税務会計論a第7回資料

税務会計論a
第7回
税務収益会計のうち
請負収益について
板橋雄大
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Ⅰ.請負収益の意義と
原則的計上基準
1.請負収益の意義
請負というのは、当事者の一方から(請負人)がある仕
事の完成を約束し、相手方(注文者)がその仕事の結
果に対して報酬を与えることを約束することによって効
力が発生する契約のことを言います(民法632)。
請負には,建設・造船等のように物の引渡しが必要なも
のと,運送・広告代理等のように物の引渡しは必要でな
いものがあります。物の引渡しは必要でない請負に係る
収益は,役務収益の性質を持ちますので、収益の計上
基準も、役務提供完了基準が原則となり、役務収益の
種類に対応して特例処理も許されることとなります。
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2 請負収益の原則的計上基準
請負に係る報酬は,仕事の目的物の引き渡しと同時
に与えることが必要です。物の引渡しが不要の場合で
も,その仕事を終えた後でなければ誠求することがで
きません(民633で請負契約は仕事の完成を約束す
る性質であるとされている。また民法の624Iで労働者
は、その約した労働を終わった後でなければ、報
酬を請求することができないとされている。)
したがって、請負契約によって約束した労働=仕事の
完成、である以上、それが終わるまでは、報酬を請求
できないのです。
すなわち,いわゆる後払いが原則とされています。
このような請負の法律関係を前提として,請負収益の
額は,税務上,別に定めるものを除き,次の日の属す
る事業年度の益金の額に算入することとされている
(法基通2-1-5)。
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(請負による収益の帰属の時期)
2-1-5
請負による収益の額は,別に定めるもの
を除き,物の引渡しを要する請負契約に
あってはその目的物の全部を完成して相
手方に引き渡した日,物の引渡しを要しな
い請負契約にあってはその約した役務の
全部を完了した日の属する事業年度の益
金の額に算入する。
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①物の引渡しを要する請負契約…その目的物の
全部を完成して相手方に引き渡した日・・・完成引
き渡し基準
②物の引渡しを要しない請負契約…その約した役
務の全部を完了した日…役務提供完了基準
今、例として請負契約の内容が建設,造船その他
これらに類する工事(建設工事等)であるときは,
どちらの基準で収益計上を行うだろうか?
完成引渡基準によりその収益計上を行うことにな
るのであるが,その場合,建設工事等の引渡しの
日がいつであるかを具体的にどのようにして判断
するのかという問題がある。
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作業が終わった段階、受け入れ場所に搬入
が終わった段階、受け入れ先で検収が終
わった段階、管理権が移転した段階など企
業会計上も一般に採用されている収益計上
基準がいくつかあるため、法人税法基本通
達においても、こうした基準のいくつかを例示
し、法人は、建設工事等の種類,性質,契約
の内容などに応じて合理的と認められる基準
を定め,継続的にその基準により収益計上を
行うべきであるとされています。
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Ⅱ.建設工事等の請負収益
1.完成引渡基準の運用形態。
建設,造船その他これらに類する工事(建設工事等)の講負契約の場
合には,原則として完成した目的物の引渡日に収益を計上する方法で
ある「完成引渡基準」によることとなります。
しかし,この基準を実際に運用するには,所有権の移転時期ではなく
実質的な引き渡し日を判定しなければならなりません。
このため,
①作業を結了した日
②相手方の受入場所へ搬入した日
③相手方が検収を宛了した日
④相手方において使用収益ができることとなった日
つまり,完成引渡基準の具体的な連用形態として,「作業結了基準」,
「搬入基準」,「検収完了基準」,「使用収益開始基準」などの継続的適
用が認められています。(法基通2‐1‐6)。
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2 部分完成基準の強制適用
(部分完成基準による収益の帰属時期の特例)
2-1-9法人が請け負った建設工事等について
次に掲げるような事実がある場合には,その建設
工事等の全部が完成しないときにおいても,その
事業年度において引き渡した建設工事等の量又
は完成した部分に対応する工事収入をその事業
年度の益金の額に算入する(強制規定)。
(1)一の契約により同種の建設工事等を多量に請
け負ったような場合で,その引渡量に従い工事代
