関として ETH グループに属しています。
(EPFL)、
— ポール・シェラー研究所 (PSI)、
— スイス連邦森林・雪氷・景観研究所
(WSL)、
ETH グループの紹介と概要
3
両工科大学と 4 つの研究施設の目的は
特に重要な重点は自由基礎研究です。
— 学問および技術の分野において学生と専
5 つの研究分野を優先的に扱います:
門家を養成し、継続的な学習・訓練が常
— 生産工程、
時可能であるよう保証すること、そして
— エネルギーおよびサステイナブルな開発
— 研究によって学術的な知識を拡げ、
— ライフサイエンス
— 学術分野における後進を育て、
— 環境
— 学術および技術的なサービスを提供し、
— 学術メソッド
— 広報活動を行い、研究成果を実地活用す
ることです。
さらに研究の成功にとり重要なのは、例え
ば国立高性能コンピューティング・センター
以上がスイス連邦工科大学法(ETH 法)で
定められております。連邦参事会と議会は、
(CSCS)、PSI の X 線自由電子レーザー施設
(SwissFEL)、または EPFL 主導のブルートレ
通常有効期間四年間の課題委任状をもって
イン・プロジェクトなどの大規模なプロジェク
上記目標を具体化します。ETH 理事会は、 トやインフラ構造への投資です。
託された課題の範囲内で ETH グループの戦
略を決定し、政界および連邦省庁に対して、
これらを代表し、目標達成の経過について
定期報告を行います。ETH グループの諸機
関の実際の運営執行権は ETH 二校および四
研究機関にあります。
教育と研究は、環境および資源利用、公
衆衛生、経済の発展や社会福祉といった現
代の大きな課題についても、責任を担ってい
ます。ETH グループはこれらの挑戦に真摯に
取り組んでいます。
2012 年∼ 2016 年戦略計画の中で、ETH
理事会は活動の重点を詳説しました。質の
高い、研究と密接に結びついた学問を優先
させています。ETH チューリヒと EPFL は、
学部生を奨励し、サポートの最適化や教授
陣、学術職員、時代に即したインフラ構造
に投資します。
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ETH グループの紹介と概要
ETH 理事会
ETH 理事会は、政治・経済・社会の各分野出身の以下のメンバーで構成されています。
(2014 年 12 月 31 日現在 ):
— Dr. Fritz Schiesser
ETH 理事会理事長、元州議会議員
— Dr. Dr. h. c. Barbara Haering
econcept 社執行役員
— Prof. Dr. Paul L. Herrling
ETH 理事会副理事長ノバルティス
— Beth Krasna
熱帯病研究所所長
Roberto Giori 社 CEO および理事会
独立役員
— Prof. Dr. Ralph Eichler
ETH チューリヒ総長
— Jasmin Staiblin
(2014 年 12 月末まで )*
— Prof. Dr. Patrick Aebischer
EPFL 総長
— Prof. Dr. Joël Mesot
PSI 所長
— Beatrice Fasana Arnaboldi
Sandro Vanini SA 社業務執行取締役
— Dr. Markus Stauffacher
ETH チューリヒ /EPFL 大学評議会代表お
Alpiq Holding Ltd. 社 CEO
よび ETH チューリヒ シニアサイエンティスト
— Olivier Steimer
Vaud 州立銀行 BCV 理事会長
スイス連邦工科大学および各研究所の執行人:
— Prof. Dr. Ralph Eichler
ETH チューリヒ 総長(2014 年 12 月末迄)
— Prof. Dr. Konrad Steffen
WSL 所長
— Prof. Dr. Patrick Aebischer
EPFL 総長
— Prof. Dr. Gian-Luca Bona
Empa 所長
— Prof. Dr. Joël Mesot
PSI 所長
— Prof. Dr. Janet Hering
Eawag 所長
* Prof. Dr. Lino Guzzella 氏は 2015 年 1 月 1 日より ETH チューリヒ総長および ETH 理事会理事を兼任。彼は
引退した Prof. Dr. Ralph Eichler 氏の後任者です。2012 年半ばより 2014 年末迄 Lino Guzzella 氏は ETH
