「法曹人口問題緊急検討会議」(仮称)の設置を求める

「法曹人口問題緊急検討会議」(仮称)の設置を求める意見書
平成27年9月17日
日本弁護士連合会
会長
村
越
進
殿
千葉県弁護士会
会長
第1
山
本
宏
行
意見の趣旨
法曹人口問題について貴連合会が集中的かつ民主的に検討するための新組織
として、日弁連の全理事者と、各単位会から選出された日弁連会員により構成
される、「法曹人口問題緊急検討会議」(仮称)を速やかに設置すべきである。
第2
意見の理由
法曹養成制度改革は、本年6月30日の法曹養成制度改革推進会議決定(以
下、「政府決定」という。)を受けて、新たな段階に入ったと言える。ただし、
政府決定には、「直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現
状を踏まえ」るとするなど、1,500人程度を上回る規模の司法試験合格者
数をも視野に入れたかのような記述も含まれている(日弁連2015年(平成
27年)「法曹養成制度改革推進室作成の法曹人口の在り方について(検討結
果取りまとめ案)に関する会長声明」)。しかしながら法曹養成制度の深刻な
状況と、この間の法曹志望者減少の推移を踏まえると、当面の司法試験合格者
数について「1,500人程度を上回る規模」とすることは、現実的な基盤を
欠き、現状に対する危機感を欠如したものと言わざるを得ない。また、法曹志
望者の減少をもたらした要因を解消する実効的な措置を講ずることなく、こと
さらに司法試験合格者の数を追い求めるならば、新規法曹の一部に質の低下を
もたらすばかりか、法曹養成制度の意義や機能、ひいては制度に対する社会的
な信頼を損なう事態を招来しかねない」(同会長声明)。
このように、政府決定に基づき今後進められる法曹養成制度改革は、決して
楽観視できるものではない。実際、「司法試験の合格者数は、一昨年は2,0
49人、昨年は1,810人、本年は1,850人と推移しているが、法曹養
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成制度の現状及び上記推進会議決定の方向性を踏まえると、合格者数はすみや
かに1,500人にするべきである」(日弁連2015年(平成27年)「平
成27年司法試験最終合格発表に関する会長談話」)との主張は容易に受け入
れられる状況にはない。
ところで、日弁連は、2012年(平成24年)の「法曹人口政策に関する
提言」(以下、「本提言」という。)において「司法試験合格者数をまず15
00人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法
的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである」と政府に対
し求め、これが遅ればせながら、本年の政府決定に結びついたと言える。これ
は、この間の日弁連及び関係各位の運動の結果である。そして、このような運
動が可能であったのは、本提言が、日弁連の全理事者と、各単位会から選出さ
れた日弁連会員により構成され、地方の一般会員や中堅・若手会員をも取り込
んだ、公正で開かれた会議により決定されたものであり、それだからこそ、そ
の後の本提言実現のための運動を「全国の会員、弁護士会が力を合わせて」取
り組むことができたからである。
とすれば、本年の政府決定を受けて新たな段階に入ったいま、本提言の決定
時のプロセスに学び、それと同様、日弁連の全理事者と、各単位会から選出さ
れた日弁連会員により構成される、新たな組織(仮称「法曹人口問題緊急検討
会議」)を速やかに設置すべきである。地方の一般会員や中堅・若手会員をも
取り込んだ、公正で開かれた会議を経てこそ、「まずは1500人」後のビジョ
ンを「オール日弁連」「オール弁護士会」「オール弁護士」で決定し、一致団
結した諸活動に邁進することができ、ひいては実効的な法曹養成制度改革実現
への取組が可能となるのである。
現在の日弁連の「法曹養成制度改革実現本部」の体制のままでは、到底このよ
うな開かれた民主的議論を迅速かつ集中的に行うことは困難であり、新組織の
創設こそが日弁連が採りうるもっとも効果的かつ現実的な方策である。
よって、意見の趣旨のとおり求める。
以
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上