金を収入する旨の特約又は慣習がある場合
(2)1個の建設工事等であっても,その建設工事
等の一部が完成し,その完成した部分を引き渡し
た都度その割合に応じて工事代金を収入する旨
の特約又は慣習がある場合
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建設請負に係る収益は完成引渡基準により計上するの
であるが,この場合の完成引渡しには「単位」が定められ
ている。
請負契約に係る建設工事等の全部が完成しない場合で
も,部分的に完成して引渡しを了したと認められるときは,
その引渡しをした部分ごとに完成引渡基準が適用される
のである。
例えば,100戸の建売住宅の建設を請け負ったような場
合に,1戸を引き渡す都度工事代金を収入する旨の特約
又は慣習がある場合である。
また,例えば1,000メートルの護岸工事を請け負い,その
うち100メートルごとに完成した都度引渡しをし,その都
度に応じて工事代金を収入する特約又は慣習がある場
合もこれに該当する。
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なお,この部分完成基準は,収益計上に関
する特則として,工事完成前に収益の先行
的計上を行うことが認められる「工事進行基
準」とは異なり,選択的に適用できるというも
のではないことに留意すべきである。
なぜなら、選択適用を可能にしてしまうと、意
図的に目的物の一部の引渡しを遅延させる
ことによる租税回避が可能になってしまうか
らである。これを防止するため,その引渡し
部分についての代金の受領を前提としなが
ら,その引渡しをした部分ごとに完成引渡基
準が強制的に適用されることとなる。
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ところで,長期大規模工事に該当する工事については,工事進行基準
の方法により計算した金額を益金の額及び損金の額に算入することと
されている(法64①)が,工事進行基準が適用される長期大規模工事
に該当する工事について,その目的物の全部の完成・引渡しが行わ
れる前に,部分的に完成して引渡しを行った場合には,この部分完成
基準により収益及び費用を計上しなければならないかという疑問が生
じる。
この点,部分完成基準は工事完成基準の一形態であり,工事進行基
準とは異なる収益計上方法である。したがって,工事進行基準が適用
されることとなる長期大規模工事に該当する工事については,部分完
成基準が適用される場面は生じないこととなる。
つまり、工事完成基準で収益計上する場合に、その一部の完成・引き
渡しが行われ、代金の受領も済んでいるような例外的な場合には、租
税回避を防ぐため、強制的に部分完成基準が適用される。
一方で、工事進行基準を行う場合には、例外処理をどうこうするより、
そもそも適用する基準(工事進行と工事完成)が異なるので、部分完
成基準も適用されないということになる。
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Ⅲ 長期請負工事収益
1 長期大規模工事に対するエ事進行基準の強制適用
長期大規模工事の請負に係る収益・費用の計上については,工事進行基準の
方法が強制的に適用される(法641)。
この工事進行基準準の強制適用は,損失の計上が見込まれる長期大規模工事にも及ぶ。
以前,長期工事の請負については,税務会計上,工事完成引渡基準の適用が原則とされ,一
定条件のもとに工事進行基準の適用が特例として認められていた。
これは,工事完成基準と工事進行基準の選択適用を認める財務会計上のルールと調和するも
のであった。
しかし,1998年度の「法人税改革」に際して,長期工事のうち長期大規模工事に該当するもの
には工事進行基準を強制適用する制度への改正が行われた。
この改正の背景には、次の2つの事情があったとされている。
①工事完成基準と工事進行基準の選択制のもとで,大手建設会社の半数近く
が一定の年数・規模の工事について工事進行基準を採用しており,結果として
法人税負担の会社間格差が生じている。
②「工事進行基準」による方が各事業年度の企業業紙を適切に表すことになり,
国際的にも「工事進行基準」を採用する方向にある。
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2 長期大規模工事の意義
収益・費用の計上にあたり,工事進行基準が強制
的に適用される長期大規模工事とは,次の3要件
のすべてに該当する工事(製造およびソフトウェア
の開発を含む)をいう(法641,法令1291.Ⅱ)。
①工事の着手日から契約上の目的物の引渡期日
までの期間が1年以上であること
②その工事が大規模であること(請負対価の額が
10憶円以上であること)
③契約において請負対価の額の2分の1以上が目
的物の引渡しの期日から1年経過後に支払われる
ことになっていないこと。
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3 工事進行基準の方法