チューリヒの学長を務めておりました。
ETH グループの紹介と概要
5
デジタル化する新時代の建設文化
レンガを緻密な壁に積み上げるロボット。学際的研究
チームと共に Prof. Matthias Kohler 教授 ( 中央 )
は、連邦重点研究のひとつである製造のデジタル化の
枠内で、ETH チューリヒにおいて新しいデジタル建設
工程を調査しています。モバイル建設ロボットを試験
する Rosali Pyun, Timothy Sandy, Prof. Jonas
Buchli そして Kathrin Dörfler 。( 左より )
6
ETH グループの紹介と概要
ETH チューリヒ
www.ethz.ch
ETH チューリヒは、科学技術・自然科学
国際的な格付け評価では、ETH チューリ
を対象とした世界有数の大学です。本学は
ヒは世界屈指の大学の 1 つとして、常に上位
優れた教育内容、パイオニア的基礎研究、
に入っています。ETH チューリヒで学び、教
そして新知識を直接的に実地化することで知
育や研究を行ったことのあるノーベル賞受賞
られています。ETH チューリヒは、研究者に
者は 21 人、この実績が本学の卓越した評判
刺激的研究環境を、学生に総合的な教養を
をさらに裏付けています。ETH チューリヒの
提供します。
最大の使命の 1 つは、経済と社会への知識
1855 年に創立された ETH チューリヒには
現在、世界 110 カ国から 18,500 人を超え
れ、1996 年から 2014 年の間に約 280 件
る学生や博士課程研究者が在籍しています。
の本学発ベンチャー企業が誕生していること
移転です。毎年 80 件の新規特許が出願さ
現在、約 500 人の教授陣が工学、建築学、
から見てもわかるとおり、目標は達成されて
数学、自然科学、システム指向科学、経営・
いるといえましょう。
社会科学の各分野で教鞭を振るい、また
研究を行っています。
ETH チューリヒは、グローバルな問題の
サステイナブル(持続可能ば)な解決に貢献
しています。研究の重点としては、
エネルギー
供給、リスク対応、未来都市の開発、世界
の食糧問題、および人間の健康が挙げられ
ます。
ETH グループの紹介と概要
7
義手技術 : 皮膚感覚のある義手
欧 州 プ ロ ジェクトの 一 環 として、Prof. Silvestro
Micera 教 授 ( 中 央 ) は 博 士 課 程 在 籍 の Marco
Bonizzato 氏 und Francesco M. Petrini 氏 ( 左 )
および Postdoc Stanisa Raspopovic 氏 ( 右 ) とと
もに EPFL にお いて新 種 の 義 手を開 発しています。
このバイオニックな義手は触感という感覚の情報を
リアルタイムで伝えます。
8 ETH グループの紹介と概要
EPFL
www.epfl.ch
EPFL は 近 代 的 コンピュータ・ マウス や、
世界で唯一無二の存在であるのロレック
イドロプテー ル 号( 世 界 最 速 のヨット)、
ス・ラーニングセンターに象徴されるキャン
ソーラーパルス、2013 年 1 月に欧州「FET
パスでは、学問と研究の分野において、非
(Future and Emerging Technologies、
未来および最先端技術)イニシアチブの枠
常に魅力的な生活環境と近代的な職場環境
内で指名された旗艦プロジェクト 2 件のうち
の出会いがあり、世界的にも最も国際色豊
が揃っております。毎日 125 カ国以上の人々
の 1 件に指定されたヒューマンブレイン・プ
かな大 学の一つである本 学では、 修 士レ
ロジェクト (HBP)、有名な色素太陽電池など
ベル以降の授業のほとんどが英語で行われ
のサステイナブルなイノベーションなど、野
ます。
心的科学プロジェクト誕生の地です。当名
門大学では各学習レベル(学士課程から博
EPFL の大きな課題は、国際的なパート
ナーシップを促進し、スポンサーをみつけ、
士課程まで)に応じた講座を提供しており、
経済・産業界との共同プロジェクトを推進す
1969 年にスイス連邦機関に属して以来、目
ることです。キャンパスには「EPFL・イノベー
覚ましい発展を遂げています。
ション・パーク」もあり、ここでは 100 社を
レマン湖畔を見下ろす場所に位置する
超えるスタートアップ企業と有名企業の研究
EPFL には、9,800 人以上の学生、329 人 センターが作るダイナミックな環境がありま
