加藤 好男 様 - 神奈川トヨタ自動車株式会社

EXECUTIVE INTERVIEW:
エグゼクティブ
インタビュー
NO.
9
このコーナーは神奈川トヨタのお客様である経営者
の方にお話を伺うコーナーです。
株式会社 ケイス 代表取締役
加藤 好男
様
横浜の地場産業の捺染技術で、てぬぐい・風呂敷・
ハンカチなどを生産。絵として飾れるアイテムや、
てぬぐい本 ® など、優れたデザイン性と遊び心
溢れる布製品を数多く生み出し、幅広い層に
支持されている株式会社 ケイス 代表取締役
加藤 好男氏にお話を伺いました。
■ 横浜の地場産業 捺染で
幅広いテキスタイルを展開
―ケイスという店名の由来は
はまもんよう
元々は濱文様という社名だったのですが、
スカーフ・ハンカチなど洋物を作るときに、
濱文様という名前だけでは、和物専門と
誤解されやすく、 はまぶんさま って
呼ばれることも多くまぎらわしい。当社は
幅広いテキスタイル(布地・織物)部門を
目指していますから、柄がいろいろ出てくる
玉手箱のような箱(case)ということで
ケイスとしました。
私どもの会社は昭和23年に父が創業、
横浜の地場産業である捺染工場から
始まっています。捺染とは生地の上に
印刷、染めることです。横浜はシルクの
集散地でスカーフやハンカチを主に生産
していました。当時の横浜には捺染工場が
大岡川、帷子川の川沿いに点々と120社
くらいありましたが今ではほとんど
なくなってしまいました。うちも工場は
山形にあります。以前はお客様の希望
する柄、配色など、お客様の要望に沿って
染めるだけというような加工作業を主に
40年くらいやっていました。インドの
民族衣装のサリーなども昭和の終わりまで
やっていました。サリーは腰からまいて
肩 で 下 げ て 結 ぶ も の で、 大 体6ヤ ー ド
5.5メートルくらいなのですが、最後に
肩にかけるところだけ違う柄をプリント
するという特殊なプリントの仕方があって、
全国でうちだけしかやっていませんでした。
このような特殊な仕事はなくならない
からと言われて続けてきましたが、大量
生産できる工場や外国産の台頭など時代の
流れで、主たる事業だったサリーも10年
続けていくうちにぱったりなくなって
しまいました。こういう苦い経験もあり、
自分たちが企画したものを、自分のところの
工場で作り、自分のところで販売しようと
稼働したのが濱文様です。
濱文様では、創業以来の捺染技術を
生かし、新作の柄をどんどん出しています。
春・夏・秋・冬それぞれ季節に応じて
商品のラインナップを入れ替えています。
柄に関しては遊び心、可愛らしさとか、
粋でおしゃれな感じを大切にしています。
和物は今では若い人にもわりと受け入れ
られていますけど、15年くらい前までは
ダ サ い と い う 感 じ だ っ た ん で す。
そこで、百貨店の売り場に置いてもらっても
おかしくないような和物を作ろうという
くくりで品物づくりをしました。百貨店の
ハンカチ売り場やスカーフ売場って、一階の
一番いいところにありましたから、やはり
自分たちが作りたいものを自分たちで
企画・デザイン・製作・販売。
遊び心で和小物をもっと身近に。
死ぬかわからないような状態でしたから、
ともかく飲んで騒いで凄かったですね、
喧嘩なんかビール瓶で殴りあう映画
みたいな凄い光景も目にしました。そんな
経験も遊び心の肥やしになったのかな。
―今後の目標を教えてください
そこに置きたいという思いが強くあり
ま し た。 う ち の 場 合 だ と 配 色 自 体 が
スカーフやハンカチっぽい配色になって
いて、それがなかなか評判よくて使って
いただけるようになってきました。
■ 濱文様らしさを追求し
さらなるステップアップを
― 濱文様ブランドの核である遊び心の
原点を教えてください。
私はサップ(SUP)と呼ばれるスタンド
ア ッ プ パ ド ル・ サ ー フ ィ ン が 趣 味 で、
週末は葉山に行っています。時間の余裕も
でき健康のため葉山マリーナの前から
海岸を森戸海岸あたりまでただひたすら
歩いていました。せっかく海が近いのに
もったいないなぁと思っていたところ、
たまたまサップを教えてくれる人がいて、
やり始めたら面白くってはまっちゃい
ました。愛車の FJ クルーザーは道具を
一式載せても余裕で、乗り心地も含めて
最高です。来月68歳になるけど、この歳で
やっている人はなかなかいないですね。
1960年代には、横須賀のどぶ板通りで
バンドもやっていました。当時はベトナム
戦争の最中で、観客の駐日米兵たちもいつ
アメリカに進出して、日本の民芸品と
してではなく、雑貨屋さんにおいてもらえる
ようになりたいですね。
濱文様を始めた頃は自分たちの好きな
ものを作っていればよかったのですが、
売る範囲が広くなってくると、多様な
お客様のニーズに合わせいろんなものを
作ってしまう。一つ一つのアイテムは
い い ね と 言 っ て も ら え る の で す が、
トータルで見渡すとバラバラなんです。
そこでトータルのブランディングの見直しを
しようかと思っています。まずは大事な
色から、ブランドの色、濱文様カラーを
もう一回見直す。例えばピンクならこの
10色の中でというような感じで、固めて
いくことをやろうかなと思っています。
エルメスやセリーヌなどビッグブランドは
だいたい使う色は決まっています。だから
そんなにぶれない。色だけでなく外部の人
にも入ってもらって、一度ブランディング
をきちんとやって、もう一歩踏み出したい
と思っています。
てぬぐい本 ®
てぬぐいを折り畳み、綴じ紐でとじて本のようにしたもの。
綴じ紐をほどくと、てぬぐいは一幅の絵に。日本の風情が
楽しめるものや動物の絵柄など、シーズン折々の新作が
現在では 30 種類以上発売されています。
てぬぐい本 ® は、2007 年グッドデザイン賞を受賞すると
ともに、中小企業長官特別賞も受賞しています。
<インタビューを終えて>
株式会社 ケイス
〒233-0004 神奈川県横浜市港南区港南中央通8-22
TEL:045-847-2431
URL:http://www.hamamonyo.jp/
どんないいものも使われないと滅びて
しまう。濱文様のてぬぐいは、
優れたデザインで、
何かをぬぐう用途だけでなく絵のように
壁に飾ったり、メッセージをこめたコミュニ
ケーションツールとして愛用されたり進化
しています。確かな捺染の技術に遊び心という
スパイスを加え、幅広い世代に普段使いの
お し ゃ れ 雑 貨 と し て 定 着 し つ つ あ り ま す。
今後の進化が楽しみであるとともに、てぬぐい
という文化は次の世代へ残っていくと確信
しました。