長期大規模工事の収益計上に強制適用される工事進行基準の
方法とは,工事の請負対価の額および工事原価の額に期末に
おける工事の進行割合を乗じて計算した金額から,それぞれ前
期までに計上した収益の額および費用の額を控除した金額を当
期の収益の額および費用の額とする方法をいう(法令129Ⅲ)。
〔備考〕1)工事の請負価の額が期末において確定していないと
きは,その時の現況によりその工事につき見積もられる工事原
価の額をその請負対価の額とみなして、長期大規模工事に該当
するか否かを判定し,工事進行基準の方法による経理を行う。
2)次のいずれかに該当する場合には.工事進行基準の適用を
開始しないことができる(法令129Ⅵ)。
①期末時点において工事着手の日から6か月を経過していない
もの
②期末時点において工事進行割合が20%に満たないもの
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判例:建物建設請負工事の収益計上時期につき権利
確定主義を根拠に判断した事例
弁護人の主張は要するに、一、完成工事高のうち、五件の未
完成工事分が存在しているので、その収益計上時期を争う
よつて当裁判所は、右の弁護人の主張に対し次のとおり判断
を示すこととする。
一 (完成工事高のうち五件については未完成工事分であ
るから、その収益は翌期に帰属されるべきであるとの主張に
ついて)
(一) 被告人、弁護人は、被告会社の完成工事高のうち、
施行主がC、D、E、F及びGにかかる各工事については、昭和
五〇年一二月期の事業年度中には完成していなかつたので
あるから収益計上時期は翌期に帰属されるべきである旨主
張する。
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右弁護人の主張の要旨は、被告会社が施工主から賃貸用
住宅の建築請負契約を締結すると共に、施工主に対し建物
完成と同時に被告会社の子会社であるH商事株式会社(以
下H商事という)を借主とする転貸特約つきの賃貸借契約を
斡旋し、同建物に居住する者の有無に拘らず、建物完成と同
時に家賃収入の確保を保証するということであつたから、して
みると、施工主とH商事間の賃貸借契約締結の日と家賃発生
の始期である賃貸借期間開始の始期と、工事完成の日とは
一致する筈であるべきところ、前記施工主五名を除いては賃
貸借契約日と賃貸借期間の始期とは一致しているが、右五
名についてはいずれも賃貸借契約の日と、賃貸借期間の始
期が一致していないので、特段の理由のない限り、右五名の
工事完成時期は賃貸借期間の始期である昭和五一年であつ
て、本件事業年度ではないという合理的疑いがあるというに
ある。
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(二) そこで検討するに、〈証拠〉によれば、被告会社は、土地を所有す
る農家を施工主とし、自ら材料を提供して賃貸用住宅の建築を請負う事業
を行なつていたものであり、収益計上の時期については右建物を完成して
相手方に引渡した日の属する事業年度において請負による収入を益金の
額に算入しており、具体的には建物の鍵を引渡せる状態になつたことをも
つて、工事の完成引渡しの時期を判断する基準としていたことが認められ
る。
そうすると、被告会社の収益計上の時期は、右の引渡しの時期によつて定
まつているから、施工主とH商事との賃貸借契約の日とか、賃貸借期間の
始期とは関係がないといわなければならない。けだし(まさしく)、被告会社
とH商事とは別会社であるから、施工主と被告会社との権利義務の関係は、
右両当事者間の建設工事請負契約によつて定まるというべきところ、右契
約内容にはH商事との賃貸借契約が何ら包含されていず、右賃貸借契約
の締結が最終金の支払の条件となつていないからである。
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従つて、実際に入居者の定まらないこととか、賃
貸借契約日と契約期間とのずれ等については、H
商事の問題であつて被告会社の問題でないから、
目的物の完成、引渡しの時期を決定するものとは
なり得ないし、また、被告人の当公判廷における
供述によれば、被告会社では、昭和五〇年に入
つてからは実際に工事が完成しても三、四〇パー
セントが入居者の決まらない状況にあつたことや、
H商事が施工主(家主)と賃貸借契約を締結し、敷
金、権利金、賃料を支払いながら、直ちに入居者
がつかないため、資金繰りに窮し、被告会社がH
商事に代つて家主に立替払したことさえ認められ
る事情にあつたのであるから、工事の完成、引渡
しの時期を推測させる証拠ともなり難い。
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(三) おもうに、施工主の直営工事ではない一般の建物建設請負工事の収益計上時期に
つき、右建物の引渡しを以て認識基準とすることが妥当とされる所以は、特約のない限り、