の教授陣、5,200 人の教育、研究、技術、 す。2014 年には 24 ものスタートアップ企業
事務部門の職員の合計約 15,300 人が在籍 と大学発ベンチャー企業が誕生し、発足数
しています。
を更新しました。
ETH グループの紹介と概要
9
加速テクノロジーの専門的ノウハウ
PSI ではガンの陽子線治療を行っています。この照射
は健康な細胞組織への負担が特別に軽いため、これ
まで 18 歳以下の小児患者 370 人の治療にも使われま
した。David Meer 氏は、PSI でがん治療に用いられ
る陽子線照射装置 Gantry 2 を共同開発しました。
10 ETH グループの紹介と概要
PSI
www.psi.ch
PSI は、スイス最大の自然科学・工学の
PSI の職員約 1,900 人のうち、科学者は
700 人です。
若手教育は PSI の中心課題です。職員の
材 料、 人 間と健 康、 エネルギーと環 境を
テーマに最先端の研究が行われています。 約 1/4 は博士課程修了者、博士課程研究者
1988 年以来、基礎および応用研究を通じて、 または職業実習生です。2014 年、約 850
研究センターです。当センターでは物質と
社会、経済、科学の分野の中心的問題のつ
いて持続可能な解決に取組んでいます。
中性子源、シンクロトロン源、ミューオン
人の博士課程在籍者が博士論文のために
PSI で測 定 作 業を行い、211 人 が PSI の常
勤職員として博士論文を執筆し、96 人の職
源を有するスイス唯一、一部はそればかりか
業実習生が合わせて 14 種類の職業実習教
世界唯一の大規模な大型研究施設を運営し
育を終えました。学生用実験室 iLab または
ています。毎年スイス国内および世界中から
PSI 教育センター内では、生徒、学生および
約 2,400 人の研究者が実験を行うため PSI
社会人が教育を受けています。
を訪れています。
2015 年のハイライトは国立大型施設であ
PSI では研究のほかに、陽子で特定のが
る SwissFEL が完成することです。この X 線
んを治療できるスイスで唯一の施設も運営さ
自由電子レーザー施設は、原子・分子構造
れています。
の一瞬の変化を視覚化するもので、スイス
の研究ニーズに合わせて設計されています。
ETH グループの紹介と概要 11
事前に危険を察知する:表層崩壊研究
Brian McArdell 氏 ( 左 ) および Christian Rickli 氏
は WSL の 20 分 の 1 のモデルを使った 実 験 装 置で
表面崩壊を研究しています。彼らの観察と測量値を
集積したデータバンクはモデル計算やハザードマップ
作成のベースとして使われます。
12 ETH グループの紹介と概要
WSL
www.wsl.ch | www.slf.ch
WSL は地球環境の変化と自然の生態およ
研究プログラム『人と自然の空間要件』で
び文化的景観の活用と保護を研究していま
は選ばれた都市近郊の空間における居住お
す。WSL は景観や森林、バイオダイバーシ
よび景観計画のシナリオが作成され、2015
ティ、自然災害や氷雪の状態と変遷を観察・
年に終了します。主として各州および連邦環
監視し、学界および社会のパートナーと共に、
境局 (BAFU) による第三資金によって賄われ
社会に関わる問題について、サステイナブル
た同プログラムは、当該地域のサステイナブ
な解決策を探究しています。
ル・マネージメントに貢献することを目的と
WSL で は Birmensdorf 、 Davos 、
Lausanne、Bellinzona および Sitten の
各拠点における合計 500 人強の職員中、約
半数は学術専門職員であり、60 人以上が
して、研究と実地での密接な共同作業により
博士課程に在籍しています。このほか、約
が、気候の変化に伴うリスクと森林の適応能
150 人の技術職員および 50 人の事務職員
のほか、15 人の職業訓練生と実習生として
働いています。職員の約四分の一は Davos
にある WSI 雪 氷 雪 崩 研 究 所に勤 務してい
力を正しく判断し、必要に応じて効果的な措
と知識の実践化を目的としたパンフレット作
ます。
成など活動の中心となる見込みです。
実現しました。BAFU との共同研究プログラ
ムである『森林と気候変動』は森林局、事業
主、森林所有者および政治決定を担う人々
置を執れるようにしっかりとした基礎研究に
取り組んでいます。2015 年は学問的な統合
ETH グループの紹介と概要 13
ナノテクノロジー
極小パイプ構造や極薄炭素ストライプは新種の電子
部品のための有望候補ドイツの共同研究者とともに
Prof. Roman Fasel 教授は Empa において特別な
電子的特性を有する新種の炭素系ナノ物質を生成しま
した。
14 ETH グループの紹介と概要
EMPA
www.empa.ch
Empa は材料科学と科学技術に関する
学際的研究・サービス機関です。ナノ構造
物 質およびナノ構 造 表 面、 環 境・エネル
ギー技術、サステイナブルな建築技術そして
Empa で 働 く約 990 人 の 職 員 の 内、
29 人の教授、約 200 人の博士課程在籍者、
40 人の職業訓練生はが含まれます。さら
に約 110 人が学士課程および修士課程の学
バイオ・医療技術の各分野で産業と社会
生です。この外多数の産業プロジェクトやス
のためのソリューションを開発しています。
イス国立科学財団 (SNF)、スイス連邦技術
Empa は産業界のパートナーと共同で、あ
革新委員会 (KTI)、そして EU プログラムに
るいはスピンオフを通じ、Empa 科学技術
よって資金提供を受けたプロジェクトが常時
センター の glaTec および tebo にて研 究
結果を市場能力のあるイノベーションに応用
300 件ほど進行しています。
2015 年 の 活 動 の 中 心 は、 連 邦 参 事 会
転換し、スイス経済の競争力向上に貢献して
が決定したエネルギー移行を受け、例えば
います。さらに社会のサステイナビリティー
Empa が主導するスイスエネルギーリサー
のための学術的基盤も作り出しています。
チコンピテンスセンター SCCER の Future
1880 年以来 Empa は公共機関の政治
Energy Efficient Buildings & Districts
決定のためのデータべースを提供し、連邦
(FEEB & D)の枠内で行われるような、そ
省庁から様々な調査を受託しています。
のために必要になる研究にあります。SCCER
の長期目標は、スイス施設パークにおけるエ
ネルギー需要を 5 分の 1 にまで引下げること
です。
ETH グループの紹介と概要 15
南アフリカで栄養素の再生に取り組む
尿に含まれる貴重な栄養素を捨てずに再生すること。
Eawag の Kai Udert, Bettina Sterkele, Bastian
Etter および Alexandra Fumasoli 各氏が目標と
して研究しています ( 左から )。 現地行政と連携し、
Eawag の研究者は、集落の衛生状態を改善し、水資
源の汚染を減らし、農業のための肥料を生産するコス
トのかからないシステムを構築しました。
16 ETH グループの紹介と概要
EAWAG
www.eawag.ch
Eawag は世界有数の水質研究所です。
Eawag では、27 人の教授陣、学術職員
Eawag の強みと成功は、75 年間にわたっ 200 人、博士課程研究者 140 人が、新た
て培われた研 究、 学 問 教 育および 継 続・
な科学的見識を得、根本的な社会的ニーズ
生涯教育の密接な連 携、およびコンサル
への対応を迫る疑問に取り組むべく、無類の
ティングとナレッジトランスファーに基づ い
研究環境に集まっています。その際、学際
ています。自然科学、工学および社会学を
的連携および経済・産業界からの利益関与
連結することにより、比較的自然に近い水源
が重要な役割を果たしています。
から完全技術化された排水管理システムに
スイス の 大 学 で は 約 4,000 もの 授 業
いたるまで、水に関する研究を総合的に行
時間とおよそ 150 本の学士課程および修士
うことができるのです。研究活動の焦点は、
課程研究論文を指導することで、スイスの
どのように人類による水の使用と、水中生態
水関連分野における後進の専門育成に密に
系 の 機 能 維 持 および 抵 抗 力を回 復させ、
貢献しています。
バランスを保っていくことができるか、という
ものです。
スイスにおけるエネルギー転換問題を見
据え、Eawag はエネルギー効率やエネル
ギー獲得に関する工学技術的な課題だけで
はなく、水関連分野における社会学的・政
治学的な問題に取組んでいます。
ETH グループの紹介と概要 17
ETH グループのコンピタンスセンター
ETH 領域の機関は、エネルギー、環境、材料、造影技術という