完成した建物を引渡すことによつて施工主に所有権が移転するとともに、請負人において
報酬請求権を取得するから、既に、請負契約時において収入すべき工事代金が定つてい
る以上は、右引渡しによる履行の提供があれば、直ちに右代金を請求し取得できるので、
右段階に至れば代金債権は権利として確定することとなり、所得の実現があつたものとみ
られ、たとえ現実に現金の授受がなくとも、法律上何時でも行使できる請求権として担税力
を有する財産価値を有するものと認められ収益として認識できるからである。
しかして右の収益計上時期としての引渡しとは、特約のない限り、それが建物であるた
めに、必ずしも現実の占有移転たるを要せず実質的な引渡しをもつて足り、本件のように、
鍵を渡せる状態、換言すれば、施工主をして通常の用法に従つて使用し得る状態になつ
た時を以て引渡しの時と認識することも許容され得る。
ところで一般に建設請負工事は、完成までに長期かつ多額の費用のかかることから、工
事代金については、契約成立時、着工時、上棟時等段階的に部分払いがなされ、残代金
も完成、引渡時において精算払いとなることが多い。また、右工事につき附帯工事が随伴
したり、更に、当初工事契約内容の仕様変更ないし、別途工事として追加工事がなされる
ことも少なくなく、そのうえ、本件工事については当該事業年度に引渡しがなされていても、
附帯工事、別途追加工事については翌期に引渡されることもある。
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建物の工事完成基準にあつては、収益は原則として、
契約目的物全部を引渡した日の属する事業年度の収
益とされるので、引渡し前に授受された代金は前受金
ないし預り金たるの性質をもつに過ぎないが、しかし、
当該事業年度内に契約の内容たる工事の大部分が
完成状態にあり、かつ、その引渡しが終了しながら、
なお、一部工事が未完成であつた場合においても、右
未完成部分が全工事中の極めて僅少に過ぎず、かつ、
最終的な仕上げ、ないし付随的なものであつて、完成
まであと僅かな時間内に処理可能で、当該事業年度
に引続いて容易に完成し得るものと認められるような
場合であつて、当年度内に工事代金の全部につき請
求がなされていれば、右工事にかかる収益は当該事
業年度に帰属すると解するを相当とする。
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けだし、右の如き事情が存すれば、たとえ若干程度の工事の残りが
あつたとしても、実質的にみれば、工事が当期中に完成し引渡しが
あつたものと同視できるので、工事全般を当事業年度内に完成、引
渡しを了したものと認めても何ら不合理ではないからである。
また、当該事業年度において工事契約の大部分が完成状態にあ
つて、施工主と請負業者間において、合意のうえ、実質的に目的物
が完成され引渡しがなされたと認められる状況にあつたとして、工
事代金の全部が当事業年度内に精算され授受されたような場合に
は、たとえ追完工事が若干残存して未完成であつたとしても、請負
業者にとつてみれば、右代金の取得により契約の目的を達し、施工
主からの代金の返還請求もあり得ない。
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かつ、右金員を自己のものとして自由に
使用し処分し得るので、所得の実現があ
つたとみることができる状態を生じたもの
といえるから、特段の事情がない限り、右
精算金の授受された時の事業年度の収
益に帰属せしむるのが相当である。
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4 着工年度内引渡し未了の工事請負に対する工事
進行基準の任意適用
長期大規模工事以外の工事に係る請負収益の計上
には,原則として工事完成引渡基準が適用される。し
かし,長期大規模工事に該当しない工事で,その着工
事業年度中に目的物の引渡しが行われないものに係
る請負収益の計上については,特例として工事進行
基準を適用することが認められる(法64Ⅱ本文)。
ただし,工事進行基準を適用した上記の工事請負に
つき,着工事業年度後のいずれかの事業年度の確定
決算において工事進行基準の方法による経理をしな
かった場合には,その事業年度の翌事業年度以後に
おいて工事進行基準を適用することができない(法
64Ⅱ但書)。
着工事業年度内引渡し未了工事の誠負に工事進行
基準を適用するにあたっては,次の要件を満たさなけ
ればならないのである。
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①確定決算において工事進行基準の方法により
経理すること
②工事進行基準を適用した工事請負につき同基
準を毎期継続適用すること
なお,この工事請負に対する工事進行基準の任
意適用についても,「損失が生ずると見込まれな
いこと」は要件とされていない(法64Ⅱ本文)。
練習問題の3.