テーマに指 標を合わせた 4 つのコンピタンスセンターで、
協力しています。コンピタンスセンターは 2006 年、学際的な
研究を目的をして ETH 理事会により創立されたものです。
CCEM – エネルギーとモビリティー
CCEM は 2014 年に、主導的機関である PSI
と共に、最後の公募を行いました。その後、
CCES – 環境とサステイナビリティ
進 行 中 の 8 件 の 研 究 プ ロ ジェクト は、
2014 年 2 月に、ハイレベルの国際的専門
10 件の新しいプロジェクトがスタートしており
審査委員会によって非常に好意的な評価を
ます。エリア計画、エネルギー問題および輸
得たことからもわかるように、依然として成
送・交通に関するコンセプトの融合に焦点を
功路線にあります。審査員のアドバイスを実
合わせています。2050 年エネルギー戦略の
現するにあたり、各プロジェクトの最終フェー
ための新たな選択肢を創出するため、すべ
ズで重要となるのは、研究結果をいかにし
ての観点を把握し組み合わせられるようなシ
てまとめ、実用化していくか、という点です。
ステムの開発に力を注いでいます。CCEM は
CCES とスイス自然科学アカデミー(SCNAT)
2006 年より ETH 領域における理解と協力
が 2014 年 10 月に共同で実施した『政治と
を深めるために、機関の垣根を超えた研究
学問の対話―現実か虚構か?』と名づけられ
プロジェクトを推進し、成功をおさめていま
たワークショップを契機に、学界と政界の協
す。現在進行中の CCEM プロジェクトのうち
力体制改善のためのプロジェクトが発足しま
31 件は SCCER の研究に貢献し、2017 年ま
で に 完了する予 定で す。『novatlantis –
ETH 領域におけるサステイナビリティ』プロ
グラムは、Novatlantis Argovia 未来地域
構想の枠内で、新たに 8 件のプロジェクトに
した。職業教育セクターでは、進行中のすべ
着手しました。さらには、ルツェルンとチュー
リヒ に お い て、2 件 の novatlantis 建 設
フォーラムが実施されました。
www.ccem.ch
www.novatlantis.ch
18 ETH グループの紹介と概要
ての活動を拡充し、たとえば CCES@School
の 枠 内 で 新 た なプ ロジェクトをスタート
させています。
www.cces.ethz.ch
CCMX – 材料科学とテクノロジー
NCCBI – バイオメディカル造影技術
材料科学とテクノロジーのコンピタンスセン
国立バイオメディカル造影技術コンピタンス
ター(CCMX)は、ETH 領域とスイス産業界の
センター (NCCBI) は、2006 年に設立されま
間の長期的な研究パートナーシップを促進
した。
する触 媒 のような役 割を果 たしています。
プログラム発足からこれまで 33 本の博士論
2012-2016 年度戦略計画に準じ、CCMX が
共同支援する新設 4 席の教授職について
は、既に 4 名中 3 名が任命されました。二
件 の『Materials Challenges』( 工 業 に
とり主要な問題に関する研究を実現するた
文に資金提供を行い、既に 13 本が成功裏
に完了しております。
13 のスイス研究機関に所属する 65 件の研
究室と 68 人の外部職員がこのプログラムに
関わっています。これらの共同プロジェクト
めの産業界の共同出資による研究プラット
から 55 本もの記事が世界の有名学術雑誌
フォーム)、は資金提供が許可され三件目
に発表されました。2014 年 8 月には NCCBI
が申請中です。現在第一段階の話合いがさ
の年次会が開催され、およそ 60 人のスイス
れており、様々な他の分野でも『Materials
の研究者が参加しました。参加者は、特に
Challenges』の創造について第一段階の話
アルツハイマー、肺疾患、骨粗しょう症とが
合いが進められています。22 件の進行中の
んを対象としたバイオメディカル造影技術に
プロジェクトに加え、大学研究者と企業研究
関する高水準の研究結果を交換しました。並
者を対象とした 11 の講座とイベントが開催さ
んで開催されたワークショップでは、「NCCBI
れました。
若手研究者賞」が開設され、授与されました。
www.ccmx.ch
www.nccbi.ch
ETH グループの紹介と概要 19
ETH グループ・インデックス
学士課程および博士課程在籍者