「建設工事等の請負収益の計上における『部分完成
基準』がなぜ強制適用なのかについて、その理由を
考えなさい。」
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第8章譲渡収益
I 譲渡収益の意義と計上基準
1
譲渡収益の意義
譲渡収益とは,一般に,有形・無形固定資産,商品有価証券以外の
有価証券,受取手形等の債権のような販売を目的としない資産の
売却(有償譲渡)や贈与(無償譲渡)等によって生ずる収益をいう。
これら非販売目的資産の譲渡にあたっては,譲渡収益から譲渡原
価を差し引いた純額(net)である利益ないし利得ではなく、収益と費
用をグロスの金額である総額で計上することが建前とされている。
すなわち,有償による資産の譲渡の場合には,その対価の額を収
益の額とするとともに,その資産の帳簿価額を費用(譲渡原価)の
額として計上するのである(法22Ⅱ.Ⅲ)。
ただし,有価証券については,個々の売却ごとに譲渡収益と譲渡原
価の差額を計算し,その差額を譲渡益または譲渡損として計上する
ことになっている。
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2 譲渡収益の計上基準
譲渡収益についても,販売収益や請負収益の場
合と同様に,目的物の引渡しの日に計上する方法
である「引渡基準」によることが原則とされている。
ただし,譲渡資産の種類や売買契約の内容等か
らして,「引渡基準」によることが必ずしも適当でな
いときは,他の計上基準によること(強制)とされ,
あるいは,他の計上基準によることが認められて
いる(任意)。
たとえば、資産の譲渡であって長期割賦販売等に
該当する場合、これは一定の条件の下ではある
が延払い基準による収益計上が認められる(法
63)。
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II 固定資産の譲渡収益
1
不動産の譲渡収益
固定資産の譲渡による収益は,別に定めるものを除き,その引渡し
があった日に計上し,その引渡日がいつであるかについては,棚卸
資産の引渡日判定の例によるものとされている(法基通2-1-14)。し
かし,固定資産が土地・建物等の不動産である場合には,引渡しの
事実関係が表面上明らかでないこともあるので,契約の効力発生
の日に譲渡収益を計上することも認められる(法基通2-1-14但書)。
これを契約効力発生基準という。
つまり,不動産の譲渡収益については,「引渡基準」によって計上す
ることが原則とされており,「契約効力発生基準」によることも特例と
して認められているのである。
ただし、農地の譲渡の場合には農地法上のの許可がその契約の効
力発生の条件となるので、その許可のあった日に譲渡収益を計上
する「譲渡許可基準」によることも認められる(法基通2-1-15)。
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2 工業所有権等の譲渡収益
工業所有権等(特許権,実用新案権,意匠
権および商標権ならびにこれらの権利に
係る出願権および実施権をいう)の譲渡ま
たはその実施権の設定による収益は,原
則としてその契約の効力発生の日に計上
する。ただし,その譲渡等の効力が登録に
より生ずることとなっている場合には,そ
の登録の日に計上することも認められる
(法基通2-1-16)。
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つまり,工業所有権等の譲渡収益の計上は,原
則として「契約効力発生基準」によるのであるが,
登録が効力発生要件とされている場合には,「登
録基準」によることもできるのである。
なお,工業所有権等の譲渡に係る対価の額が,そ
の契約の効力発生の日以後一定期間内に支払い
を受けるべき使用料の額に充当されることになっ
ている場合であっても,その事業年度終了の日に
おいていまだ使用料の額に充当されていない部
分の金額を前受金等として繰り延べることはでき
ないものとされている(法基通2-1-16(注))。
譲渡対価を前受収益として経理することで,収益
計上を遅らせることは,認められないのである。
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3 ノーハウの頭金等
ノーハウ(Know-how)とは,産業上有用な技術的
知識・経験についての未公開で秘密を要する情報
をいう。これは,工業所有権のように特別の法律
によって保護されてはいないが,事実上の権利とし
て譲渡の対象になり得る収益性無形固定資産の
一種とみることができる。
こうしたノーハウの設定契約に際して受け取る一
時金または頭金は、そのノーハウの開示を完了し
た日に計上する(法基通2-1-17本文)。
これは,相手方にノーハウの内容を開示すること
により,その利用を許諾することになる点に着目し
たものである。
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ただし,ノーハウの開示が2回以上に分割
され,かつ,頭金等がほぼそれに見合って
分割されるときは,その開示の都度受ける
べき対価を収益として計上する(法基通21-17但書)。
このように,ノーハウの頭金等の収益計上
については,原則として「開示完了基準」
が適用され,分割開示・分割支払いの場
合には,「開示都度基準」が適用されるの
である。
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4 100%グループ内の法人間の資産譲
渡に係る損益
完全支配関係がある内国法人(100%グ
ループ内法人)間で、一定の資産の譲渡を
行ったことにより生ずる譲渡損益は,その
資産のそのグループ外への移転等の時
に,その譲渡を行った法人において計上
する(法61の13Ⅰ・Ⅱ)。つまり,100%グ
ループ内の法人間の資産譲渡に係る損
益の計上が繰り延べられるのである。
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