2014
建築
3,066 人
ETH チューリヒ
1,783 人
EPFL
1,283 人
土木工学と地理工学
2,946 人
ETH チューリヒ
1,731 人
EPFL
1,215 人
工学
ETH チューリヒ
EPFL
コンピュータ・サイエンスと通信テクノロジー
7,502 人
4,729 人
2,773 人
2,665 人
ETH チューリヒ
1,247 人
EPFL
1,418 人
物理および自然科学
ETH チューリヒ
EPFL
4,944 人
3,024 人
1,920 人
ライフサイエンス
3,990 人
ETH チューリヒ
3,012 人
EPFL
システム指向自然科学
ETH チューリヒ
マネージメント・テクノロジー・経済
ETH チューリヒ
EPFL
人文学・社会科学・政治学
ETH チューリヒ
20 ETH グループの紹介と概要
978 人
2,211 人
2,211 人
913 人
579 人
334 人
300 人
300 人
課程別学生および博士課程在籍者数
2014
学士課程
ETH チューリヒ
13,944 人
8,820 人
EPFL
5,124 人
修士課程
7,781 人
ETH チューリヒ
5,187 人
EPFL
2,594 人
博士課程
6,007 人
ETH チューリヒ
3,975 人
EPFL
2,032 人
MAS/MBA
ETH チューリヒ
EPFL
在籍者総数
ETH チューリヒ
EPFL
805 人
634 人
171 人
28,537 人
18,616 人
9,921 人
各研究施設における指導
2014
学士、修士および修了論文数
585 人
博士課程在籍者
784 人
女性比率 (%)
39,0
ETH グループの在籍学生比率 (%)
69,5
海外大学登録比率 (%)
11,7
ETH グループの紹介と概要 21
連結損益計算書
( 単位 : 100 万スイスフラン )
収益の部
連邦融資金
2013
2014
3,202
3,322
2,074
2,195
連邦施設費用割当金
305
278
ETH グループ
- 14
-8
第二者および第三者による資金変動量
- 37
- 102
第二者および第三者による研究資金総額
内第二者資金 *
717
779
454
498
209
234
科学技術革新委員会 (CTI)
37
48
連邦局からの研究委託
73
74
135
142
264
281
スイス連邦財団 (SNSF)
欧州研究プログラム
内第三者資金 *
サービス提供収益/その他の収益、財務収益
支出の部
ETH グループ連結支出
156
181
3,132
3,249
- 14
-8
1,985
2,046
物品費・営業費 ***
923
930
減価償却費
180
188
58
93
70
73
人件費
その他支出 ****
年次損益
*
**
***
****
第二者資金: 直接または間接的に連邦資金または EU に由来する競合的に得た資金。
第三者資金:民間に由来する資金。
物品費・営業費: 資材、物品費、サービス、施設費、外部リース費。
その他支出: 事前に内部で履行約束されていた事柄や移転支出に関する変更にかかった費用。
22 ETH グループの紹介と概要
連結貸借対照表
2013
2014
2,845
3,378
流動資産
1,749
1,842
固定資産
1,096
1,536
2,845
3,378
( 単位 : 100 万スイスフラン )
資産の部
負債の部
借入資本
特定用途の資本
自己資本
417
724
1,456
1,565
973
1,089
職員
雇用者数
教授(常任 / 非常任)
2014
657 人
終身在職権のある准教授
93 人
終身在職権のない准教授
59 人
学術職員
12,534 人
技術職員
3,550 人
事務職員
3,081 人
実習生
総数
456 人
20,430 人
学問と技術の伝播と普及
2014
特許
ライセンス
大発ベンチャー企業
211 件
270 件
49
ETH グループの紹介と概要 23
E T H グループ
ETH 理事会
Häldeliweg 15
CH-8092 Zürich
電話: +41 (0)44 632 23 67
ファックス: +41 (0)44 632 11 90
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スイス連邦工科大学理事会
© ETH 理事会、2015 年 4 月、写真:Elisabeth Real, Zürich